料理コンテストは突然に
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「にゃあ、タクト〜、あんた、確かに飯はうまいけどさ、同じもののローテーションじゃ俺たちあきちゃうよ。にゃあ。みんにゃ!」
うーん、確かにそうだよな。俺が作れるものって結構限られているんで、同じものが果てしなくローテーションされるよな。
「魚は、ムニエル、蒸し焼き、煮魚、焼き魚。」「肉は、ステーキ、ホイコーロ、しゃぶしゃぶ、テリ焼き」「ご飯類は、おにぎり、チャーハン、カレー、オムレツ」「スープ類は、ビーフシチュー、クリームシチュー、ロールキャベツ」「パン類はサンドイッチ、ピザ」「粉もんは、おのこみやき、もんじゃ、たこ焼き。」「これをヘビーローテーションだもんな。」「あきた!」「俺たちは、ストライキをするぞ!」「おー!」
「ちょっと待ってよ、スイーツだってあるじゃん!」
「アイスとかき氷とケーキとクッキーぐらいじゃん!少ないじゃん!」
「そ、そうか。」
「労使交渉は決裂にゃ!」「待遇改善!」「職場恋愛反対!」「リア充撲滅!」
なんか、謎のフレーズが紛れ込んでいたが、それにしても、俺が召喚した猫ちゃんたち、注文が多いよな、あいからわず。
「わかった。こうなったら、仕方がない。料理人を雇うことにする!」
「やったー」「俺たちの勝ちにゃ〜」
手痛い出費だが、店を閉めることはできない。背に腹は代えられないか。
そこで、俺はシェフ募集の広告を打ったが、誰も応募がなかった。
「あんたが渋ちんだからよ!なにこの条件。これじゃ、皿洗いがせいぜいね。」
「ええええ、そんなに、今の賃金て高いのか!」
俺はなくなく、賃金をあげた。するとたちまち、5人応募があった。実際は、7人だったが、ケイトは雇うわけにはいかない。どうせ、ここで、タダで猫ちゃんをなでたいだけなのだ。そしてもう1人のアンは、うさみーるの店員なので、書類ではねた。残りは5人。そこで、猫ちゃんたちを審査員にした、コンテストをすることにした。
時間制限は、1時間。それで、おいしいものを作ってもらうのだ。
5人の1人目は、ジュール婆さん。この婆さんは、前までなんと、王国の専属コックだったようだ。
2人目は、リユーラ。彼も、街の食堂で働いていたが、独立の資金を貯めたいために、応募してきたようだ。新進気鋭の若手のシェフらしい。
そして、3人目は、ケチャ。まだ、15歳と若いが、やる気満々の女の子だ。
4人目は、レストランのオーナーのララだ。ララは、2号店を出店するための食事作りのヒントを得るため試行錯誤して、修行をしているようだ。
5人目は、キンデだ。50歳ぐらいの渋いオヤジで、船の料理人だったが、最近、丘にあがったらしい。
1時間の間に、ジュール婆さん、キンデは6品。リューラ、ララは5品。そして、ケチャは4品作った。そして品評会が始まった。
ケチャの料理はみんな微妙な顔をした。味がまったくないのだ。なんだこれ。味がないだけで、こんなに料理がまずく感じられるなんて考えもしなかった。これは、ダメ。
残りの4名はいずれも劣らぬ素晴らしい味だった。うわ、これは素晴らしすぎだ。特に、ジュール婆さんと、キンデは甲乙つけがたい。ただ、味の奥深さでジュール婆さんがすこしだけ上のようだ。
「タクちゃま、僕、ジュールさんのがいいにゃ!」
コタローは、ジュール婆さんが、いいらしい。
「うーん、タクしゃま。僕、キンデがいい。」
なるほど、コジローはキンデか。
「ふ、先輩方、素人だな。俺は、ケチャっすよ。」
おお?コサブロー。どうしてだ?
「みてくだせえ、あの腰つき。たまんないでしょ!むしゃぶりつきたくなるでしょう!」
誰だ、こんなバカを審査に加えたのは。コサブローは、コジローに猫パンチを食らってのびた。悪は滅びた。
「お父様、私は、リューラにすべきかと。」
カトリーナが言う。ほう、どうしてだろう。
「確かに、ジュール様もキンデ様も素晴らしいです。まさに、文句のつけようのない味付け、盛り付けです。しかし、これからの、伸び代を考えるとどうでしょう。この2人は完成されすぎています。しかしリューラ様はこれからの人。このまま伸びれば、2人を超えることすらできるかもしれません。」
ほほー。いい意見だ。
色々取りまとめた結果、キンデが1票差で1位だった。
「キンデ様、明日から来られますか。」
「ああ、いいともよ、それにしても1日金貨2枚、本当にもらえるんだろうな」
「ええええ、あれ、1カ月のつもりだったんですが。」
「なんだと?そんな金ではウェイターも雇えんぞ!」
俺が考えた以上に経済は、シビアなようでした。
みんな、1日、金貨2枚だと思っていたようで、ぷんぷん家路についてしまいました。
残ったのは、ケチャ1人。
「ごめんよ。君も間違えたくちだね。俺たちが出せるのは1カ月金貨2枚なんだ。」
「それで結構です。大体、私、お金目当てできたわけではありません。」
「へ?」
「私、店長さんにひとめ惚れで!私と付き合ってください!」
「お断りですわ!」「ずうずうしい!」「とんでもない、泥棒猫にゃ!」
お前らどこから現れた。
「店長様に、たくさん奥さんがいることはしっております。私も加えていただきたくやってまいりました!奥さんにしてもらえるまで、ここを動きません。」
俺はにっこり笑って、彼女をドアから押し出して、ドアを閉め、施錠した。
なんてこった。
その夜、俺はトイレにたったついでに、そっとドアを開けて見た。
「ここを動きませんと申しました。」
まだいた。しかたない。
俺は、店の中に入れて、彼女にコーヒーをいれてやった。
「こういうところが好きなんですの。さ、私を奥さんに。」
「奥さんはともかく、じゃ、雇ってあげるから、明日から通って。」
「いやです。住み込みじゃなきゃ。」
「ええと、それだと金貨1枚しか出せないけど。」
「それで結構です。」
俺は、なぜか、料理人を雇おうとして、やっかいな妻候補を一人増やしたようだ。
その2日後、味がないという理由で猫ちゃんたちは俺に白旗をあげて、俺が料理当番に復帰したのだった。だったら、最初から、文句言わないで欲しかったよ!
なぜか、ケチャが貧乳なので、喜んだ人が若干名いたようだ。
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