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まったりゆったりした午後

亀更新で申し訳ありません。これからもおつきあいよろしくお願いいたします。

俺が、いつものようにハンモックに揺られ、思索にふけっていると、ミケが来て、俺のよこに寝っ転がった。


「うにゃにゃにゃ。タクトー。」


俺は、ミケの喉の下を優しくかいてあげる。そして、背中を撫でる。人間の格好をしていてもやはり気持ちがいいらしい。


しばらくそうしていると、ミケの頭の上に蝶がとまった。そのままでいると、いつの間にか、ひらひらと飛んで行ってしまった。普通、猫ちゃんは、結構蝶とかにエキサイトするものだが、ミケは、結構、寛容だ。蝶が鼻にとまってもじっとしておいてあげる。


そういえば、こんな日だったよなぁ、ミケとこの店借りたの。俺は、横で気持ちよさそうに日向ぼっこしているミケをみて思った。


あのころの俺は、自分が猫ちゃん以外召喚できないということをまだ信じられずにいたっけ。それで、仕方なく、開いたのが、この猫カフェだった。しかし最初はコンセプトを理解してもらえずに苦労したっけ。


俺は、ミケの頭を撫でた。うにゃうにゃと嬉しそうにミケが呟く。


すると後ろから大きな声でランちゃんが叫ぶ。


「あーずるいんだ。店長!ランちゃんも撫でて〜!」


おいおい、何をしてくれるんだ。このハンモックそんなに何人も乗れるようなもんじじゃないぞ。


しかしお構い無しにランちゃんが乗ってきた。反対の方にねっころがって、うししししーと喜んでいる。まあ、仕方ない。


そういえば、ランちゃんが遊びにきてくれるようになったころからやっと、この猫カフェも軌道に乗ったんだっけ。あのころは、もっと暇だったなぁ〜。


そういえば、あの青年、まだ旅を続けているのかなぁ。


俺が、店を開けて暇を持て余し、隣のランちゃんといつも双六で遊んでいたある日の午後、あの青年は現れた。


カラン、ドアがあく。


「こんにちは。」


おずおずと、20台前半ぐらいの青年が入ってくる。


「店、あいてますよ〜。」


すかさず、ランちゃんが立ち上がって窓際の席に案内する。ランちゃん、自分が双六で負けていたので、これでうやむやにする気だな。


青年は、キョロキョロ店を見渡している。


「ここ、どんなお店なんですか。喫茶店にしては、いろいろ置いてあるし。あそこの中央は、なんだか、床に座れるようになっているし。」


青年は、あちこちに配置してあるローソファーや、おもちゃや、猫ちゃんの家が気になっているようだ。


「ここは、猫カフェなんですよ。」


俺は、そばで寝ていた猫ちゃん達を指差した。


猫ちゃんを見ると、青年は目を見開いて、息をすった。


「こ、こんなに幻獣様がたくさん。うーん。」


青年はぶつぶつ何か言っている。


「うーん。猫カフェって本当に存在したんだ。」


俺はちょっとひっかかるものを感じて青年に聞いてみた。


「どこかで猫カフェについて聞いたことがおありなんですか。」

「実は、ここに書かれているんです。」


青年は、ボロボロの手帳のようなものを取り出した。


「実は、私は、考古学者で、あちこちで発掘をしているのですが、前に、これを砂漠の石の家で発見して。」


どうやら、青年がいうのには、昔、ここに、どこからか、迷い込んだ人がいたらしく、彼が、何度も書いていたのが、猫カフェのことだったそうだ。俺は、すわ、日本語かと思ったが、フランス語かドイツ語か、はたまた、他のヨーロッパの言語か、わからないものであった。残念。


「これを読むのには大変苦労したんですが、この猫カフェという文字が何度もでてきてくれたおかげで、なんとなくですが、読解に成功したんです。」


うーん、すごいね、猫カフェ。


「よくわからないのですが、この人は、アティライテと言うのでしょうか?どうも、外国に旅行した時にみた、猫カフェに取り憑かれて、自分も国で猫カフェを開く準備をしていたところ、ここに迷い込んでしまったらしく、最後まで嘆いておりました。」


かわいそうな話だな。


「で、そこには、猫の足の丸いもの?が素晴らしいとか、匂いが最高とか、謎のことが書かれていたのです。」

「いや、そこは実際に体験してみないとわからないでしょう。」


俺はミケに合図をして、青年の隣に座らせた。


「さあ、撫でてみてください。」


青年はおずおずと触ったが、いきなり、撫で心地がいいことに気がついて、楽しく撫で始めた。


「じゃ、次は、ちょっと肉球をぷにぷにしてもらいましょうか。」


俺は、ミケに横になってもらい、青年にぷにぷにしてもらった。


「次は、そのぷにぷにの匂いを嗅いでみて下さい。」

「あああああ、なんだか、甘いバターの香りがします。あれ?パンでしょうか?うわ、すごい。」


青年もすっかり、虜になってしまったようだ。


「堪能されました。」


3時間はたっぷり楽しんで、出て行こうとする青年に俺は声をかけた。


「ええ、この街を去るのが本当に残念です。」

「もう発掘はおすみでしたか。」

「ええ、明日、出て行くのですが、その前に街を歩いてみたんです。もっと早く知っていれば、毎日来れたのに。」

「まあ、またいつか来てください。」


青年はすると寂しそうな顔をした。


「それが、これから、隣の国へ行って、そこを中継して、さらに奥の国を回ることになっておりまして。」

「そうでしたか。」

「今度来られるのは、8年、いや、10年後かもしれません。」


おうふ。なんて長いスパンで物事を計画しているんだ。


「でも、みんなに、この猫カフェの素晴らしさを語ってあげるつもりです!」


青年は、晴れ晴れとした顔をして、去って行った。


それから、しばらく、青年が紹介してくれたお客さんがポツポツと来てくれるようになった。中には隣の王国から来たとか、もっとさらに奥の共和国からきたという人も、立ち寄ってくれた。うーん、青年、元気で発掘しているようだなぁ。それが、俺が、青年の無事を知る唯一の方法だ。また、再開を楽しみにしている。次は、青年は、中年に、俺は、青年になっているんだろうな。


俺は、10年後なんて、想像できないや、と、両側に寝ている、ミケとランちゃん、この店の初期メンバーの頭を撫でた。


何もない、気持ちのいい午後のことだった。

皆様のコメント、ブックマーク大変励みになっております。いつもお読みいただき、大変感謝しております。これからもおつきあい下さい。

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