ラムダの日
誰もいない森で木が倒れた時、音は本当にしているのでしょうか。
ラムダの日
「あんた、すごいの取り寄せちゃったね。」
アルテミス様が感心する。
「これ、多分後期型だからダイソンスフィアから直接エネルギーを分けてもらってるタイプだね。」
「ほぼ、無限に近いエネルギーか。まともに力だけでやりあったら、私たちでも危ないよね。自動修復機能までバッチリだから」
アテナ様とアルテミス様の話はよくわからないが、ラムダは結構すごいらしい。
「こんなのに掃除させてるんだからなんか無駄だよね。」
二人の女神様は今日も今日とてアイスティーを飲みにきていた。魔石の大きいのを仕入れているから、氷がたくさんできるカフェに時々二人はいらして、のんびりするのが日課だ。
「サンドイッチはいかがですか」
「いただくわ」「ありがとう」
こうして俺たちの午後はのんびり過ぎていく。女神様がおかえりになったら、早速溜まった洗い物の片付けだ。ラムダにコジローを手伝うように言っておいたら、相当役に立ったみたいだ。俺が最後の洗い物をしていると、コジローがたたたっと走ってきた。
「タクしゃま、ラムダすごい!」
「へえ、役にたったんだ。」
「すごく」
「よかった」
その時、プリンルもキッチンにきて首を振りながら言う。
「ラムダのお陰でわたしがやることがなくて困りましたわ」
最近、シェールが神殿の方で忙しいのでプリンルがいつもカフェで働いていてくれる。最近ではコジローとの仲もそう悪くはないようだ。
「ただ・・・・」
「どうしたの、何か問題でも」
「いえ、問題ではないのですが」
どうもラムダは、テーブルの上におく小さな花瓶にいけてある花を見ると、どうしてもそれをじっとみてしまうようなのだ。その時だけは、なぜか寂しそうに見えるそうだ。
「ふーん。なんだろう。花が珍しいのかね。」
確かにラムダがきたところは、鉄の部屋だったから、こういうのは珍しいのかもしれないな。だた、ふと、俺は、一番最初に鉄の家の中でラムダの主人がいた部屋を思い出した。あの部屋には、確か机があって、その机の上に造花らしいものがおいてあったような気がする。もしかしたら、ラムダは、それと前のご主人のことをかすかに思い出したのかもしれないな、そう思うと、少しだけ胸が切なくなった。
もし、あの夢が本当であったとしたなら、もはや、あの前のご主人はなくなってしまっているだろうから。ちょっとかわいそうだな。
俺は神殿まで行ってるーたんを誘って、花を摘みに行った。ぽちも一緒だ。
「わるいけど、るーたん。これと同じ花を摘んでくれ。」
「うん分かったん。」
ととと、と走っていくるーたん。その後をたたたっとついていくぽち。いいコンビだ。
ちょっとしてから二人が戻ってきた。
「パパ、これでいい。」
「うん十分だ。ありがとう。」
そして、家に帰る。カフェの片隅に、ラムダが微動だにもせず立って次の指示を待っている。
俺は、ラムダにるーたんと一緒に摘んだ花で作った首飾りをかけてやった。
その瞬間、心なしか、ラムダも少し嬉しそうに見えた。
私たちは別れ、そして出会い、それを繰り返すのです。