第47話 鷲王の誤算
「食事を頂いてまいりますわ♪ 皆様ごきげんよう〜♪」
真紅のアラクネーがその場を去った時、男たちは体に自由が戻ったことに気が付く。つまり何かの方法で彼女に操られていたのだ。顔を見合わせた2人はディードの後を追って飛び立ったのであった。
「あらあら、そんなに慌てて追いかけてきてどうするおつもりかしら? 手に武器を持ってないということはそのつもりはないということかしら? でも、まずは腹ごしらえですわ♪」
後方から追いかけけてくる翼人の衛士たちを尻目にディードは壁を走っていた。
自分の体の変化に少し驚いたディードだが、逆にルイにぎゅっとしてもらいやすくなったと前向きに考えて自然に受け入れたのだ。彼女の性格のなせる技だろう。それ以上に身体能力が格段に向上している事の方に驚いた。体が軽いし、以前に比べて視野も広く感じ取れるのだ。
上半身が人体であるがゆえに【嗅覚】という新しい感覚で料理や食材の場所を探しやすくなったのも嬉しい収穫物である。
すんすん
時折立ち止まって匂いを嗅ぐ。いい匂い♪
『おい、どうするのだ! シュピンネだとしても手が出せなかったのに、アラクネーなど以てのほかだぞ!?』
『分かってる! 今は見失わないことが優先されるぞ! 王族や貴族の居住区に向かわぬように願うばかりだ』
彼らは感じ取っていたのだ。ディードの魔力を。そしてもはや自分たちが束になっても敵わない魔物が王宮に放たれてしまったということに戦慄したのである。
「あ、お料理発見ですわ! あれはギゼラに服を渡してた翼人の侍女ね」
ディードの眼に料理を運ぶ女たちと先頭を歩くガレットの姿が見えた。急に眼の前に現れるとびっくりするだろうからと真上に移動して声を掛けるのだった。逆さまだけに長い髪も垂れ下がって上半身が露わになる。
『ディード様!? え? アラクネー!? でも緋色の体は。はっ! 貴女、すぐに羅紗のコートと下に着る服を持って来なさい! 料理はわたしが渡しますから!』
『は、はい! 畏まりました!』
ガレットはそう言うが早いかすぐ後ろの侍女からお盆を奪い取ると、服を取りに行かせるのだった。ディードの耳には自分の名前が呼ばれたくらいにしか理解できない。でも自分に向かって差し上げられた料理の盆を見る限り自分の為に用意してくれたものだろうと察しが付いたのだ。ゆっくり糸を伸ばして下に降りてくる。
『『綺麗……』』
後ろに控えている侍女が思わず感歎する。だがその言葉はディードの耳に届いていなかった。差し出された料理を一心に食べ始めたのだ。フォークやナイフをこれまで使った事がないのだから基本手づかみである。だが見惚れるような喰いっぷりで、次々に皿が空になっていく。
ぐぅぅぅぅぅ〜きゅるきゅるきゅる
食べながらも腹の虫が鳴くのを聞いてガレットが更に料理の追加を侍女に伝えた頃、後を追ってきた男たちが漸く追いつくのだった。
『ここはもう大丈夫です! 貴方達は持ち場に戻りなさい。ディード様の裸身を見るなど礼を激しく逸しています! さあ、下がりなさい!』
『『こ、これはご無礼を!』』
男たちが一礼して再び来た道を今度はゆっくりとした速度で飛んでいく。彼らの速度でも追いつけなかったのか、と内心ガレットはディードの隣で給餌をしながら、もといい給仕をしながらディードの能力を思い冷や汗を拭うのだった。
本来自分たち翼人や卑しい鳥人は片翼の大きさが身長と同じ程ある。それを羽撃たかせて飛び上がるにはそもそも筋肉が足らないのだ。なので無意識に風魔法の補助を使って飛行しているのである。それなりの速度を風魔法の推進力で出せていたはずなのに追いつけなかったのだ。危険すぎる。それがガレットが導き出した結論だった。
ルイの危険度はこの宮殿に居る誰もがすでに承知することだが、彼女は違う。
『(あぁ〜ルイ様早く戻ってきてくださいませ! わたしたちではディード様の手綱は捌けません!)』
それから30分後――。
ディードの周囲には堆く食器の山が積み上げられていた。ディードもガレットに対する敵意は無いようで、彼女がする世話に眉をしかめるも好きなようにさせている。ガレットがした事といえば湿らせたタオルでディードの口の周りや手、胸元だけではなくお腹の方まで飛び散ったソースや食べ滓を綺麗に拭き取り、持って来させた服とコートを何とか身に着けさせたくらいだ。
しかし、それが大変な仕事だった。ディードは元々蜘蛛だ。服など必要のない種であるにも関わらず、上半身が人型になったがために服を身に着けさせられたのである。窮屈この上ない。
脱ごうとすると『ルイ』という単語がガレットの口から聞こえてくるので、着ていたらルイが喜んでくれるかしら? と考えながら我慢することにしたのだ。
「ふあぁぁ〜♪ ご飯を頂いたら何だか眠くなってしまいましたわ」
大欠伸をしながらディードが呟く。眼もとろんとなり眠そうな雰囲気を周りに感じとらせた。これで大広間にお帰り頂ける。と誰もが思った矢先、ディードの蜘蛛のお尻の部分が高く持ち上げられそのまま通路の壁に大量の糸が噴き付けられたのだ。
『『『『!!!!!』』』』
「ここでベッドを作らせてもらいますわ♪」
そう言うが早いかディードはカサカサと壁を伝い噴き付けた糸を器用に眉の形に形成しその中に潜り込んでしまったのであった。誰も止めることも声を上げることも出来ず、只々見守っていたのである。
そこへ知らせを聞いた王やアンジェラ夫婦がやって来たのであるが時すでに遅く、ディードは再び眠りに就いたのであった。奇しくもその少し前にルイが強制的にレベルを上げた時と時間軸が重なっていたのだ。当然といえば当然の成り行きなのだが、王宮の住民にとっては一時の安息を得た瞬間でもあった。
◇
時は戻る――。
竜の墓場を後にしたルイたち5人の一行は、空を飛んでいた……。
黒竜の姿に戻ったシンシアの背に跨ったルイの後ろにギゼラ、アピス、リンの順に縦長に抱き着いていた。見ると竜の背に乗る4人の腰にはロープが結わえてあるではないか。落ちないように1つの輪の中で4人を縛ったのだ。特にリンの翼は広げていなくても風の抵抗を受ける。吹き飛ばされないようにする必要があった。
黒竜の体は飛竜とは違いずんぐりとしている。翼も翼人や鳥人の様に全長に比例してあるのだが、体を持ち上げるには筋力が足らないのだ。故に竜族の多くは己の魔力を推進力や浮力に変えて飛ぶのである。
蛇足だが、飛竜の場合は話が別で、彼らは飛行に特化しているために片翼が身長の2倍もありそのための筋肉も翼の付け根、胸、肩と発達してその他は細くなっているのだ。故に前足も飛竜にはない。後ろ足で器用に二足歩行をし、長い首と足の爪を使って食事を取るのである。飛ぶ竜という名に恥じない姿だ。
「ギゼラありがとう! 風魔法の壁が無かったら吹き飛んでるところだったよ!」
「はい!」
大きな声を出さなければ後ろに届かない。今のシンシアの速度は実はかなり出ている。というのも翼の両端から時折雲を引いている様子が見えるのだ。昔アニメで見た豚が真っ赤な戦闘機に乗って戦っているシーンが浮かんできた。あのシーンもかなりの速度が出てたはずだ。だから魔法の防御壁がなければあっという間に空の彼方に取り残されることになるだろう。
アンジェラさんの背中に乗った時とは安定感が違う。やはり飛ぶことを主体においた骨格とそうでない骨格は違うということかな。でも運んでもらってるのにそんな苦情なんか言える訳がない。
徒歩で5日かかった道のりがものの十数分で帳消しになろうとしている現実に僕達は圧倒されていた。流石シンシア♪
村の真ん中に降りると間違いなくパニックになるので、村の入り口付近に降りてもらいすぐに人化してもらった。恐らく村では『竜が来た!』と上を下への大騒ぎになってるはずだ。
「リン、ちょっと先に入って皆に僕が帰ってきたって伝えてきてもらえるかい?」
「は、ご主人様♪」
リンはそう言うと羽撃いて村に入っていくのだった。あれ? そういえば。
「ねぇ、皆リンの言葉分かる?」
「はい、問題なく」「綺麗な発音です、マスター」「わたしにも理解できるぞ、主殿」
あれ? そもそも最初は僕しか分からなかったんじゃないの? いつから?
「いつから?」
「――そう言われてみれば気が付いたら普通に会話してましたね。アピスは?」
「考えられるとすれば、マスターがわたしとリンにスキルを着けて下さった時ではないでしょうか?」
僕の質問にギゼラがそう言えばと頷く。そうだよね。おぉ、それだアピス、偉い!
「あまりに普通に会話してたから忘れてた。と言うか、今のリンは村の皆と意思の疎通が図れるんだろうか?」
僕の疑問に皆互いに顔を見合わせるのだったが、急いで村の中へ向かって走りだすのだった。
案の定、不安が的中した。僕の姿が見えた時リンが梟の眼にいっぱい涙を溜めて駆け寄ってきたのだ。
「ふぇぇぇぇぇん! ご主人様ぁ〜! わたし皆の言葉が分からなくなってしまったんですぅ〜!!」
『みんな元気だった?』「リン、ごめん。どうやらスキルを着けてあげた後で言語が変わってしまったみたい」
「ええっ!?」
リンの体を片手で受け止めて抱き締めながらリンに謝る。その間に村の皆の顔を見渡すのだった。僕の顔が見れて皆ほっとしてるようだ。ぐずぐず懐で鼻を鳴らすリンの頭を撫でながら皆に声を掛ける。
『リンはちょっとした手違いで種が変わっちゃっったんだ。ほら角が生えてるでしょ? その所為で言語が変わってしまったみたい。僕たちとは話せてるから、リンはこのまま連れていてもいいかな?』
村人にはなんとなく納得して貰えそうな情報を与えておく。皆がリンの頭から生えた角を見て頷いている姿も見えた。
『これは早いお帰りで、ルイ様』
村長が姿を表して頭を下げる。村長の頭は隼のそれであった。鷲や鷹に似た顔つきだがどことなく頭部が小さく瞑らな黒目が特長だ。その黒目が見透かすように僕を見つめていた。
『リンは元々ルイ様のお世話に付けた娘でございます。ルイ様のお気の済むようにしてください。にしても、先程黒竜の姿を見たと皆が騒いでいたのですが』
『うん、それなんだけどね。ここでは何だから村長の家で話ても?』
『構いませぬ。皆様もどうぞこちらへ』
『ありがとう』「ほら、皆行くよ?」『これは少ないけど、皆への手土産!』
『『『『『わぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!』』』』』
村長の後を追いかけながら、後ろに立つ3人に声を掛けて村の皆にまだ残っていたツヴァイホーンの遺体を2つどさっとアイテムボックスから取り出して置くのだった。歓声が村に響き渡る。竜の話は何処かに消え去ってしまったようだ。
『ホッホッホッホ♪ 皆に土産をすみませぬ、ルイ様』
『お酒はないんだけどね』
「主殿は鳥人の言語が分かるのだな?」
「鳥人だけじゃないわ。ルイ様は多分だけど全ての言語が話せるはず」
「「え!?」」
シンシアの問にギゼラが答えるのだったが、あまりに突拍子もない事が聞こえて聞き返す。
「だって、竜語、巨鷲語、精霊語も話せるのよ? そう考えたほうがやっぱりね、で済むと思わない?」
「「確かに……」」
ギゼラの論法に2人はうんうんと納得していた。まぁ、その考え方は間違ってはいないね。さすがギゼラ。元が蛇だけに用心深いな。
村人たちはツヴァイホーンを抱えて意気揚々と宴の支度に取り掛かったらしくあっという間に消えていた。蜘蛛の子を散らすとはこういう事? なんて思いながら村長の家に入っていく。
村長の家といっても周囲に経つ家と大して変わらず質素な作りだ。当然テーブルも椅子もない。床に座って食事をするスタイルだ。床に座る事には別段抵抗もないからそのままどかりと腰を下ろす。僕の左隣りにリン。右隣にシンシア、今回はギゼラとアピスに後ろに回ってもらった。説明の都合上仕方ない。
まず、クライさんの事を説明する。本当はリンにして貰うつもりだったのだけど、スキル付与の思わぬ副作用の為に僕が行った。その流れでシンシアを紹介し、今後彼女がこの周辺にいなくなるのでしばらくは平穏に過ごせるはずだということも伝えることにする。ただ、それよりもクライさんが北の魔王に繋がっていたことがショックだったようで。しばらく動揺を抑えるために沈黙が続く時間帯もあった。
聞いた話ではウルティオ山脈は大陸を南北に分断しており、北側は魔王たちの勢力争いが盛んなのだという。そしてこの村は山脈の南側にあるとは言えその余波を受けているのだとか。自分たちが滅ぼされないのは巨鷲の庇護のもとにあるという現実もあるのだと村長は教えてくれた。
じゃあ、僕たちがいた所は? あそこは辺境って言って山の南側は魔王領だという話を聞いた記憶がある。というか世界の地理について全く情報がないので何がどうなってるのかさえわからないのだ。ジグソーパズルのピースを適当に合わせた感じで止まっていると言っても良いだろう。
やっぱり何処かで世界図を手に入れなきゃね。
皆に席を外してもらって僕は村長と対峙した。【メニュー画面】を開けて【アイテムボックス】の表示をスクロールさせていく。シンシアには了解をとっているのだが、低級の魔力付与武器を3点村長に預けようと思ったんだ。
村を守るにはやっぱりある程度の力が要る。巨鷲の庇護のもとに居るとは言うけど、守ってくれることはないと考えて行動しなければ自分や家族は守れないのだ。なので、定期的に力比べの祭りをして3点の魔力付与武器を持つに相応しいかを皆で3人選出し、村を守る役割をもたせるという案を村長に提案してみたのである。
結果は快諾。
それを受けて僕は【アイテムボックス】から低級だけども属性のついた武器を3つ選んで村長の前に並べた。火属性で持つ者に膂力小増加の恩恵がある槍斧、風属性で持つ者の聴力小増加の恩恵がある大弓、地属性を仕えるようになり相性が良い者には魔力小増加の恩恵がある杖の3点だ。
『ルイ様のお考えは良く分かりました。ただ、一つだけお願いがございます』
『ん? 何でしょう?』
『わたくし共が魔力付与武器を手にすることさえ恐れ多いことですが、他の者にルイ様より賜った物だという事が分かるように御印を頂きたいのです』
『あぁ〜なるほど』
それも一理ある。盗んだんじゃないのか?と言われれば証拠がないわけだ。
『それくらいなら構いませんよ』
それで村が元気づくならば安いものだよね。ただ、名前を打つ為の鍛冶師が持つような道具がなかったので村長から大工用のハンマーと楔を借りて簡単に打込むことにした。この世界に漢字があるのか分からないけど、僕の苗字を取って「九」と打込む。3つに打ち込んで終わった!と思ってたら突然3つの魔力付与武器がそれぞれの属性色に淡く光り出したのだ。
『えぇっ!? 何が起きた?』【鑑定】
Oh……。やってしまった。あんまり強い武器を渡すと翼人たちからよく思われないだろうと思って低級にしたのに。上級に近づこうかという性能になってた。3つとも【ルイ・イチジクによって鳥人を思い銘打たれた一品】と備考欄に書かれてる。名は伏せておきたいのに――。
『おぉ〜!これは素晴らしい……』
僕の気持ちを余所に村長が槍斧を持ち上げて見蕩れている。危ないから怪我だけはしないでね?と思いながら僕は外に出ることにした。皆を待たせていたからね。
『お待たせ。シンシアからもらった武器を3つ程村長に上げてきたよ。良かったかな?』
可笑しな質問だな? と思いつつシンシアに尋ねた。本当は渡す前だろ? と自分に突っ込みながら。
『あれはもう主殿の物だ。だからわたしにその都度確認を取らなくても良いのだぞ?』
『う〜ん……一応了解♪ 多分また聞くと思うけどよろしくね、シンシア♪』
『ま、まぁ主殿の▽※◇○※○』
何言ってるか分からないよシンシア。シンシアに向かってにこっと笑っただけなのに。また変なことを言われちゃうでしょ?
『ルイ様! 宴は出てくださるのでしょう?』
そんな事を思ってると鸚鵡頭のブラムスという男が駆け寄って来た。傷を癒やして以来鸚鵡なのに犬のように慕ってきてくれるのだ。嬉しいのだけど、良いおっさんに慕われるのもどうかと思う。仕事場のように和気あいあいとできる環境なら違和感を感じないのだけど、年下なのに慕われるという感覚がいまいち馴染めないのである。言ってしまえば気恥ずかしくなるの!
『いや、今回は急ぎだったから、あれは皆で食べて欲しい』
『そんな。皆出てくださると思って腕を揮ってるんですよ?』
『ごめんなさい。本当は留まりたいんだけどね、でも他にもきっと良いことがあると思うから! 宴は又の機会に取っておくよ。のんびり出来る時じゃないともったいないでしょ?』
『それはそうですが。娘も楽しみにしておりましたのに』
『あ〜それは本当ごめん! 娘さんの名前教えてくれる?』
『ランです』
『ちょっとまってて!』
そう言って再び村長の家の中に入ると、村長さんが大弓の弦を引いて遊んでいた。『あ、いや、これは』と言うか感じの反応だったので気にせずにさっきのハンマーと楔を借りて、僕が砦でもらった金貨の一枚に穴を開けて「九」と小さく刻む。紐で通せばペンダントにもなるはず。
『村長さん、僕たちはこのまま宴に出ず王宮に行くから後の事よろしくね!』
『畏まりました!』
大弓を抱えて返事をしてくれた村長さんに引き攣った笑いを向け、外に出てブラムスさんに先程穴を開けたコインを放る。しっかり掴んだのを確認して。
『それランちゃんにお守りね♪ ごめん、って伝えておいてもらえるかな?』
『ルイ様ありがとうございます! 必ず伝えます!』
そうブラムスさんに伝言を託け僕たちは村を出ることにした。あとは村長さんが上手くやってくれるだろう。
「よし、じゃあディーを迎えに行こうか。シンシア、また村の外で背中に乗せてもらえる?」
「勿論だ、主殿!」
あの楽しい宴を味わえないのは残念だけど、それよりも優先すべきことがある。村に来た時と同じように僕たちはシンシアの背に跨って居鷲の王宮に向かったのだった。いきなり王宮に乗り付けるという荒技を取ってみる事にしたのだ。
どんな顔で出迎えるのか。
◇
王宮は非常事態に陥っていた。
『申し上げます! 黒竜と思われる個体が王宮に近づいていると第一観測点から報告が入りました!』
『申し上げます! 黒竜が一体、第二観測点を通過しました!』
『申し上げます! 第三観測点にて黒竜を確認、騎乗者有りとのことです!』
『申し上げます! 第四観測点、黒竜が突風の結界に突入との報告入りました!』
次々と挙げられる報告を受ける初老の男がいた。ぎりっと奥歯を噛みしめる音が隣りに立つ者たちの耳に届く。
『何をしておる!!! ただ見ておるだけでは易々と王宮に攻め入られてしまうではないか!!』
光の反射具合によっては黄金色に見えるのではないか思うほど美しい毛艶の見事な茶褐色の髪を振り乱し、初老の男が三段高い所に置かれた長い背もたれ付の豪奢な椅子から立ち上がって声を荒げた。
『アラクネーといい、黒竜といい何故こうもタイミング悪く現れるのだ!!』
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