第46話 羽化
2016/3/30:本文修正しました。
2016/12/4:本文加筆修正しました。
2018/10/2:ステータス表記修正しました。
「シンシア、【ステータス】を見せてもらっても良い?」
「構いませんが、その代わりに主殿の【ステータス】を見せていただけませんか?」
Oh……そう来たか――。
確かに対等だからお願していると言った手前嫌とは言えないよな。お互いに尊敬し合うのならそうすべきか。まぁ“森”に居るメンバーの半数は知ってる訳だし。
「良いよ。その代わり、まだ皆には内緒だよ?」
「内緒ですか?」
「うん、内緒。見たらその意味が分かるから【ステータス】」
◆ステータス◆
【名前】ルイ・イチジク
【種族】レイス / 不死族
【性別】♂
【称号】レイス・ロード
【レベル】500
【Hp】327802/327802
【Mp】1115034/1115034
【Str】11901
【Vit】11234
【Agi】11345
【Dex】8834
【Mnd】8475
【Chr】4713
【Luk】3850
【ユニークスキル】エナジードレイン、エクスぺリエンスドレイン、スキルドレイン、※※※※※、実体化Lv167、眷属化LvMAX
【アクティブスキル】鑑定Lv230、闇魔法Lv612、聖魔法Lv180、武術Lv151、剣術Lv103、杖術Lv98、鍛冶Lv100
【パッシブスキル】闇吸収、聖耐性Lv192、光無効、エナジードレインプールLv11、エクスぺリエンスドレインプールLvMAX❶、スキルドレインプールLvMAX❶、ドレインガードLvMAX(+99)、融合Lv125、状態異常耐性LvMAX、精神支配耐性LvMAX、偽装Lv243、乗馬Lv146、交渉Lv261、料理Lv80、採集Lv112、栽培Lv156、瞑想Lv383、読書Lv308、錬金術Lv270
【装備】カシミヤセーター、綿の下着、ウルティオ黒羅紗のコート、ブーツ、アイテムバッグ
【所持金】金貨168枚
「レ!」
ぱしっ!
「しーっ! だから内緒に! って言ったでしょ!」
「○※△◇※▽!」
慌ててシンシアの口を塞ぐ! 何か言いたそうだけど眼で訴えて落ち着くまで待つ事にした。これ以上叫ばれると困るから。僕の意を酌んでくれたのかこくこくと頷いてくれたのでゆっくり口元から手を放す。
正直僕が生霊であることはまだ伏せておきたい。討伐されたくはないけど、逆にそれが切り札になる事もあるだろうし。
「落ち着いて、ゆっくり見てくれれば良いからね?」
そう言ってシンシアの右隣に腰を下ろす。ちょうど寝ているギゼラたちと焚き火を挟むようになる。僕の前に出た【ステータス】欄を興味深そうに凝視するシンシア。こんなスキル持ち他に居るのだろうか。自分が特別とは思わないけど、同じでは居たくないという反骨精神もある。
「主殿からはあの男のような“穢”を感じません。何故なのですか?」
「それが規格外と言われる所以でもあるんだ。それに体質上今以上に【アクティブスキル】は覚えられないし、【アクティブスキル】に深く関わってる【パッシブスキル】も覚えられない。結構面倒な体だよ? (あと、僕に殺されてもレイス化しないのも突然変異のなせる技だね)」
と小さな声で耳打ちする。それがくすぐったかったのかシンシアは軽く首を動かすのだった。
「でもわたしの【ステータス】に比べるとかなり主殿の方が低いのに勝てなかったのですね。これがわたしの【ステータス】です」
◆ステータス◆
【名前】シンシア
【種族】 ブラックドラゴン/ ドラゴン族
【性別】♀
【職業】ルーンナイト
【レベル】1000
【Hp】250500/250500
【Mp】294618/294618
【Str】25050
【Vit】25050
【Agi】28283
【Dex】22941
【Mnd】26707
【Chr】18856
【Luk】18266
【ユニークスキル】精霊語、人化、息吹、鱗鎧
【アクティブスキル】闇魔法Lv680、火魔法Lv591、武術Lv473、剣術Lv714、盾術Lv653、飛翔術Lv438
【パッシブスキル】闇耐性LvMAX、火耐性LvMAX、威圧耐性Lv317、精神支配耐性LvMAX
【装備】竜の全身鎧、竜の牙剣、竜骨の盾、竜髭のマント、布の服、絹の下着
【所持金】0
「うん、精神支配耐性付いてる。良かった良かった♪」
「あ」
「これで誰かに支配されることはないね。過信は禁物だけど。それにしてもこんな【ステータス】なのに本当よく勝てたな」
僕は冷や汗が背筋を流れ落ちるのを感じながら腕組みしてうんうんと頷くのだった。そんな様子をシンシアさんが潤んだ眼で僕の横顔を見詰めてるのも露知らず。だって【アクティブスキル】なんて軒並みLv400位超えだよ!? よく躱せたよな!? なんて考えてたのだ。
パチッ パチッ
「そっかぁ〜。闇と火の魔法使えてるから息吹が2属性だったんだ。あれには焦った」
ゴト ガラ
ん? さっきから何か外して置く音がするよ?
「あとレベル1000って、レベルの上限!? なぁっ!? シンシアさん何してるのかなっ!?」
「ルイ様、シンシアと呼んでくださいって言いましたよね?」
「うん、言ってたし聞いてるけど、思わずっ!? 何してるの! シンシア!」
なるだけ声が大きくならないように精一杯囁き声を張る! だって、足鎧だけ残して服の姿になったシンシアが両膝立ちになって胸の前で両指をぎゅっと絡ませて握ってるのだ。なんて言うのかお願いポーズ? お祈りポーズ? 可愛い。はっ! いかんいかん何を考えてるんだルイ!
「左腕を頂いてから胸の奥が暖かくなってたのですが、スキルの心配をしてくださってる横顔を見てたらこうしたくなったのです。不束者ですが優しくしてください。ルイ様好きです!」
「なぁあぁっ!!」ぱしっ
服を着たままだかシンシアがそのまま僕に抱き着いて来たのだ! 思わず叫んでしまい慌てて自分で口元を手で覆うのだったがシンシアへの対応が疎かになりそのまま抱き着かれて後ろに倒れてしまう。ど、ど、ど、どうするの!?
むにゅ
柔らかい感触が僕の胸に伝わってくる。ジルやアピスたち程じゃないけど、落ち着け冷静に分析してる場合じゃないぞ!? なんだか矛盾だらけな突っ込みを自分にしながらシンシアの顔を見ると――。
寝てた……。すやすやと――。
おぉぉぉいいっ!! 今のドキドキを返してくれぇっ!!
ぼりぼり頭を寝転がったまま掻きながら思わず苦笑してしまう。反動が出たのかもね。このままで居ると僕的には美味しいから毛布だけ掛けて寝るかな。あとは起きてから考えよう。
【鑑定】が効かなかった原因は恐らくレベルだ。間違いないだろう。2倍も離れてるんだから。でも僕のレベル上限は500と宣言された。それなのにシンシアはレベル1,000だ。これは種族や格によって上限枠が存在すると考えた方が、あれこれ理由付けするよりも腑に落ちる。なら、僕の伸び代はここまでってことか。後は今状態でスキルレベルを上げていくだけだな。
そんな事を考えながらも、アイテムボックスからアピスたちに掛けたのと同じ毛皮の毛布を取り出し僕とシンシアの体の上に掛ける。枕になりそうなものがないから自分の左腕を枕にして意識を手放すのだった。ぱちぱちと薪が爆ぜる音が心地良く耳に響いていた――。
◇
翌朝……?
きっと朝のはず。眼が覚めた時まだ誰も起きて来ていなかった。消えた焚き火の煙が思考を醒ましてくれる。メニューの時刻を確認すると午前7:48だった。うん、朝だね。右肩にまだシンシアの重さを感じる。どうやらあのまま熟睡していたようだ。
寝顔も可愛いけどこのままは流石にまずいよね。ゆっくりと体をずらして上半身を起こし、僕の右腿を枕にしてあげてから再び火を起こす準備を始める事にした。
一番初めに眼を覚ましたのはリンだった。一番早くから寝てたんだからそうだよね。
「おはよう、リン。昨日何も食べずに寝ちゃったからお腹空いたでしょ? 2人を起こさないようにこっちにおいで」
「はい、ご主人様♪」
「は?」
今なんて言った? ご主人様? 寝てる間に誰かリンの頭殴った? びっくりした顔で見詰める僕の左に梟頭から2本の角を生やした鳥人が嬉しそうに腰を下ろす。
「へ、へ」
「へへ?」
「へ、変ですか? シンシアさんが主殿と言われてるので、わたしは主人様って言おうかと思ったんですけど?」
メイドカフェという存在は知っているしそこでどんな接客をしているのかという知識もある。ただ体験した事のない僕にはかなり刺激的な言葉だった。うん、メイドカフェに癒やしを求める気持ち、今なら理解できる!
「へ、変じゃないよ! 良いと思う! というかリンがそう呼んでてくれると嬉しいーーな」
「はい、ご主人様♪」
あぁ〜癒やされる♪ うん、食べなさい、どんどん食べなさい。 アイテボックスから肉の塊を出しナイフでささっと平鍋の上で切り分けてから塩を振り炒め始める。すると肉汁の良い香りが周囲に立ち込め始め、それにつられて肉食女子たちが一人また一人と起き上がるのだった。最後まで寝ていたのはアピスだ。まだ起きてこないので、そのまま寝かせておくことにした。
アピスは僕と同じで食事を基本取らなくても平気なのだから。
「朝から肉というのは胃が重たいかな?」
ぶるぶる
3人がすごい勢いで首を左右に振る。肉が食べたいらしい。抛って置くと涎を垂らしながら肉を見詰めそうな勢いだったのでささっと木皿に取り分けてあげる。昨日と同じ轍は踏まないようにシンシアにはアピスの皿を使ってもらった。
「まった!」
齧り付きかけた3人を止める。食事には感謝が必要だよ?
「僕と同じように真似してみて」
そう言ってから合掌し「いただきます」とお辞儀をしてみせた。
「僕たちだけで一緒に食べる前にはこうしてね。 他の人たちが居るときはしなくてもいいから」
「「「いただきます♪」」」
3人の食前マナーを見届けてから僕も口に肉を頬張るのだった。うん、美味い! 3人とも朝から食欲旺盛だね。あっという間に無くなるので追加を焼く。アピス用に一切れだけ僕の皿に取り分けておくのを忘れないようにした。後で食べさせてあげよう。
食事が終わった頃アピスがむにゃむにゃと起きてくる。寝ぼけた顔も可愛いね。その鼻面にさっき焼いた肉を差し出して頬張ってもらった。何やら言ってるけどそのまま味わって噛んでなさい。
火を消し、食器や調理器具、毛布などを片付けてから僕は竜の遺骨の前に立っていた。どれも立派な骨格だ。竜の寿命は知らないけどこれほどの巨体を支えるためには骨も頑丈でないといけない。そして何体分もあるということはここが竜たちが自らの寿命を終える墓であることを示していた。形があるもが数えることが出来ただけなんだけど、風化して朽ちた骨はまだ沢山ありそうな骨山なのである。
「シンシア、いいんだね?」
「はい、主殿」
再び全身鎧に身を包んだシンシアが小さく頷く。もしかするとまた何十年か何百年か先に死に場所を求めて竜たちがここに骸を晒すことになるかもしれないが、それまでの間は何もない状態にしておく事にした。アイテムバッグを開いてその奥にアイテムボックスをスタンバイする。次の瞬間。
「「「「えっ!?」」」」
ずさぁぁぁぁ〜っという吸い込まれる音と共に、ものの数分で竜の骨の山は跡形もなくなっていた。ご馳走様でした。
「あ、主殿? アイテムバッグの容量を遥かに超える量だったはずでは?」
「え? あ、うん、ほら僕規格外だから……」
((((じぃいぃ〜〜〜〜〜))))
「さ、さぁて今度は財宝だ! まずは呪われたアイテムの発掘だよ!」
刺さってくる視線を無視して元気よく財宝の山に向かう。 視線より好奇心のほうが勝ってしまってるのだが仕方ない。男の子だもん! 財宝の山に向けて【鑑定】と念じる。
出るは出るは。
大剣3本、長剣1本、短剣3本、戦斧1振り、長槍2本、短槍2本、爪1組、杖2本、棒1本 、戦棍2本、首飾り3本、指輪5点、腕輪1本の合計27点。勿論、アイテムボックスの中に収まってもらった。今後の検証用のおもちゃをもらった気分だ。
「主殿は【鑑定】スキル持ちだったのですね」
「うん。あ、前から思ってたんだけど【鑑定】スキルって珍しいの?」
僕の質問に皆が頷く。そ、そうなのか。
「持っていないわたしが言うのも烏滸がましいですが、上位種の一部の者が持つと言われています。例えば魔王とか」
「魔王!? ないない。僕は違うからね!」
慌ててそこは否定しておく。関り合いなんて持ちたくないからフラグは折る! 引き籠もり生活を熱望してるのに何故こんなにアクティブになってしまったのだろう。
アイテムボックスの表示には先程収めた竜の骨が項目別に分類されてあるのが見える。今入れた呪われたアイテムも同じだ。で、あれば財宝も行けるね? とその前に。
「この中でお金の価値、使い方が分かる人?」
と手を上げて見るように促してみるが皆無。皆申し訳無さそうに下を向くのだった。大丈夫! 僕も分かってないから!
「使い方が分かればいくらか持っておいてもらおうと思ったんだけど、ひとまず僕が全部預かっておくから、必要な時にその都度渡すから遠慮無く言ってね」
そう言って先程と同じように財宝の山をアイテムバッグ経由でアイテムボックスに突っ込むのだった。なんて言うか、ざぁーっとアイテムバッグの中に飲み込まれていく様は圧巻です! それでも5分と掛からずにアイテムボックスに収納できた。神様に感謝だね。 それをいうとまたぎゅっとしてくれとか言い出しそうで怖い。でも、ここに居る理由もなくなったからまずリンの村に帰ることにした。
◇
時間は少し遡る――。
それはあの死霊と戦い始めた頃だ。
ウルティオ山脈に聳え立つ霊峰白山。その中腹に巨鷲の王宮があった。
王宮には様々な部屋があり王族たちが用いる部屋、来賓用の部屋、王宮を管理する翼人達の居住スペースもそれには含まれていた。その中でも物々しく警備兵が置かれ監視されている部屋があった。王宮においてここ1週間特に注意が払われてている場所だ。
舞踏会用の大広間。
時折、警備に立った4人の翼人のうち1人が重い扉を少しだけ開けて中の様子を確認する。蜘蛛の巣が無数に張り巡らされた部屋の奥に浮かぶ巨大な繭の様子をチェックしているのだ。だが今日はそのチェックを頻繁に行っていた。カサカサという音が聞こえ始めているのである。
王からは絶対に傷を負わせないようにと言われ、武器を持つことを禁じられている。同僚の侍女長のガレットからは繭から繭の主が出てきた時に空腹で襲われるかもしれないから決して扉を開けないようにと念も押されていた。
「ん! ん〜〜〜♪ よく寝たぁ〜♪ まだルイは帰ってきて無いようですわね」
『『『『!!!!』』』』
女の声が部屋の奥から聞こえてきた!
『おい! 王様とガレットに報告を! 眼を覚まされたぞ!』
元々打ち合わせていたのだろう、4人の内2人がそれぞれ別の方向に飛び立つ!走るより飛ぶほうが早く移動できるのだ。
ぐぅぅぅぅぅ〜きゅるきゅるきゅる……
何かの音が部屋の中で大きく響き渡る。
「あぁ〜お腹空いたぁ〜〜〜。外に居る翼人食べたらルイ怒るだろうな〜。仕方ない食堂か、食糧庫漁るか♪」
暗闇の中で蠢く八つの脚。自分の吐き出した糸を払う2本の手。
ぐぅぅぅぅぅ〜きゅるきゅるきゅる……
『何の音だ?』
『俺に聞くな!』
言語が違うディードと翼人たちの会話は咬み合わない。だが突然直立不動になる!?
『なっ!?』
『か、体が!?』
そして、自分たちの意に反して重い扉を開き始めるのだった。
『体が言うことを聞かん!?』
『何故だ!? このままでは扉が開いてしまう! 誰かっ!!』
「はぁ〜い、ご苦労様でございますわ♪」
扉が開け放たれて姿を現したのは、巨大な緋色の蜘蛛の下半身に美しい白磁のような肌をした上半身が裸の女性だった。深紅の瞳が2人の翼人を見比べて舌舐めずりをする。小顔で美しい少女のような顔立ちなのだがその仕草だけで男たちの背筋に冷や汗が流れ落ち、ざわっと肌が粟立つ。
真紅の髪は長く伸び、腰の辺りまである。前にも垂れた髪の御蔭で美しい膨らみは男たちの眼に晒されていないがそれでも美しく緩やかな曲線を大きく描く双丘は、彼女の動きに合わせて淫らに弾むのだった。切れ長な眉の上にも大きさが違う深紅に輝く楕円状のものが左右対称に2つずつ付いており、頬骨の上にも同じように深紅に輝く一円玉くらいの丸いものが左右に1つずつ見受けられる。
ぐぅぅぅぅぅ〜きゅるきゅるきゅる……
彼女のお腹の辺りから先程聞こえていた音が響き、男たちは青くなるのだった。食べられてしまうかもしれない、と。
すんすん
しかしディードはもとよりそうするつもりはなく、何かを嗅いだ後にこりと男たちに微笑んで空中に舞い上がったのだった。
「食事を頂いてまいりますわ♪ 皆様ごきげんよう〜♪」
真紅のアラクネーがその場を去った時、男たちは体に自由が戻ったことに気が付く。つまり何かの方法で彼女に操られていたのだ。顔を見合わせた2人はディードの後を追って飛び立ったのであった。
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