星の海、幸せの夏
いつも亀更新ですみません。
俺は星の海の中にいた。正確には鉄の家の中の壁が透明になって、まるで、空中に浮かんでいるように見えるのだ。どこまでいっても星の海だ。しかし、輝きは弱々しい。この宇宙は死にかけているのだ。そう、前に聞いたことを思い出した。俺が、聞いたことを思い出すなんて珍しいが、思い出しちゃったもんは仕方がない。
この夢をみているのは、ラムダだ。どうも、ラムダもこの夢にとらわれて抜け出せないようだ。夢補足のいいところは、単に夢を捕捉するだけではなく、俺が夢の中に入って改変できることらしい。俺は、鉄の家の方向を変えて、俺たちの住んでいる世界に下ろした。
ラムダは恐る恐る足を踏み出す。踏みつけているのは、緑の草だ。草いきれがする。初夏だ。蝶がふわふわと飛んでラムダにとまる。ラムダは、蝶が止まったまま、2、3歩、歩く。
向こうから、るーたんとぽちがラムダを迎えにくる。ここが、家だ。こここそが、家で、あれが家族だ。ラムダは、安堵する。長い航海は終わったのだ。
俺はラムダの夢から出てからもしばらく動くことができなかった。永遠に近い時間を稼働し続けるというのは、どんな気持ちなのであろうか。俺にはわからない。ただ、近い将来、俺もこの問題に直面することになるであろうことは明らかであった。
この夢補足は、夢を捕捉するだけではなく、どうやら、幸せな状態に持っていくことができるようだ。それこそ、ドリームキャッチャーが悪夢を捉えてくれるようにだ。
俺は、ふと、身近な夢を感じて潜り込んでみた。これは、アルテミス様の夢?
しかし、潜った途端に頭が割れそうになった。アルテミス様は、物を一元的に捉えているのではなく、全ての面から、しかも、ありとあらゆる部分までを捉えていた。細胞、血管、血、神経、それだけではなく、全ての時間からも物事が見えていた。俺は気絶しそうになった。
その時、アテナ様が、俺を捉えて、離してくれた。まるで、地面でひっくり返っている亀をそっと持ち上げて、池に返すように。
「人間の身では、我々の視点をみることは不可能。処理しきれず、死んでしまうから。これからは、我々の夢は覗かないように。」
俺は、アテナ様に大感謝して、足をペロペロしまくった。
俺は、そこでやめようろ思ったら、ケチャの夢にひっかかった。どうもえらく悲しい夢をみているようだ。ケチャの母親は、細腕一つで、ケチャを育てようとして、病気にかかってしまったようだ。
「母さん、いかないで。」
「ケチャや、幸せにおなり。幸せ・・・・・」
悲しい夢だ。俺は、ケチャの手を取って、ラムダの夢に滑り込んだ。暖かい日差し。みんながいて、穏やかな時間がそこにある。るーたんが、ぽちと遊んでいる。俺は、ケチャをいざなって、芝生の上に座った。ラムダは穏やかな目でるーたんたちをみている。俺もケチャをそっと、座らせて頭を俺の膝の上に置いた。そして、髪を撫でた。やわらかな時間が過ぎていく。そして、風が俺たちの頬をなで、日差しは、いつまでもいつまでも俺たちの上に優しく降り注ぐのであった。
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