幸せな午後
いつもお読みいただきありがとうございます。
クモ山さんたちのおかげで今日は久しぶりの猫カフェだ。これは、嬉しい。カップを拭いたり、グラスについたくもりをとったりと、普段できない仕事をゆったり自分のペースですることは喜びだよね。
俺が、ボケーっとコーヒーを淹れていると、ケイトがコサブローを撫で終わったようだ。肌がつやつやしている。大満足したようだ。
「くっ、タクト殿。これから騎士団に行って仕事をせねばならん。また夕方からくるからよろしく頼む。コジロー殿が最近おらぬが、コサブロー殿のおかげで、ほれ、この通り。」
ケイトがコインを高く上げて手刀で真っ二つにする。お前、大道芸人にでもなった方がいいぞ!
「この充実ぶりだ!くくく!午後もよろしくコサブロー殿!」
コサブローの目は完全に死んでいる。それはそうだろう。あの恐ろしい猫可愛がりを一身にあびては身が持たない!コジローでさえ逃げるぐらいだからな。
この時間は、もう誰もいない。もう少しすると午後からの常連さんが来るだろうが、この時間は我々の遅いお昼時だ。
コサブローは立ち上がって泣き言を言い始めた。
「なあ、もう助けれくれッス。このままあのゴリラ女に撫でくりまわされたら死んでしまうっス!」
「あんた。そんな泣き言ばかり言ってないで、お昼でも食べな。そうじゃないと、夕方から大変だよ!」
クモ山さん、いいことを言う。その時、ドヤドヤと、クモ山さんの子供たちが、神殿からお昼を食べに帰ってきた。俺は皆に声をかけた。
「おう。皆んなお疲れ!さ、みんな。メシ食おうぜ。」
「何ムシしてんスか!それに、おばちゃん、ふざくんなッス!俺は、こいつに話してるんス!」
皆完全にスルーして、裏のテーブルに皿を並べ始めてる。
「今日、何かな。」「母ちゃん、タクト様から肉もらってくれた〜」「えー、ぼく、魚がいいよ〜」
ガヤガヤしてる。
「てめえら、俺のこと、ムシすんなッス!」
「コサブローよ!」
「な、なんスか!」
「お前、今食べないと、午後からケイトのかわいがりに耐えられんぞ。さ、食べよ。」
「わ、わかったスよ!」
俺たちは、もくもくと、食べた。
食べ終わったら、俺はほうじ茶を淹れた。これは子グモたちのお気に入りなので、俺は結構いい茶葉を使ってあげているのだ。
「うー、タクト様、これおいしいですよ。」「いつもおいしいお茶をありがとうございます!タクト様」「あー肉、うまうまでした!」「魚もありがとうです!」
コサブローはまだちょっとスネてる。
「だいたい、なんすか。おばさん、俺の、あんたの先輩ッスよ!うやまうべきでしょ!」
「あのなあ、コサブロー。クモ山さんも子供たちもずっとお前より前からいるぞ。お前が後輩だ!それに、こいつら、クモだからな。本気になったら、お前なんかイチコロだぞ!」
「は?は?は?クモなんて、俺の猫パンチでペちゃんこッスよ!ペちゃんこ!はっ!」
すると、クモ山さんの子供たちがたちあがって話し出した。
「おま、さっきからタクト様に無礼だよ!」「ちょっと教えてやっかこのアホに!」「うるさいからつりさげちゃお」
コサブローここでやめときゃいいのに、アホだから立ち上がった。
「はぁ?はぁ?やれるもんならやってみるッス!」
シュシュシュ、と猫パンチをエアーで繰り出すコサブロー。あ、こいつ詰んだな。
子供たちが巨大なクモに戻った。それを見て、凍りつくコサブロー。バカは死ななきゃなおらない。まあこいつの場合、死んでもなおらないだろ。
「う、うそだろ。」
逃げまわったが、追い詰められて、糸で捕獲されたコサブローは、天井から吊り下げられた。目が死んでる。そのしたで、俺たちは、おいしくお茶をいただきました。
夕方になって、やっと解放されたと思ったら、ケイトに捕獲され撫でくりまわされて、死んだ目をしているコサブローに向かって俺は合掌したのであった。ナムー。
コサブロー以外、みんな幸せでしたとさ。




