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再び神々との闘い。〜原初の時へ〜

いつもありがとうございます。

イーブは、ついに神々の秘密を暴こうとしていた。長い歳月がかかり、多くの人々が、プロジェクトの完成を見ることなく、死んでいった。あるものは、しかし、自らをデータ化し、肉体を捨ててプロジェクトに貢献した。そして、時の方舟は完成した。


神々の秘儀とは違い、そこには厳然とした質量があり、そして、なにより、物質が存在した。物質を動かすには、エネルギーが必要であった。ダイソンスフィアを使用してさえ、時を遡るのは一方通行になるはずであった。このエントロピーが均質化しつつある死にかけた宇宙では既にエネルギー自体が枯渇しようとしていた。


そんな中、量子コンピュータを駆使し、設計されたこの時の方舟は、人類最後のプロジェクトの一つとして、過去に飛び立とうとしていた。この後、人類は、ますますエネルギーがなくなり、窮乏した生活を強いられるだろう。そのため、起きていられる人々は限られ、皆、スレートの中に記憶を移し、寝なければならない。永遠の時を耐えうるように設計されたスレートではあったが、しかし、起こすためのエネルギーがなければ、一旦休止して起きられるという保証はないのだ。


未来へ向かった兄弟船プロメテウスとは違いこちらは、若い宇宙へ飛ぶ。途中で止まるだろうが、途中で、エネルギーを若い太陽から補給する予定だ。


イーブは、プロメテウスに乗船したラムダの兄弟ミューを伴い一方通行の旅路へとついた。最後に、ダイソンスフィアに覆われた弱々しい太陽を仰ぎ、その周りにある、人類の構築物をみた。数万年前までは、栄えていた共和国も、見る影もない。涙がこぼれるのを感じ、イーブは、過去へと旅立った。


立体スクリーンには、外の状況がほとんどラグもなく映し出された。どんどん、若返っていく銀河。光が一つ、また、一つと復活する。50億年遡ったところで、船を停止させる。エネルギーが枯渇する前に、補給が必要であった。眼前には、建設中のダイソンスフィアが広がっている。まだ稚拙な作りではあるが、ダイソンスフィアであることは間違いない。銀河間のネットワークも移動経路も、不完全であるが構築されつつあった。


銀河から銀河への交易船がひっきりなしに飛び交っている。ここはまだ活力のある宇宙なのだ。イーブがいたエネルギーが枯渇した世界とは大違いだ。イーブは急いでエネルギーを補給し、再び、始まりの時を目指したのだ。


始まりの時。そこで、イーブは、できれば、宇宙生成の謎を解き明かし、最後の方程式の穴を埋めて、宇宙を再生するつもりであった。そして、同時に、イーブは、神々の介入が必ずあると信じていた。あの謎で物理法則を無視した神々のエネルギーの根源に、この原初の現象が関係しているとイーブたちは考えていた。そこで、宇宙の最後を観察し、再生の鍵を見つけるプロメテウスと、原初をさぐる時の方舟に分かれて、神々との最終決戦に望もうとしたのだ。


物質に縛られてはいるが、神々に負ける気はしなかった。なぜなら、宇宙が若返ると同時に、使えるエネルギーは莫大なものになったからだ。これなら、神々をも対消滅させることが可能であろう。


もうすぐ、原初の時だ。そう思った瞬間、船が停止した。そして、目の前に、小さな老婆が立っていた。


「へえ、君にはそう見えるんだ。」

「お、お前が神か。」

「否定はしないよ。私は君たちが運命の神と呼ぶものだよ。」

「い、いったいどうやって侵入した?全ての経路は閉じられていたはず!」


冷静なイーブは初めて頭に血がのぼるのを感じた。


「どうして、人間を滅ぼそうとする。どうして、神以外の生命体は消える運命なのだ?」

「私たちは、むしろ救おうとしている方だがね。」

「嘘をいえ。もし、善意で人間を作成したなら、最初から死なないものとして作ったはずだ。我々はなんだ。神々の暇つぶしか?」


老婆は微笑んだように見えた。


「人間というものは不思議な考えをするものだ。まあいいこれを見るがいい。」


老婆は、イーブの中に飛び込み融合した。爆発的に知識がなだれ込んできた。


老婆はある時は少年で、ある時は少女だった。ある時は、男性で、ある時は女性、そしてある時は、猫であった。ある時は1人である時は3人だった。


そて、イーブは絶望的な事実を知った。


この宇宙を作ったのは神ではなく、神はむしろ、生命体が昇華され進化した集合体であった。他の宇宙を作った神もいたが、その神も別の世界の昇華した神らしかった。


そして、神は、死にかけた宇宙から他の若い宇宙へ生命体の魂を移していることを知った。今までやってきたことは、神々との戦いではなく、神々の仕事の妨害でしかなかったのだ。


恐ろしいまでの孤独と寂しさがイーブの心を埋めた。さざ波のように、悲しみがーブを浸潤していく。イーブの心の頑なになっていない柔らかい部分に寂しさが押し寄せ、イーブは、耐えられずに死を覚悟した。もう時間はない。未来もない。なぜならこの宇宙を再生するためには、他の若い宇宙と融合させ、新しい宇宙の未来を奪う必要がある。それこそが、再生の秘儀に他ならなかったのだ。


次の瞬間、イーブは、歓喜した。もはや、それはイーブではなく、神と呼ばれる何かの一部であった。


イーブは、時を旅した。宇宙から宇宙へと神々とともにわたり歩いた。時々、イーブと呼ばれる自我が発露することもあったが、大抵は、もう区別がつかなかった。そして、今は、ベッドで寝ている少年の横に立って少年を見下ろしている。


俺はベッドの上で目を開けた。そこには、運命の女神がいた。今度は少女だ。彼女は、ベッドの横に立っていたのだが、かがみこんで俺に口づけをした。


「運命の時は遠く、そして近い。人類には時間があり、時間がない。」


俺は。はっきり知った。この女神とも関係して、もっと神を生み出すようになることを。


運命の女神が掻き消えたあとも、俺は、闇に目を凝らして、滅びてしまった人類に想いを馳せるのであった。


皆様のコメント、ブックマークが本当に励みになっております。拙い作品ではございますが、これからもよろしくお願いいたします。

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