第72話 デカグラム
子爵に腕を引かれて連れだされるカティナ。その表情を店の戸口から出て行くまで眼で追う。店から出る瞬間カティナは微かに笑うように頬を動かすのだった。術で囚われて別れるのも、自らの意志で一時的にではあれ別れるのも。辛いものは辛い。気が付いた時、冷たいものが目尻から溢れ僕の頬を流れ落ちていた。
ぽたっ
顎から床に雫が一滴落ちたその時だった。
突然店内の温度が上がりだし、鉄製品に霜が降り始め、窓枠がガタガタと揺れだす。穴の空いた木製の壁からは新芽が伸びてき、花瓶の中の水が溢れだし、鉄製品の間でパリパリと放電が起き始める。
「な、何だ!?」「えっ!? えっ!?」「!!!」
店内を風が渦巻き始め、床の上を小石がコロコロと動き出し、閃光が店内を埋め尽くす!
「「「!!!?」」」
[[[[[[[[[[ルイ様、泣かないで!!]]]]]]]]]]
「あ……」
驚きのあまり眼を大きく見開くのが精一杯で3人はあまりの事に動けずに居た。何故なら、ルイを十色の光の球が取り囲むように浮かんでおり優しく光を放っていたのだ。ファビアンはルイの言葉を思い出していた。あの時「天井に何か居たの分かりました?」と言っていたと。
[皆……来てくれたんだね……ありがとう]
[あいつ許さない! ルイ様足蹴にした!]
[万死に値する!]
[ルイ様大丈夫?]
[僕らがカティナを守るから!]
[ルイ様可哀想]
[ルイ様の優しさを利用するなんて、許せない!]
[殺す!]
[ルイ様、これからはずっと御傍に居ますから!]
[丸焦げにしてやる!]
[我ら十精霊、漸く眠りより醒め御傍に来ることが叶いました]
[デカグラム。そうか、10人居るんだったね。うん、いい名前だね。皆ありがとう、カティナは自分でよく考えて行動してくれたんだけど、僕の方が昔あった似た事を思い出しちゃったんだ。ははは、情けないね]
そう、この子たちは僕を慰めに来てくれたのだ。と同時に激しい怒りを宿していることが伝わってくる。それは眷属主である僕が辱められたから。そこは正直盲点だった。下手に出ればいいという頭しか無かったのが逆の結果を産んでしまったのだ。反省しなきゃ。
[皆、カティナの事を頼めるかい? 僕はまだしなきゃいけないことがある。カティナを迎えに行くのはそれからだ。それまでお願いしたいんだけど]
[俺が行く!][わたしが!][あたいが!][ぼくが!][おいらが!][私が!][ウチが!][ボクが!][あちしが!][ワイが!]
[あ〜ごめん、今は気が動転してて誰にお願いって選べないや。皆で頼めるかな? 但し、殺すのはダメ!]
皆が一斉に叫びだすので誰が言ってるのかさえ分からなくなってきたので、纏めてお願いすることにする。
[[[[[[[[[[任せて、ルイ様!!]]]]]]]]]]
[じゃあ、名前を呼ばれた人からカティナの所に言ってくれるかな?]
[[[[[[[[[[!!?]]]]]]]]]]
[あ〜その前に、何番目に名前を呼ばれたからと言ってそれが順位じゃないからね。精霊に上も下もないでしょ? 順番を決めたければ相談してね? さて、闇の精霊くん]
さっきまで悲しかったのにかなり気持ちが和らいできたのが解る。この子たちの御蔭だ。感謝しないとね。
[おいらです!]
淡黒い光を放つ光の玉が寄ってくる。中に居るのは黒毛のコアラだ。
[そう言えば進化してその姿になったんだと思うんだけど、性別はあるの?]
[厳密な性別はないのですけど、強いて言えば女子の姿をしている者が女、獣の姿をしている者が男と見て頂いて良いと思いますわ]
僕の問い掛けに黒毛のコアラではなく、淡白く光る球の中に十二単を着てちょこっと座っている可愛らしい幼女が答えてくれた。雛祭りに飾るお姫様みたいだね。白塗りはしてないみたいだけど、肌白いな。
[そっか、ありがとう。でも、一応聞いておくね。もう順位が決まってたりするの?]
[[[[[[[[[[これからですわ!]なの!]だよ!]です!]ねん!]だぜ!]]]]]
どうやらまだ見たいだね。せぇので答えてくれるから声も拾えないな。時間もないし、さくっといこうか!西洋風の名前ばっかり付けて来たけど、よく考えたら日本という感覚を何処かで残しておきたい気もしたから、精霊たちは日本風の名前にすることにした。
[改めて闇の精霊くん、さっきはありがとう。君の名前はクロだよ! 闇は漆黒だからね、僕の生まれ故郷の言葉で黒いって意味さ]
[クロ。ありがとう! ルイ様!! カティナの所に行ってくるね!]
淡黒く光っていた球が一回り大きく膨らんだと思ったら、ふっと消えた。どうやら向かってくれたらしい。
[次、光の精霊!]
[あい! あちしですわ!]
さっきの十二単の女の子が眼の前に来た。本当、幼い顔が可愛らしいね。笑顔がキラキラしてる気がするよ。そうだね。
[君の名前はサンだよ! 燦然と輝く太陽のような可愛らしい笑顔だからね♪]
[サン。ありがとう! ルイ様!]
淡白く光る球が一回り大きく膨らんで消えると思ったら、小さな唇が僕の頬に触れて消えた。え!? と思う間もなくだ。おませさんらしい……。
[次、火の精霊]
[わいや!]
関西系のノリなのか。しかも赤い羽根の鶏って。眼の前に来た淡赤く光る球の中に居た存在を見て吹き出しそうになるのを何とか堪えることが出来た。
[君の名前はスザだ。南方の守護朱雀の名前から取った名前さ。よろしくね]
[わいの名前がスザ。おおきに! ルイ様!!]
淡赤い光の球が一回り大きく膨らんで消える。ニワトリ君に頬を突かれたらどうしようと思ったけど、それはないんだね。
[次は水の精霊だ]
[あたいだよ]
淡青い光の球の中に水色のチャイナドレスに身を包んだ幼女が居た。頭にシンシアみたいにはっきり現れてる訳ではないが角らしき膨らみが見える。大人っぽく見せようとしてるのか両手首を曲げて腰に当ててる姿は可愛らしい。観ていて笑顔になるね。
[君の名前はセイだよ。東方の守護青龍からもらった名前だよ]
[青龍のセイ。ルイ様ありがと!]
淡青い光の球がこれまでと同じように膨らんで消える。その消える瞬間にまた頬に唇が触れてた。うん、嬉しいよ。ノーマルにね。
[次は風の精霊]
[ボクだよ]
ボクっ娘!? 銀色に光る球の中からそんな言葉が飛び込んできた。慌てて光球の中を見直すと、そこに居たのは巫女の衣装に身を包んだ、白髪の幼女だった。頭の上に猫耳らしきものが見える。手も白い毛で覆われた猫の手が変化したような手だ。これは決まりだね。
[君の名前はハクだ。西方の守護白虎に因んだ名前さ]
[ボクがハク。いいね♪ ありがとうルイ様!]
銀色に光る球も膨らんで消える前に僕の頬に口付けしていく。一応好かれていると思っていいんだよね?
[さ、次は地の精霊だ、待たせちゃったね]
[ぼくです!]
ボクっ娘の次はぼく! しかも強面なワニガメくんが僕!? いや、良いんだけどね。本当、さっきまでの胸の苦しみなんかどっかに行っちゃってるよ。淡黃に光る球がそう言いながら眼の前にやって来た。
[君はゲンだ。北方の守護玄武に姿が似てるからね♪]
[ゲン。ゲン。ありがとう、ルイ様!]
淡黃に光る球も一回り大きく膨らんでふっと消える。これで6人終わったね。そこまで吸い取られた感はないから、まだ行けるでしょ。さ、次だ。
[お待たせ。氷の精霊だったね]
[ウチの事かえ]
言葉遣いとスタイルが一致しないというのも凄いな。淡く限りなく朧げな存在で薄く光る球が近づいて来る。その中に居たのは青い肩掛けのないハイレグのレースクイーンコスチュームのような物を着た幼女だった。横になった氷柱の上に座ってる。それはある意味犯罪ですよ。同色のブーツと腿の半分辺りまで来るサイハイソックスらしきものを身に着けていた。頭には額飾りが光っている。青とも緑とも言えない白群色の髪に良く似合っていた。
[その額飾り、髪の色に良く似あってるね。そうだな、君はユキだ。雪の結晶はこの世に一つとして同じものはないって言われてる。ユキもそんな存在であると良いね]
[ルイ様。ウチ、この名前大事にする!]
淡く限りなく朧げな存在で薄く光る球も大きく膨らんで消えた。ユキも他の娘と同じように口付けを忘れずにしていく。
[次は雷の精霊だ]
[オレだ!]
元気の良いのが来たね。スザといい勝負なきがする。淡紫に光りぱりぱりと放電するものの中に、黒色っぽい毛艶の子ゴリラが居た。は? ゴリラ? でんでん太鼓は背負っていないね。ちょっと残念。光の反射で黒というより紫に近い感じがする。何だっけ? 滅紫? 紫の濃い色の毛のようだ。
[うん、元気があって良いね! 君はデンだ! 雷のことを僕の生まれ故郷では雷電という言葉で全部を纏めてるんだ。そこから取ったんだよ]
[雷電のデン。うん、気に入った! ありがとうルイ様!!]
淡紫の光の球が大きく膨らんだ瞬間バチッと音を立てて消えるのだった。感電に気をつけなきゃね。あと2人!頑張らなきゃ!
[次は、樹の精霊にしよう!]
[私です!]
淡緑に光る球がすぅっと眼の前に流れてきた。見ると可憐な赤い花座に座った緑色のドレスを身に着けた幼女が座っていた。萌黄色の髪の上に小さなティアラが見える。この娘も可愛らしい。決して幼女を愛でる趣味はないけれども、思わず微笑みたくなる可愛さなんだ。
[可憐な花座に座った君は、ハナにしよう! 彩り豊かな花だけじゃなく、ひっそり咲く可憐な花もある。そんな物静かな雰囲気をハナに見たんだ]
[ハナ。素敵な響き。ルイ様ありがとうございます!]
ハナはそう言うと先に僕の頬に口付けして、それから淡緑に光る球を一段と膨らませるのだった。そしてふっと消えていく。特に順番はないようだけど……恥ずかしかったということかな?
[さ、ごめんよ。最後になったけど君は音の精霊だったね]
[そうです。わたしです]
最後に残ったのは淡く虹色に光る球だった。興味深いことにその中には小さなシロナガスクジラ。確かに鯨類は歌を歌うと言われてるからね。それにこの虹色、色々と意味がありそうだね。あと「十精霊」と名乗ってくれた声がこの子だった気がする。
[音には色々な意味が付されがちだけど、僕は音は楽しむものだと思ってる。僕の生まれ故郷では音を楽しむと書く音楽という言葉があるんだ。だから君にはラクという名前を付けようと思う]
[音を楽しむ、ラク。ラク。良い音色です、ルイ様]
淡く虹色に光る球は僕の周りをぐるりと一周し、一回り大きく膨らんでふっと消えるのだった。これで一通り名付けが出来たし、カティナの方も問題はないかな。しかしどの子の背中には神様を思わせる飾りのような小さな白い翼があった。一体何の意味が。
「ふぅ〜」
先程までの緊張感や感情の揺らぎ、そして名付けによって吸い取られた力で一瞬クラッと来たが、左手で近くの棚に手を掛けて何もなかった様に振る舞う――。ふと視線に気が付いて顔を向けると人ではなく別のものを見るかのような眼で見られていた。悪感情や恐怖は伝わってこない。つまり恐れではなく、畏れ……と言うことだろう。
「おめぇ一体何者だ? あの光の球は?」
「――ルイさん、あの、何ともないのですか?」
「――初めて見ました。あれが精霊なのですね? ルイ様?」
「え、精霊!?」
3人の中で唯一正解に辿り着いたのがファビアンだった。そのファビアンの言葉にユリカさんが思わず僕の方を驚きの表情で更に見詰めてきた。さっきまでの驚きとは違う気がする。それを確かめるのは後でも良い。今ここでしなきゃいけないことは。
「精霊のことは内緒にしてくださいね。今日たまたま見えただけでしょうから。カティナのことはもう大丈夫です。後から迎えにいけることになりました。なので、まずは奥様を治療させて下さい」
「「「えっ!?」」」
驚くのも無理はない。先程まで悲しみに暮れていたのだから。
奴隷にされるということは、恐らく鷲の王国で黒竜討伐の旅の途中に手に入れた【隷属の首輪】を装着させるはず。でもあの時実験した結果、【精神支配耐性LvMax】だった僕は奴隷になることはなかった。カティナも同じスキルがある。一時とは言え別れは辛いけど、まだ挽回は効くはずだ。
デカグラムも居てくれるのだから。内心そう言い聞かせて、ぱんと両頬を自分の手で挟むように叩く。よし。まずは今出来ることからだ。
「カティナの事を気に病まないでください。辛い顔をされると僕も自分の判断のまずさを思い出して辛くなりますから。でも、今出てきてた彼らが守りに行ってくれましたから、もう大丈夫です。今はこちらで出来ることを優先させて下さい」
「でも……」
お金のことを気にしているのか? 高利貸に借りたのもそういう背景があったんだから、善意に対して臆病になるのも無理はないよな。ここで諦めたらカティナに合わす顔がない。しばらく頼み込み漸く2階に案内してもらえたのだった――。
◇
胸が締め付けられるかのように痛い。
ルイ様が足蹴にされているのを見るのも辛かったけど、ルイ様と離れるのがこんなに辛いなんて思わなかった。“森”で見送った時はこんな事なかったのに。
今わたしは何とかという貴族に腕を引かれている。こいつと行かなければ、ルイ様はもっと足蹴にされることになったし、きっと他の人にも迷惑を掛ける事になった。だからこれでいい。だけど、こいつは許さない。こいつはルイ様を足蹴にしてルイ様の優しさに付け込んだ。
店の前に自分の馬車を止めてなかったのは何か理由があったのだろう? 漸くそれらしき馬車が見えて来た。エトが引いてる馬車の方の勝ちね。
がちゃ
「入りなさい」
馬車の扉が開けられて貴族が背中に鞘に入った剣らしき物で背中を押してくる。あからさまに嫌な顔をしてやった。わたしが乗り込んだのを見て貴族の男が馬車の中に入ってくる。わたしの隣りに座って触ってこようとするから。
ぱん!
「わたしに触れるな!」
顔を叩いてやった。
「くっ! 1度ならず2度も。今度はわたしの顔を打っただと? くくくく、ますます躾け甲斐があるというものです」
「っつ!」
わたしの眼の前に抜身の剣先が突き付けられた。こんな密室だと逃げれない……。馬車も動き出してる。ルイ様怖いよ。
「良いですか、お前は立場が解っていないようだからちゃんと教えてあげよう。お前がわたしの言うことを聞かなければ、あの鍛冶屋の娘を襲わせる」
「!?」
「まだ言うことを聞かなければ、鍛冶屋の店を燃やす、それでも言うことを聞かなければお前の主だった男が王都で何も出来ぬようにしてやる」
そんな。ユリカたちにもう手は出せないと思ったのに!?
「卑怯者!」
「くふふふ、良い言葉ですね。さあどうするのです? まだ抵抗しますか? それとも諦めますか?」
「くっ! す、好きにすればいい!」
ルイ様、わたしどうすればいいの!? もうルイ様の所に帰れないの!? そんなのやだよ! わたしは貴族の男から顔を背けて眼をぎゅっと瞑るしかなかった。手を出せばユリカやユリカのお父さんに迷惑が掛かる。ルイ様にだってそうだ。ここでわたし独りが我慢さえすれば。
わたしの様子の変化に満足したのか、こいつは剣を片手に持ったままわたしの傍に座ると耳に手を伸ばしてきた。ルイ様とは違う嫌な触り方をしてくる。やだやだやだ。
「兎の獣人が手に入るとは、わたしもついてるな。毛並みもいい」
「ーーッ!」
「そんなに固くなるな。あの男よりお前を愛してやる」
「ーーッ!」
またルイ様を見下した!! 絶対に許さない! 怒りと恥ずかしさで頭が真っ白になりそうだった! キッと睨み返すと愉悦に浸った見下すような笑みを浮かべてわたしの胸に手を伸ばしてきた。やだやだやだ!
ルイ様!
[もう大丈夫だよ!]
何処からか声が聞こえた!
「えっ!?」
バチッ
「うわっ!? 何だ!?」
大きな音がしたかと思ったら、あいつが手を抑えていた。剣がガランと足元に落ちる。
【ユニークスキル:精霊語を習得しました】
「え!?」
聞いたことがない感情のない声が頭の中に響き渡る。え? 何? 精霊語!? 気が付くと眼の前に淡黒い光を放つ球があった。中に可愛らしい黒毛の動物が居る。
[やぁ、カティナ! おいらはクロ! ルイ様から頼まれて助けに来たよ! もうすぐ皆来るからね♪ まずは、武器を拾っちゃえ!]
[!? ルイ様から!? あ、うん!]
「あ、しまった!?」
クロと名乗った子からルイ様の名前が出てびっくりしたけど、胸の奥がほわっと暖かくなった。慌てて足元の剣を拾って眼の前に構える。明らかに狼狽してるのが伝わってきた。ルイ様は殺すなと言ったから殺さない。でも、許さないんだから!
「もうお前なんて怖くない!」
「そんなことして、あの家族がどうなるかわかっているのですか!?」
「そんな心配いらない! ルイ様が居る」
「な、あの男にそんな事が出来るわぎゃっ!!」
男がまだ話してる途中に叫ぶからびっくりした! 見ると淡白く光を放つ球が浮かんでいる。中には幼くて可愛い女の子が座っていた!
[ルイ様を足蹴にした男、万死に値する! あ、カティナ、あちしはサン。もう大丈夫ですわ♪]
そんな可愛らしい女の子がプンプンと怒っているのを見ると、わたしの怒りもなんだか少し和らいだ気がする。結局光の球は10個も現れて、現れた都度バチッっとやるもんだからあの男は息も絶え絶えになっていた。いい気味よ!
この子たちは【眷属化】した時にいた精霊たちで、話を聞くとついさっき【進化】から眼が覚めたらルイ様が足蹴にされてる、それで慌てて出て行ったらルイ様が泣いてたって教えてくれた。それを聞いて胸が熱くなる。ルイ様、大好き!
それで、ルイ様から順番に名前を付けてもらってわたしの所に駆けつけてくれたらしい。わたしも思わぬ形で精霊語を話せるようになったから、退屈しのぎには丁度いいね。この子たちも同じように怒ってて、何も言わなくても時々バチッてしてくれるからわたしは剣を持ってるだけ。あ〜ルイ様早く迎えに来てくれないかなぁ〜♪
◇
鍛冶屋の2階――。
「ごほっ ごほっ」
部屋の奥から咳が聞こえる。
「どれくらい前から臥せって居られるんですか?」
「3年になります」
僕の問い掛けにユリカさんが答えてくれる。咳が酷い時は息も出来なくなるくらいなのだとか。聴診器欲しいな。ベルントさんに後で相談してみよう。
「僕とユリカさんだけで部屋に入りますから、御二人は下で待ってて頂けますか?」
「何でだ?」
「恐らくですが(なんて言おう。結核は言葉として広まってないよな。あ、)労咳だと思います。労咳は人に移りますから」
「!? ろ、労咳。ほ、本当なのか? あいつはもう助からんのか?」
そっちは分かるんだ。事の重大さは伝わったみたい。
「まずは診てからでないと何とも言えません」
「――っ!」
「ユリカさん、いきましょう」
「は、はい! こちらです」
こんこん
「お母ちゃん、わたし。入るね?」
歳を取ってる2人には降りてもらって、ユリカさんに案内してもらう。ノックして見るが反応はない。気配はあるから部屋に居ることは分かる。ゆっくり扉が開くと部屋の中は薄暗かった。カーテンを閉めてるせいだろう。手にした蝋燭の明かりで足元を照らしつつ部屋に入ると、ぷんっと血の臭がした。
「ユリカさん、急いでカーテンを開けます! 手伝って!!」
「お母ちゃん!!!!!」
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