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レイス・クロニクル  作者: たゆんたゆん
第三幕 鷲の王国
33/220

第32話 繭

2016/3/30:本文修正しました。

 

 『本来でしたらわたしがお開きしなければならないのですが、申し訳ありません。重すぎて開かないのです』


 『ですよね……』


 どれどれ。押して開くのかな?


 『え?』


 ガレットさんの顔が驚きのあまりぽかーんとした表情になった。美人さんのそんな顔はあんまり見れないので美味しいですね。というか、僕には軽かったんです……けど?普通の扉を開く感じで開けれちゃいました。すみません。


 『あ、開いちゃいました。きっと開き易いように蝶番に油でも差しててくださってんでしょうね。はははは』


 軽く笑って誤魔化しておいた。ガレットさんの笑顔も引き()ってる。化物じみてると思われただろうな。まぁある種の威嚇にはなったかもね。


 中に入ってみると、かなりの広さだった。部屋の隅の方にテーブルとソファーが置いてある。中央部分は何もない。なんだろ? 舞踏会の会場みたいな広間なのかな?


 『こちらは舞踏会で用いる部屋でございます。ディード様にお入り頂ける部屋がここにかありませんでしたので。申し訳ありません』


 『いえ、(かえ)って助かりました。他の部屋だと気兼ねしてしまいますが、ここだと少々ディーが動いても大丈夫そうですから』


 『そう言っていただけると助かります。では、食事の準備をしておりますのでそれまでごゆっくり御寛ぎくださいませ』


 ガレットさんが部屋に入らずにそう一礼した。まぁ中は入ってすぐに調べれば問題ないか。ガレットさんを見送って部屋に入ることにする。【鑑定(アプリーズ)】。うん、問題なし。


 「入ろうか。問題はなさそうだから。試したいこともあるし」


 「はい」「ふぅやっとのんびりできますわ♪」


 ぎぃぃぃぃぃ ばたん


 重々しい音とともに扉が閉じられ中は僕たち3人だけになった。大広間にぽつんと佇む人2人と緋色の巨蜘蛛1頭。こん大きさだもん匹じゃなくて頭で良いよね?


 「じゃ、発表します! 心の準備をさせないまま悪いけど、いきなり僕と一つになってもらいます!」


 「「え♪」」


 今語尾が♪ ってなってなかった!? 何か勘違いさせた!? ってギゼラの顔が嬉しそうに何かを期待してる顔だ。しまった。という事はディーも表情が読めないけど間違いないよね?


 「ご、ごめん! 何か勘違いしてるみたいだけど、一つになると言うのは思ってるような意味じゃないよ?」


 「「え……」」


 あ、明らかにテンションガタ落ちだな。いいや、進めちゃおう!


 「ギゼラとは一度してるんだ。だから反動が少なそうなので、まずはギゼラからするね」


 「え?」


 きょとんするギゼラを見ながら僕はアイテムボックスから斬ってもらった左手を取り出す。アイテム扱いみたいだから血が滴り落ちることもないみたい。


 「ギゼラ左手を出して?」


 「あ、はい!」


 僕の求めに慌てて左手を差し出すギゼラ。その左手に僕の左手を重ねて【融合(フュージョン)】と念じてみる。


 「あっ!」


 一瞬の光とともに僕の左手はギゼラの中に溶け込んで消えた。ここまでは良いんだ。【鑑定アプリーズ】。仮説通りなら。


  ◆ステータス◆

 【名前】ギゼラ

  ・

  ・

  ・

 【パッシブスキル】風耐性LvMAX、水耐性Lv20、威圧耐性Lv1、精神支配耐性LvMAX


 「あった」


 仮説通りだった。状況はどうあれ、ギゼラは眷属化してないまでも【捕獲(ティム)】に近い関係性になってる。僕個人を慕ってるからだ。で、初めての【融合】で人化したということは、僕の影響が現れたのではないか?って思った訳。


 「え?」


 「ギゼラ自分のステータス見てごらん」


 「はい。【ステータス】――あ!?」


 「ギゼラさん、どうしたんですの?」


 「はい、今までなかった威圧耐性と精神支配耐性が、それも精神支配耐性がLvMAXなんて。ルイ様これは?」


 ギゼラは信じられないといった表情で僕を見てる。うん、良かったね♪ にこっと笑ってギゼラを抱き締めてあげた。


 「これで誰かに精神支配される心配がなくなったね。待ってて貰うお詫びというか、ううん、御礼だね」


 「~~~~~~~♪」


 ギゼラがぎゅっと抱き返してくれた。うん、あとはディーだ。もう察してるだろうけど、もう一つ大事な話もしておかなきゃ。ギゼラに抱き締められたまま体を捻ってディーを見詰める。


 「ディー」


 「はひぃっ!?」


 僕の方をぼーっと見てたディーがびくっとする。


 「僕は眷属化スキルを持ってる。ギゼラも他の皆も含めて眷属になって貰いたいと考えてるんだ。でもそれはディーにも持ってる気持ち。ただ、ディーは魔王様に仕えてるから、これまでは言わないでおこうと思ったんだけど、やっぱり無理。ディーにも僕の眷属になってもらいたい。今すぐじゃないけど、ゆっくり考えてて欲しいんだ」


 「……」


 「でもこれからする事はそれとは別の話。今ギセラにしたのと同じことをディーにもする。それは此処で誰かに飼い殺されない為にする事なんだ。だから僕を信じて左の前脚を出してくれないかい?」


 「――本当、ルイは狡いですわね」


 「ごめん、自覚はないんだけどよく言われる」


 八つの深紅の瞳がじ~っと僕を見詰めている。僕は苦笑いをしながらディーに謝ったのだった。でも嘘は言いたくないし、強制もしたくない。だったらぶつかるしかない。それが異世界(こっち)に来て学んだことだ。


 すっとディーが左の前脚を出してくれた。ありがとう。にこっと微笑んであげる。ギゼラみたいに表情が見れればきっと赤くなったるんだろうけど、蜘蛛は蜘蛛で可愛いげがあるので良しとするかな。しかし、向こうの世界では絶対に蛇や蜘蛛に触れなかっただろうに随分価値観が変わっちゃったな。


 「ありがとう♪」


 そう言ってから左腕を取り出し【融合(フュージョン)】と念じて、すかさず【鑑定(アプリーズ)】を掛けた。

 

 ◆ステータス◆

 【名前】ディード

  ・

  ・

  ・

 【パッシブスキル】風耐性LvMAX、闇耐性Lv103、威圧耐性Lv1


 一瞬の光ともにディーの左前脚と【融合】した僕の左腕だったが、ディーの【ステータス】に変化はない。そもそもギゼラのように一度で成功できたのは奇跡に近い確率で成功したんだろうから。


 それにしても、杖を持ってあれこれしてる割には邪魔だなって思わないのが不思議だな。普通ならそこら辺に立掛けておくだろうに。あれ?アスクレピオスさん?


 【しくしく】


 え!? 泣いてるの!? 何でっ!?


 【マスターの深い気遣いに感動したのです。わたしのマスターになった方々の中にはマスターの様な方はいらっしゃいませんでした】


 そ、そうですか。それはどうも。褒められるとむず痒いな。打算でしてるわけじゃなく思いつき感が半端ないからね。質が悪い。


 「ディー、まだスキルが確認できないから【融合】を続けて試すけど気持ち悪くなってない?」


 「大丈夫ですわ」


 「ごめんね。もう少し我慢してね」


 ディーに謝ってそれから30回程【融合】を続けた。しかしその都度【ステータス】を見ても精神支配耐性のスキルは現れてこなかったのだ。何で? 分からない。でもこれ以上はディーにも負担になるということは解る。


 「やっぱり出ておりませんわね」


 「うん。調子はどう?」


 「少し気持ち悪いと言うか。眠たくなってきました、わ」


 うん、じゃあ、これで最後にしよう。これでダメなら他の方法を考えなきゃ。頑張ってくれたし、異物を体に取り込むのはどちらにしもて負担が大きいよね。人体実験もいいとこだよ。


 僕は杖をギゼラに預け巨蜘蛛の顔に近づいて両腕をその首であろうところに回してぎゅっと抱きしめた。


 「ななななな――!?」


 「思った通りに行かなくて僕がイライラしてたのが伝わっちゃったね。ディーはいっぱい頑張ってくれてるのにね。ありがとう。これで最後にするから、あと1回僕に付き合ってもらえる?」


 「も、勿論ですわ! ルイがそんな事気にしなくても良いのです!」


 「ありがとう♪」


 巨蜘蛛が首を振るのが分かる。何とかしてあげたい。僕たちに義理立てする必要もないのにギゼラを助けに来てくれたし、手術も手伝ってくれた。今度は僕が守ってあげなきゃ。


 杞憂(きゆう)で済めば笑い話だけど、最悪のケースに陥った場合泣くのは僕だ。もうそんな思いはしたくないって決めたからやることはやる! アイテムボックスからもう1本、僕の左腕を取り出してディーの左前脚に重ねて念じた。【融合(フュージョン)】。


 さっきより強い光が出た気がする!?【鑑定(アプリーズ)】!


 ◆ステータス◆

 【名前】ディード

  ・

  ・

  ・

 【パッシブスキル】風耐性LvMAX、闇耐性Lv103、威圧耐性Lv1、状態異常耐性LvMAX、精神支配耐性LvMAX


 「やった。やったよ! ディー! 成功だ♪ ステータス見て!」


 「は、はいですわ! 【ステータス】え、これ」


 「うん、これで此処で寝てても大丈夫! ふあぁ~よかったぁぁぁ~~~! もう付かないんじゃないかって思ってたから。あれ? ディー? どうしたの?」


 安堵してその場に尻餅を搗くように座り込んだ僕は大きく息を吐くのだった。だが、その安堵も束の間、ディーの様子が可笑しくなてきたのだ。ガクガクと八本の脚が震え始めたのである。見るとお尻から糸が水のように溢れ出てるじゃないか!?


 「ねぇ、ディー!どうしたの!?」


 「――ルイ様」


 「ギゼラ! ディーの様子が可笑しいんだどうしちゃったのか分かる!? ねぇ、ディー! 返事して!」


 がしっとギゼラに後ろから羽交い締めにされる。え? 何? って顔をしてたと思うけど、ギゼラはにこっと笑って落ち着かせようとしてくれた。


 「あれはわたしと同じ状況かもしれません。わたしの場合は一瞬でしたが、ディーは爬虫類ではなく蜘蛛です。ですから、変化の為に一度眠る必要があるのかもしれません」


 「え?」


 ギゼラの言葉に脱力してまじまじとその顔を見詰める。次の瞬間、ディーが大量に糸を吐き出す音にびっくりして振り返るのだった。ここが大広間で良かった……。ものの数分で大広間が糸で覆い尽くされ、空中に幾重にも幾何学模様の網が張り巡らされ、その中心部分に大きな糸の塊が出来上がっていた。


 何も喋ることもなく、ディーはものすごい勢いで糸を伝いその塊に辿り着くと器用に脚を動かして、それを糸繭に作り替えたのであった。すかさず繭を開けその中に潜り込み、そして中から隙間を埋める。全てが終わったのは【融合】が成功して(わず)か10分足らずの出来事だった。


 「繭になっちゃったね?」


 「繭になりましたね」


 「そだ! 糸は火に弱いから、火を消さなきゃ! 今点いてる火を消してまわろう」


 「分かりました!」


 呆然としていたのだけど、火が引火すれば大変なことになるということに気づいて僕たちは慌てて走り回った。幸い、糸に触れても僕たちには何も反応ないようでホッとしたのも事実だ。でも。


 「真っ暗だね」


 「真っ暗ですね」


 「あ、そういえば杖は?」


 「あ! 申し訳ありません! 火を消すことで頭がいっぱいでどこに置いたのか」


 うん、わかる、それは責めれない。預けておいたのは僕だし、火を! って煽ったのも僕だからね。そだ、アスクレピオスさぁ~ん?


 【はい、マスター! それとさん付けは止めて頂けませんか? わたしも皆様と同じように愛称で呼ばれたいです】


 またこのくだり。しかも愛称? 僕に決めろと?


 【はい♪ と言うか、他に誰に決めていただければ良いのですか?】


 ま、まぁそうだよね。因みに、アスクレピオスは性別どっちなの?


 【マスター酷いです! ここまでお話してて気づいておられないのですか!?】


 え、あ、いや、きっと女性なんだろうな~とは思いつつ。そうじゃない可能性を捨てきれなかったから。向こうの世界でアスクレピオスと言ったら男神だよ? そうかもしれないって思うけど、それはいっちゃいけない気がしたから言わない。


 【もうっ! こうなったら女性のイメージを要望します!】


 はい?


 【マスターの中で理想の女性像をイメージしてください!】


 理想のって急に言われてもな。う~ん。どうなんだろ。母さんは美人さんだったけど、母さんが理想か?って言われると違う気もするし。うわ~僕って優柔不断なんだな。


 【イメージが多すぎます! こちらで統合しマスターの好みにアレンジします】


 え、あ、ごめんなさい。よろしくお願いします。あ、そう言えばギゼラはどこ? っと手探りでギゼラを探していたら。


 むにゅ


 「あん♪ ルイ様」


 「ご、ごめん、そんなつもりじゃ。ほら真っ暗で姿が見えなかったから手探りで」


 「そうでしたら言ってくだされば、こうしましたのに♪」


 ギ、ギゼラは暗闇は問題ないみたい。というか熱感知あったよね? あわわ! マシュマロが腕に! とにかく部屋から出よう!


 【イメージの統合が完了しました! 具現化するのにマスターのエナジーを使用します。宜しいですか? はい/いいえ】


 は? いかんいかん、危うく同じ間違いを犯すとこだった。


 【認証確認、実行します】


 なんですとっ!? もしかして文字さえ続いていれば良いのですか? そうなのですか? アスクレピオスさん!? うぐっ! これまた結構吸い取ったね。


 さらっ むにゅ


 え? 何か髪のようなものがギゼラとは反対側から頬に掛かる。いや、このマシュマロはっ!? 誰!?


 「ますたぁ~♪」


 「!?」


 「えええええっ!? 何? アスクレピオスさん、人になったの!? 杖は?」


 「はい! わたしも可愛がっていただきたいですから!」


 「ルイ様!? 腕にしがみついている女は誰ですか?」


 「Oh……」


 コンコン


 ちょうどその時扉をたたく音がした。これは天の助け! 誰が力自慢の付き人を連れてきてくれてたみたいで、ゆっくりと扉が開き始めた。通路側からの光が部屋に差し込み僕たちを優しく照らしてくれる。声の主はガレットさんだ。


 『皆様、お食事の準備が整いましたのでお招きにあがりまし……』


 ガレットさんの言葉が止まり視線が僕の左腕に動く。その視線に釣られて顔を動かすと。

 

 『あ……』

 

 アスクレピオスさんは全裸だった――。







 

最後まで読んで下さりありがとうございました。


ブックマークやユニークをありがとうございます! 励みになります♪


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宜しくお願い致します♪

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