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レイス・クロニクル  作者: たゆんたゆん
第三幕 鷲の王国
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第49話 硫黄香る

 

 ひとしきり笑った後、王はシンシアではなく僕の方を見て言い放ったのだった。


 『委細承知!』


 委細承知って、キャラ変わりました? 王様大丈夫?


 「主殿、王は何と言ってるのだ?」


 言って良いのかな? まぁいいよね。


 「委細承知だって。謝罪を受け入れてくれたんじゃない?」


 「本当か!? それはありがたい! 感謝する!」


 「はぁ、御目出度い方ですわね」


 シンシアが心配そうに僕の顔を見詰めてくるので一先ずそのまま伝えてあげた。そこまでは良かったんだよね……。ぱぁっと可愛らしい笑顔になって王の方に振り返り素早く頭を下げたシンシアの横でディーが余計な一言を言っちゃうもんだから。


 「ちょっとディー!」


 「お前には聞いてない!」


 「お前って(わたくし)にはディードという名前がありましてよ! まったく脳筋娘はこれだから」


 「誰が脳筋だ? 我にはシンシアという名がある! 蜘蛛の分際で」


 「ギゼラ、アピス! そこで笑ってないでちょっと手を貸して」


 「ルイ様申し訳ありません。無理です」


 「マスター、わたしたちでは手に負えません」


 と二人が軽く会釈した。リンに至ってはギゼラの後ろで震えてる。


 えええっ!? そんな冷ややかににっこりしなくても。なんでこうなった? 睨み合う2人を笑う者、怯えて見る者、距離を取る者、武器に手を掛ける者、色んな人の反応が混ざり合って謁見の間がざわざわとし始める。あ゛〜もうっ!


 「静かにしないと怒るよ?」


 「「ひっ!」」


 ざわっ


 ちょっとだけ威圧を洩らしながら低い声で注意する。うん、本当は僕がちゃんとケア出来てないのが悪いんだから後で埋め合わせるからね。今はごめん。一瞬ビクッとなる2人の背中を撫でてあげながら微笑んであげる。威圧は引っ込めてるから大丈夫だよね?


 ふと眼を上げると王様も引き攣った笑顔をしていた。あ、ごめんなさい。ペコリと頭を下げておく。


 『そ、それで今後の予定だが、ルイ殿はどうするおつもりかな?』


 『あ、すぐにでも帰りたい処ですが、できれば空いている部屋で一泊させて頂いて次の日に発てたらと考えています。お許しいただけますか?』


 『それならば、前回の失礼を挽回する機会を我に与えてはくれまいか?』


 『と、申されますと?』


 『晩餐に招待したい』


 『はぁ』


 正直気は進まない。いい思い出がないからだ。でもアンジェラさん達の方を見ると参加してください! と眼で訴えているので。


 『分かりました。謹んでお受け致します』


 『そうか! ありがたい! 皆聞いたか、今宵はルイ殿達と交友を深める宴とする。励むように!』


 『『『『はっ!』』』』


 『ガレット、ルイ殿たちをご案内するように』


 『畏まりました。陛下』


 僕の返事に安堵する溜息がそこかしこで聞こえてきたのだが、気付かなかった振りをしてアンジェラさんたちに笑顔で会釈しておく。そんな事をしているとガレットさんがストレートに長く伸ばした金髪を揺らしながら嬉しそうに傍に歩み寄ってきた。碧い眼がキラキラしてるように見えるのは気のせいかな?


 『ルイ様、皆様どうぞこちらへ』


 『あ、はい。ガレットさんよろしくお願いします』


 『嫌ですわ、ルイ様、ガレットと呼び捨ててして下さいませ』


 『ちょっ、ガレットさん近いですって! 話がややこしくなるから離れてください』


 『……』


 『そんな顔をしてもダメです。ほら、王様が見てますよ、案内してください』


 『は、わたしとしたことが、申し訳ございません。こちらでございます』


 ガレットさんに頭を下げたのは良かったのだけど、どうやら彼女も肉食系のようで自己アピールを忘れない。いや、綺麗な人に言い寄られるのは男として悪い気はしないのだけど、背中に刺さる5人の視線が痛いんだ。外の事より今は内側のケアが大事!


 じとっとした視線の持ち主たちたちに引き攣りそうな笑顔を振り撒いておいてガレットさんの案内に付いて行くことにした。ディーが繭を作った大広間ほどじゃなくていいから、人数が入る大きな部屋が良いな。




 歩くこと10分。


 結構宮殿の中を歩いたよ?僕たちは一つの部屋に案内された。お広間の時のような両開きの扉だけど、扉はあの時ほど大きくはない。期待できるかな?


 『大変お待たせいたしました。こちらでございます。晩餐の用意が整いましたら声を掛けさせていただきます。その時までどうぞお寛ぎ下さいませ』


 背中に翼が着いていることを忘れるくらい優雅に翼人(よくびと)のガレットさんがお辞儀をする。ちらっと僕の方を見て来るけど、欲しい言葉は出さないよ?


 『案内ありがとうございました。それと旅の装備、本当に助かりました。感謝します』


 『いえ、当然の事をしたまでで御座います。それでは失礼致します』


 ガレットさんを見送ってから振り返ると5人は居なかった。あれ? 何処行った?


 「マスター♪」


 アピスの声に気付いて部屋の中を覗くと居た。あ、先に入ってたのね。結構広い。ん? 奥に続く扉があるけど。5人が入った所にあるソファーに座って寛いでるのを抛って置いて扉を開く。


 ガチャ


 あ、これはまずいかも。


 ぱたん


 「ルイ、何故すぐ閉めたのですの?」


 ディー目敏(めざと)い。


 「あ、いや、何でも無いよ。ちらっと見ただけだから」


 「わぁ〜♪ ルイ様、凄い大きなベッドですね♪」


 「なっ!? ギゼラ!?」


 「「「「えっ♪」」」」


 「ちょっ、みんなまっ、おわっ!」


 ギゼラがいつの間にか背後に回って扉を開けていた。ギゼラさんそんなスキル持ってた? 気配に気付かないってどういう事!? とか思う間もなく、他の4人が僕を押しのけて隣りの部屋に雪崩れ込む。今語尾に♪マーク付いてたよね?


 「シンシア、貴女鎧をいつまで着けているつもりですの? いい加減に脱いだらどうなのです」


 「こ、これは我の下着のような物だ。そんなに簡単に脱げるものか」


 「でも、シンシアさんが鎧着たままマスターに抱き着いたらベッドが血塗れになってしまいますね」


 「うぐっ」


 「そう言えばここを出る時にガレットさんが用意してくれた下着が何着かありましたよね? ルイ様?」


 「あ、そうだね。ちょっと待って」


 ガチャガチャと部屋の中を歩きまわるシンシアを見てたまらずディーが注意する。うん、それは僕も思う。躊躇うシンシアにアピスが追い打ちを掛け、ギゼラが僕にキラーパスを流してきた。そう言われてみればと思いアイテムボックスを探して下着を一枚取り出す。


 「はい、シンシア」


 「な、な、な、な、な、なんだこのヒラヒラした物は!? 主殿!?」


 「え、何って下着だけど……。ディー以外はみんな着けてる……よね?」


 真っ赤な顔で下着の紐を両手で左右に広げながら戦慄(わなな)くシンシアに説明しながら、3人に同意を求めるとうんうんと頷いてくれたのだった。


 「あ、服も余分にもらってるから置いておくね。みんなシンシアの着替えを手伝ってあげてね、僕はまだ奥に部屋があるみたいだから行ってくるよ」


 「あ、主殿!?」


 「「「「はい、ルイ様♪」マスター♪」任されましたわ♪」ご主人様♪」


 「あるじどのぉぉぉぉぉ〜〜!!」


 ぱたん


 南無三。シンシアの助けを求める叫びが聞こえた気がしたのだけど、あの鎧を外す事に慣れなきゃ共同生活は窮屈だよね。頑張れシンシア!


 僕は更に奥に繋がった扉を開けて踏み出す。そこは部屋ではなく通路になっていた。背中で扉の閉まる音を確認してそのまま進んで見る事にする。ん? 何だか懐かしい臭いがする……。水の音もしているような? まさか!?


 一つの結論に達した僕は走り始める。眼の前に扉が現れるが躊躇いなく開けた。


 「まさか! 温泉!?」


 開けた所に出た僕が眼下に見たのは湯煙が立つ池だった。すぐ階段を駆け下りて湯煙が立つ温水であろう水に触れる。間違いない。温泉特有の硫黄臭もある。あそこが脱衣場なのか? 降りてきた所を見上げて再び戻ってみる。


 確かに30☓30cm升の棚が沢山並んでおり、近くのテーブルには体を吹く為の布が複数枚置いてある。流石にタオルを作るには技術レベルが足らないよね……。でも、水気が拭き取れるならそれで十分さ♪


 「まさか、こんな冬山で温泉に入れるとは思ってなかったなぁ〜! というか、温泉があるとは♪」


 僕はそう叫ぶかのように大きな声を出して服をそそくさと脱いで棚に押し込むと、一目散に温泉に飛び込むのだった。


 「ひゃっほ〜〜い♪」


 ざっば〜〜ん!!


 「あぁ〜気持ちぃいぃぃぃ〜♪」


 久し振りというか1年以上温泉には入ってないというか、お風呂に入ってない……。あれ? くんくんと臭うが体臭は臭くない。【実体化】で色々とリセットされてるのかな? でも、これはたまらん♪ 生霊(レイス)だけど【実体化】スキルがあって本当に良かったぁ〜♪ こんな感触を味わえないんて拷問より酷い!


 ん? 何やら背後が騒がしい。


 「おぉっ!?」


 ばしゃっ


 顔だけ振り向いてみると、居たのだ。着せ替えで盛り上がっていたはずの面々が。びっくりして慌てて起き上がる。


 「「「「「〜〜〜〜〜〜♪」」」」」


 「え?あ、見た?」


 5人が一斉に手で顔を隠すが、しっかりと指が開いてるよ。君たちベタなリアクション何処で習ったの。思わず確認してみたけど、言わずもなが全員が頷いた。僕にだって羞恥心くらいあるよ? そう内心呟きながらブクブクと泡を立てながらお湯に沈んでいく僕。


 だけどそれどころじゃなくなった。慌てた5人がそのまま飛び込んでこようとしたんだ。


 「ちょっ、ちょっと待った!! ここは服を着たまま入っちゃダメな処なんだ! だから、入るつもりなら、あ、こらディーっ!!」


 ざば〜ん!!


 「「「「きゃあっ!!!」」」」


 慌てて止めようとしたんだけど一人間に合わなかった。水飛沫? 湯飛沫が勢い良く飛び散って残りの4人にも振りかかる。僕は全裸だから、今更濡れようが見られようが、あ、いや見られるのはちょっとね。まだというか、お一人さま歴が長いし人前で裸になるのは高校のプールの時間以降記憶にないくらいだから。いや、今はそうじゃなくって。


 「こら、ディー! ここでは服を脱いで入るの! 上で脱いで棚に入れておいで!」


 「え、ここはそういう処ですの?! だからルイは裸なのですね。分かりましたわ♪」


 「いや、えっと裸になるのが嫌なら入らなくて、部屋で待ってくれてたら良いんだよ?」


 「「「「「入ります!」」」」わ!」


 バシャバシャと湯をかき分けて温泉の外に出たディーと服に着いたお湯を払ってる4人に諦めさせようと思って声を掛けたんだけど、逆効果だったみたい。ま、仕方ないか。ついでにさっきのお詫びも兼ねて髪を洗ってあげよう♪


 それぞれが服を脱いで僕がしているように升状の棚に服や下着靴を入れて、走って降りてくる。おぅ、マシュマロが揺れてる♪ ギゼラ、アピスがH、シンシアとディーがF、リンがDくらい、はっ!?いかんいかん何をしてるんだ僕は!?


 「「「「「ルイ〜♪」ルイ様〜♪」マスター♪」主殿♪」ご主人様〜♪」


 美女に囲まれるのは嬉しいんだけど、め、眼のやり場に困る。て言うか多分ガンミしてるのバレてるよね。だって男の子だもん、気にならないほうが可怪しいでしょ?


 「み、みんな綺麗だね! 眼のやり場に困るというか、つい見てしまうよ。はははは」


 「ルイに見られるのは何とも無いですわ!」


 嬉しいけど。ディーだけ座高が高くなってるから湯に浸かっても上半身が出るんだよね。


 「わたしもです! もう一度見て頂いてますし♪」


 あ、ギゼラはそうだったね。


 「わたしもマスターに見て頂きましたら恥ずかしくはないです!」


 うん、アピスは杖だからね! でも破壊力はピカイチだよ。


 「あ、主殿。や、優しくしてくれ」


 いや、シンシア、そこから一旦離れようか。


 「ご主人様ぁ〜、気持ちいいですぅ〜♪」


 あ、リン、翼でバシャバシャしないの!


 何にしても温泉でゆっくり出来るのは久々だからのんびりしたいな〜。おっと、その前に順番、気をつけないきゃね。


 「ギゼラ、ちょっとお湯の上に横になってくれない?」


 「横、ですか? これでいですか?」


 ま、マシュマロがう、浮いてる!? う、浮くのか! 空気が入ってるのか!? いや、莫迦(ばか)落ち着け解剖学でちゃんと勉強しただろう? そ、そうだった。お湯に仰向きに浮かんだギゼラは美しく、腰まである水色の長髪がお湯に浮かんでゆらゆらしている。思わず見蕩れてしまうのだったが首を振ってギゼラにお願いした。


 「うん、そのまま眼を閉じててくれるかい?」


 「はい。あ」


 僕の前に浮いているギゼラを引き寄せるとその頭に手を当てる。他の4人も何をするのか興味津々だ。何って髪を洗ってあげるのさ。石鹸がないから何処まで綺麗になるか分かんないけど。


 「ぁん、ふぁぁぁぁぁああぁぁぁぁっ! な、何ですかこれは? ルイ様?」


 「え? 髪を洗ってあげてるのさ。気持ちいい?」


 「はい、とっても♪ あぁ〜〜♪」


 みんな、その物欲しそうな眼は止めようか。ギゼラが気持ちよさそうに(とろ)けた表情をして喘いでいる姿は刺激的だった。生霊(レイス)の時には感じなかった欲求が湧き上がってきてる気がする。良いことなのだろうか? これも【実体化】の副産物なのだろうか。


 前にも言った事があるかも知れないけど、自慢ではないが僕のルックスは良く言って中の下、もしくは下の上だ。芸能界でチヤホヤされているイケメンと言われる種族の方に比べれば雲泥の差であることは断言できる。後ろ姿でおっ♪ と思われても前に回ると、あ〜という感じになるといえば分かってもらえるだろうか。言ってる自分が悲しくなってきた。


 と言っても日本人の顔ではないらしい。何故かって? 僕もよく知らない。何でも日本が開国した頃に異人さんに手篭めにされた父なし子が系図上に居るとか居ないとか。正直どうでも良い。彫りが深いといえば良いのかな? 日本人ウケする顔じゃないってことは確かみたい。


 だから、正直こんな美人さんばかりに好意を示されると騙されてるんじゃ?という感覚が何処かで蠢いているんだ。彼女たちには本当に申し訳ないのだけどまだそれを克服出来ていないみたい。あ、リンにはそんな感覚がないよ? 鳥頭だからかな? これ言うと怒られちゃうから絶対に言わないけど。


 「はい、ギゼラはこれで終わり。次はディーだよ♪ 横になれる?」


 「も、勿論ですわ!」


 ギゼラの背中と首の後ろに手を回して、ゆっくりと起こしてあげる。ぽ〜っと呆けている感じだけど、ま、大丈夫だよね。順番的にはディーがギゼラの次に長い付き合いだから、ディーに聞いてみる。すると、器用に蜘蛛のお腹を上にして横になったのだ。質量が増した分だけお湯が外にザーッと溢れるのだった。


 「人の姿になってまだ間がないから伝わる感覚が昔とは違うかも知れないよ。変なことする訳じゃないから安心してね?」


 「だ、大丈夫ですわ! こ、心の準備は出来てますから!」


 何を大袈裟(おおげさ)な。ディーの答えに思わず口元が緩むのだったが、そのまま髪を洗ってあげることにした。美容院で自分がしてもらった経験を元に洗ってるだけなんだけど、髪を洗うという習慣がない種族ばかりなのできっと新鮮なのだろう。


 「ギゼラさんご主人様に洗ってもらってどうでしたか?」


 「〜〜〜〜〜〜♪」


 少し離れたところでリンが湯面から首だけ出してギゼラに感想を聞いてるが言葉にならないらしい。まぁ、喜んでもらえたんだったらそれでいいかな。ディーはギゼラのように声を出さないように両手で口を抑えているのだが、頭皮を撫でるように洗ってあげると気持ちいいらしく顔を真っ赤にして身悶えしていた。蜘蛛の脚がきゅっと内側に縮められてる姿は可愛いよね。眼福がんぷく♪


 「よし、ディーもこれで良いね」


 「次はアピス。アピスは杖のはずだけど」


 「わたしもマスターに洗って貰いたいです!」


 「う、うん、じゃあ、おいで♪」


 「はい♪」


 口を抑えたままのディーをそのまま彼女の両肩に手を当ててリンたちの方に押してあげると、そのまますぅーっと流れていった。真紅の髪が湯の中をゆらゆらと揺らいでいる。一応アピスに確認を取って見るけどやっぱりそう言うよね。僕の杖は何処に行ったんだろう?


 「ふあぁぁぁ、マスター気持ちいいですぅ〜♪」


 「石鹸があれば良かったんだけどね〜」


 「石鹸? 石鹸とは何でしょうか?」


 「あ、いや、体を洗う為の消耗品なんだけどね、アピスの情報の中にはないんだね?」


 「ふあぁぁあぁ〜、な、無いですぅぅ〜♪」


 なんとなく作れない訳ではないだろうけど、そもそも非人間族との付き合いのほうが長いから、異世界(こっち)の人間社会がどうなってるのかどんなルールが有るのか知らないんだよね。何とかしないとね。ん? 気がつくとアピスは寝息を立てていた。よっぽど気持ちよかったのね。形の良い大きなマシュマロがたゆんたゆんとお湯の動きに合わせて揺れている。


 「じゃあ、リン、おいで♪」


 「はい、ご主人様♪」


 すぅーっとアピスの体を回して、ギゼラの方に向きを変えあとはギゼラに引っ張ってもらう。その間にリンが翼をぐっしょりさせたままお湯の中を進んでくる。重いよね、きっと。仰向けになるのを手伝って上げて髪というか鶏頭をワシャワシャと洗ってあげるのだった。クルクルと喉を鳴らしながら白目を剥いているリンの顔を見てると思わず笑わずにはいられなくなり口元が緩んでしまう。お風呂というか水浴びだけで済ましていたのか結構汚れが出た。羽根もいくらか浮いてるので、リンを洗い終わってから手尺で周りのお湯を外に掻き出す事にした。


 「主殿何をしているのだ?」


 「え? 何ってお湯が少し汚れてきたから掻き出してるんだ。ほら、そこからお湯が湧き出してるでしょ? いくらか減っても元の湯量に戻るようになってるんだ」


 「主殿は博識なのだな」


 「博識というか、こういう温泉を利用している国で生まれ育ったからね。さて、最後になっちゃったけどシンシアも洗ってあげよう」


 「よ、宜しく頼む」


 シンシアが僕の前で仰向けになり身を任せてくれた。胸を晒すのはまだ抵抗があるらしく両手で腕組をして隠している。それはそれで美味しいんだけどね……。ゆっくり髪の毛に手を伸ばす。


 「ふあぁぁぁ、主殿!主殿!」


 「ん? 何? シンシア」


 「気持良すぎます。手加減してください」


 デレた!? 消え入りそうな声と涙目でお願いされた僕は萌えた。これが萌えなのね!! あ〜真理を見つけた気分だわ♪ 分かったとにこりと返事をしておいて僕は萌えを十二分に味わうことに決めた。声だけ聞けば風呂場で良からぬことをしていると想像されかねない嬌声が暫く湯殿から響き渡っていた。


 「ぁん♪ あふ、くぅっ♪ ふぁっ、ふぁあぁぁあぁぁぁ〜〜〜〜〜っ♪」







最後まで読んで下さりありがとうございました。

ブックマークやユニークをありがとうございます! 励みになります♪


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宜しくお願い致します♪

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