猫の行進
風邪のため更新がままなりませぬ。更新ならぬ行進でお茶をにごしまする。
本当に、ごくたまにであるが、俺たちの猫カフェのプロモーションのために、『猫の行進』を行っている。普通の猫カフェなら、ティッシュ配りとか、ちらしを配るとか、広告を打つとかするのだろうが、俺たちのカフェの猫ちゃんたちは、俺の召喚獣なので、俺のお願いを聞いてくれるのだ。そこで、俺たちは、街を行進して練り歩くという『猫の行進』で、宣伝するのだ。
「はぁ?それって、職務規定に入ってたっけ?これ、残業手当もらえんスか?え?え?へぶし!」
コサブローが相も変わらず文句をつけてコジローに張り倒された。
「す、すいやせん。やります。やります。」
どうせこうなることはわかっているのだから、最初から文句を言わなきゃいいのに。
で、新米のコサブローに俺たちはフォーメーションについて話して、練習を始めた。
猫の行進の当日、俺は、猫ちゃんの金太郎飴が3つ入った小さな袋を大量に用意して、行進にのぞんだ。
みんな、綺麗な隊列をつくって行進を始めた。行進にすぐ気がついた街の子供たちが寄ってきた。大人たちも興味ぶかそうに覗き見ている。俺たちは、もう何度かやっているので、街の人たちは、それほど驚かないが、街に観光や仕事で来ている人たちの中からは感嘆の声が聞こえる。
「うわ猫ちゃん、猫ちゃん」
「おい、触ったらだめなんだぞ、見るだけにしておくんだぞ」
「わかった、にいちゃん!」
こんな声が猫ちゃんを取り囲んだ子供から聞くことができる。尻尾をピンとたてて、綺麗に足並みをそろえて、俺たちは街を練り歩く。今回は、ミケが笛を、ミリカが歌を、そしてサーシャが竪琴を、ランちゃんが、太鼓を叩いて一緒に歩いているので、ちょっとしたカーニバルのようだ。そして、俺たちのメインの出し物の時間になった。街の噴水がある広場にくると、俺たちは立ち止まった。ここで、俺たちは、フォーメーションを見せるのだ。
号令で、ジグザグに動いたり、2列に分裂して、途中から合流、それから3列になるなど、多様な動きを見せる俺たちに、感嘆の声があがる。
「うわ、さすが幻獣様!」「すごいの猫ちゃん!」「コタロー様、すごい!」「コジロー様ラブ!」「コサブローちゅわああん、ペロペロ」「ランちゃん、ハアハア!」
変な声もしているが、まあ無視するのがいいよね。
そして、フィナーレは、猫ちゃんのサーカスだ。といっても、猫ちゃんが互いの体を飛び越えたり、空中でくるり、と回るぐらいだが、娯楽に飢えている人々は、拍手喝采、おひねりなども飛んでいる。そこで、俺たちは、子供達に、猫の飴を配りながら、宣伝するのだ。
「私たちは、あちらの角のお店で、猫カフェをやっております。」
「おいしい喫茶店と、猫ちゃん達がみなさんをお待ちしております。」
「ぜひおたちよりください。」
「いろいろなショーも開催しております。」
それを聞いた、街の人たちが、やんやとわく。
「知ってるぞ!」「女性メニューが充実しているのよね。」「ミリカ様のコンサートもあるし」「クラシック冒険者飯は最悪だけどな。」「コジローさま、ラブ」「ランちゃん、ハアハア」
うーん、軽くクラシック冒険者飯がディスられているような。それより、ランちゃん働かすのやめようかな。
その日の午後、猫の行進効果でいつもより多くのお客様にご来店いただいて、サーシャはほくほく顔だ。
その時、カランと、小さな女の子が入ってきた。手に、銅貨を握っている。
「これで、猫飴ほしいの弟にもあげんの」
俺に、銅貨を差し出した。多分なけなしのお金何だろう。俺は、銅貨を返して、猫の飴を2袋渡してあげた。
「1袋でいいの」
「これは、お姉ちゃん、君の分だよ。さあ、こっちに座って。」
たまたま店にいたるーたんも読んで、一緒に座らせた。最初は、緊張していた女の子も、同じぐらいの歳のるーたんがいて、すっかり緊張がほぐれたらしい。
「あたしるーたん。」
「マミなのよろしく。」
「よろしくん!」
そして2人は楽しそうにおしゃべりを始めた。俺はクッキーとミルクを2人に出してあげた。
「これ、ぽちなの」
「よろしくね。ぽち」
ぽちも撫でられて嬉しそうだ。
こうして、俺は新しい小さな顧客を手に入れたのであった。暖かい午後のことであった。
お越しいただきありがとうございました。これからもよろしくお願いいたします。




