第95話 奸智に長ける
2017/1/21:本文修正しました。
2018/10/2:ステータス表記修正しました。
「初めまして。僕はルイ・イチジク。悪い生霊じゃないよ」
「なっ!? ちょっと、何言ってるんですか! 折角フォローしてるのに!」
ナハトアが逆ギレ気味に振り向いて注意してきた。
「え?」
恥ずかしながら、僕はこの挨拶を考えて実行に移すために人の話を全く聞いてなかったのだ。だから、ナハトアがどうフォロー入れてくれたのかさえ気付いてなかったというね。
「ほら! 生霊って自分で言ったぞ!!」
確かデニスと言ったかな。20代の血気盛んな戦士風の若者が吠える。大きな盾を持っているということは、彼が前衛の盾役なのだろう。僕の前でナハトアが額に手を当てて俯いてる。いや、ほら、ごめん。悪かったって。
「あれ?」
そう、迂闊にも彼らが怯えながらアンデッドの名前を上げている最中にも渾身の挨拶を考えていたので、その部分に注意を払ってなかったんだよな。完全に注意が欠落してた。
「でも“穢”はないわ」
「でしょ?」
クリチュカと言ってたかな。神官職であろう装備に身を包んだ栗毛の若い女性がナハトアのフォローに気付いてくれた。ふぅ〜、最初の好印象からどんどん引き算されてる気がするな。でも、その言葉に素早く乗っておく。じろっとナハトアの涙目に睨まれたけど、なるだけあどけなく笑っておいた。
「ちょっと待って! 生霊って言ったらアンデッドで闇属性のはずじゃないの? 今さっきわたし達が掛けて貰った魔法って」
「「「「あっ!?」」」」
ナイスフォローだよ、ナハトアくん! そう、普通の生霊であればそんな出鱈目な事をするはずがない。ナハトアが言うようにアンデッドが聖属性を持つこと自体無いからだ。ナハトアの指摘で漸くそこに気が付いたということだろう。
「誤解が溶けてなによりだ。ナハトアもごめん、手を掛けさせちゃったね」
「いえ、いいんです。助けていただきましたら」
僕のお礼に照れ隠しなのかぷいっと顔を背けるのだった。口元が笑ってたようにも見えたけど、ま、いっか。
「だから、お前たちはどんな関係なんだって聞いてるんだよ!」
「デニス落ち着いて」
「それは僕の口から説明したほうが」
驚いた顔でナハトアが振り返る。また変なことを言い始めるんじゃ!? とでも思ってるんだろうか? よく考えたらナハトアはダークエルフだ。さっきは完全に歳下扱いしてしまったが僕より歳上なんだよな。いかんな、シンシアたちと一緒に居ると見た目の姿で考えてしまうから、年齢なんてすっぽり抜けてたよ。改めて言い直す。
「説明したほうがいいな。僕は見ての通り生霊だけど規格外でね。そういうこともあって今まで他の場所から動けなかったんだ。だけど、ナハトアの命の危機が迫ってるという事でそこから動くことが出来た。そうだね、そういう背景で僕を説明するのなら生霊と言うよりも守護霊って言う方がスマートじゃないかな」
と説明したら、ナハトアはカクカクと首を上下に振ってた。いや、あれは頷いてるのか。ナハトア的には納得の説明だったんだろうけど、他のメンバーはどうかな?
「守護霊ねぇーー。あれを見た後じゃあな」
「うん、凄かったよね」
「わたしには真似できないわ」
「あたしにも無理よ」
思いつきで言ってみたら上手く言ったな! 生霊であることに変わりはないけど、意識を変えれば問題ないって事だ。暫くはこのメンバーで動くことになるんだろうけど、ん?
「宝箱?」
「「「「「えっ!!!!!」」」」」
「さっきまでなかったのに、何で急に?」
「本当に知らないんですね。ここは恐らくですけど“罠の部屋”です。そこを切り抜けたものには褒賞品が与えられるんですよ」
クリチュカがそう説明してくれた。うん、リューディアが何処かで言ってた記憶もあるな。こんなこと言ってると「ルイ様」と優しく軟禁状態になるんだろから、口が裂けても言えないぞ。今更誰がそれを用意してくれるの?何て聞ける雰囲気でもない。
「そうなんだ。で、直ぐ開けれるの?」
何の気なく宝箱に手を伸ばした所で、またもやナハトアに咎められる。
「触らないで下さい! 罠がある場合もあるから!」
罠ね。言っちゃ何だけど、この体なら罠も宝箱も関係ないはずなんだけどな。でも、彼女の感情を逆撫でするとこれから先の自分の立ち位置が危なくなりそうなので、従っておいた。僕は迷宮探索、冒険においてはズブの素人だ。1年前に何箇所か旅して回ったのは冒険というより強制的な成り行きだったから、それは別に考えたほうが良さそうだぞ。
「ああ、ごめんごめん。こういうことにはてんで慣れてないんだ。色々と言ってもらえると助かるよ」
「分かりました。じゃあ、何もせずにそこで待っててもらえますか?」
ちょっとイラッとした口調でナハトアに「待て!」を言い渡れた。僕は犬か? ふわふわ浮かんであぐらを組んでいると、4人がにやにやしてるのに気が付く。どうかした?
「これはこれで面白な」
とデニス。
「そうね。あんまりというか見ることないと思ってたわ」
マーシャも加わり。
「ナハトアさんはツンデレなんですね」
名前の知らない一番年若い青年が続く。
「ルイさんのこと意識し過ぎですね」
最後にクリチュカがとどめを刺した。
「あんた達、人が集中して罠探してるのに気の散ること言ってるんじゃないわよ!」
がばっと立ち上がって4人に喰い付くナハトア。その様子を見てるだけでも彼らが信頼し合ってることが良く分かる。そこに波風を立てないようにしないとな。
「で、どうなんだよ? 今回は待ってやったぜ? 開けていいだろ?」
今回はってお前、前回またずに開けちまったのかよ? そこだけ冒険者に向いてないよ。思わず、心の中でデニスに突っ込んでしまった。ナハトアも同じ思いのようで渋い顔をしている。
「良いわ」
罠は部屋だけだったようで、宝箱にはなかったらしい。毎度こんな事してると時間がいくらあって足りないよな。ナハトアが宝箱の前から場所を譲ると、デニスが嬉々として宝箱の蓋に手を掻け躊躇なく開けるのだった。ああ、これはまずいよな。この手の仲間がパーティーにいたら命が幾らあっても足りやしない。よく今日まで命があったね、君は。
デニスの持つ閉じられてるものを開けたいという欲望は一種の病気のように僕の眼には映った。大丈夫なのか?
「何だこれ? 黒い水晶玉?」
彼についての推論はその声で邪魔をされてしまった。彼が手にしてるのはどうやら宝箱の中身のようだ。最大直径20㎝程ある黒い水晶玉。【鑑定】。ナハトアも【鑑定】を掛けたようだけど僕のほうが少し早かったな。
◆ステータス◆
【アイテム名】黒竜の魂
【種類】魔水晶(闇属性)
【備考】黒竜の魂を宿した物。長い時間それに触れていると溶け合い。黒竜となる。
はぁ!? 呪われた代物なのか?
「デニス! 直ぐそれから手を放して! 長時間触ってると呪われるわ!」
「なっ!?」
「「「「あっ!?」」」」
驚いたデニスが自分の顔の位置から頃位水晶玉を手放す。その高さから落ちたら砕けるだろ!? ってリアクションで皆が手を出すのだったが、その予想を裏切って黒い水晶玉は砕け散ることはなかった。
「え〜っとーーどういう事?」
「それはこっちのセリフです!」
結論から言うと、黒い水晶玉は砕けずに浮かんでいたのだ。こともあろうに僕の横で。そりゃあ、ナハトアじゃなくても突っ込みたくもなるだろう。けどさっきの戦闘で張り切りすぎた所為か、何となく距離感を感じるんだよな。どう接して良いのか分からない、と言ったところか。
「皆、すまない。折角のお宝なんだけど僕が貰ってもいいだろうか?」
「呪われたくはないしな」
真っ先に手を出したお前が言うことじゃないと思うぞ、デニス。
「良いんじゃないかしら? あたしたちとしてはとトドメを刺させてもらった訳だし」
マーシャは状況判断が出来る娘みたいだね。
「そうですよ。傷も癒やしてもらって“竜殺し”の称号も貰えたんですから」
やっぱり称号ってあるんだね。
「えっと、君だけ名前が分からないんだ。良ければ教えてもらえないかい?」
称号と聞いて自分の【ステータス】も気になったけど、なかなか彼の名前が出てこないのでそっちの好奇心を満たすことにした。称号の話を持ちだした若い幼さの残る青年にそう尋ねてみる。
「アレクセイです。えっと、ルイさんと呼んでもいいですか?」
「ああ、良いよ。宜しくアレクセイ」
こっちは呼び捨てることにした。歳下のようなので敢えて敬語を使わない事にしたよ。そこで変に気を遣われても嫌だしな。ナハトアは何か言いたそうな表情だったが特に絡んでくることもなかった。宝を横取りする形になってしまったのは心苦しいかったから、後で適当なものを見繕って渡そうと決めこれからのことを確認してみる。
「それで、これからどうするの? 更に進む?」
「いや、流石にそれはねぇな」
「戻る方に一票」
デニスに次いでクリチュカが手を上げる。回復役が機能しなければ迷宮攻略など死ににいくようなものだ。その彼女が戻ろうというのなら、誰もが頷かざるを得ないだろう。
RPGゲームでよくあるダンジョンから一瞬で出る魔法や便利な転移魔法陣などがあるのかと思いきや、全くそんなものはなく、来た道を帰るという行程で“罠の部屋”を後にするのだった。
マーシャが転移魔法と聞いてきたことについて尋ねてみたけど、転移魔法は時空魔法というあるのかないのかわからない魔法との事だった。魔法学院で学んだ時に耳にした程度のものだったらしい。もしかしてと思ったそうなのだが、生憎そんな便利な魔法なぞこれっぽっちも知らん。
そしてこの迷宮だが、場所の特定の前に世界について説明したほうが良さそうだ。これは昔の【転生者】の功績でもあるんだけど、世界地図が存在するんだ。地球儀のようなものはないよ。どちらかといえばメルカトル図法に似た平面地図が普及しているだけ。ただ、この世界の技術レベルからすれば世界地図があるだけでも驚きさ。おっと脱線しちゃったね。
この世界は昔の白亜紀を彷彿させる大陸配置になってる。アメリカ大陸にあたる大陸は南北に分かれてるんだけど、南アメリカ大陸がアフリカ大陸とくっついて歪な蝶のようにでんと座ってる。その下に南極大陸とオーストラリア大陸がくっついているんだ。インドは大きな島のように浮かんでる。北半球は又の機会だな。
“エレクタニア”があるのはその蝶のような姿をしたテイルヘナ大陸の左翼、赤道寄りの森の中だ。詳しいことは僕もよく分からないが、その辺りと聞いてる。で、漸く迷宮の位置になるが、テイルヘナ大陸の右翼それも真ん中から右端の海に近づいた辺りらしい。随分遠くまで飛ばされたな。
このティレヌス迷宮は、難易度が高い迷宮のようでまだ攻略されてないのだという。その地下15階を攻略中にこんな事になってしまったとアレクセイが教えてくれた。彼は人見知りしないタイプなのか、僕に普通に接してくれている。そんなアレクセイの姿を妬ましく見詰めているナハトアの姿は新鮮だった。時折振り向いて彼女の様子を見るのだが、ぷいっと視線を逸らされてしまうんだよな。
帰り道は魔物に遭遇することもなく、1時間ほどで外に出ることが出来た。陽の光が眩しい。普段はそんなことないのだとか。珍しいこともあるもんだ。
「ん〜〜〜〜、やっぱりお日様の光は最高だね! 暗い所に居ると有り難みが良く分かる!」
「「「「「…………」」」」」
5人の視線が妙に痛いんだけど、どうした?
「ん?」
「何で陽の下に出たのに何ともないんだよ!?」
やはり真っ先に突っ込んでくれたのがデニスだった。その反応は正常だな。
「嘘でしょ? 消滅しない!?」
消えないかな〜っとでも思ってたのか? マーシャよ!?
「ひぇぇ〜、生霊で日光平気って危険過ぎますって!」
アレクセイ、心の声がだだ漏れだぞ。
「わたしの浄化も効かないんでしょうね」
クリチュカ、君は僕を浄化するつもりで居たのかい?
「出鱈目過ぎる」
ナハトア、綺麗な笑顔が引き攣ってるぞ?
「おほん、君たちは僕のことを何だと思ってるんだ?」
「「「「悪い生霊」」」」
ナハトア以外がハモる。おいおいおい!
「いや、即答しなくていいし、そもそもそこの認識可怪しいから!」
「はぁ。自分のことを悪くないっていうやつ程、疑って下さいって言ってるようなものですよ」
何だと!? RPGゲームの中で知れ渡っていたテンプレを再構築したのに、ここでは通用しないのか。
「そんなに驚いた顔しないで下さい。あの挨拶で信頼してもらえると思ってたという方が驚きですから」
余程驚いた顔をナハトアに見せていたのだろう。すぐさま斬り捨てられた。涙が出るよ。
「挨拶の仕方が悪かったのは反省するよ。けど、もう少し信頼してもらっても良いんじゃないかな? 窮地を救った訳だし」
「「「「ーーねぇ」」」」
ねぇって顔を見合わせながら言うことか?あと何が問題だ?
「恐らくですが、そこに浮かんでるものが原因かと」
原因が解らずに腕組みしていると、ナハトアがそう指摘してくれた。ん? ナハトアの見詰める先に例の黒い水晶玉が浮かんでる。ああ、長く持つと黒竜になるって書いてあったやつだな。僕が黒竜になるかもって思ってるってことか? 確認してみるか。
【ステータス】
◆ステータス◆
【名前】ルイ・イチジク
【種族】レイス / 不死族 / エレクトラの使徒
【性別】♂
【称号】レイス・モナーク
【レベル】1
【状態】加護+
【Hp】3000/3000
【Mp】121830/124000(+116000)
【Str】119
【Vit】112
【Agi】113
【Dex】88
【Mnd】85
【Chr】47
【Luk】39
【ユニークスキル】エナジードレイン、エクスぺリエンスドレイン、スキルドレイン、※※※※※、※※※※※、実体化、眷属化LvMAX(範囲眷属化)、強奪阻止
【アクティブスキル】鑑定Lv230、闇魔法LvMax(+388)、聖魔法Lv500(+320)、武術Lv261(+110)、剣術LvMax(+897)、杖術Lv257(+154)、鍛冶Lv207(+107)
【パッシブスキル】隠蔽LvMax、闇吸収、聖耐性LvMax(+808)、光無効、エナジードレインプールLv20(+9)、エクスぺリエンスドレインプールLvMax、スキルドレインプールLvMax、ドレインガードLvMax、融合Lv245(+120)、状態異常耐性LvMax、精神支配無効(New)、乗馬Lv146、交渉Lv261、料理Lv80、採集Lv112、栽培Lv156、瞑想Lv800(+417)、読書Lv740(+432)、錬金術Lv687(+417)
【装備】シュピンネキルトのシャツ、綿の下着、綿のズボン、ブーツ、アイテムバッグ
【所持金】0
「【状態】も変化なし。ナハトア、ちょっと」
「はい?」
皆と少し離れた所で【ステータス】画面を開き確認するが、黒い水晶玉の影響は受けてなさそうだ。どうせ1度見られてるし、“眷族”だから見せても問題ないだろうと言うことで呼び寄せた。
「ちょっと確認して、【状態】がこれの影響を受けてないか」
「え、良いんですか?」
ナハトアが「本気ですか?」という眼差しで確認してきた。うん、減るもんじゃないし問題なし。
「だって、あの時全部じゃないにしても見てるでしょ?」
「え、あ、それはそうなんですが……ひっ!?」ぱしっ
ナハトアも渋々同意して僕の【ステータス】に眼を落とすのだったが、悲鳴を慌てて己の手で留めた。ん〜そんなに驚くことか?
「「「「ひっ?」」」」
ナハトアの短い悲鳴に4人の雰囲気が緊張したものになって来た。いや、そうならないために見てもらったんだけど。慌ててエルフ語で話し始めるナハトア。
『どういうことですか!? そもそもLv1のステータスじゃありませんよ!? それにわたしが見た時は【レイス・ロード】だったのに【レイス・モナーク】って!?』
『いや〜、色々と条件がクリアできてたみたいでね、あの後にランクアップしちゃったのさ』
『ランクアップーー。何処まで出鱈目なんですか』
「うっ、ごめん」
何で責められるのか理解らないけど、取り敢えず謝っておいた。思い当たる所が多過ぎるのか無さ過ぎるのかどっちでも有り得るから。
「はぁ、まぁ良いです。今【状態】を見せてもらったけど、呪いの影響は受けてないは。わたしが驚いたのは他の事だから気にしないで」
納得はしてないだろうけど、仲間たちには説明してくれたので良しとするかな。あとはこのそわそわしてる黒い水晶玉だな。どうしてくれよう。
「さてと、迷宮の入り口からも離れてるし、それなりに広いので黒竜の死体を取り出すよ。皆離れててくれるかい?」
黒い水晶玉の方は後回しにして、一先ずアイテムボックスから先程約束を交わした黒竜の遺体を取り出す。どうんと地響きを周囲に響かせて鳥達を追い払い、まだ生暖かい黒竜の遺体が現れるのだった。
「改めてみるとでかいな……」
デニスが冷や汗なのか垂れてくる汗を拭いながら呟いた。
「本当、よく倒せたわよね」
マーシャの言葉にアレクセイとクリチュカも黙って頷く。4人の視線は自然と僕に集まっていた。この黒竜を実質倒したのは僕なのでその視線も解らなくはないけど、視線の意味合いが感嘆や尊敬というより化物をみるような怯えを感じるんだよな。まぁ人外であるのは間違いないけど。
こういう状況を味わってみると、いかに生霊みたいな霊的な体を持つアンデッドへの恐怖や敵愾心が根深いか、良く分かる。地盤作りは出来たからもしもの時はそこに引き籠ればいいけど、今すべきなのはどれだけ信頼してもらえるようになるか、だな。
「あ!?」
突然、僕の横に浮かんでいた黒い水晶玉が意志を持って自ら黒竜の遺体に向かって飛んでいった。
「「「「「えっ!?」」」」」
黒い水晶玉を眼で追った4人が慌てて僕の方に視線を戻すから、急いで手を振って否定する。これ以上信頼を落とす訳にはいかないんだって。
「違う違う! 勝手に飛んでいったんだ!」
「見て! 口から体中に入っていったわ!」
ただ一人、黒い水晶玉を追っていたナハトアの声に再び皆の視線が黒竜の遺体に集中するのだった。長く持つと黒竜化する特性を持った黒い水晶玉。遺体に入って溶け合ったとしても、そこから息を吹き返すとは到底思えないんだけどな……。嫌な予感がするよ。
ドクン!
何かが1度大きく脈打つ音がしたかと思うと、死体である黒竜の体が薄黒い膜に包まれるのだった。同時に生暖かい風が黒竜の体を中心に周囲へ撒き散らされる。その風に木々の葉が揺れ動くも、風を浴びたそれらの葉が瞬く間に生気を失い枯れ落ちたのだ。
ゾワッ
背筋に寒気が走る。これは。
「“穢”」だわ」です!」
僕、ナハトア、クリチュカがそれに気付き時を同じく口走る。最悪のパターンだな。これほど奸智に長けるとは。騙された僕も悪いが、それはそれこれはこれケジメはとる。
あまりの出来事に身動きが取れないでいる僕たちを他所に、“穢”を纏った黒竜の首がゆっくり持ち上がる。双眸を瞬き、周囲を確認する黒竜の“屍”。その眼が僕たちを捉えると、金色の瞳を大きく見開くではないか。穢の息吹が来るか!?
そしてゆっくりと真紅の口蓋と白い牙を見せながら顎を開くのだったーーーー。
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