タクトの世紀の大発明
あらじゃけ:荒巻じゃけと勘違いされやすいが、太陽系第3惑星の日本という小さな部族が製造している製品ではなく、こちらは、デメロリス系の第7惑星で、2年に1度取れるあらじゃの背中に生えてくる和毛のことである。
これを手にするものは、限りない幸運と、財産を手に入れることができるという、プロキオンにも伝わっている伝説である。実際は、そんなこともなく、単に運が2%程度上昇するもので、お守りとして使われることが多い。ただし、臭いがきついので、身につけると、異臭がする。そのため、最初から異臭がする生命体をデメロリスでは、あらじゃけってると揶揄して使われることが多く、けして、いい物であるとは考えられていないようである。
エンサイクロペディアギャラクティカマグナム第4版による
お、俺はすごいものを作ってしまったのかもしれない。なぜか、偶然にも俺は世界を劇的に変えてしまうものを作ってしまった。もし俺が、元の世界にいたら、皆に讃えられ、大金持ちになっていたであろう。そして、この国では、もしかしたら俺は王にすらなれるかもしれない。俺は、この薬を50ゴールドで限られた顧客にだけ販売することにした。多少高くても払ってくれるであろう。それに、このことについては値段などについて、誰にも言わないように念を押すことにした。
カラン、顔をフードに隠した明らかに怪しい人が入ってきた。お、これは俺の作った薬を求めてのことか。俺は相手を見つめた。
「鳩」
「ぽっぽ」
合言葉も完璧だ。
「どうぞ、こちはへ。」
俺は、怪しげな男を二階に招いた。男は、俺が後手にドアを閉め鍵をかけるとフードを下ろした。
「これは大臣。お久しぶりでございます。ごきげんうるわし」
「御託は良い。それより、薬の噂は本当なのだろうな。」
「もちろんでございます。ただ、お高くつきますし、それに副作用が……」
「申してみよ。」
「これを飲みますと、望む効果が得られます。しかし、耐え難いかゆみがあの、その、」
「はっきり申してみよ」
「かゆみが局所にあらわれます。」
「なんだ、そんなことか、それで、世界を手にすることになるなら安いわ!いくらだ!」
「は、あのお高いのですが、ご、ご、」
「500ゴールドか。そら!」
50ゴールドの薬で、一気に500ゴールドを手に入れてしまった。くくく、これでかったな。
次の日、激しい局部のかゆみに堪え兼ねた大臣が再びカフェを訪れた。
「こ、こんなに痒いとは、な、なんとかせい!公務にもかゆくてさしさわるわ!」
「えー、そんなこともあろうかと、2つここに薬があります。」
「そ、そんなものがあるなら初めからださんか。で、ど、ど、どうちがうのじゃ!」
「こちらの薬は、かゆみを完全に押さえますが、副作用があります。」
「ど、どんな副作用じゃ。」
「最初の薬で得られたものを失ってしまいます。」
「これを失うだと!と、とんでもない話じゃ!で、もう一つは?」
「かゆみは多少残りますし、つけ続けないとかゆみが消えません。しかし!最初の薬で得られた効果は持続します!」
「く!さ、最初から、その算段か、くそ、金の亡者め」
「めっそうもありません。さ、いかがですか。」
「い、いくらじゃ!」
「こちらはお安くて、1瓶金貨1枚。ただしです。3日に1瓶必要です。」
「く、し、仕方ない。買うから、50瓶ほどよこせ!」
「まいどあり」
俺は、大臣を見た。大臣の風貌は、大きく変化していた。前はなかった髪が黒々と頭を覆っている。このシステムのすごいところは、継続して俺からこの薬を買わなくてはならないところだ。しかも、髪だけに、結構、生やしたいという人が多く、また、このシステムに業をにやす人は、道連れに、他の人に話すのだ。
「鳩」
「ぽっぽ」
「薬を」
「わかっております。おお、これは大司教殿!」
俺の顧客は増えるばかりだ。しかし、ある日、最後の会いたくない人物がやってきた。
「婿殿!」
「お、王様」
「苦しうない。おもてをあげよ。さ、朕にもその魔法薬とやらを買わせてもらえんかな。」
「恐れ多いことです。もちろん献上いたしまする。」
「姫は良い夫を持った。」
「もったいないお言葉でございます。」
そして、俺は、このかゆみ止めのレシピを無料で公開することにした。どこに行っても、おれは、こっそり股をかく偉い人を見たからだ。股をかきながら演奏を続けるロック歌手や、歌いながらこっそりかきつづけるオペラ歌手もみた。
悲惨だったのは、王宮で、ほとんどの偉い人が黒々とした髪をして、こっそりとしかも、ばれないように、股をかいているのだった。まあ、バレバレなんですが。それも王様を筆頭にだ。これはちょっと耐えられないでしょ!
俺が作りたかったのは、育毛剤じゃなくて、花の成長剤だったんだよな。体、かゆくなるわけだよね。さ、寝よ寝よ。ぐぅ〜。
いつもありがとうございます。