ブランド化への第一歩
いつもありがとうございます。
「うーん、ぼ、ぼくはあまり賛成できないんだなぁ」
スミス殿は俺の提案に難色を示した。
俺は、王女にこのミニチュア製品の広告宣伝塔になってもらおうとしたのだが、スミス殿は、もっと大衆に膾炙した製品にしたいので、王女を使うのにはためらいがあるようだ。
「うーん、でも王室御用達ということで、市井の人たちも欲しがると思うんですけどねえ。」
「な、なるほど。そういう面はあるかもね。」
今はまだいいが、やはりこれから手広く売るのには、ブランド力があった方が売れやすいのではないかと俺は思う。特に、スミス殿のように、あらゆる人に届けたいと考えるのであれば、なおさらだ。それに、俺にはさらなる戦略があった。
「そろそろ、きちんとしたカタログを出す必要があると思います。それで、王女と同じ格好をしたフィギュアを作って、カタログに載せるんです。そして、そのフィギュアは、特別な日に特別な人への贈り物になるとして掲載するんです。」
カタログは前からあったが、全ての製品を網羅したカタログはまだない。製品には、番号がついているので、どれを持っているか、わかるようにはなっているが、どのような製品が出回っているのか、把握しているのは、スミス殿と俺ぐらいなものであろう。それに、これから絶品が出てくることを考えると、必要なものであると俺は考えた。
「で、でもハンドメイドだと金貨1枚はかかってしまうよ。高すぎるんだな」
「そこで、我々のシリーズの1つ1つに応募券をつけて、それを15枚、いや、10枚あつめると、銀貨3枚でこのフィギュアを作ってもらえるようにすればいいんですよ。」
実はそれでも採算はギリギリだろう。それでも、大切に1つ1つ買ってくれるお客さんに対しての報酬だと考えれば、安いものだ。そういう顧客の裾野を広げるためにもこれは、必要ではないかと思う。
「それでも、相当な量なんだな。うーーーん。」
「そこで、それをラムダにやらせるんですよ。ラムダなら、1度やったことを繰り返すのは、お手の物。最後の調整だけをチェックすればいいんです。」
ラムダの再現性は、職人の技すらトレースしてしまうぐらいのレベルになる。だから、最終チェックさえすれば、いけると俺は踏んだのだ。
「な、なーんかアコギな商売のような気がするんだな。」
「何はともあれ、見切り発車でいいからやってみませんか。
王女に話したら、自分のフィギュアが作ってもらえるということだけで、嬉しがっていた。まあ、結局デザイナーが誰かは明かさなかったが、カタログに王女が載って、売上がさらに加速したのは言うまでもない。表紙に、王女と同じ格好で微笑むフィギュアが王女の手のひらに載っているカタログは、銀貨1枚という値段にしたのにもかかわらずものすごい部数が出た。
でもその後で、信じられないほどの注文が入って、3日徹夜することになったのは、内緒だ。
これからもよろしくお願いいたします。