コジロー奮闘す!
あらすじ:それは夏の日だった。次の日に引っ越して行ってしまう幼馴染のよっちゃんと僕は、夏祭りに出かけた。僕は、ずっと、このまま、よっちゃんとは一緒に大きくなるんだろうな。一緒に卒業するんだろうな、と漠然と思っていたのに、急に、おじさんの仕事の都合で引っ越すことになったのだ。その瞬間、本当に目の前が暗くなった。小学校3年生の夏の出来事だ。
僕はこの祭りが終わらなければいいのに、終わらなければいいのにとずっと思っていた。しかし無情にも花火が始まってしまった。夜空を彩る美しい色彩も僕の目には入ってこなかった。
花火が終わって、僕はよっちゃんの手を取った。これがもしかしたらよっちゃんとの最後の日かもしれない。そう思うといてもたってもいられなかった。その時、目の前を蛍が横切った。弱々しい光の軌跡は、しかし、花火より美しく尊いものに僕には感じられたのだった。
「お、コジロー様子はどうだ。」
俺は、コサブローの教育をコジローの押し付けてしまったため、ちょっと気になってその日の夜コジローに尋ねてみた。
「ん、だいじょうぶ」
でも、コタローの方を見ると何かいいたげだったので聞いてみた。
「コサブローはどう?ちゃんとやれてる?」
「タクちゃま。あれは時間がかかる、と思う。」
ちょっとコタローの歯切れが悪い。俺は心配になって次の日、仕事の合間にこっそり見にいくことにした。
すると、仕事もせずにうっとりと、猫カフェで女性に撫でられているコサブローの姿があった。うーん、こいつ。
「にやー(へへへ、もっと撫でろや。崇めろや。すごいやろ俺、すべすべだべ!)」
ケイトがヨダレを垂らしながらコサブローを無心に撫でている。
「にゃにゃー(気持ちいいぜ。おお、胸がふかふか。こいつ、デカイ。最高—だぜ!)」
俺は頭を抱えた。こいつ、仕事やる気あるんだろうか??
すると、コサブローの方に人化したコジローがととと、と歩いて行き、ケイトからコサブローを取り上げるた。
「あああああ、私のネコちゃん!」
ケイトが悲しげに手を伸ばすと、代わりに目が死んだ猫ちゃんに戻ったコタローをコジローは押し付けた。
「ふへへへへ。ふぇ」
ケイトは満足してコタローの上にヨダレをたらして、悦にいっている。
コタローは、助けて、というような目でこちらを見る。すまぬ、コタロー!
裏に回ると、コジローは、コサブローの人化を促した。すると、そこには、ちんちくりんのひねくれた目をした子供が出現した。
「さ、仕事しう!」
コジローが促すとしぶしぶ、コサブローも仕事を手伝う。コサブローはるーたんより少し身長が低く、ちょっとヨタヨタしている。失敗しても、コジローはあたたかく繰り返すように促す。いや、美しい兄弟愛だ。
心なしかうんざり、げっそりして見えるコジローに心の中で手をあわせると、俺は仕事に戻るのであった。コタローよ、コジローよ。君たちの尊い犠牲はけして忘れない!
いつもありがとございます。これからもよろしくお願いいたします。