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レイス・クロニクル  作者: たゆんたゆん
第三幕 鷲の王国
29/220

第28話 空の旅

 

 『『ルイ殿!』』


 2羽が僕の視線に気がついたようで、急いで寄ってくる。いや、お前呼ばわりから随分格上げされたよ?


 『いや、そんなに畏まらなくても』


 『何を言われますか! 大恩ある方にそんな礼を欠いたことなどできません!』


 『そうです! わたしたちはもう諦めておりましたのに。貴方の御蔭で生きる希望が生まれたのです!』


 うん、まぁそこはそうだよね。あの状態だったら残りの人生、鷲生? 見通しは暗かっただろうから。ん? 何で後ろの君たちがそんなに誇らしげにしてるの?


 ギゼラとディーがふふん♪ と胸を反らして得意げな雰囲気を醸し出してる。いや、君たちの助けがないと無理だったんだけどね、そこはもう少し謙虚に行こうよ。目立ちたくないんだから。


 『えっと、じゃあお暇しても』


 『『ダメです!!』』


 『ええっ!? なんで?』


 目出度しめでたしで帰ろうと思ったら、そうさせてもらえないらしい。


 『ですから、大恩ある方を手ぶらで帰らせる訳にはいきません!』


 とヴァルバロッサさん。


 『そうです! お恥ずかしい話、この巣はわたしたちの(つい)()なのですが、ここで命を終わらせるつもりだったため御礼にお渡しできるものがありません。それで、わたしの回復の報告も合わせて一族の長に紹介したいのです』


 とアンジェラさん。


 はい?


 …………今なんて?


 一族の長? 無理むり!


 『いえ、結構です』


 そんな面倒な処に行ってどうする? 余計に話をややこしくするだけじゃないか!? 静かな余生がー―。


 『そうは参りません! 大恩ある方を手ぶらで帰すなど一族の名折れ是が非でも付いてきていただきます』


 『ルイ、諦めたら?』


 「これは逃げれないかと」


 そうだよね。岩棚からダイブしてもすぐ背中に拾われそうだ。ディーとギゼラに窘められて、渋々頷くのだった。


 『では蜘蛛殿は我の背に乗ってもらおう。アンは病み上がりだから風抵抗の生じるものは、まだ乗せれない』


 『なるほど、それ一理あるね』『ディーはヴァルバロッサさんの背に乗ってだって』


 ヴァルさんの説明に頷いて僕はディーを促す。


 『別々ですの?』


 『仕方ないんじゃない? 病み上がりの人の上に沢山乗れないでしょ? それに、ディーの体は気流を難しくさせるみたいだから、ヴァルさんに乗ってる方が安心だよ』


 『それならば仕方ありませんわね。それに背中は羽毛でホカホカして冷えることもないでしょうから』


 緋色の蜘蛛はそう言うと器用に雄鷲の背中に登って行き、翼と翼の付け根の間に上手く体を潜り込ませるのだった。ディーの体は全長8mにもなろうかというものなのに、収まるということは倍近い胴周りがあることになる。怪鳥といっても過言ではない。


 そんな巨鷲と交渉し手術もしてしまったのか、と我ながら事の重大さをひしひしと感じていたのだった。眼の前にアンさんが寄ってくる。


 『ルイ殿と蛇殿はわたしの背に。御二人であれば問題なく運べますから』


 『ありがとう。羽を掴んで登っても?』


 『勿論です』


 「ギゼラ、あがろうか。先に行くね」


 「はい」


 先に登ったのは訳がある。彼女を先に登らせることは、僕の被ダメージ耐性の限界を超えてしまうと判断したためだ。上から見てもその見え隠れするものは小刻みに僕のダメージを蓄積させていく。本当になんとかしなければ。


 アンさんの首元に跨ると、その後ろへギゼラを座らせる。まぁ、案の定ギゼラはぎゅっと後ろから抱きついてきたのだが、それで落ないのであれば問題ないか割り切ることにした。


 『準備できました、お願いします』


 僕の合図に2羽が羽撃き始める。初めにヴァルバロッサさんが岩棚から飛び降り風を掴む。それを見たアンさんが嬉しそうに鳴くと、同じように岩棚から飛び降りたのだった。彼らが共に空を舞えるのはいつくらい振りなのだろ?


 風を纏っているかのように滑空する2羽を見ながら、鷲掴みにされてた感覚との違いを考えていた。


 その時は寒さを感じていたのに、今はそれがない。風すら当たってないような感覚なのだ。この違いなは何なんだろう? 力学的に説明すればできなくもないんだろうけど、そこまで得意な分野じゃなかったし、ひけらかしたくもないから考えるのを止めた。


 『アンさん、聞こえますか?』


 『なんでしょう?』


 『どれくらい移動に時間がかかるのでしょうか?』


 『そうですね。今日は風も良いので、半日も飛べば着くと思います』


 半日!? 12時間ですか? 成田からニューヨークくらいですよ!? 僕はいいとして、ギゼラが耐えれるか? その時はその時だね。腹を括ろう。


 『途中襲ってくるような不埒な輩はいるんですか?』


 『はい。竜種の特に飛竜(ワイバーン)族とわたしたちは仲が悪いので、出くわすと戦闘になるか、逃げの一手を放つかどちらかになります』


 『逃げることもあるのですね』


 『いくら個人の武勇があっても数に儚いません。とっさの判断が命を左右することがるのです。ですから、逃げることにわたしたちは恥じたりはしません』


 なるほどね。ん? これ僕がいまフラグとやらをやててしまった? まさかね。ワイバーンね。あれでしょ? 尾っぽに毒針を持っているという飛行型の竜。できれば遭いたくないね。


 何か空中戦で役立つスキルがないかな?


 僕は砦で強奪していったスキルのチェックをしてないことを思い出した。結構な量をご馳走になったんだけど、職種が似たような人ばかりだったから珍しいスキルはないかもしれないね。


 ステータスを呼び出して2種類のプールを【鑑定】してみることにした。


  まずは、エクスぺリエンスドレインプールLvMAX❶に……


 【鑑定アプリーズ】


 ◆エクスぺリエンスドレインプールLvMAX❶◆

 【分類】パッシブスキル。常時発動中。エクスぺリエンスドレインで吸った経験値を幾らか貯めておくことができる。得た経験値は任意の項目に振り分けることができる。スキルレベルのないもの、既にレベルが上限に達しているものには効果がない。現在12400レベル分の経験値の貯蓄があります。利用されますか?はい/いいえ。


 …………。


 …………。ゴシゴシ目を擦ってみる。老眼始まった?


 …………。


 1,10,100、1000ー―ー―。


 ぱしっ!


 叫びたくなる衝動に耐えて、左の掌で口を覆う。


 いやいや確かに片っ端から吸い上げてポイしたけど、こんなインフレみたいに経験値もらってどうする!?


 難しい話は後で考えるという事で、「いいえ」でお願いします!


 はい、次見てみよ~♪


 【鑑定アプリーズ】


 ◆スキルドレインプールLvMAX❶◆

 【分類】パッシブスキル。常時発動中。スキルドレインで吸ったスキルを幾らか貯めておくことができる。得たスキルは任意で身に着けることができる。先天的な固有保持スキル意外であればドレインできる。貯まったスキルは消去することも、眷属に譲渡することも可能。現在265のスキルを保有しています。身に着ける/眷属に譲渡する/消去する


 身に着けますか? はい/いいえ


 265!? 頭が痛い。ここは「はい」で! ずらっと並んだ様相を確認してみなければ。


 ◆スキルドレインプール一覧◆

 【スキル名称】威圧Lv1×3、Lv5×2、Lv20、Lv100

 【スキル名称】調教Lv50

 【スキル名称】体術Lv8、Lv9、Lv10×3、Lv15

 【スキル名称】剣術Lv5×20、Lv10×15、Lv89、Lv91、Lv143、Lv160×2、Lv200×3、Lv206

 【スキル名称】槍術Lv3×8、Lv10×2

 【スキル名称】弓術Lv4×17、Lv9×2 

 【スキル名称】扇術Lv1×2

 【スキル名称】鞭術LvLv2×3

 【スキル名称】暗技Lv1

 【スキル名称】盾術Lv2×2

 【スキル名称】投擲Lv1×7、Lv6×3

 【スキル名称】光魔法Lv83、Lv99、Lv100×3、Lv122、Lv148、Lv150×2、Lv200

 【スキル名称】光耐性LvMAX×10

 【スキル名称】土魔法Lv5

 【スキル名称】土耐性Lv6

 【スキル名称】火魔法Lv7

 【スキル名称】火耐性Lv6

 【スキル名称】風魔法Lv2

 【スキル名称】風耐性Lv6

 【スキル名称】水魔法Lv1

 【スキル名称】水耐性Lv6

 【スキル名称】警戒Lv5×8、Lv10×5、Lv26

 【スキル名称】罠Lv8、Lv15

 【スキル名称】狩猟Lv4×3

 【スキル名称】裁縫Lv8

 【スキル名称】窃盗Lv6×8、Lv11×3、Lv20

 【スキル名称】野営Lv5、Lv8、Lv15

 【スキル名称】料理Lv3×4、Lv7、Lv9

 【スキル名称】旅歩きLv8×5、Lv13、Lv15×7

 【スキル名称】騎士道Lv20×5

 【スキル名称】乗馬Lv5×10、Lv6、Lv13

 【スキル名称】偽装Lv1×20、Lv3×10、Lv5×15、Lv20×5


 見事に状態異常耐性のスキルがないね。


 覚えられそうなものは、あるにはあるけど、今は光耐性だけでいいかな。


 【スキル名称】光耐性LvMAX 身に着けますか? はい/いいえ


 はい。


 そのスキルは 光耐性LvMAX は 光耐性Lv201 へ統合されます。宜しいですか? はい/いいえ


 はい。


 【スキル名称】光耐性LvMAX は 光耐性Lv201 に統合され、光耐性LvMAX になりました。


 ここまでは良し、もう一度すると闇耐性の時と同じ結果になるはず。


 【スキル名称】光耐性LvMAX 身に着けますか? はい/いいえ


 はい。


 そのスキルは 光耐性LvMAX は 光耐性LvMAX へ統合されます。宜しいですか? はい/いいえ


 はい。そうそう、こうなって。


 【スキル名称】光耐性LvMAX は 光耐性LvMAX に統合され、光吸収 へと変化しましたが素体属性が闇属性の為に光吸収は変質し光無効になりました。


 …………。


 もう驚かない。驚かないよ……。


 光無効? 吸収も厄介だけど、無効も厄介だよね?


 「ルイ様?」


 「ん? なに?」


 背中越しにギゼラが声をかけてきた。


 「黙ってステータスを見てしまいました。申し訳ありません」


 あぁ、そういう事か。解った上で操作してたんだから、ギゼラが謝る必要はないな。


 「大丈夫。ギゼラが見たとしても黙ってくれると思ってるからステータス画面を開けてたんだよ?」


 おぅっ♪ 僕の言葉に返事は帰ってこず、代わりにギュッと抱きしめられ柔らかい感触でダメージを受けた。うん、これは危険だ。


 「それで、ルイ様にお願いがあります」


 「何? 改まって?」


 「わたしを眷属に加えていただけないでしょうか?」


 あ、あるね、眷属化。一先ずレベルMAXにしてるけど、気づかないふりをしてたやつが。神様に最初説明を聞いてそれっきりにしてたもんな。


 なんだっけ?

 

             ◆


 レイスは自分が殺した者をレイス化させます。


 …………それは凶悪だ。


 でしょ? なので、レイス化させない代わりに自分の魂に列なる仲間、家族なような存在を作れるスキルをプレゼントしました。それが眷属化♪だから、ルイくんが誰かを殺しても、その人はレイス化しません。


             ◆


 ー―って話だったな。【鑑定】してみるか。


 【鑑定(アプリーズ)


 ◆眷属化LvMAX◆

 【分類】アクティブスキル。任意で自分が認めた者と魔法契約し、自分の魂の系譜に連なる存在と成らせる儀式。眷属化によって眷属は更に力を得ることが出来るが、自らの上位支配者である契約主を害することができない。また眷属は主の特性を獲得することが稀にあるが、必ずしもそうなるわけではない。眷属化の儀式は回数制限が課されており、無制限に眷属を増やせるわけではない。


 なるほどな。


 「ー―様?ルイ様!?」


 「あ、ごめん!」


 「申し訳ありません。勝手な申し出をお許し下さい。急に黙ってしまわれたので、怒ってしまわれたと」


 「ギゼラ本当にごめん! 怒ってないから! ちょっと考えてこなかった事をギゼラに言われてね、ぼーっと考えちゃったんだ」


 「本当に?」


 「うん、本当! だから怒ってないよ? それより不安にさせてごめん」


 肩越しに顔を覗かせて不安そうに僕の横顔を見ているギゼラの頬を、謝りながら撫でてあげる。安堵した雰囲気が背中越しに伝わって来る。今のは僕が悪かったね。


 「ごめんね、ギゼラ」


 「いえ。怒っておられないというのが分かっただけで十分です」


 「眷属化の事だけどね、ギゼラの申し出はすごく嬉しいよ」


 「では!」


 「おわっ!」


 僕の言葉にギゼラが飛びついてくる。笑顔がはじけるってこういう事なんだろうね。綺麗だな♪


 「でも、少し待って欲しいんだ。この眷属化は回数制限がある魔法でね。ギゼラは眷属なのに何故私は!? っていう問題を防ぎたいんだ」


 「…………」


 「ううん、言い方が悪かったね。僕はギゼラに眷属になってもらいたい」


 「!!」


 「でも、ギゼラだけじゃなくて他にも眷属になって貰いたい人がいるんだ。“森”に帰ったら今考えてることを試すから、その時僕の眷属になって欲しい。それじゃあダメかな?」


 「ー―ルイ様はずるいです」


 「……ごめん」


 「…………でもそんなルイ様だから、わたしは眷属になりたいって思ったんです。初めて会った頃のわたしでは考えられないことですが。もうルイ様が居ないとダメみたいです」


 むず痒い! 僕今どんな顔してるんだ!? しっかりしろ! 致命傷(クリティカルヒット)だぞ!? ギゼラめ。なんという恐ろしい爆弾を落とすんだ。くそ、仕返しだ!


 「……ありがとう」


 「~~~~~~~~~♪」


 惚気てニヤニヤしてしまいそうになる顔を引き締めて、僕の肩越しに気持ちを吐露してくれたギゼラの頬に仕返しのキスをしてやった! 見る間に顔が真っ赤になったギゼラは慌てて僕の背中に隠れてしまうのだった。背中でセーターをギュッと握ってるのが分かる。しばらくはこれでいいか♪


 あんまり見せつけてるとディーがカンカンになるだろうから。


 そんなこともありつつ、空の旅は無事に旅程の半分ぐらいを消化することができた。砦で襲われたのがお昼前だったので日がどんどん傾いてくる。水平線といものを見たことはあるが、今見ている景色はそれとは比べ物にならない絶景だった。


 それはいうなれば空平線ー―。


 眼下には分厚い白色の絨毯のような雲が流れており、その雲の先に真っ赤な夕焼けが沈んでゆこうとしていたのだった。


 「綺麗……」


 ギゼラが思わず感歎の声を漏らす。うん、僕もそう思う。


 「本当だね……」


 そうして世界が一瞬赤く染め上げられ、やがて夜の帳が空を包み込むのだった。


 その下を2羽の巨鷲が静かに翔んでいたー―ー―。








最後まで読んで下さりありがとうございました。

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