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オークションの日

リア充、滅びろ。うーん喉が痛い。みんなリア充(獣)のせいだ!!!

「旦那様、妾と一緒に、見本市に行くのです!」


王女がいきなり入ってきて、ビシィ!!!と俺に指を突きつけた。お前、人のことをゆびさすなよな!


「ついに今度は新作のドールハウスが展示されるのです!」


知ってる。昨日までそれに取り掛かっていて徹夜続きだったし。


「最近、全然音沙汰がないと思っていたら、このような新作が出てくるとは!」


うーん、音沙汰がなかったのは、ご神体作りで忙しかったから。その合間でやっと仕上げたから。


「しかもしかもです。同時に、家のメイドさん、執事さんのフィギュアも出るのです!」


いや、その服作ったの俺だし。細かい作業で目がいまだに痛いんですけど。


「それが、この王国の見本市で出品されるなんて!!!!」


いや、やる気はなかったんだけど、ご神体作りがほぼ終わって、後はラムダ任せだから、ついでの仕事だし。


「さ、ご主人様、いきましょう!!!!」


うーん、眠い。


しかし、俺は引きずられて会場へと向かった。どうしてこうなった。


会場は、新作の噂を聞きつけたドールファンでいっぱいだ。まあ、仕方ないよね。スミス殿のドール人気、ものすごいから。


「新作のドールが見られるらしいですわ。」「私、絶対手に入れますわ!」「そういえば、今日、オークションで、新作のドールハウスの限定版が1点ドール付きで売り出されるそうですわ!」「絶対手に入れなくては!」


まあ、王女様だからな、手に入れちゃうんだろう。しかし、この間までカフェの作業場にあったとは知らないだろうな。そういえば、細かいレースなんか、クモ山さんの糸だぜ!スミス殿もこっちゃって、カーテンもドールのハンカチも下着までもがクモ山さんと子供たち作の糸だ。やれやれ。おかげでクモ山さんたちには、たくさん報酬を渡さなくちゃならなかったよ。


さすがに素晴らしい見本市だ。あ、やばい、向こうからライバル作家のレティーがやってきた。俺、あの人苦手なんだよな。悪い人じゃないんだけど。


王女も、レティーを見て顔が引きつっている。それゃ、セオドアと同じような体つきの大男が、赤いワンピースと金髪のウィッグじゃ、引くだろ。


「あんらー、タクトちゃんじゃないのー。あんた、なんで、向こうに行かないのさ。スミスさん、忙しそうだったわよーん。」


こいつが変なこと言う前にごまかそう。


「あ、レティー様、ご紹介いたします。こちら、私のフィアンセで、この国の王女でもあらせられるマーガレット様です。」

「おや〜おや、おや、おや〜!タクトちゃん、お、王女様とご一緒なのーすごいわ〜、王女さま、私、レティー・デ・ラソルエル・トーヤッテでございます。」

「うむ。知っておるぞ。トーヤッテ公爵。いや、そう呼ばれるのは、嫌だったんだっけかな。」


お、お前、公爵なのになにやってくれてんですか。単なる変態だっとずっと思っていたよ。


「ほほほほ。これからもよろしくお願いいたします。これは、私の、カタログでございます。」


お前、どんな分厚いカタログ、どっから出した。気のせいかもしれないけど、パンツの中から出したようなきがしたぞ!


「もちろん、もっておるとも。おぬしの可愛いお花さんアクセサリーシリーズは、私も集めておる。」


さすが王女様、なんでもご存知で。そうなんだよな。こいつのフィギュアは、イマイチだけど、アクセサリーは天下一品なんだよな。でも本人はなぜかフィギュアでやっていきたいようなんだけど。


「悪いが、これから愛しの旦那様とまわるでな。これからもよしなに、頼むぞ。あと、弟が泣いておったぞ。仕事が多すぎるとな。たまには手伝ってやれ!」

「お、おほほほほほほほほ。そそれでは。また〜。」


痛いところとつかれたのか汗を滝のように流して去っていったぞ。


「あやつ、人形の才能はないが、アクセサリーは天下一品。それ以上にすごいのが、領地の統治なのだが、そっちは弟に押し付けていきよる。困ったものじゃ。」


その時、鐘がなった。オークションの前に何か出し物があるらしい。


「皆様、お集まりいただきありがとうございます。我が王国が誇る吟遊詩人であり、今をときめくタクト様の弟子でもあるという歌手の方に今回はオークションの前の余興をお願いしております。では、どうぞ!」


は?俺の弟子?誰?ミリカじゃないしな。


「Hey, Yo. マイブロ、俺の魂の叫び、聞いてくれ、このくれ、な・い、に燃える俺の心、そして、この俺のところにきた、秋のころのたなごころの便り、俺を便りに、寒さの国よりの使者、それを見つめるのは拙者、俺のマイブロ、タクトへの誓い!地下、からの使者、死者、俺を騙すものは、隙間と隙間のニッチなフロウ!ニッチもサッチもいかねえ、俺へのブロウ!イエー!」


おおおおい!精霊王様、なにやっちゃってくれてんですか〜!みんなポカーン状態じゃないですか!もう〜〜〜〜〜!!!


俺に気がついた精霊王様は、親指を俺に立ててウィンクしたよ。もう〜!


そんなこんなのハプニングの後、オークションが始まった。


「では、オークションを始めます。まずは、レティー様の新作、雨の日の私。さあ、いかがでしょう!」


ゲ、あの私っていうのはレティか?雨の日の私というより、ゾンビになった泥人形っていうタイトルにした方がいいぞ。これは売れないと思ったら意外にも金貨4枚まで跳ね上がった。あ、ずるい。アクセサリー付きだったのか。あの人形、多分帰りにどこかで捨てられるな。いや、そんなことしないか。捨てたら呪われそうな造形だしな。


「くっ!金貨5枚!」


ケイト、お前なにしてんの!


では、金貨5枚で落札です。


ケイトは壇上に出て、金貨5枚を払って嬉々としてアクセサリーをつけると、階段をおりて行った。


「お、お客様、人形を!」


既にケイトは、消えていた。おお、その手があったか!


「え、えーーと、ちょっとしたハプニングがありましたが、あれは、騎士団のケイト様ですね。おたくまでお届けいたします。」


結局、呪いの人形からは逃れられなかったか。バチがあたったな。


オークションは、無事に進み後1点を残すのみとなった。そして、これこそが、今回の目玉の俺たちのドールハウスだ。


「さて、次は、もう紹介はいりますまい。最高のドール作家の新作、ついに、満を持して今、その姿を我々の前に明かしてくれます。新作のドールハウスです。どうぞ。」


ドールハウスの上に掛けられていたカバーが外されるとため息と賞賛の声があがった。


「ああああ、美しい。」「是非手に入れたいですわ。」「この限定版は無理でも、後で売られる商品は購入いたしますわ。」「どなたが、これを手に入れられるのでしょうか。」


そしてオークションは始まった。瞬く間に、金貨30枚に跳ね上がった。その時点で、ケイトやアンなどは、諦めたらしい。それにしてもアン、お前、どこに隠れていやがった!あ、ケイトの隣には、精霊王様の婚約者。そういうことか。精霊王様つながりで、ここに来たんだな。後で叱ってやろう!


王女様の完勝かと思ったら、とんでもない伏兵がいた。金貨50枚を予定していた落札価格は既に金貨200枚になった。


「では、金貨、200枚、さあ、いかがでしょう!」


「く、き、金貨、210枚!」


王女様、さっきまでは余裕で30枚づつあげていたのに、ここに来て10枚刻みか。


「も、もうお小遣いがないですわ!タクト殿、私に金貨100枚貸すのです!」

「むちゃ言わないでください。今金貨20枚しかありませんよ!」

「ぐぬぬぬぬ!」


向こうは代理人が余裕しゃくしゃくで受けている。


「では、こちらは、金貨300枚で!」


どよめきが起こった。このドールハウス、限定ものであるとはいえ、すぐ後から似たものをすごく安く売り出すのだ。それを知っているからこそ、みんな諦めたのに。


王女がガックリとうなだれた。降参のようだ。


俺たちは帰路についた。王女は、口を真一文字に閉じている。泣くまいと必死だ。俺は家の近くで誰もいない小さな広場で王女に座るように促した。


「泣きたければ、泣いてもいいんだよ、あれと同じものを作家さんから手に入れてあげるから」


すると王女の目からぽろぽろぽろぽろ涙がこぼれた。俺はそれを拭いてあげた。


すると、王女は俺にすがって泣き始めた。始めはすすり泣きだったが、ちょっと本格的に泣き始め、そしてじきにおさまった。


「そんなに欲しかったの?あれ?」

「それはそうじゃ。だってあれは旦那様の新作だったから」

「え?い。いつから????」


すると、王女は、抱きつきながら上目づかいで俺を見た。上目づかいと言ったが若干王女の方が背が高いきがする。


「この間、旦那様がハンモックで揺られて、めかけ共が次々に甘えに行ったのを見てムカムカしたから、作業場で落ち着こうと思ったのじゃ、そしたら、あのハウスがあったのじゃ、作りかけで」

「そうだったんだ。でもフィギュアは」

「もうわかっておる。スミス殿じゃな。旦那様の交友関係は把握しておる。城のことがわかってから、すべてがつまびらかになったような気がするのじゃ。なぜ、旦那様たちが、ご神体を作っているのかも。旦那様たちの腕を見込んでのことだとわかったのじゃ」


まあ、それだけじゃないんだけどね。


「いずれにせよ、あの旦那様のすばらしい作品。手に入れたかったのう。」

「まあ、似たもの、作ってあげるから」

「いや、いい。ここに本物があるからの。」


そして、王女は俺の唇にキスをした。長く、長く続く濃厚なキスだ。


「ふぅー」


王女の顔が赤い。


「何度もいうが、みんなは、側室じゃ。そして、妾が正妻じゃ。お主、あのサーシャのキスを受けた時、起きておったじゃろう!」


俺は狸寝入りを見透かされてドキドキした。


「妾は夜中に何度も起きて、旦那様を観察したからのう。すべて知っておる。本当に寝ているかどうかなど、知るのは朝飯前じゃ。まあ、その間、妾もちゅっちゅさせてもらったしの。他のみんなもちゅっちゅしておるぞ。」


そ、そうだったのか。俺はゲンナリした。


二人でならんで座ってると、王女が俺の方に頭をコツんと倒してきた。


「これからも末長くお願いするぞ。」


うーん、しかし俺は、いろいろショックで、なんだか疲れてゲンナりしていた。


家に帰ると驚きが待っていた。あのドールハウスが届けられていたのだ。そして、手紙が添えられていた。


『マーガレットよ、愛する娘よ。この素晴らしい芸術品を、誕生日に送る。パパより』


王様、あの代理人立てていたのは、あんたかい!


「お父様、私の誕生日、再来月なんだけど・・・・・・」


王女がポツリと呟く。それすらも間違っていたのかい!


俺が作ったものが、なぜか俺の元に返ってきました。そして、オークションの収益金で、孤児院での食事がたいそう豪華になったそうな。うーん、めでたしめでたし?


皆様、いつもお読みいただき、ありがとうございます。これからもよろしくお願いいたします。

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