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レイス・クロニクル  作者: たゆんたゆん
第一部 エレクタニアの開墾 第一幕 黒き森
6/220

第5話 モフモフ親子

2016/3/29:本文修正しました。

2016/7/25:本文修正しました。

2016/11/3:本文加筆修正しました。

2018/10/2:ステータス表記修正しました。

 

 タッタラッタァァァッ~♪


 なんだこれ!?


 《レベルが上がりました!》


 は? レベルアップ!?


 そっか、【汝の露命を我に賜えよ(エナジードレイン)】を使ったとは言え、結果的に止めを刺してるから経験値が入ったのね。レベル100のモンスターだったし、どれくらいレベル上がったんでしょう?


 ーーはい?


 ◆ステータス◆

 【名前】ルイ・イチジク

 【種族】レイス / 不死族

 【性別】男

 【職業】レイス・ロード

 【レベル】72(+71)

 【Hp】42353/42353(+41353)

 【Mp】164000/164000(+163000)

 【Str】1748(+1717)

 【Vit】1647(+1609)

 【Agi】1672(+1629)

 【Dex】1301(+1271)

 【Mnd】1242(+1215)

 【Chr】690(+672)

 【Luk】564(+554)

 【ユニークスキル】エナジードレイン、エクスぺリエンスドレイン(New)、※※※※※、※※※※※、実体化Lv100、眷属化Lv1

 【アクティブスキル】鑑定Lv100、闇魔法Lv100、聖魔法Lv100、体術Lv50、剣術Lv50、杖術Lv50、鍛冶Lv1

 【パッシブスキル】闇耐性LvMAX、聖耐性Lv100、光耐性Lv100、エナジードレインプールLv1(New)、※※※※※、※※※※※、※※※※※、融合Lv1、状態異常耐性LvMAX、精神支配耐性LvMAX

 【装備】

 【所持金】0


 ゴシゴシ……。あれ? 視力落ちたかな?


 ゴシゴシ……。


 …………。


 あほかぁぁぁぁぁ!!! 誰だ! チート防止って言ってたやつは!!


 僕は頭を抱えて吠えた。


 72レベルでMpが16万超えてるってどういう事!?


 さっきのツヴァイホーンの方がまだましだは!!


 ガサ ガサ ガサ


 ん?


 おぉ!! さっきのモフモフ!!!


 草を掻き分けて近寄ってくる音が聞こえる。音がする方へ顔を向けると、そこには三匹の巨大な兎が(たたず)んでいた。まだ血の匂いがする……。


 『えっと、言葉解るかな?』


 『『『!!??』』』


 びっくりした感情が伝わってくる。可愛らしい顔をしていても、(わか)るもんだな。自動翻訳万歳!

 

 『うん、通じるようで良かった。えっとエドガーさんでしたっけ? 怪我してますよね? ちょっと見せてもらっても良いですか?』


 『え!? わたしの名前をご存知なのですか?』


 怪我をしているデミグレイジャイアントが言葉を返してくる。


 『あ、すみません。つい癖ですれ違った瞬間に鑑定スキルを使ってしまったんです。それで』


 『鑑定スキルを持っておられるのですか!? あの……あなた様は一体……』


 あれ? 【鑑定】スキルって珍しいのか? あんまり言わないほうが良い部類なの? そう言えばラノベで【鑑定】って隠す事が多かった記憶があるな。なるだけ注意しよう。


 『え? あぁ、しがない突然変異型の生霊(レイス)ですよ。ちょっと失礼。【静穏(ペインレス)】』


 『『え!?』父様の傷が治っていく……』


 『良し♪ これ大丈夫です! 追いかけてる奴は始末したので、あとは何処へでも好きな処に行けますよ』


 『『『…………』』』


 ん? 僕何か変なこと言っちゃった? 地雷踏んだ? (つぶら)な瞳で見詰めないで! お持ち帰りしたくなるから! おっと、平静を装わなきゃ。


 『えっと』


 『あ、あの、聞き間違えておりましたらすみません。あのツヴァイホーンジャイアントを始末なされたと聞こえたのですが……?』


 『うん、言ったね』


 『レベル100のツヴァイホーンジャイアントですよ?』


 『うん、レベル100だったね』


 『光魔法を使う巨大な熊ですよ?』


 『うん、光魔法も使ってきたね。僕まで届かなかったけど』


 『『『!!!!!!』』』


 『君たちを助けたのは、ほうっておくと眼醒めが悪いと思っただけで、取って食べようと思ってた訳じゃないから安心してください』


 『『『ありがとうございます!!!』』』


 『そんなに恐縮しなくても……』


 『いえ、そんな恐れ多い。あの凶悪なツヴァイホーンを難なく一蹴されるような方に助けていただけただけで何と感謝すればよいか』


 『あ、お構いなく。たまたまそこに居合わせただけなんですから』


 『あ、あの』


 お母さんらしい大兎さんが声を掛けてくる。


 『はい、なんでしょう?』


 『あ、あの、御尊名をお尋ねしても宜しいでしょうか?』


 御尊名って、どんだけ(かしこ)まればーー。


 『ルイです。鑑定は使ってないので良ければ御家族を紹介していただけますか?』


 『こ、これは失礼いたしました! わたしが家長のエドガーと申します。こちらが妻の』


 『アニタと申します』


 『娘の』


 『カティナと申します』


 エドガーさん、アニタさん、カティナちゃんね。うん、全く見分けがつかん! 辛うじてカティナちゃんが小さい気がするけど、動いてる時に見極めろと言われたら間違える自身が100%あるな。


 『それで、ルイ様』


 様つけられちゃったよ~。煩わしいけど、ここは我慢。短気を起こすんじゃないぞ、僕!


 『はい、なんでしょう?』


 『我らルイ様の下で生活したく思います。就きましては、この森に居を構えることをお許しいただけますか?』


 はい? ここに住むの? ま、まぁ人が増えるのは良い事だけどね。ひと……。人なのか? 兎だよね? でも、兎さんの住まいって?


 『えっと、その前に確認させてもらえるかな?』


 『はい、なんなりと』


 『君たちの住まいってどうやって作るの?』


 『穴を掘ります』


 ですよね~。樹の上での生活はその巨体には無理だし、草むらで寝てたら天敵にイチコロだわ。


 『ちょっと待ってね、聞いてみるから』


 『ーー? はい』


 モフモフ親子はなんの話をしてるのか解ってなさそうだ。ま、それはそれで良いんだけどね。という訳でこの辺りに居る精霊さんたちに聞いてみることにした。


 [皆、聞いてたかい? この兎さんたちがここに穴を掘って住みたいって言うんだけどね、大丈夫かな?]


 僕が問い掛けると、空中に幾つもの淡い緑色に発光する玉が現れる。


 [大丈夫だよ~。デミグレイジャイアント種は大人しいし、無闇(むやみ)に樹を傷つけたりしないだろうからね]


 [風通しが良くなれば、樹も元気になるしね]


 [ルイが居るなら大丈夫♪]


 [いや、勝手に責任者に仕立て上げないでよ]


 [[[[あははははは♪]]]]


 [じゃ、そういう事で宜しく。他の子達にも伝えておいてね]


 [[[[はぁ~い! まったねぇ~♪]]]]


 空中に現れた幾つもの淡い緑色に発光する玉は、僕の周りを楽しそうに旋回して、ふっと消えるのだった。大兎(おおうさぎ)さんたちは、ぽかーんと口を開けてる。


 いや、なかなか見れないよ? 大きな兎が三匹ならんで口を開けてぼーっとしてる顔なんて! 可愛い! 可愛すぎる!! お持ち帰りしたい!


 『精霊くんたちからも許可もらえたから、大丈夫! 好きなところに住んでくださいな♪』


 『『『…………』』』


 『あの、ルイ様。ルイ様は精霊ともお話が出来るのですか?』


 カティナちゃんが初めて口を聞いてくれた。幼さの残るような可愛らしい声だ。人間なら美少女じゃない? と想像してみるけど浮かんでくるのは兎の姿だけだった。バニーガールは違うよな……。

 

 『あ、うん。仲良くしてもらってるよ』


 『父様、母様。お許しが叶うなら、私ルイ様にお仕えしとうございます。お許しいただけますか?』


 『へ?』


 『ルイ様。娘がこう申しております。助けていただいた命、お返しするものは何もございませんが、我らが娘をお側に置いて頂けませんか?』


 『お願い致します』


 いや、お父さん、お母さん貴方たちはそれでいいんですか? ん? 待てよ? 異世界とはいえ、大きかろうが兎はうさぎ。単体出産はありえないのでは?


 『うん、まあ、断る理由もないけど、本当にそれでいいの? 君たち今3人(・・・)なんでしょ?』


 『『『!!!!!』』』


 『うん、まぁ何となくなんだけどね。僕が知ってる兎は基本3から多い時は12も赤ちゃんを産むんだ。それが当てはまるなら少過ぎだよ、ね?』


 『そこまでお見通しですか。御慧眼(ごけいがん)恐れ入ります』


 いや、だからそんなに恐れ入らなくても。それに大兎に畏まられるのも変だよ? (かしず)く兎。それを見下ろす生霊(レイス)。場面がシュール過ぎる。


 『実は、わたしたちの聚落(コミュニティー)があのツヴァイホーンたちに襲われたんです』


 ほぉほぉ。大変だったね~。ん? たち(・・)


 『ちょっと待って、じゃあ何? 群れで君たちを狩りに来たわけ?』


 僕の問いに三匹はこくりと頷く。なってこった。こんなに可愛いうさぎさんを。


 『緊急時の際にはこの森に逃げ込むようにと、皆に言い聞かせていましたが、わたしたち以外は辿(たど)り着けなかったようです』


 『なんでこの森なの?』


 『この“黒い森”は昔から別名“帰らずの森”とも呼ばれて、森の奥に迷い込むと戻れないと言われています。恐ろしいモンスターが居るからとも、森の主が居るとも言われていますが定かではありません』


 帰らずの森? そんな森に一年も居て良く無事だったね、僕。知らないって怖いわぁ~。


 『それに遮蔽物もあるので、わたしたちが逃げるための壁になってくれやすいというのもあります』


 大兎のエドガー(おとうさん)の言葉を聞きながら周囲に目を向ける。1年ここで生活していたとはいえ、無頓着だったことに気付かされた。言われてみれば低木がそこかしこに垣根のようにある。森の天井を覆うように伸びてる樹木はセコイアの樹みたいなのばかりだけどね。


 『なるほどね~。だから茂みを飛んで逃げてたわけだ。ん~根本的な質問だけどいいかな?』


 『はい』


 『何故君たちのコミュニティーが襲われなきゃいけなかったの? 彼らに何かしたの?』


 『奴ら急に襲ってきたんです!! わたしたちを逃がすためにゴーラ叔父さんが……』


 カティナちゃんが強く叫ぶ。よっぽど怖かったんだろね。可哀想に。なんだろう、アニタさんがカティナを舐めてるのを見ると癒される。慰めるといっても人間みたいにはできないもんね。ふむ。レベル50というのは魔物の中ではどれくらいの位置づけなんだろうか? さっきの大熊はレベル100だったし。人間は平均レベル10で達人だ。それ以上は英雄的な存在になるんだけどけど……。


 『ますます理解に苦しむね。という事はここも安全じゃないってことだよ? っ!?』


 そう言ってから、僕は大きな気配と殺気に気付く。


 『千客万来。エドガーさん』


 『はい』


 『二人の警護を任せても大丈夫ですか?』


 『っ!! はい。お任せ下さい』


 僕の言葉にエドガー(お父さん)が身構える。身構える? うん、ぐっと前足に力が入って大地をつかんだのが見えたからね。この森も真っ暗というわけじゃない。薄っすらとは見えるんだ。夜目があるわけじゃないからはっきりとは見えないけど、この暗さに慣れればそれなりに見えるのさ。


 『すみません。離れて襲われると眼醒めが悪いので、ちょっとだけ距離をあけて付いてきて頂けますか?』


 『あの、ルイ様?』


 『ん? カティナちゃん、大丈夫だからね。【闇の外套(ダークプロテクション)】、【闇の外套(ダークプロテクション)】、【闇の外套(ダークプロテクション)】』


 『すごぃ。わたしたちと同じ魔法なのにこんなに強靭になるなんて』


 うん、その褒め言葉は素直に嬉しいです。アニタさんもいざとなれば逃げれるようにしててくださいね。


 ザザザザッ ザザザザッ ザンッ!


 茂みを飛び越えて二匹のモフモフが現れる!


 『ジャック!! ヘルマ!!』


 『『!!!!! 父さん!?』御父様!?』


 ひゅ~知り合いというか、家族だねこれは。僕にはさっぱり見分けが付かないけど。まずいな。かなりでかいぞ!? この圧力。


 『皆、奥へ!! 来るよ!!!』


 僕の号令でうさぎたちは一目散に森の奥へ駆け出す。それがいい! 多分奥にはまだ(・・)来てないはず。時間をかけて包囲網を狭めるなら、少し時間が足りない。でものんびりもできないね。


 ザザザザッ


 っつ!! 大蛇!? でかすぎでしょ!? 頭だけでも3mはあろうかという蛇が出てきた! こりゃ大兎でも丸呑(まるの)みできるわ。さっきの大熊だったとしても余裕でしょ。


 【鑑定(アプリーズ)】!


 ◆スタータス◆

 【名前】ギゼラ

 【種族】フライングジャイアントバイパー / ジャイアントバイパー族

 【性別】♀

 【職業】ハンター

 【レベル】300

 【Hp】60000/60000

 【Mp】40000/40000

 【Str】7839

 【Vit】5427

 【Agi】7035

 【Dex】4379

 【Mnd】2010

 【Chr】1005

 【Luk】1608

 【ユニークスキル】温度感知Lv115、催眠Lv80

 【アクティブスキル】風魔法Lv60、体術Lv50

 【パッシブスキル】風耐性LvMAX、水耐性Lv20

 【装備】


 出鱈目(でたらめ)だね。最早どうでもいいって思ってるね、これ。こんなのが冒険を始める街の周辺にいたら冒険出れないよ? 詰んでるね。レベル300だよ!? 僕は? さっきレベル上がったから72。軽く人の枠を超えてるんだけど、理不尽極まりないな。


 というか、名前がもろ飛びます! って言ってるんですけど? 温度感知に至っては100レベル超えてるし。どうする? 対峙した瞬間に襲い掛かってこないんだったら先手必勝だ。


 【影縛り(シャドーバインド)


 『間違ってたら申し訳ない。あのうさぎ狙ってたのかい?』


 しゅるしゅる……


 うはっ舌で調べてる。ちろちろ動いてる赤い舌はあんまりいい気味がしないね。どこに翼みたいのもの仕舞ってるんだろ? はぁ。魔法を掛けて動きを止めてから聞く質問じゃないよな。第一印象最悪だろう。冷静に話をするのは無理だろうな。僕が同じ立場なら無理だ。でもーー。


 『出来ればあの大兎たちを譲ってもらえると嬉しんだけど。どうかな?』


 『ボッソを殺った奴だな』


 ぼっそ? ああ、あの大熊の事!? ーーげっ、バレてら。仕方ない開き直るか。


 『うん、ここウチの庭でね。悪いけど余所でやってくれない? っお願いしたんだけど、逆ギレされちゃってね。僕も死にたくないから、始末しちゃったの。お友達だった?』


 『ふん! 奴の代わりなど幾らでもおるは。面白いやつだな。我の部下になれ』


 しゅるしゅると舌を出しながら大蛇が首を揺らす。何処から言葉が出てるんだろうね?


 『僕が? その見返りは?』


 『力と栄誉』


 『はぁ、くだらない』


 『なに?』


 『くだらないと言ったんです。そんなものより、僕はあのモフモフと戯れていたい。だから帰ってくれません?』


 シャーっ!!


 うわっ! 怒らしたか? 口を大きく開けて跳びかかろうとするもののびくんと体が地面に張り付いて動かない。ほっ、魔法が効いてる。


 『我をこの場に貼り付かせるとはなかなかやりおる。だが、良いのか? そろそろ拘束時間が切れるぞ?』


 意外にも饒舌だね。何かを待ってるな。さてどうする……これ? 先回りしてる奴がいるのかも。


 『そうだね。じゃあ、背中に張り付いてうさぎさんを追いかけようかな』


 『何!?』


 僕はそいうと、大蛇の首の後ろに回り込む。魔法でも使うと思った?


 『ドレインされないだと!? 貴様何者だ?』


 僕に張り付かれた大蛇は驚きで体を震わせたけど、違う意味で驚いたみたい。ああ、そうだったね。この世界の常識では生霊(レイス)にさわられた時点でドレインされるらしいからな。何て言ったっけ? ああ、相談相手居なかったから正式な呼び方知らないは。


 『あはは! 僕はね、突然変異の生霊レイスなんだ。だから普通はレイスが仕えるスキルが思うように使えないのさ。僕に殺されてもレイスにならないから恨まないでね?』


 『くはははは! 面白い!! ならば、兎を喰らった後でお主を成仏させてやるとしよう』


 『そりゃどうも』


 大蛇の胴体がしゅるしゅると動き始め、蜷局とぐろを作る。これで飛ぶのね。と言うか、全長20m近くないか? お腹が膨らんでる部分もあるから、丸のみされてそんなに時間経ってないのかもね。


 おっ! 脇に羽のような腹鰭(はらひれ)があるじゃん! なるほど、ジャンプしたあとこれで滞空時間を稼ぐのか。背鰭(せびれ)もあるようだし、面白い作りだな。


 さてと、勝負は一瞬だぞ……。やるしかないね。


 【実体化(サブスタンティション)】!


 『ぐうっ! 質量だと!?』


 飛び出そうとする瞬間に合わせて生身を着ける。あのまま霊体のままだと取り残される危険があったからね。霊体。何て言ったかな? あすと……忘れたな。まあ今は良い。集中しなきゃ!


 ザンッ!!!


 大蛇が全身のバネを効かせて飛翔する! 森の中を低空飛行する姿は圧巻だ! 僕の体重は在ってないようなもんだな。それにしてもこれは怖いね。大蛇が飛んできたら吃驚(びっくり)し過ぎてからだが固まっちゃうだろうな。後ろから来たら尚更(なおさら)だは。


 お! 走ってるって、また増えてない? はっ? 10匹!? ええぃ、ままよ!


 『ギゼラさん、悪いね。【黒珠(ダークボール)】』


 僕の詠唱でバスケットボール大の黒い球が20程空中に現れ、大蛇の体に吸い込まれていく。ビクンビクンと体が跳ねるが飛ぶことに支障はなさそうだ。


 『なっ!? 意識が削られる!?』


 うさぎたんたちの右側に、別のツヴァイホーンが見える。僕の精神攻撃でぐらついた大蛇の隙を利用して反撃に出る!


 『も1つ悪いね。ちょっと勢いを利用させてもらうよ?』


 実体化した体でくるっと口元に降り、僕は襲いかかるために開けてた下顎を両手で掴む。あとは重心操作であの熊さんの方に流すだけだ。ぞっ! と♪


 【解除(リリース)】!


 と同時に土の塊が地面にドサッと落ちる。エドガーさんたちは何故か立ち止まってこっちを見てる。いやいや、逃げなきゃ!! ってそんな暇は僕にはないよね!


 ギャオウゥゥッ!!!


 思惑通りに大蛇が熊さんを(かじ)ってくれてる。この間に、ね! 試しちゃうか。


 すぅっと大蛇に近づいた僕は、新しいスキルを試してみることにする。


 【汝の研鑽を我に賜えよエクスぺリエンスドレイン】!


 おお!! 見るみる大蛇のレベルが下がってくる!! ていうかこのドレインもチートだよね?


 『ぐおっ!? 何だ? 力が吸い取られる!? 貴様!? ドレイン出来ぬのではなかったのか!?』


 『一言もそんなこと言ってませんよ? “思うようにスキルが使えない”と言ったのを勝手にギゼラさんが勘違いしただけでしょ? さて、引きますか? 引かなければ。このままレベル1にしてしまいますよ?』


 『待て! 待ってくれ!! 我の負けだ』


 『ん~飲み込んだモフモフも吐き出してもらえます?』


 『わ、分かった吐き出そう。くっ精神が削られてなければ』


 『無理ですね。その素振りを見せたら容赦しませんよ? 出来れば殺したくはありませんから』


 『甘いな』


 『ええ、大甘です』


 大蛇の腹が脈打つ。先に咥えていたツヴァイホーンは吐き出されるものの瀕死で横たわってる。毒蛇(バイパー)の名を冠するだけあって、きっと猛毒を受けたのだろう。僕のモフモフに手を出そうとするからだよ?


 そうこうしてると、ギゼラさんの口から二匹の唾液まみれのモフモフがぼとりと落ちてくる。二匹ともお腹が上下に動いてるから命はあるみたいだ。ほっ。


 『これでよいな?』


 『うん、ありがとう! お詫びと言ってはなんだけど、そこの熊さん上げるよ。200ほど吸い取っちゃったけど、吸い取ったものは吐き出せないみたい。だから御馳走様でした』


 『ふん、恐ろしいやつめ。貴様本当に生霊(レイス)なのか? 先程重さを感じたぞ?』


 『あぁ、僕のユニークスキルでね。実体化できるんだ。 これがあれば兎さんとモフモフし放題さ!!』


 『ぶっ! わははははははは!!』


 ええっ!? どうした!? 吸いすぎておかしくなったぁ? そんな弊害(へいがい)があるの!? このスキル!?

 

 突然大蛇が笑い始めた。


 いや、びっくりするでしょう。


 エドガーさんたちも介抱してるのに、腰抜かしてるよ?


 僕の前にギゼラさんがズリッと体を動かす。綺麗な蜷局(とぐろ)を巻き始めるのだが、敵意はなさそうなのでそのままにしておいたらとんでもない事を言ってきた。


 すっと、僕の前に頭をたれたギゼラさんはこう言ったんだ。


 『主殿、今より我は貴方にお仕えしましょう!』

 










 ……Ohーーーー。


最後まで読んで下さりありがとうございました。

ブックマークやユニークをありがとうございます! 励みになります♪


本当に感謝です!


誤字脱字をご指摘ください。


ご意見やご感想を頂けると嬉しいです。

宜しくお願い致します♪


2016/2/3:鑑定スキルをパッシブからアクティブに訂正しました。

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