第75話 息詰まる怒り
※2016/12/26:本文修正しました。
※2016/12/27:本文修正しました。
「頭を抱えてしゃがむんだ!早く!」
そう叫ぶ僕の眼前に風切り音を纏った無数の矢が……届く!!
矢が身体を貫く痛みが、あれ? ない?
流石に眼を開けたまま矢を受ける勇気もない僕が最後の最後で眼を瞑ったのだったが、何時まで経っても矢が身体に刺さる衝撃がこないのだ。恐る恐る眼を開けてみると。
眼の前に銀色の光の球の中でポーズを決める巫女服姿の猫耳幼女が居た。
[ハク!?]
[うにゃ〜♪ ルイ様に手を出すなんてボクが許さないよ!]
見ると矢は僕やジルに刺さらずに、綺麗に逸れて後ろの花壇や石畳の上に散乱している。呻き声がハクの向こうから聞こえるのでハクを避けてふいっとその横から顔を覗かせると、30人近い男たちが弓を片手に這いつくばっていた。
[ハク、助かったよ♪]
触れるかな? と思って光の中に手を入れるとすんなり入ったので、ハクの頭を撫で撫でしておいた。
[にゃ〜♪]
[ルイ様! あいつらはぼくが抑えてるから今のうちに中へ入るんだガウ!]
にゃ〜にガウ? どうした君たち!? さっきまでまともに話しでたじゃないか!! 眼の前へ淡黄の光の球に包まれたワニガメくんが降りてきた。どうやら地の力で押さえつけてるんだろうね。【重力】かな?
[それにしてもさっきは普通に話してたのに語尾に何か付けるのは思いつき?]
[ううん、ルイ様に名前ももらってからだにゃ〜♪]
僕の所為!? 僕の所為なのか!? いや、全員がそうでないことを祈ろう。
[兎に角助かったよ!ゲンもありがとう!動くと面倒だから気絶させておいてもらえるかな?]
[分かったガウ!]
うん、誰と話してるのか分かりやすいけどね。見てると【重力】を更に重くしたのか、体や顔が床に押し付けられすぎて歪んでるのが分かる。息も出来ない感じで辛そうだは。そうだ!
[スザ!]
[はいな!ここにおるでぇクェッ!]
クェって首絞められたのか!? 大丈夫か!?
[スザは火の使用禁止!]
[何でや!!]
[屋敷を燃やすつもりはないからだよ。今回は我慢してくれると嬉しいな]
[う、しゃぁないクェ!]
呼ばれて嬉しそうに登場したスザだったが、出番なしと早々に出禁を食らって肩を落とす姿も笑える。予防も大事。他に動きがないことを確認しておいて。
[セイ!]
[あたいを呼んだかい? ルイ様?]
[今日はスザのお目付け役だよ。我慢できずにスザが火を使ったら消火してね?火気厳禁で!]
[あいよ!〜〜〜〜♪][なんでや〜クエェェッ!]
可愛らしい水色のチャイナドレスを着た幼女が大人っぽい言葉を使うのが可愛らしくて、つい頭を撫で撫でしてしまった。これでいいかな。ゲンの御蔭で男たちがあらかた気絶したようなので、様子を見る為に近づく。貴族の使用人というよりもチンピラのような身形だ。砦の時と同じようにしておいても問題はないだろう。
数えると32人、男たちのスキルと経験値をしっかり頂いておく。エナジーは全部吸い取らずに3分の1は残しておく。さて。ここまで10分。動きがないのは可怪しいな。シンシアとカティナは?
「ジル大丈夫?」
「は、はいルイ様。ただ何がどうなってるのか――」
「精霊たちは見えるかい?」
僕の質問に頷くジル。
「この子たちも僕の眷属さ。だから怖がらなくて大丈夫」
「あ、あの時の」
「そういう事」
「ルイ様!!」「主殿!?」
ジルが納得していると探していた2人の声が上から聞こえてきた。どうやら2階に居たようだ。見上げると溢れるような笑顔で見下ろしている2人の姿があった。シンシアが羊皮紙の束みたいな物を握ってるのが見る。何だろ? うん、無事でよかったよ。一時はどうなるかと思ったけど、精霊たちの御蔭だね。
「ぶひぃ〜! な、な、な、なんだこれは!?」
「そんな!? 矢が刺さってないなんて!?」
見たくない顔が1つと逢いたくもないような顔の男が揃って奥から現れた。まるまると太った方が伯爵なのだろう。明らかに自分が仕組みましたというセリフを口にしてる処からして、もう下手に出る必要はないと感じさせるには十分だった。
「お招きに与っていませんが、僕の家族がおもてなしを受けたようで御礼に伺いました」
「ぶふ〜! 家族!?」
「あ、お前は!! くそう、役立たずめ! おいっ!!」
銅鑼息子の合図でまたわらわらと武装した集団が現れる。冒険者か? それとも傭兵? 私兵? 明らかに先程までより身形も装備も良い男たちだ。女性は見る限り居そうにない。
「あらあら……冒険者ギルドを通すとこんなに兵が集められるんですねぇ」
「ふははははは! 莫迦か! 冒険者ギルドなんか通すものかよ! こいつらはウチの甘い汁を吸ってるお抱えの私兵さ! だから冒険者ギルドなんかに申し立てても意味はないんだよ! 女は殺すな! 殺すのはこいつだけでいいぞ!!」
「「「な!」」」
ジル、シンシア、カティナが気色ばむ。ジルに至っては僕の後ろついて背中を守ろうとしてくれてる。上の2人には眼で降りてこないように制しておいた。ちょっと腹が立ってるんだよね。さっきも完全に殺す気で来たよね。つまり自分たちがそうなる覚悟も在るという訳だ。
冒険者ギルドと言ったのは、そうでないという確証が欲しかったから。禍根は残したくないもんな。私兵なら遠慮しない。
先程と同じくらいか、少し多い数の男たちが武器を手に輪を縮めてきた。まんまと誘導に乗ってくれたのは自分たちの優位を疑わないからだろう。冒険者じゃなない、傭兵でもない。生活を省みてあげなくても良さそうだね。
「ちょっとお前らは遣り過ぎた。二度と僕らに関り合いたくないと思ってもらうよ」
「あははははは! この人数で気でも触れたかい!? 心配しなくてもわたしがお前の家族をしゃぶり尽くしてあげるよ! やれっ!」
「残念だったな色男、おめぇの居ねえ後でねえちゃんたちをいっぱい可愛がってやるからよ!」
「ぎゃははは!」
「帰りたくても帰さねぇぞ?」
「――――――ふぅ……五月蝿いぞ」
「「「「「「!!!!!!!」」」」」
久々に威圧を全開にした。鷲の王宮以来だ。辺りがしーんと水を打ったかのように静まり返っている。息を呑む音も金属が擦れる音も聞こえない。ただ止まっているそんな状況だった。
◇
「――――――ふぅ……五月蝿いぞ」
ルイ様がそういった瞬間、わたしは息が出来なかった。辺境の街でギゼラやサーシャが攫われた時に感じた威圧は何だったの!? と思える程凄まじい威圧。チラッと2階の2人を見ると同じ反応だった。わたしたちはルイ様の眷属だから威圧の対象にされていないのにこの圧力。そうでなければ耐えれない。
周りに居る男たちの顔は恐怖を通り越して蒼白になっていた。いえ、恐らく死を覚悟したに違いない。でも死を意識してしまったら!?
「ルイ様! このままだと死を意識してしまうものが出てしまいます!!」
そう叫ぶのがやっとだ。でもその言葉を聞いてくださり、ふっと威圧が消えるのを感じてわたしはその場にペタンと座り込むのだった。そんなわたしの脳裏に感情のない声が響き渡る。
【威圧耐性を獲得しました】、と。
◇
「――――――ふぅ……五月蝿いぞ」
「!!!」
息が出来ない! ルイ様が怒ってる! わたしたちの為に。シンシア?
【威圧耐性を獲得しました】
チラッとシンシアに目を向けた瞬間、またあの感情のない声がわたしの頭の中に中に響き渡るのだった。と同時に息苦しさが少し和らぐ。
「シンシア!?」
息が出来るようになったから咄嗟にシンシアの腕に手を伸ばした。どうなるの?
◇
「――――――ふぅ……五月蝿いぞ」
「くっ!? 何と言う威圧! わたしと戦った時には本気ではなかったというのか?」
同じ竜族でもここまでの威圧を放つ者もそうは居ない。竜が睨み殺すと言われているのは圧倒的な威圧に耐えかねて睨まれたものが死を意識するからだ。それを良く理解っているのだろう、ジルの叫び声が聞こえた。
「ルイ様! このままだと死を意識してしまうものが出てしまいます!!」
今のルイ様ならそれも可能だろう。我等であれば耐えれるが人の耐えれる許容量を遥かに超えてる。
「シンシア!?」
カティナが止めていた息を吸うかのように大きく息を吸い込んで、わたしの腕を掴んできた。恐らくジルもカティナもわたし同様初めてルイ様の威圧を受けたのだろう。よく耐えれたものだ。威圧耐性が身に付いたのだろうか?
それにしても、ルイ様。あなたは本当に底が見えない御方なのですね。
◇
「――――――ふぅ……五月蝿いぞ」
そう、ルイが威圧を開放した瞬間。
馬車から屋敷を観ていたわたしは馬車の中に崩折れそうになってしまいました。
突然フェレーゴ伯爵の屋敷から人のものとは思えない威圧感を感じたのです。そう、巨大な竜や魔王と相対した時のようなあの息苦しさを。
あの屋敷で何が? 屋敷に居るものであれほどの威圧を出せそうな人物が。そう考えてわたしは思い当たる。先程食堂で一瞬ルイ様が漏らした怒気を。いえあれこそが威圧だったのでしょう。そう思ったわたしは覗き小窓を開けてエトに尋ねてみることにした。
「エト、あれはルイ様が?」
簡単な質問にした。エトがなんと答えるか興味があったからだ。
「然様でございます。恐らくですが、伯爵様たちが遣り過ぎたのでしょう」
どういうことかしら?
「遣り過ぎた?」
「はい。ルイ様は身内をとても大切にされる御方です。種が違ったとしても家族と言われることを憚られません。誰に対しても別け隔てなく接し、手の届く範囲でお節介をしたくなる御方です」
それは御逢いして少しの時間しか経っていないわたしでも良く分かる。黙ってエトの言葉に耳を傾けることにした。
「ですが、一度その家族に危害を加えられると、容赦はなさいません。幸いジル様やシンシア様、カティナ様がご一緒ですからどなたかが遣り過ぎをお止めくださるでしょう。おっと、お話してるうちに和らぎましたな。終わったようでございます」
それだけでは説明が付かないわ。エルフとして長く生きてきた中で、人間にここまでの威圧を放てる者に在ったことがないのだから。転生者だとしても、だ。食事の前に手を合わせる習慣は一部の転生者の間に見られた癖だ。ルイ様は恐らく。だからと言ってご自分から話してくださるまで聞くつもりはないけど。
「ふふふ、これはデュー坊の火消しが大事になりそうだね」
「然様でございますな」
エトと少し気持ちが分かり合えた気がした。まだルイ様に仕えるものは多く居るのだろう。ただ、ルイ様の気質に當てられたのかここにいるどの娘も接しやすい。恐らくまだ見ぬ者たちもそうなのだろうと思いを馳せながら、わたしたちは自体を見守ることにした。
◇
フェレーゴ伯爵の屋敷から気勢が上がった瞬間、デューオは火消しのために馬車を駆らせていた。
「全く、ルイの奴には驚かされっ放しだ。まさかあの作法を知る者だったとはなっ!!? 何だ! この気勢は!?」
ごんっ
俺は自分が馬車の中に居ることを忘れて立ち上がり頭を天井にぶつけてしまう。
「旦那様、如何なさいましたか?」
「いや、何でも無い。すまんな」
「いえ」
その音に気付いたフィデリオが覗き小窓を開けて様子を覗ってきた。恐らくフィデリオでは気付くまい。だが、この火消しは、消しきれるかどうかも危ういぞ!? ルイよ!
貴族の文官共は気付くまい。だが、将軍を始め武官の出の貴族の一部は気色ばむのは目に見えている。フェレーゴ伯爵の背後に居るのはゴールドバーグ侯爵。その庇護のもとにやりたい放題をしているのを快く思っていないライラック侯爵に千載一遇のチャンスだと文を持たせたが。
「フィデリオ、王城に向かう。時間がない急げ」
「は、畏まりました!」
フィデリオが鞭を振る音がし、馬がぐんと勢いを増す。夜の暗がりだ、そんなに速度は出せまいがそれでも時間との勝負であることに変わりはなかった。気勢が立った方角に意識を向けるがあれも一瞬だったようで胸を撫で下ろす。
「ルイ、無茶だけはしてくれるなよ……」
ぽつりと思いが漏れる。それから馬車の背もたれに身体を預けて俺はこれからの事を考えるために眼を瞑るのだった。
◇
「――――――ふぅ……五月蝿いぞ」
「「「「「「!!!!!!!」」」」」
久々に威圧を全開にした。鷲の王宮以来だ。辺りがしーんと水を打ったかのように静まり返っている。息を呑む音も金属が擦れる音も聞こえない。ただ止まっているそんな状況だった。
周りに居る男たちの顔は恐怖を通り越して蒼白になり始める。それぞれの足元に滲みを作り始めている者も数多く居る。伯爵親子も例外ではなく尻餅をついて絨毯に大きな滲みを作っていた。
「ルイ様! このままだと死を意識してしまうものが出てしまいます!!」
そう叫ぶジルの声ではっと我に返る。慌てて威圧を収めると、背後でペタンと座り込むジルの姿があった。しまった、遣り過ぎた。確かに死を意識したら死ぬという心理学者の眉唾の学説は耳にした事はあるが、個人的に疑わしいと思ってる。
だけど災害時に生き埋めの状況に置かれてしまう被災者は、過度のストレスでアドレナリンが過剰分泌し血管内皮細胞がダメージを受け血栓を作ることがあるんだ。それに伴って血管攣縮が起こり血管が異常に細くなって血栓が入り込み、狭心症や心筋梗塞へと発展し死に至るのだという。だから外傷がなく綺麗な遺体で発見されるんだよね。僕の威圧もそれを引き起こす可能性があった――。
ジルの前に慌てて回り込み、右膝を着いて優しく抱きしめる。
「ありがとう、ジル。あの声がなかったら危ない処だったよ。大丈夫?」
「う、う、ルイ様ぁぁぁ〜〜〜」
あう、かなり怖がらせたみたいだね。ごめんよ。胸に顔を埋めてきたジルの背中を優しく叩いて落ち着かせることにする。その間に上からカティナとシンシアが駆け下りてきた。
「ルイ様!」「主殿!!」
「ごめん、遅くなっちゃった。大丈夫? 何もされてない?」
ぐずるジルを抱いたままゆっくりと立ち上がり、右腕を広げて飛び込んできたカティナを更に抱き止めるのだった。右腕にも力を入れてカティナを抱き締める。
「ルイ様、ありがとう」
「うん」
涙声で鼻を押し付けてくるカティナに短く答えておいて、シンシアに顔を向ける。はにかんだような表情で傍に立つシンシアの姿は少し新鮮だった。カティナに抱き着かせたまま右手でシンシアの頬に優しく手を伸ばす。
「シンシアもありがとう。よく考えて動いてくれたね。ゼンメルたちも無事に合流出来たよ」
「あの、主殿」
「怒ってないよ。ううん、むしろ褒めたい。色々とね。だけど、ここの件を済ませなきゃ」
僕の手にシンシアが己の手を重ねて眼を閉じた。彼女なりに不安に思うことが多々あったのだろう。竜族とはいえ、一人の女性に変わりないのだから。このまま惚気けていたい処だけど、思いを切り替えよう。
これだけ惚気けて反応がない処を見ると、そのまま気絶してるのかな?周りを見まわすけど、動いてきそうな気配がない。
「生きてるかどうか、脈を診させてもらうかな」
そう言いつつ僕は男たちの首筋に指を当てながら、スキルと経験値をもらっておく。こいつらも眼が覚めた時に暴れない様にするためにエナジーを3分の2程吸い取っておく。結果、誰も死んでないことが確認できた。ジルの一言が無かったら恐らく死人が出ていた可能性がある事を考えると、人に威圧を使うときは加減しないとな。と思ったのも事実だ。
「ところで、シンシアが持ってる羊皮紙の束は何なの?」
「ああこれか。これは契約書らしい。我には人の字が読めぬからな。これれを取りに行っている隙に兵を配置したようだ。ハクたちが間に入っていなければどうなっていたか、考えただけでも恐ろしい」
そう言ってシンシアは身震いした。うん、まあ矢が突き刺さって見た目がスプラッター状態になっただろうね。魔法の武器じゃない限り心配はしてないけど。こういうところの甘さがいざという時に出るんだろう。しっかりしなければ。ん? 契約書?
「何の契約書?」
「詳しくはあの白豚に聞かぬと解らぬが、この屋敷に黒い首輪をした娘達が多数居た。恐らくその関係だと思うが」
「し、白豚。え? 黒い首輪。奴隷か。悪いけど、3人で手分けして首輪をしてる女の子たちを集めてもらえる?」
吹き出しそうになりながら、シンシアの言葉に眼を見張る。まっとうな手で買い求めた者ではないのだろう。だが意思確認はする必要があるよね。
「問題ない。2階の部屋に集めておいた。カティナ、頼めるか?」
「勿論!」
すんと鼻を吸ってから、カティナが2階に駆け上げる。うん、カティナは元気な姿が一番似合うね。ジルも落ち着いているようで涙を拭いていた。待ってる間に男たちから武器を取り上げて、入り口の近くに山積みしておくことにする。気味の悪い彫刻像みたいな気絶した男たちの汗と、アンモニア臭が玄関のエントランスロビーに漂っていた。
そうしていると女の子たち、と言える年齢以上の女性たちも含めて2階から降りてきた。何をされるのか解らず怯えている者も居る。まぁ普通そうだよね。
「ここに恐らく君たちのであろう契約書がある。どれが自分の物か見付けてくれないかな?」
そう言って、シンシアに彼女達の前に契約書を持て行ってもらった。シンシアは先程まで一緒に居たのだろう、怯えること無く我先に契約書に手を伸ばしてやがて1枚だけシンシアの手元に羊皮紙が残った。
「だれかその契約書にサインした人の名前読める人居る?」
「ベルントと書いてあります」
誰かがそう教えてくれた。ビンゴ。じゃあ。それは僕らがもらっておこう。
「シンシア。それをバッグに収めて無くさないように」
「承知した」
シンシアがベルントさんの契約書をアイテムバッグに納めるのを確認して、女性たちに近づく。もうびくっとする人は居ないようだ。女性たちの数は男たちよりも多い41人居た。親子も居たようで、ちょっといたたまれなくなる。ま、経緯を聞いても今が変わるわけじゃないから割り切ろう。
「これは君たちの意思の確認。契約を破棄して自由になりたい人とは居るかな?居たら遠慮なく手を挙げて」
その質問に誰も手を上げずに顔を見合わせた。あら?
「じゃ、奴隷は辞めたいけどここに残りたい人は?」
ぶっ。半数以上は残りたいのか。
「手にしてる契約書の関係で奴隷になった人?」
そこは皆なんだ。
「奴隷を辞めて家に帰りたい人は?」
手を挙げなかった中の半分くらいだね。じゃあ、最後まで手を挙げなかった人は?
「奴隷を辞めたいけど、行く当てがないのでどうすべきか悩んでる人」
そこで最後まで手を挙げなかった4人が手を挙げた。うん、悪いけど身請けまで面倒を見るつもりはないよ。さてと、契約書がどんな種類の物かな。
[スザ出番だよ?]
[来たでぇ〜クエッ!!]
眼の前に小さいニワトリ君が淡赤い光を纏って現れる。後ろにセイの姿もある。ちゃんとお目付けしてくれてるみたいだね。
[あの羊皮紙に書いた契約書って魔法の効力あるの? スザが燃やした場合、白紙に戻せる?]
[どうやろなぁ〜、魔法の力は感じるけどワイの炎でチャラになるかどうか解らへんで? クェッ!]
「「ぷっ」」
たまらずにシンシアとカティナが吹き出す。ま、緊張感の欠片も無いわな……。けどそこ迄だった。門の方が騒がしい。門扉を開けて馬と兵たちが雪崩れ込んできてるのが見えた。あ、デューオ様の兵か、あるいは根回し先の兵かどっちかだろうね。後者だとややこしくなる可能性もある。
「皆はそのままで。カティナとシンシアは僕の後ろへ。ジルも僕から離れないように」
「承知」「「はい、ルイ様!」」
騒がしくなって5分も経たない内に馬上の貴族とその家臣と見られる者たちがバラバラとフェレーゴ伯爵の屋敷の中に踏み込んできた。後の続く兵士たちもエントランスの様子を見て唖然としている。そんな中1人のわたしが貴族です、という服装をした精悍な顔立ちの中年男が1歩前に出てきた。
「我はライラック侯爵である! ルイ・イチジクという者は居るか!?」
「えっ!?」
最後まで読んで下さりありがとうございました。
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