女神との対峙
あらすじ:全てが終わった。文字通り全てが。長い間、神を害する堕天使と戦い続けて来た天使は、最後の堕天使を倒した後、恐ろしい事実をつきつけられた。
「お前たちはこれで終わりだと思っていただろうが、これが始まりだ。最後の堕天使を殺したお前たちが、次の堕天使となったのだ、確認してみろ。」
その通りであった。彼らはすでに堕ちていた。
「ど、どういうことだ。」「か、神が全てを操っていたのか」「わ、我々はただのコマに過ぎなかったのか。」「だとしたら我々天使の存在はなんなんだ。」「これはただの神々の遊びなのか?我々はただの道化なのか。」
答えるものは誰もいなかった。彼らは最早、天に戻ることができなかった。そして、この顛末を仲間に話すこともできないのだ。できるとしたら、真実を伝えようとするだけなのだが、かつての仲間は、我々を敵とみなし、敵対するであろう。倒した堕天使たちが、自分たちの運命と知って戦慄するのみであった。そして、誰も答えなかった。
「ここに来ることはわかっていたよ。」「よく来た。」
俺はアテナ様、アルテミス様の前に立った。二人の女神様は、コーヒーを飲んでいる。
「ではまず、よく事態がわかるよう、その呪いを解いておこう」「そうしないと内容が理解できないだろうから。」
急に頭にかかっていた靄が晴れるような気がした。いつになく頭が冴えている。
そして、次々と色々なことが、理解できるようになった。
「俺が、感情的になりすぎないように、この呪いをかけていたのですね。」
「その通り。」「いつもこうなら話は早いのだが。」
「これも、俺に猫神を多く育てて欲しいからですね。」
「理解が早いわね。」「いつもと違ってこれだと拍子抜けね。」
「でも俺に妹のことを忘れさせたのはなぜですか。」
そうなのだ。俺はすでに「たま」に出会った時点で妹のことをすっかり忘れていた。一番家族で心配していた妹のことを。すると、心が痛んだ。
「それについても答えを知っているはず」「あなたが考えている通り」
「なぜ、それほどまでに俺に、猫神を育てさせたいんですか。こんなことをして、俺が敵対するとは思わなかったんですか」
「私たちは、すでに結果を知っている。あなたは私たちに敵対しないことを。」「神はあらゆる次元に、あらゆる時間軸に存在している。」
「しかしそれでも、運命に抗うのが人間。違いますか。」
そうだ。過去の英雄達の中にもかなわずとも運命の頸木から解き放たれたいとして、破滅するとはわかっていても神に敵対した者が数多存在したのだ。俺だって、手元に手駒はたくさんある。しかし、女神様達の方がずっと役者は上だ。俺が敵対行動をとらないことをご存知のようだ。
「そう、あなたは他の英雄達とは違う。だから選んだ。」「あなたは、他の英雄が通ったような道筋は辿らない」
「でもなぜ、大切なことを忘れさせたんですか。そんなに、障害になるんですか」
「あなたは、妹のため、戻る方法を見つけようとして、幻獣育成の方に割く時間が短くなる。それは問題。」「あなたの別の次元の同位体も元の世界に行こうとした者が多かった」
確かに、俺は妹のために何かしようと思ったろう。
「ではなぜ、妹をここに連れてきてくれなかったんですか。」
「妹の運命はここにはない」「妹の存在は向こうの世界では大きい」
なるほど。そういうわけか。それにしてもこの世界の俺は他の世界の俺と違って、多分猫カフェを選択していただろうけど。
そんなに3倍の早いレベルアップが必要だったのだろうか。
「あなたも見たはず。」「別の世界の終焉を。」
確かに、見た。あの世界の終焉はぞっとした。あれほど高い科学技術を誇る世界ですら終焉を迎えてしまうのは胸が痛い。
「あの連中は、このような終焉を設定したのは我々神だとかんがえている。」「だから簡単にラムダをあたなに渡した。」「私たちを滅ぼすように」「あなたが神とつながりを持つと感じたようだ」
そうだったのか。でもあの老人は何も知らなかったようだか。
「あの老人ではなく、あの社会が感じていた不満。」「終焉に神に会えたら滅ぼそうと決めていたのだろう」「彼らも大きなエネルギーは感知できる。」「何か自分たちを観察している存在がいることには気が付いていたのだろう。」
俺は考え込んだ。でも、いつも女神様たちは、エネルギーがなくて疲弊しているのに。
「もしかしたら、もう気が付いているかもしれないが」「私たちは、滅びゆく世界から魂を別の世界に移している。」
では俺が、いつも寝ているのも・・・・・
「そう、私たちがその魔力を使って、より多くの魂を移動させるため」「助かっている。それに、猫神を作り出すためにも睡眠は必要。」「神の数が足りない」「多くの神が必要」「時間を超えられる猫神の存在は貴重」
では、どうしてご自分たちで神を創造しないんですか。
「神はお互いの存在には干渉してはいけない」「神同士でぶつかれば全てが終わるから」
わかりました。では、俺も俺ができることをやりましょう。では、朦朧化の呪いをかけてください。
「わかった。」「迷惑をかける。」
俺は、すぐによくわからなくなったが、俺のやっていることが非常に大切なことも、睡眠が必要なこともわかった。だからこれからねるつもりだ。
俺はすぐハンモックに倒れこんだ。すぐ眠くなったので、そのまま目を閉じた。いろいろな想念が一瞬頭をよぎったが、呪い状態ではあまり理解できなかった。そしてすぐあたりは暗くなった。ぐぅ〜。
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