第66話 王都へ
2017/9/23:本文魔法名を変更しました。「ウォール」→「シールド」
「御父様、わたくしも王都に参ります!!!」
「コネリア様、お待ちくださいませ!」
「ジル!?」
女の子の後を追ってジルが小走りに部屋に入って来てお辞儀をする。ジルの眉間に皺がよってる処を見るとどうやらこれからの予定を話したみたいだ。大方このまま居て欲しいと駄々をこねたのを諦めさせる為に王都という言葉を使ったんだろうけどね。裏目に出ちゃったかな。
「コネリア、こんな夜中に何を騒いでいるのだ」
デューオ様は落ち着いたもので、静かに娘に話し掛けている。本当勉強になるな。
「ジルに聞いたのです。ジルたちはこれから王都に行くのでここに留まれないと」
「コネリア。駄々をこねてはダメだ。ジルは今は他家に仕える身、お前の我儘は通せぬ」
父親の言葉を聞いて、キッと幼い女の子が僕の顔を睨みつけてきた。あらら、大好きなジルを取り上げたことになったかな。最初から印象が悪くなりそうな気配だ。まずはご挨拶を。
「御初に御眼にかかります。ルイと申します。ジルはわたしの大切な家族、長くお嬢様の下に留め置けなくて心苦しく思います」
すっとソファーから立ち上がり、コネリアに向き直ってゆっくりとお辞儀と挨拶をするのだった。角度はフィデリオさんと同じくらい。45度で良いかな。それから顔を上げてにっこりと微笑む。
「お詫びと言っては失礼かも知れませんが、御父上の御許しが頂けるのでしたらご一緒に王都へ参りませんか?」
「な!?」
女の子の驚いた顔も面白い。あ、ジル、泣いちゃダメだよ!何に反応した!?思わず眼に涙を溜めているジルと眼が合って焦ってしまうがジルにも笑いかけておいた。落ち着いてね?
「御父様!?」
「やれやれ、本当にルイは貴族ではないのかね?そこらの下級貴族よりよっぽど堂に入ってるぞ?」
「然様に御座いますな」
デューオ様の言葉より、フィデリオさんの言葉の方が嬉しかったりする。僕の仕草を真似てカティナも立ち上がり、シンシアと一緒にぺこりとお辞儀をするのだった。
「兎の獣人ですの!?」
「コネリア」
「は、はい!」
父親の言葉にカティナに向いていた視線が元に戻る。
「急いで支度しなさい。母さんにまた暫く逢えなくなると泣いていたのだ。今度は母さんを驚かせてやってはどうかな?」
「は、はい、御父様ありがとうございます!ルイ様も感謝いたしますわ!ジル、支度します。手伝ってちょうだい!」
父親に居残るように言われる覚悟で直談判にやって来たものの、思わぬ助け舟で願いが叶ったコネリア様は嬉しそうに自室へと小走りで戻って行くのだった。ジルを呼ぶことを忘れない所を見ると、ジルが姉妹のように接してきたんだろうということが分かる。ジルの心配そうな表情に再び笑いかけて、時間だけ告げておく。これなら問題ないだろう。
「うん、ジルもなるだけ手早くね。半刻以内にお願い」
「畏まりました、ルイ様」
そうジルもお辞儀をしてコネリアの後を追うのだった。
「流石だな。娘の心も掴むかよ」
「!?まさか、そんなつもりはさらさらありません。ただ嫌われたままではまずいなと思っただけです」
背中から掛けられたデューオ様の声に慌てて振り返って弁明する。何恐ろしいこと言ってるんですか!?と思ったら悪戯顔でにやりと笑われた。やれやれ。
「で、我々はどうすれば良いのだ?」
「荷物があるようなら馬車の屋根に固定しましょう。それ以外は不要です。馬車もわたしが乗ってきた馬車を利用しますので。あ、王都に入るためにデューオ様の家紋が入った旗が必要なら一枚お借りできれば助かります」
「そんなものはいらん。俺が顔をつなぐ」
流石です。辺境伯は逞しくなくてはならないのですね。この後簡単な打ち合わせをして、僕たち3人は先に外で待つことになった。このタイミングでシンシアを抱き締めて労っておく事を忘れない。この後も馬車を抱えて飛んでもらわないといけないからね。その事もお願いすると快諾してくれた。大事にしなきゃね。
40分後…。
僕たちは馬車に揺られていた。もともと大きくなった造りの御蔭で十分座るスペースが確保されたので、シンシア、僕、カティナが後輪側、ジル、コネリア、デューオが前輪側の席に座って向かい合っていた。エトとフィデリオさんは揃って御者席に着いてくれている。
街の外に出てしばらく経つまでは馬車で行くと伝えておいたので、特に突っ込まれた質問をされることもなく無事に街を出て夜空の下の砂利道を進んでいた。
「そろそろかな。シンシア、ジルちょっと準備を手伝ってくれる?」
「「はい」」
シンシアはデューオ様たちの前では口数が少ない。コネリア様に至っては、ぼーっとそんなシンシアの顔を凝視していたくらいだ。うん、すっごい美人さんだよ、シンシアは。人見知りなのかな?僕の時はそうは感じなかったけど…。
「少し待っててくださいね。出来れば外を覗かないで頂ければ嬉しいです」
「分かった」
デューオにそう言ってフィデリオさんにも馬車の中に入ってもらう。ジルに確認を取った処【風盾】の壁の形状も変えれるそうなので馬車の前に三角柱状態に張ってもらうことした。エトには馬を仕舞ってもらう。【風盾】も定期的に掛け直せば問題ないそうなので、無理の無い範囲でそうしてもらうことにした。
エトに御者席に戻ってもらい、僕とジルが馬車の中に戻ったのを確認してシンシアに竜に戻ってもらう。それからシンシアに超特急で王都に運んでもらう事にしたのだ。飛行機ではないものの、魔法の力を借りた飛行速度も眼を見張るものがある事はアンジェラさんたちから教えてもらえた。ま、それで思いついたんだけどね。
がたん
「うおっ」「きゃっ!」「大丈夫ですか、コネリア様?」
馬車が大きく揺れて事情を知らない3人が動揺する。しかし次の瞬間には何事もなかったように馬車は安定するのだった。揺れも殆ど無い。けど…誤算はあった。ドラゴンからエルダードラゴンへとランクアップしたシンシアの飛行速度は僕の予想を上回っていたのだ。
3時間は掛かるだろうと見ていた距離を、飛行機の速度とかわりなく飛んでみせたのであった。凡そ90分で。ひえぇぇぇ。勿論竜のまま王都に入るわけもいかず、王都自体何らかの魔法障壁で守られているであろうと予想して王都の明かりが見える辺りに馬車を下ろしてもらう。
「信じられん。1ヶ月は掛かったあの道程は何だったのだ」
「御父様、あれは王都なのですか?」
「どうやらそうらしい。俺はまだ夢を見ているのか?いや、そもそもルイに逢ったのも夢だったのか?」
いえいえ、僕はここに居ますよ。しかしそろそろわたし口調に疲れてきたな。一応辺境伯に気を遣ってわたし口調にしてるんだけど、何処まで踏ん張れるかだね。
「何を言われてるんですか。馬車に乗ってください。真夜中なので相当に怪しまれるでしょうし、野盗が居ないとも限りませんから」
馬車の外に出てあと2キロ少々くらいの距離に見える王都を見てアッカーソン親子が呟くのだった。無理もない。でも時間も限られてるから馬車に押しこむのだった。初めと同じ席順で、エトとフィデリオさんに御者席についてもらう。王都の門衛と話をする上でもそのほうが助かるしね。
「しかし、ルイよお前は何者なのだ?」
「はぁ、引き籠もりをこよなく愛してやまない変わり者ですよ」
「まぁいい。詮索はすまい。好奇心は虎をも殺すというからな」
猫ではないのか。虎もネコ科だけどね。虎を竜に変えても異世界では通じそうだ。ま、いずれはバレちゃうだろうし。隠し通すのも限界がある。次の手を考えておかないといけないかも知れないね。
こうして揺られること10分。王都の南門に僕たちは到着した。
「止まれ!こんな真夜中に何者だ!!」
ま、当然そうなるわな。
「アッカーソン辺境伯の馬車です。急用で戻って参ったために斯様な時間になってしまいました。お通し願います」
「辺境伯だと!?莫迦な事を!1ヶ月前にお帰りになられた辺境伯が蜻蛉返りでこんな時間に来れることなどありえん!」
フィデリオさんが御者席から降りて門衛に事情を説明してるけど、予想通りの反応だった。
がちゃり
「そうでもないのだがな」
「?・・・あ、アッカーソン辺境伯閣下!?」
馬車の扉を開けてデューオ様が姿を見せる。顔パスととはこう言うことだろう。ただ、流石は王都、すんなりは通してもらえないのは想定済だ。一行は全員詰め所の奥に通されて【魔法による身元照合】の掛かった水晶珠に手を置くことが求められた。当然僕たち4人も対策済みだ。
◆ステータス◆
【名前】ルイ・イチジク
【種族】人間
【性別】♂
【職業】モナーク
【レベル】1
【Hp】300/300
【Mp】80/80
【Str】19
【Vit】12
【Agi】13
【Dex】8
【Mnd】8
【Chr】7
【Luk】9
【アクティブスキル】鑑定Lv23、聖魔法Lv18、武術Lv15、剣術Lv10、杖術Lv9、
【パッシブスキル】聖耐性Lv19、乗馬Lv14、交渉Lv26、料理Lv8、採集Lv11、栽培Lv15、瞑想Lv38、読書Lv30、錬金術Lv27
転生して来た時に神様が、Lv10で達人と言っていたのを思い出し、かなり下方修正したのがこれだ。レベルがもともと1だったのでその面では良かった。
◆カティナ◆
【種族】デミグレイヘアー / 人兎族
【性別】♀
【職業】ソードダンサー
【レベル】1
【Hp】200/200
【Mp】200/200
【Str】21
【Vit】26
【Agi】43
【Dex】31
【Mnd】25
【Chr】30
【Luk】38
【アクティブスキル】武術Lv1、剣舞Lv1、二刀流Lv1
【パッシブスキル】瞑想Lv1、乗馬Lv1、採集Lv1
僕もそうだが、闇魔法に対する異世界の人たちの警戒心が分からないので今回は隠しておくことにした。獣人は元々基本ステータスが高いだろうからそのままにしてある。
◆ジル◆
【種族】人間
【性別】♀
【職業】ワルキューレ
【レベル】1
【Hp】621/621
【Mp】710/710
【Str】48
【Vit】83
【Agi】82
【Dex】41
【Mnd】58
【Chr】54
【Luk】44
【ユニークスキル】戦乙女の祝福
【アクティブスキル】風魔法Lv28、武術Lv1、槍術Lv10、剣術Lv28
【パッシブスキル】瞑想Lv1、交渉Lv1、侍女Lv81、風耐性Lv29
ワルキューレが上位職だった場合、ステータスに恩恵と取れるものが出てないと可怪しいだろうからあえてつつかなかった。
◆シンシア◆
【種族】 ジェットブラック/ 竜人族
【性別】♀
【職業】ルーン・ロードナイト
【レベル】1
【Hp】2505/2505
【Mp】2946/2946
【Str】251
【Vit】251
【Agi】283
【Dex】229
【Mnd】267
【Chr】189
【Luk】183
【アクティブスキル】闇魔法Lv68、火魔法Lv59、武術Lv47、剣術Lv71、盾術Lv65
【パッシブスキル】瞑想Lv1、闇耐性Lv68、火耐性Lv59
シンシアに至っては角を折る訳にもいかず、巻髪で隠すという案も考えたが如何せん角が大きいのと昔からこの手で人の街には入るように勧められていたとシンシア自身が教えてくれてこうなった。尤もシンシア自身はこれまで【偽装】スキルを持っていなかった為に試せずに居たのだとか。
◆エト◆
【種族】人間
【性別】♂
【職業】執事
【レベル】1
【Hp】170/170
【Mp】170/170
【Str】18
【Vit】15
【Agi】16
【Dex】10
【Mnd】14
【Chr】13
【Luk】6
【アクティブスキル】武術Lv1、
【パッシブスキル】交渉Lv1、執事Lv41
うん、エトは無難に纏まってるね。
困ったのは門衛で。
「モナーク!?ソードダンサー!?ワルキューレ!?竜人でおまけにルーン・ロードナイト!?」
「おい、ルイ…」
デューオ様も呆れ顔だ。
「な、なんでしょう?」
あれ?ひょっとまずかった?やっちゃった?
「お前、貴族じゃないと言ったな」
もうルイ殿→君→ルイ→お前になってる。う、なにか言われそうだ。
「い、言いました」
「モナークの何処が貴族じゃないんだ?」
「え?大公、公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵、士爵のどれにも当てはまらないから貴族じゃないのだとばかり」
「かぁ〜、まさかここまで浮世ボケした男とは思わなかったぞ。モナークは小国の王だ。どういうことだ?」
「王!?僕が!?」
あ、素が出ちゃった。聞いてないよ。どういう事?そう言えばランクアップするときに。
◆
【条件を満たしましたのでクラスアップ可能です。レイス・モナークにクラスアップしますか?はい/いいえ】
◆
って出てたね。つまり眷属=臣下が出来たから条件がクリアしたということなのか!?だから王!?やめてくれよ。
「自覚がないのか」
「前に話した約80名を養わなきゃいけなくなった時点でこうなった気がします。すみません」
「それも問題だが、ソードダンサーだのワルキューレだのルーン・ロードナイトだの、何処と事を構えるつもりだ!?どうやってこんな上位職の連中を集めた!?」
「え、勝手に付いて来てくれたので、結果こうなりました」
手篭めにしたとはコネリア様の前だから流石に憚られる。
「は?ダメだ頭が痛くなりそうだ。おい、お前たち。今日見たことは忘れろ。こんなのを見たと言いふらしたらお前らが尋問に遭うぞ?」
「「け、決して口外いたしません!!」」
「そのほうが身のためだ。俺は何もせんがお前らの家族を殺してでもこの情報元を探そうとする輩が蠢いているだろうからな。せいぜい気をつけることだ」
デューオ様の脅しにも似たアドバイスに門衛は最敬礼をして声を張り上げるのだった。つまりこのにもそういう輩が潜んでいるということか。政は何時の時代も清く正しく美しく、とはいかないのですね。怖や怖や。
一先ず【偽装】や【隠蔽】スキルで都への入都管理をパス出来る事が判明したので大きな収穫だね。ただ、毎回これだと面倒だね。
「毎回これをして入るのですか?」
「いや、今回は時間帯もあったからな。要らぬ疑いを持たれるよりも手っ取り早く身の潔白を証明する時は【魔法による身元照合】に限る。いつもは身分証明を提示すれば問題ない」
「身分証明?」
「これだ」
そう言って見せてくれたのは一枚の名刺サイズのカードだった。鉄製?何とも不思議な質感のカード状のものを手渡される。手渡されても使い方が分からないのでどう見たら良いのかもわからない。困った表情をデューオ様に向けると吹き出された。
「本当に知らんのだな。知らぬふりだと芝居を打ってくるかと思って渡してみたが、これはこれでおもしろ物が見れた」
僕を肴に遊ばない欲しいんですけど。
「これは王都で生活するものであれば誰もが持っているものだ。逆にこれがないものは魔物か、犯罪者か、田舎から出て来た者ということになる」
「え、じゃあ他国もこれと同じカードがあるってことですか?」
「何故そんなことを思う?」
「魔物、犯罪者、田舎者、そこに入ってないのは旅人。でも旅人なら田舎から出てくる人にも当て嵌まる。逆に当て嵌まらないのは、他国からの旅人かな…という消去法です」
「・・・・・・前に逢った時も思ったが、それほど学があるのなら家庭教師は要るまい?」
「いえいえ、偏った知識より、広く浅い知識のほうが世の中を上手く渡るためには必要だ、と僕は思ってます」
わたしというのももう疲れたから、素で行くことにした。勿論敬語はなるだけ使うつもりではいるけどね。それにしても辺境伯、鋭いよね。え、そんなとこが引っ掛かるの!?ってポイントが多い気がする。
「まぁいいだろう。貴族であれば王宮で手続きをすれば発行される。一般の者は市政を統括する役所で貰える。それ以外に冒険者ギルドでも発行されているな」
おお、ここに来て冒険者ギルドとか。ラノベの世界っぽくなってきたね!役所ね。王都だけど、王宮がすべてを治めている訳ではないということか。
「そうなのですね。例えば僕たちがそれを得ようと思った場合、何処で手に入れたら良いと思いますか?」
「・・・・・欲しいのか?」
「・・・・・あれば便利かな、と思ったくらいなんですけど。またにします」
少しの沈黙の後に尋ねられたので間を置いて答えておいた。そりゃあ、欲しいか欲しくないかと言われれば欲しいに決まってる!でも出来れば面倒なことはしたくない。って顔に出てたかな…?
「旦那様、夜も遅いことですし一度屋敷に向かわれて、日が昇ってから御出掛けになられてはいかがでしょうか?」
そんなことを思っていると、フィデリオさんが助け舟を出してくれた。これ以上話しているとボロが出そうだもんね。フィデリオさんの勧めに従って僕たちは馬車に戻り、アッカーソン辺境伯の所有する王都の屋敷へと馬車を向けるのだった。
この王都が実は馬鹿でかい。南門から入って貴族の屋敷が立ち並ぶ東区に向かうのに馬車で1時間もかかったのだ。しかも東区の端にアッカーソン辺境伯の屋敷があるという。王都ってどんだけでっかいんだ。
空の旅1時間、王都の中1時間。コネリア様やジルはお互いに肩を寄せあい、カティナは力尽きて僕の右肩に頭を預け寝ている。シンシアは何とか起きようとしているのだが、時折船を漕いで脱力した瞬間に眼が醒めているという感じだ。
僕は基本寝なくても大丈夫なのだが、デューオ様は堅く眼を閉じて何やら物思いにふけっているので話し掛けづらい。結局無言の拷問のような1時間が過ぎた頃、屋敷に到着したのだった。屋敷の者たちも主が真夜中に知らない客を引き連れて戻って来たのだ、大騒ぎになる。本当すみません。
「御帰りなさいませ、旦那様」
「こんな時間に起こしてしまいすまないな。客間を2つ開けてくれるか。ルイ部屋割りはそちらで頼んでもいいか?」
「はい、ありがとうございます。ジルはコネリア様と一緒にね?」
「はい、ルイ様」
そう言うと、ジルはコネリアを背負ったまま屋敷の2階へ上がっていくのだった。勝手知ったる、だね。
「それと旦那様、先日来奥様の容体が芳しく無く、先程まで瀉血を受けておられたのですがやはり効果が薄いようで」
は?瀉血!?治療行為で?肩こりの治療か?
部屋を充てがってもらえることが分かったので案内して貰うことにした。その時に侍女長らしき初老の女性がデューオ様に相談していたのだ。辺境の街で奥様を見かけなかったのはそういう理由がるのか。医療の進んだ街で身体を治す。瀉血で?まさかね。そんな中世のヨーロッパでやってたみたいに何でも瀉血で治るとか思ってたら怖いな。
瀉血というのは悪い血を抜くという考えから興った治療法の1つなんだけど、向こうの世界では特殊なケース以外見ることがない。僕もその場面に出くわしたことはない。知識として知ってるくらいだ。後は、せいぜい按摩屋さんでコリが酷い所に切り傷を付けて真空のカップを数分間被せる程度が一般的に知られてるかな?
「こちらでございます。朝食の準備が整いましたら様子を窺いに参ります。それまでどうぞ身体をお休めください」
「ありがとうございます。エトはこっちで1人ね。カティナとシンシアは先に入って休んでて」
「え?ルイ様は?」
「主殿が休まぬのなら」
「大丈夫、直ぐ戻ってくるから。屋敷から出るわけじゃないしね?」
そう言いながら、部屋の扉をあけて中には居るのだった。セミダブルのベッドが1つ見える。2人を一緒にぎゅっと抱き寄せて2人の薫りを吸い込む。
「シンシア大変だったろうに、嫌な顔せずに運んでくれてありがとう。先に横になっておくこと、いいね?カティナも明日からもっと忙しくなるから休まなきゃダメだよ?」
「「〜〜〜〜♪」」
それから2人を開放して部屋を出て玄関エントランスに戻る。やはりまだデューオ様はあの侍女長らしき女の人と話し込んでるようだ。難しい顔をしているのは、容体が良くないからだろう。
「デューオ様、奥様の容体、宜しくないのですか?」
「む、ルイか。そうなのだ。治癒魔法を掛けても1週間と持たん。すぐにぶり返すのだ。それで悪い血を抜けばと治療師に来てもらって瀉血をしてもらっていたのだがな」
「ちなみにどれほどの量を今日は抜かれましたか?」
デューオ様に代わって侍女長が答えてくれる。
「確か、1リットルほど」
「1リットルも!?体重は?」
いくら何でも瀉血のし過ぎだ。
「48㎏程だったと記憶しております」
「どうしたのだ、ルイ?」
女性の総血液量は体重1㎏に対し凡そ75mlと言われている。計算すると48kgの体重で3600ml在ることになるのだが、その半分1800mlが流れ出ると失血ショックで死亡すると言われているのだ。それがすでに1000mlも出てるとなれば直ちに止めさせなければ取り返しの付かないことになる。
「一刻を争います。僕を奥様の部屋に案内してください」
最後まで読んで下さりありがとうございました。
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