第4話 出逢い
2016/3/29:本文加筆修正しました。
2016/7/25:本文修正しました。
2016/11/3:本文加筆修正しました。
2018/10/2:ステータス表記修正しました。
異世界に転生してから一年が過ぎた。
その間何をしていたかって? 勿論レベル上げと検証実験ですよ。
解ったことがあります! 生霊は寝なくても大丈夫! 食べなくても大丈夫! だから排泄物も出ない。おまけに性欲すら無いと来たものですから、三大欲求の欠落にショックを受けたのが転生から一週間後の事でした。感情の起伏の沈静化が早いのもそういう所が関係しているのかな? と思ったんだけど、はっきりした答えはまだ出てないんだ。
異世界の生態系もなんとなく解ってきました。
動植物は普通に居ますが、サイズが明らかに大き過ぎる物も居ます。この森もそう! なんて言うかセコイアの森? かと思うくらい天井が高いの。天井って樹の枝が茂って繋がって棚みたいになってる部分のことね。まあ、この森だけというオチもありそうだーー。
元々この森木漏れ日が異常に少ない森だから仕方ないのかも知れないけど、その割には低木の茂みとかもあったりしてよく分からないんだよね。光合成だけじゃないのかな? この森が成長出来てる理由。
モンスターと呼ばれる魔物も居ます。まぁ、僕もその中に含まれるんですけどね。
そして、魔物にも人間と同じ家族やコミュニティーが存在するんです。ゲームの世界だとモンスターは経験値稼ぎの対象だったり、イベントを進めるための討伐対象だったりするわけだけど、そうじゃないんだって事。
勿論、凶悪な奴もいるし、平和的な奴もいる。それが解って良かったな~とつくづく思ったね。
無差別殺戮なんかしてたら、後味悪くなりすぎだよ。
あと精霊という存在もいました。
初めて出逢った時は完全に怖がられましたが、今では無害なレイスさんという事で仲良くして頂いています。情報の大部分は精霊さんたちから教えて頂いたものなんですよ。
どこの世界にも好奇心旺盛な存在はいるようで……。取り分け精霊さんたちはその傾向が強いみたいです。全部と言ったら、わたしたちは違う! って怒られそうですから、一部と訂正しておきますね。
ん? 言葉ですか? 精霊たちとどう話したのか?
ほら、神様から頂いた自動翻訳です。これ意外にも優秀で、思ったことが勝手に精霊語が口から出てました。相手に合わせてかちっかちっとスイッチが切り替わってるみたい。
精霊語が話せる無害なレイスさんの誕生です♪
精霊さんたちの話では、この世界には色々な属性があるみたい。四大属性としてよく言われる、水、火、風、土以外にも、光、闇があり、氷、雷、植物、金属、道具にも居ると聞いたんだけど。あとはその時点で興味がなかったから聞き流したんだよな。だから忘れちゃった。確か気難しい精霊も居るらしい、よ?
日本の妖怪の付喪神みたいなものなのかもしれないなぁ~って勝手に納得することにした。付喪神っていうのは、長く大事に使われてきたものに神様が宿るっていう神道の神様のこと。
この世界にどれだけの神がいるかわからないけど、それはこれからのお楽しみかな。
うん、実はまだ人間と遭遇してないんだ。さらに言えばこの森から出たこともない。境界線までは行ってるけどね。
ただ、呼吸もしてないようなので、土の中に潜っても大丈夫という事も解りました。どういうことかって?
土の中を移動して日の下に出てみたことがあるんだけど、問題なかったのです! 地表に近いと隙間から射し込んで来る日光で消えちゃいそうになってたんですが、しっかり地下に潜ってれば大丈夫!
まぁそんなこんなで、鍛えてたらこうなりました。
◆ステータス◆
【名前】ルイ・イチジク
【種族】レイス / 不死族
【性別】男
【職業】レイス・ロード
【レベル】1
【Hp】1000/1000
【Mp】4000/4000(+1000)
【Str】31
【Vit】38
【Agi】43
【Dex】30
【Mnd】27
【Chr】18
【Luk】10
【ユニークスキル】エナジードレイン、※※※※※、※※※※※、※※※※※、実体化Lv100(+99)、眷属化Lv1
【アクティブスキル】鑑定Lv100(+99)、闇魔法Lv100(+99)、聖魔法Lv100(+99)、体術Lv50(+40)、剣術Lv50(+40)、杖術Lv50(+40)、鍛冶Lv1
【パッシブスキル】闇耐性LvMAX、聖耐性Lv100(+99)、光耐性Lv100(+99)、※※※※※、※※※※※、※※※※※、※※※※※、融合Lv1、状態異常耐性LvMAX、精神支配耐性LvMAX
【装備】
【所持金】0
え? レベル上がってないじゃんって?
いやいやいや、この努力の結晶のどこを見てるんですか!?
実体化、闇魔法、聖魔法、聖耐性、光耐性すごいでしょ!
御蔭で最近では、実体化して日光浴しながら聖魔法使ってレベル上げするようになりました。でも、Lv100でMAXだと思ってたのにMAX表示でなかったんです。上限どのあたりなんでしょう?
ん? 基本レベル?
そうです。全く戦闘なぞしておりません。ヘタレだね。引き籠もりだよ。
実体化はLv100で10時間程度になりました。一度に1000Mpも消費するからレベ上げ結構大変だったんだよね。
実体化して色々すると、それが経験値になるみたいと言うのが半年前に解りまして、それからいいペースで上がりました。実態化を解くとどさっと土の山が足元に出来てるのが興味深いんだけど。
昔生物の授業で習ったよな記憶があるんですよ。人体の成分って土の成分と似てる部分があるって。
体術とかも若干上がったんですが、別に何か新しいスキルに目覚めるわけでもなく、動きを行えば経験値が貯まるんだなぁ程度のものでした。実体化が長くできるようになってから、昔やってた修練をし始めたので今はこれくらいです。
体術とかレベルが上がって何か特になるんだろうか? と思ってるんだけど、今のところ比較できるものもなく、実体化のレベル上げのための手段に成り果てている。
あ、そうそう! Mpですが、0になると意識が飛びます!
これを経験したときは後でゾッとしました。だって、日中にMp0になって日光の下に出てれば消滅してたかもしれないんだから! 今は各魔法の消費Mpも検証し終えたので、Mp0は避けれるようになりました。
でも、その所為なのか、Mpの上限が1000上がってたんだよね。怖くてまだ試してないんでだけど。基本レベルが上がってなくてもMp増やせるなら、何処かの洞窟の中で試してみようかな~と考えてる今日この頃です。
今ですか?
今はちょうど夜の7時を回ったところなので、生霊姿でフワフワ浮かんでます。
え? なんで時間が分かるのかって?
死んだ時の服装のままだったでしょ? 今もそうなんですが、太陽電池式の電波時計を着けてまして、それで時間がチェックできてたんです。で、実体化できるようになってなくすと嫌だなと思って、外してアイテムボックスに入れようとメニューを開いたんだけど。気が付きました?
腕時計を手に持ったままメニューに当たってしまい、時計がメニューと合体しちゃった。そしたら例の天使の輪が出てしまった訳で。
お察しのとおり、慌てて神様が飛んできました! 今度は何したの!? って。
簡単に事情を説明して帰ってもらいました。で、今ではメニューを見れば時間がわかる生活を送ってるわけです。ついでに伊達メガネで掛けていた黒縁のメガネも収めておきました。異世界にメガネがあるのかどうかも分からないし、現物の1つだけなので無くさないという選択肢を選びました。
話を戻すと神様曰く、腕時計を使ってそんな出鱈目なことをする人物は今まで居なかったとの事。まぁ、偶然の所産ですが過ごしやすくなって良かったのは事実です。あとズボンの後ろポケットに入れていた財布と免許証はアイテムボックスに入れてる。理由は眼鏡と同じ。失くさないためだな。
神様はちゃんと転生させておけば……と嘆きながら帰っていかれましたね。
え? そうですよ。初めて見ました。神様!
可愛らしい小学生くらいの姿をした女神様でした。黙ってればぷにぷにしたくなる程可愛いほっぺたをした美少女? 美幼女? だったよ。
幼女に興味はないので素直に可愛らしいなぁとは思ったけど、1年前に感じていた通り子供だったね。というがっかり感もあったのは事実です。勿論黙ってましたよ?
ん? 何だか森が騒がしい。
夜なのに鳥たちが騒ぎ立ててるので、騒がしい方に行ってみることにする。ここ一年の間なかった事だ。
一抹の不安を感じながらも、面倒事は勘弁してくれと思いながらフワフワと近づいて行く。
ザザザザッ ザザザザッ ザザザザッ
何かが草や枝を掻き分けて走ってくる。複数居る感じだ。
雰囲気的に何かから逃げてるという感じもするけど?
ザンッ
目の前をモフモフの巨体が飛び跳ねていく! 一匹、二匹、三匹、三匹だ! 一番最後に出た影が一番大きいな。血の匂いもする。
【鑑定】!
◆ステータス◆
【名前】エドガー
【種族】デミグレイジャイアント / ジャイアントラビット族
【性別】♂
【職業】トリックスター
【レベル】50
【Hp】3082/6082
【Mp】5345/15785
【Str】639
【Vit】618
【Agi】1476
【Dex】710
【Mnd】581
【Chr】780
【Luk】988
【ユニークスキル】隠形Lv5
【アクティブスキル】闇魔法Lv10、体術Lv5
【パッシブスキル】闇耐性LvMAX
【装備】
ーーレベル50!? それで逃げる敵って。ラビット……ラビット……兎でかっ!?
ネザーランドドワーフも吃驚だなおい。それもだけど、モンスターに職業があるのね。動物じゃなくてモンスターだよね? スキルあるし。
ガフッ ガフッ
荒い鼻息と、大地を踏みしめる音が近づいてくる。明らかにさっきのモフモフたちとは違う体重移動だ。人間だったらどっちの味方する? 聞くまでもない、そりゃあ兎だよな!
あ~レベルかなり違うだろうけど、これ庇ってあげなきゃ眼醒めが悪いパターンだわ。
そう呟いて僕は茂みから離れた処に浮かんで待つことにした。
ガサッ ザンッ!
【鑑定】!
◆ステータス◆
【名前】ボッソ
【種族】ツヴァイホーンジャイアント / ジャイアントベア族
【性別】♂
【職業】ファイター
【レベル】100
【Hp】18929/23929
【Mp】3792/7792
【Str】2572
【Vit】2030
【Agi】1353
【Dex】2961
【Mnd】635
【Chr】388
【Luk】623
【ユニークスキル】強打Lv20
【アクティブスキル】光魔法Lv10、体術Lv5
【パッシブスキル】光耐性LvMAX
【装備】
ーーOh No……。
レベル100。初めて対峙するモンスターがレベル100ってどうなのこれ? 熊? 熊にしては大き過ぎないか? 体高が3m近いんだけど? しかも光魔法って。やばいんじゃない? これ。壁は用意しなきゃいけないーーよな。
眼の前にいるのは大きな二本の角を顔の前方に向けて生やした。巨大な熊だった。
『悪いけど、帰ってくれないかい? ここはウチの庭なんだ』
グルルルルルル……
突然現れた生霊に最大限の警戒を払いながら、ツヴァイホーンは低く唸る。
『言葉が解らないはずはないよね? 君たちの言葉で話してるんだから』
そうなんだ。これ自動翻訳のお陰で、聞くのも話すもの訳してくれる優れものなんだ。だから対象物を意識して話せば勝手に訳されるというチートな贈り物なのさ。
『レイス風情が俺の獲物を横取りするつもりか?』
『おやおや酷い言われ様だ。余所の森で君たちが殺し合うのは構わないが、ここでは遠慮して欲しい、って言ってるだけなんだけどね?』
グルルルルルル……
『考えてるうちに彼らは一目散さ。今日の所は諦めて帰ってくれないかな?』
チラリと後ろを確認するとあの親子の姿はない。無事に逃げれたようだ。内心胸を撫で下ろしながら、意識を熊だけに集中させることにする。
『誰にものを言ってる? 雑魚が粋がるな』
『やれやれ。僕としては手荒なことをしたくないし、光魔法を浴びて痛い思いもしたくないのさ』
『!? ……貴様、何者だ?』
『何者? しがない生霊さ。一年ほど前に生まれたばかりのね』
グルルルルルル……
『良かろう。奴らはまたじっくり追い詰めることにする』
『そっか、助かるよ。物分りが良くて安心した』
『だが貴様は危険だ。ここで始末する』
おい! 前言撤回! 話が穏便に済んだんじゃないのかよ!? 帰ってくれぇ~。
『あはははは。見逃してもらえないのかな?』
『無理だな。俺の勘が警報を鳴らしっ放しだ。ここで始末する』
『そっちが痛い目を見ることになってもいいの?』
『ふふん、貴様の力なぞ微々たるのもよ。安心して成仏するがいい』
『じゃあ、お互い死んでも文句無しってことで』
『言いおるわ。捻り潰してやる! 光り耀く乙女たちよ』
『遅い。【闇の帳】、【闇の壁】、【黒珠】』
一年の間何もしてなかった訳じゃないよ。魔法も詠唱が必要なのは何故だろう? と思ったのがきっかけで、段々と詠唱を短くし、今では最終発動の為の言葉だけで発現できるまでになったんだ。その成果がこれ。
熊の周りに夜の暗闇より更に濃い闇が発生する。そして僕の前に同じく濃い闇の壁と20個の黒い珠が浮かんでいた。闇魔法のレベルが上がったおかげでこのレベル2で覚えた【黒珠】の数がどんどん増えて今に至る。多分、まだ増えるんだろなぁ。
『!!! 疾く来て煌く門の閂を外せ。耀く息吹』
闇の中でキラッ何かが光った気がするけど、壁まで届かなかったみたい。ほっ。
『ん? 何かしたの? 何も見えなかったけど?』
『ば……莫迦な。俺よりも早くに無詠唱でだと?』
『ん~野生の勘が逃げなさいって言ってるうちに、話を聞いて一旦引いてたほうが賢かったみたいだね』
グルルルルルル……
『逃がさないよ? 今逃げたら今度は徒党で来るかもしれないし、彼らを抛っておけないしね。悪いけど死んでもらうね』
『俺を殺せば俺が生霊になってお前を殺してやる』
『あ~希望があるようなので、先に言っておくね。僕、レイスはレイスでも突然変異みたい。だから、僕に殺されてもレイス化しないから。ごめんね』
ゴウッ!!!
太く吠えて熊が襲いかかってくるけど、20個の珠に打ち据えられて全長5mはあろうかという巨体が宙に舞う。(細かくて申し訳ないのですがヒグマは最大で全長3m程度まで成長します。なので上記の数字は表現に適さないと愚考した次第です。喧しいわ!とお思いでしたら変更しなくて結構です。失礼しました。)
ドウゥゥン
【黒珠】は物理できな攻撃力はなくて、精神を削る魔法だ。つまりツヴァイホーンは完全に意識を失った状態にある。ステータスを確認するとMpが0になってるからね。
でも、収穫はあったな。レベル10の光魔法くらいであれば闇魔法で防げるってことだ! 良かったぁ~♪
さてと、意識がないうちに止めを刺さなきゃいけないんだけど。いつかはやってみようと思ってたことだし。こいつなら罪悪感湧かないから、試してみるかな。僕は横たわるツヴァイホーンの傍に降り立った。
半透明で朧げな光を放ちながら僕は、右手を伸ばしてツヴァイホーンの体に触れ一言呟く。
【汝の露命を我に賜えよ】
ぐうっ!? なんだこれ!? 躰が熱い!!
手が触れてる間に、何かが僕の中に吸収されているのが分かる。吸収されているというか、吸い上げた何かが体の中で暴れまわってると言った方が良い。だけどステータスを確認する限りまだHpが0になってないからまだしばらくは触ったの方が良いだろう。
時間的には1、2分位の話だったのだが、僕には30分位の長さに感じた。そんな感覚だった。
眼の間には完全に干枯らびて骨と皮だけになったツヴァイホーンの哀れな姿が横たわっている。
ん~このままここに放置しておくと、同じ種族のやつにバレちゃうよね。
何かの素材として使えるかもしれないからアイテムボックスに入れておくかな♪ そう言って、僕はアイテムボックスを呼び出して死骸を放り込むのだった。すると。
タッタラッタァァァッ~♪
なんだこれ!?
《レベルが上がりました!》
最後まで読んで下さりありがとうございました!
ブックマークやユニークをありがとうございます!励みになります♪
誤字脱字をご指摘ください。
引き続きご意見ご感想を頂けると嬉しいです!
これからもよろしくお願いします♪
2016/2/3:鑑定スキルをパッシブからアクティブに訂正しました。