第6話 森の主
2016/3/29:本文修正しました。
2016/11/3:本文加筆修正しました。
2018/10/2:ステータス表記修正しました。
『主殿、今より我は貴方にお仕えしましょう!』
……Ohーーーー。
本気ですか? 僕は大蛇よりモフモフ兎さんの方が好きなのですが。
『『『『わたしたちの忠誠もお受け取り下さい!!!』』』』
おぃおぃ。何がどうなんてるの?
大蛇の隣に12匹のモフモフが並んで頭を下げている。あの中に包まれて寝たい。
『えっと。どうすればいいの? これ?』
『ふふふ。主殿といると退屈しないで済みそうだ。なぁに、主殿は今まで通りで良いのです。我らが勝手にお仕えするだけですから』
いや、そうは言ってもね?
『それと、済まなかった。謝って済むことではないとは分かっておるが、我を受け入れてもらえぬだろうか』
大蛇はそう言って大兎さんたちに頭を下げていた。ギゼラさん意外としおらしいな。男らしいといえば良いのか。本当は雌だから、姉御って感じなのか?
『襲われたことについて思うところが無い訳ではありませんが、結果はどうあれ我が血族は無事でしたので、謝罪を受け入れます。共にルイ様に仕えてまいりましょう』
エドガーさん、大人の対応ですよ! 素晴らしい! でも、12匹全員無事だったのね。エドガーさん一家大所帯だわ。
『おお、主殿のお名前か! 良い響きだ』
そうだろうか? 今まで言われたことないけど。
『ところでギゼラさん?』
『主殿、我の名は呼び捨てにして欲しい』
『う、わかった。ギゼラは誰に頼まれてエドガーさんたちを襲ったの?』
『ルイ様! 我らも敬称は不要でございます。ぜひ呼び捨て下さい』
ううっ、はい。なんかやりづらい。
『昨今、魔王と呼ばれる者たちが台頭してきているのを聞いたことはおありか?』
『ううん、初耳。世の中そんなことになってるのね』
そりゃ神様も勇者が欲しい訳だ。ん? ここでもたち?
『え? 魔王って一人じゃないの?』
その問い掛けに、皆一斉に首を振る。え、それって常識なの? 僕ここでも痛い人なの?
『衝突する者も居るが、大概住み分けしているはず。我はそのうちの一人からデミグレイジャイアントラビットを狩ってくれば側近にしてやろうとスカウトを受けたのだ』
『我らの毛は纏った者に隠形スキルの行使する権限を付与できる特性があるのです』
『ふぇ~。ユニークスキルが使えるようになるのならそれはハンターにとっちゃ美味しい話だね』
怖い話もあるもんだ。でも、こっちは向こうの常識が通用しないだろうからね。そういう意味でも早く慣れなきゃな。一年居たのに何してるのかって話だよ。
タッタラッタァァァッ~♪
おっと!? もしかして?
《レベルが上がりました!》
そうなるよな。
そっか、止めを刺してないとは言えギゼラの経験値を200レベル分【汝の研鑽を我に賜えよ】で吸い取ったんだからね。レベルも上がるでしょうよ。問題はどれくらい上がったかということなんだけど。
はい?
◆ステータス◆
【名前】ルイ・イチジク
【種族】レイス / 不死族
【性別】男
【職業】レイス・ロード
【レベル】153(+81)
【Hp】96353/96353(+54000)
【Mp】344000/344000(+180000)
【Str】3642(+1894)
【Vit】3461(+1814)
【Agi】3503(+1831)
【Dex】2727(+1426)
【Mnd】2611(+1369)
【Chr】1451(+761)
【Luk】1178(+614)
【ユニークスキル】エナジードレイン、エクスぺリエンスドレイン、スキルドレイン(New)、※※※※※、実体化Lv100、眷属化Lv1
【アクティブスキル】鑑定Lv100、闇魔法Lv100、聖魔法Lv100、体術Lv50、剣術Lv50、杖術Lv50、鍛冶Lv1
【パッシブスキル】闇耐性LvMAX、聖耐性Lv100、光耐性Lv100、エナジードレインプールLv1、エクスぺリエンスドレインプールLv1(New)、スキルドレインプールLv1(New)、※※※※※、融合Lv1、状態異常耐性LvMAX、精神支配耐性LvMAX
【装備】
【所持金】0
神様、あなた言いましたよね? チート防止の為にスキルは増やしませんって?
このドレイン、チート過ぎです。しかも何ですか、プールって。貯蓄できるじゃないですか。吸い放題、貯め放題って恐ろしい。
『あの、主殿?』
うおっ。ステータスとにらめっこしてたらその横に大きな顔が在って驚いた。御礼は言っておかないとな。
『あ、あぁ、ギゼラから貰った経験値のおかげでレベルが上がってね。ステータスの確認をしてたんだ』
摺り寄せるような感じで更に大蛇が顔を近づけてくる。見慣れると可愛らしい顔だよね? そう答えながら大蛇の鼻を無意識に撫でる。
『あ、あ〜〜』
『ん? どうしたの?』
『い、いえ、撫でられる事が今までなかったもので。その、主殿に撫でられると心地好く感じまして』
そのまま鼻を撫でてあげると大蛇は眼を気持ちよさそうに閉じるのだった。面白いな♪
『あ、そうなの? じゃあ、いっぱい撫でてあげないとね。経験値いっぱい吸っちゃったから』
『我の一部が主殿の糧になるのは喜びです』
『うん、まぁそうは言うけど、ある意味ズルだからね』
『しかし、我は主殿のような生霊には出逢った事がありませぬ』
『わたしたちもそうです。魔物を癒す力をお持ちの方など、聞いたことがございません』
と、エドガーさんが口を挟む。あ~それがあった。
『癒す?』
まぁ、ギゼラは見てないから解らないよな。
『論より証拠だね。ギゼラ、悪いけど体に傷つけさせてね?』
『勿論です。ですが、ここには刃が付いた武器がありませんが? 無いようですと、我の鱗に弾かれてしまいますぞ?』
『それは多分大丈夫。【実体化】! よっと』
改めて僕は実体化して、地面に降り立つ。
『『『おぉ~! 肉体が!?』』』
皆が同じように驚いてるのを見るのは、なんだか嬉しいね。頑張った甲斐があったってもんだ。ま、生身の鑑賞会じゃないからと、僕はその辺に落ちている枝を手にするのだった。何度か振って感触を確かめる。茨かな? 棘がついてる。
話は少しずれるかもだけど、笹の葉で手を切ることがある。その葉を顕微鏡で何気に見ると鋭い鮫の歯みたいなのが斜めにびっしりと並んでるんだ。そりゃ切れるよね。枝にはそんなものはついてないけど、幾分強度があるし、棘もあるから魔法で補強すればいけるんじゃない? という勘だ。さて、どうなるかな。
『【聖光付与】』
『『『『『!!!!!!!!!!』』』』』
何だろ? 大蛇でもめが大きく開くんだね。くわって。大兎たちも円な瞳とぽかんと開いた口が可愛い。いや、そうじゃなくてーー。
『え?何?』
『あ、主殿は生霊ですか?』
とギゼラ。
『そうだよ?』
『レイスはアンデッドですよね?』
とエドガー。
『うん、そのはず。今は肉体があるけどね』
『『『レイスが聖魔法を使えるなんて聞いたことがない!!』ありません!』ないです!』
おお! いっぱいツッコミをありがとう!
『うん、突然変異でね、偶然使えるようになったんだ♪ 本当は無理らしいけどね』
『当然です! 聖魔法使った瞬間に消し飛びますよ!?』
ギゼラ、可愛いね。 大蛇がこうあ゛~って口を開けた感じで、いやいやする様に頭を振りながら叫んでる。
『あ、主殿はどれだけ規格外なんだ』
『いや~照れるな。まあ、使い始めの頃は良く腕が飛んでたよ。だから言いたいことも解る』
『『『我らはとんでもないお方に救っていただいたのですね』』』
とんでもないとは心外だね。まあ、今は飛んでないけど。見ると、エドガーたちが皆で向かい合ってコソコソ話してる。大きな兎さんたちが顔を向かい合わせに集まって話してる様子は癒されるね。ほんと♪
『さてと、ギゼラ悪いけど、ちょっと我慢してね。なるだけ薄く切るようにしてみるから』
『え? 薄く? 木の枝でですか?』
『え? 木だろうが鉄だろうが、魔法掛かってるんだから魔法武器でしょ?』
振り下ろす練習をしながら、ギゼラに問い返す。うん、こんなものかな。合氣の剣術は基本剣で襲われたらどうするかという観点だからね。太刀筋を研究するのにこっそり剣道習ってて良かった。
シュッ パキッ
『そ、それはそうなのですが。つぅっ!!』
『『『えっ!?』』』
枝の先が霞んだかと思った次の瞬間、ギゼラの腹が割け、鮮血が飛び散る。枝で斬れると思ってなかった面々が傷を凝視してる。嘘でしょ? っていう声が聞こえてきそうだ。枝の方は強度が足らなかったみたいで折れてしまった。まぁこれから先も使い続けるわけじゃなく、この後行う事の準備で使ったんだから問題ない。
『木の枝で斬られたのは生まれて初めてです』
『初めてで上手くいってホッとしてるよ。ちょっと待っててね。【静穏】』
そう言って枝をその辺に放り投げると、僕はギゼラに右手を翳すのだった。掌から淡暗い光が発せられた次の瞬間、ギゼラの傷跡はみるみる塞がっていったのである。
『こ、これは。主殿?』
『えっと、ここで生活するつもりなら1つだけ約束を守ってほしい。約束が守れない者は僕も守らない』
『『『『仰せの通りに致します!』』』』
我に帰った皆が傅く。ギゼラの傷も治ったみたいだね。ま、これくらいなら放っておいても治るだろうけど。実演が目的だったから。
『この癒やしの力も含めて、僕のスキルを故意に口外しないこと。不可抗力の場面もあるだろうから、誘導や挑発に乗って思わず話してしまったという事をなるだけ避けて欲しい。魔王とかに目を付けられたら面倒だからね。できれば降り掛かる火の粉だけ払って皆と静かに暮らしたいんだ』
『魔法で強制されないのですか?』
誰だっけ? エドガーの家族が尋ねてくる。今度しっかり教えてもらおう。しっかり覚えなきゃ皆同じに見える。
『なんでそんな事を? 力で抑えつけたら、秘匿情報なんてあっという間に千里を駆けるよ。それこそ自分が知らない内にね。それにこれから一緒に暮らすんだし、信頼しなきゃぐっすり寝れないでしょ? だからこれは命令じゃなく、お願いなんだ』
皆の視線が痛い。間違ったこと言ってないよね? あってるよね?
『よろしくお願いします』
呆然としてる皆に軽く頭を下げる。
『ふふふっ♪ 何から何まで変わった主殿だ。だからこそ仕える歓びがあるというもの。仰せの通りに致します』
『我らも元より同じ気持ちでございます。『『『仰せの通りに致します』』』』
こうして僕は12匹の大きなうさぎさんと、1匹の大蛇を仲間にしたのだった。“帰らずの森の主”が誕生した瞬間であったーーーー。
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2016/2/3:鑑定スキルをパッシブからアクティブに訂正しました。