タクト真実に気がつく
エビフライって、マヨネーズで食べちゃダメですか。タルタルソースとかいう気取ったものや、ソースより、マヨで食べたいんです。そうなんです。
いやあ、俺って、つくづく猫カフェに依存してるな。猫カフェがなければ、ただのクズ、生活が成り立っていないなあ。生命力弱いし。金の儲け方わからないし。俺ってば、全然何の取り柄も特技もないしねぇ。うーん、猫カフェできてて、よかったよかった。
そう思いながら、俺は、猫カフェの常連たちに飲み物を配っていく。猫ちゃんたちありがとう!途中、セリーヌに耳をはむはむされて、声にならない声で助けのようなものを求めていた美少年バージョンのコサブローがいた。うん、この一角だけ美少年カフェになっていて、本来のコンセプトと違うな。うーん。
俺は、コーヒーをすみやかに、置いて、でてきた。死んだ目で、コサブローが、手をこちらに伸ばしている。ごめんな。俺は、礼をして、パタン、とドアを閉めた。コサブローよ、すまん。お前は、俺の生活の犠牲になったのだ。心の中でそっと手を合わせた。
俺が洗い物をしていると、キッチンに、コサブローが逃げてきた。
「おま、俺、かくまえ、いえ、かくまってください。あのセリーヌ、やばい。俺のお腹にちゅっちゅっして、そのあと、ぶーって吹くんだよ。それをえんえんと繰り返して、怖いよ。異常だよ!」
あとから、足音がたたたたと聞こえてくる。
「コサブローちゅわん。どこかな?きゃわわ。」
ひー、俺までぞっと鳥肌たった!
俺はかくまえーっていっている、コサブローに無言でうなづくと、上に持ち上げて、そのまま、セリーヌに献上した。
裏切り者〜と足をバタバタさせながら、抱きかかえられて連れて行かれるコサブロー。なむー。君の尊い犠牲は、忘れないよ。
コーヒーのおかわりを、セリーヌの部屋に持っていくと、コサブローは耳をハムハムされていた。コサブローは、はっと助けを求めようとしたが、俺だったので、絶望の表情を浮かべた。
俺は一礼して、去ろうとしたら、呼び止められた。
「君は、ガウラン様をご存知のようだが。」
「はい、知っているも何も、いつもここにいらしていますよ。」
「実は、今、ガウラン様の話を書いているのだが。」
「あ、ああ、それは、ですね。うーん。」
「なんだ、歯切れが悪いな」
「ガウラン様、すごい人で、イケメンだったんですが、うーん。」
俺はガウラン様が来たら、紹介することを約束した。
「でも、今の状態のガウラン様じゃ、正確な話を聞くことは難しいと思いますがねえ。」
「とりあえず、紹介してくれたまえ。頼んだよ。」
俺は、一礼して、セリーヌの仕事の邪魔をしないように、その場を去った。どうも、コサブローのほっぺをちゅうちゅうするのに忙しいようなので。ドアを閉める時、コサブローがなぜか絶望した表情をしていた。ごめんよ、コサブロー、がんばれ、コサブロー!
次の日、たまたまいらしていたガウラン様に、セリーヌを紹介した。
「ガウラン様、こちら、作家のセリーヌ様です。セリーヌ様、こちら、ガウラン様です。」
俺は、二人を引き合わせた。
「はて、だれじゃったかのぅ?聞いたことがある名前じゃのぅ。」
「ほら、ガウラン様、あのガウラン様の出てくる小説を書いた人です。」
「わしが、出てる小説はたくさんあるからのぅ。」
「ラシーヌのためにの作者です。」
ラシーヌの名前が出た途端、ガウラン様のトラウマが再発したようだ。
「ぐ、ぐぐ。ラ、ラシーヌ。ラシーヌや。あれは、だんじてラシーヌではないわ。わしのラシーヌはいずこ!」
ぶつぶついいだして、それ以降反応がなくなった。
「おいおい、ガウラン様、どうしちゃったの?」
「いや、これには、長い話しがありました。」
そのあと、ガウラン様が、果てしないトラウマモードに入ったので、俺は、セリーヌを連れて、個室に戻った。
個室に入ったら、クッキーをはむはむしていたコサブローがえ、もう帰ってきたの?とばかりにこちらをせつない顔でみあげた。
セリーヌが膝をぱんぱん叩くと、すごすご、その上に乗ったコサブローは、ペロペロされるがままになった。うん、学習したね。
「もしよかったら、俺が、前に若きガウラン様を念写したので、それをご覧になりますか。」
「は?どういうことだ。」
ペロペロはやめずに、セリーヌが俺に聞いた。俺は事情を説明した。
「なるほど、そこで、ガウラン様と魔王の一騎打ちが見られるわけか。」
「ええ。ただ。」
「なんで言ってみろ。」
「これには膨大な魔力を消費しますので、ただで提供するわけにはまいりません。」
「ふむ。それでいかほどだ。」
「金貨1ま」「金貨10枚よ!」
後ろから、サーシャが首を突っ込んできた。ナイスアシスト。
「金貨10枚、貴重な資料が見られるなら、安いものだ。」
そして、イケメンガウラン様の上映が始まった。うん。やっぱり、あんまり食いついていないや。すごいのに。
「うん、まあまあ。でもガウラン様をもっと若く、イケメンにしよう!」
「ええと、あれ、十分イケメンだったと思うんですが。」
「えええええ?あれ、20台ぐらいだろ、せめて、10代半ばじゃん!一番いいのは10代前半じゃん!6〜9歳ぐらいでもいいけど」
うわ、ショタだ。やっぱり変態だった。
こうして、ガウラン様と魔女のエピソードは、金髪碧眼、10代前半に姿を変えられたガウラン様のお話になるのであった。そして、世のショタファンをうならせることになるのである。主に、細かい描写で。見てきたみたいに書かれてるって、実際見たんだよ!一部変更があるけどね。変態ってやだね!
余談だけど、あとでコサブローが、俺、そんなに嫌じゃなくなったかも、って呟いたのを聞いて、ちょっとコサブローが不憫になった。うーん。そんだけ。
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