神々の思惑
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ターラは不老不死の突然変異体であった。存在意義はわからない。ターラは不老不死であったが、別段天才というわけではなかった。それでも、長い間をかけて、膨大な知識を手に入れた。
ターラは、天才たちと交流し、いろいろ学んだ。そして、その過程で自分が絶対天才にはなれないことを知ったが、そのことが嫌ではなかった。人間には、こんなにも、可能性がある。それを知れただけでも嬉しかった。
そして、ターラは、多くの子供を産んだ。彼女の子供たちが、同じ性質を受け継ぐことを祈りながら。しかし、普通よりは長生きであったが、誰一人として、彼女のような不老不死には生まれてこなかった。すっかり年を取ってしまった我が子をその手にかきいだく。
「お母さん、し、にたくな、い。ど、どうして僕、お母さんみたいに、ならなかったの、か、な。先に死ななくちゃならないなんて。どうして、お母さんはいつまでもわかい・・・・の・・・・・・」
涙が一筋子供の目から流れ、地に落ちた。それを見て、子供を作ることはやめてしまった。我が子を見送るほど辛いものはないと知ったからだ。ターラは悔しかった。理不尽である。なぜ、彼女だけが永遠の時を生きなければならないのか。
ターラは、仙人のような隠遁生活を送るようになった。いつしか、彼女は賢者と呼ばれた。時々、彼女を魔王を倒すためのパーティーに入って欲しいという誘いがあった。最初のころは興味があって、参加した。魔王が不死かもしれないという期待からだ。しかし、魔物と呼ばれる生き物も、少しは長く生きられるようであったが、彼女のような不老不死とは程遠い、脆弱な存在であった。彼女は落胆し、二度と、魔王征伐には加わらなかった。
それから200年ほど経ったある日、精悍な若者が会いにきた。ルーバートと名乗った彼は、勇者であった。そして、なんと神々と戦いたいということを告げた。今は、神々へ会うすべを探しているとのことであった。そこで聞きつけた伝説の賢者に会いにきたという次第だ。
2人は旅に出た。終わりのない神を探す旅だ。神々への道は遠く、険しかった。その途中途中で、彼は多くの人々を救い、そして感謝された。知らず知らずに、魔王を倒したことすらあったのだ。しかも2回も。
しかし、その終わりない旅も、終わりの日がやってきた。80歳になったルーバートは、病の床についていた。必死に看病するターラ。しかし無情にも最後の時が訪れた。
「ターラ、君はいつまでも美しい。しかも、出会った時のままだ。」
苦しげにルーバートは話し続けた。
「君にあった瞬間、僕は、恋に落ちた。君を愛している。愛している。愛して・・・・・・」
ターラの髪を撫でていた手が力なく、落ちた。これが、英雄ルーバートの最後であった。
ターラは激しく後悔した。何度か求められたが、けして、英雄ルーバートとの子供はつくらなかった。ルーバートほどの男性だ。子孫を残す義務があった。しかしルーバートはターラへの愛を貫き、そして、自らの子供を抱くこともなく、むなしく死んでいったのだ。
ターラは後悔するとともに、神々を恨んだ。そして、研究を続けていった。今や、神以上の力を得た。ターラはそう確信した。
ある日、次元振動が起こり、ターラが設置した結界は簡単にすり抜けられてしまった。どのような術式かはわからない。しかしターラが設置した極めて高度な結界が破られたことに、ターラは少しだけ驚いた。動揺すらしていたかもしれない。しかし、自信はゆらがなかった。神をしとめる準備はできている。
そして、目の前に神が現れた。ターラはありとあらゆる攻撃をしたが、全て神をすり抜けるだけだった。この長い年月に準備した攻撃が全て無駄であったとは!
「強い力を感じてきてみれば、どうやら、お前は、自然に生まれた神らしいな。」
「神?わ、わたしが?そんなバカな。さあ、ふざけていないで、わたしをしとめるつもりでかかってくるがいい。」「いや、神々は、戦ってはならないのだ。」
そして、神は、この世の真実をターラに見せた。ありとあらゆるものをそれこそ惜しげなく開示したのだ。ターラは真実を知り、崩れ落ちた。
「さあ、一緒に行こう、やることは山のようにある。そして、時間はあまりにも限られている。」
神がターラに触れると2人とも輝き始めた。そして、ターラは知った。人類に残された時間は
あまりに短く、ターラの仕事はあまりに膨大であると。
そして、2柱は、シフトした。
時間を遡ると同時に、ターラに関わった様々な人々が再び生き返り、微笑んだ。ターラの人としての生命はここで、終わりを告げた。それをターラは、はっきりと知った。時を遡り、そして別の宇宙へと2柱は消えた。
アテナ様が見せてくださった記憶は、あまりにも生々しく恐ろしく、悲しかった。
「見たでしょう。無限ではあるけど時間は限られている。」「私は、カトリーナがスミスに嫁ぐのは賛成。」
アルテミス様が言う。
「鍛治の神もいるんだから、人形の神がいてもいい。」
どうやら神々は、2人の結婚に賛成のようだ。俺はため息をついた。
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