第21話 緋色の蜘蛛
2016/3/30:本文修正しました。
2017/8/26:本文加筆・削除修正しました。
『宜しい、じゃあお詫びに私を助けなさい』
肩の上にいる蜘蛛を凝視する。緋色。普通の蜘蛛ではないのは明らかだ。だが自由に動けるこの蜘蛛を助けるとはこれ如何に? 思わず聞き返していたーーーー。
『は?』
『私の本体はこの先に囚われているのです。忌々しい事にあの小太りのキモ男に【捕獲】されるなどど、魔王様に報告できませんわ!』
『!?』
今聞き捨てならないワード出ました! 魔王様!? この蜘蛛配下ってこと? いやいや、絡みたくないです。
『ごめんなさい。貴女よりも先に探さならければならない者たちがいるので……それは無理です』
『えっ!? ちょっと、なんでですの! 私が魔王様の部下だと知っての上での返答なのですか!?』
その通りです。魔王様怖い。
『できればそのまま捕まっててください。魔王様と接点を持ちたくないので。うわぁぁ!?』
わしゃわしゃわしゃ
緋色の蜘蛛が首筋に擦り寄ってくる。そんな趣味はないですよぉ~! と、鳥肌が!
『お願いしますわ! 貴方の事黙ってますし、探してる人を一緒に探してさしあげるから、私も一緒に助けてくださいませ!』
『え~そうは言いますけど、【捕獲】されてるんだったら、その本人に解除させるか殺すしかないじゃないですか。僕には無理ですよ。わわわわっ!』
わしゃわしゃわしゃ
首筋から口元に向けて緋色の蜘蛛が這い上がってくる。ひぃぃぃぃっ! ぞわぞわする!?
『一体どの口がそんなことを言ってるのかしら? 私、見てましたのよ? あの【黒珠】は何ですの!?』
『や』
『や?』
『闇魔法です』
『きぃっー! そんな事分かってますわ! 莫迦にして! こうして差し上げます!』
『痛たっ!? いててててっ!? か、噛まないでくらひゃい!?』
下唇に緋色の蜘蛛が噛み付く。これが意外に痛い。チカチカするのだ。そうこうしてると奥からまた足音が近づいて来るのが分かる。【黒珠】と念じて周囲に纏わせる。
『!? そ、それですわ! 何故そんなに小さいのです!?』
『教えたくないです』
『きぃっー! またそうやって莫迦にして! いいですわ! 私が直接調べて差し上げます!』
『ダメだ!!』
『ひぃっ!』
そう言って近くに浮いていた【黒珠】に触ろうとしたので、慌てて止める。どう見ても一発で意識が飛んでしまうだろう。そんな可哀想なことはさせれない。きつく言われて伸ばしていた足を慌てて引っ込める。
『うう、そんなに怒らなくても』
何だかからかい甲斐がある蜘蛛なので、可愛く見えてきたこともない。いや、蜘蛛なんだけどね。緋色の。
『あ、ごめん。でも君が思ってる以上にこれ凝縮させてるから、一つでも意識飛んじゃうよ? だから危ないと思ってね』
『……本体じゃないと言ってるのに、心配してくださったのですか?』
『え? あぁ~そうだったね、それじゃあ、気にしなくて良かったんだ。ごめんごめん』
『……いえ、分身でも痛みは感じますから。その、お気遣いに感謝致しますわ』
ぼりぼりと頭を掻くいて誤魔化すのだったが、蜘蛛は何故か耳の元に来てごにょごにょお礼を言ってた。最後の方は小声でよく聞き取れなかったんだけどね。
「「「いたぞ!」」」
「ふぅ、もういい加減力の差を感じてくれればいいのに。面倒だなぁ~。えぃ!」
奥の通路の曲がり角から20名程度の武装した者たちが現れる。飛び道具は見たところなさそうだ。まぁそれはそうだね、こんな狭い通路で飛び道具使ったら同士打ちになっちゃうもんね。そこに向けて容赦なく【黒珠】を放り込む。
『ほんと容赦ないですわね』
『うん、容赦してあげれる理由がない』
肩の上で緋色の蜘蛛が呆れていた。うん、僕もそう思うよ。パタパタと倒れてる者たちの向こうに人にあらざる影が見える。なんだろ?
『あれは【捕獲】された低知能の熊どもですわ』
『ーー君がそれを言うの?』
『なっ! 私は【捕獲】されたと言っても、抵抗したので完全に支配下に置かれてるわけではないのです! あの小娘や蛇もそうですが』
ん? なんだって?
『まった!』
『はぃ?』
『その娘と蛇って、どこに居るの?』
『上の階ですわ。案内してあげても宜しくてよ? その代わり』
『分かった。助けてあげる。その代わり、案内してくれる?』
『えぇ、勿論ですわ!』
自分の希望が叶うのが嬉しのか、やる気になってくれた。あとは、二尾の狐たちか。思考をまとめながら【黒珠】を最大で出しておく。影は、10体くらいかな? あれは美味しそうだ♪
『ありがとう。えぇと、僕はルイ。君は?』
『ディードよ。特別にディーと呼ぶことを許してあげますわ♪』
『そ、それはどうも』
と言うか、このまま来るとここの人たち踏んじゃうでしょ? ダメだって。僕は慌てて倒れてる人たちを壁際に急いで寄せていく。吸うのは後だ! 咆哮が通路に響き渡る。ブレスが来るね。
「【闇の外套】」
『え? 私に?』
『ここまでは来ないと思うけど、念の為にね。何かあったら眼醒めが悪くなるでしょ?』
『ーーだから、これは分身で』
『あぁ、そうだった! まぁ気にしない、御節介を地でやってるって良く怒られてるから!』
『ぷっ! 何ですの、それ!』
【闇の壁】これでいいかな♪
『よし、迎撃開始だよ!』
『え? 同時に3つの魔法を掛けて何ともないのですか?』
『へ? 普通にできるんだけど、皆できるんじゃないの? おっと予想通りブレス来たね!』
『!!?』
僕の肩の上で緋色の蜘蛛が驚いたように飛び上がってた。何かを喋ってるようでもないけど、仕草が微笑ましいんだよな。
熊と聞いて想像したのがあのツヴァイホーン。あいつらは何も考えずによくブレスをぶっぱなす癖があるから、想定してて良かった。【闇の壁】も【黒珠】と同じ要領で凝縮すると強度も跳ね上がったのは嬉しい誤算だね。
さて、さっさと狩って食事タイムと行きますか。ん、完全に吸い取っちゃって殺すとディーにばれるよ、ね。ギリギリで止めときますか。
その後は、【黒珠】の機銃掃射といってもいいぐらいに【黒珠】を放り込んでやった。ディーは『横暴ですわ! 鬼畜ですわ!』と叫んでたけど、気にせずに喉に指を当てて触診を始める。
『何をしておられますの?』
『息があるかどうか脈の確認だよ。死んじゃうより、命があったほうが良いでしょ?』
『はぁ~ルイは大甘ですわ! 甘いにも程があります! これでまた襲いかかってこられたらどうするのですか? 止めは刺すべきですわ!』
『うん、その時はまた返り打ちにするさ♪』
そんな話をしながら実は酷い事をしていた僕。3種のドレインで美味しく頂きました♪ 勿論、熊さんたちからもね。
『はぁ~……信じられませんわ……』
肩の上で緋色の蜘蛛があっち行ったりこっち来たりしてる。意外に可愛いな。あ、そうだ。
『そういえばさ、ディーはツインテールフォックスをこの砦で見なかった?』
『見ましたわよ。確かここの地下のはずですわ。私もそこにおりますし。なんでしたら其方からでも』
『そうだね』
『え?』
『え? 何か悪かった?』
『いえ、私の方を先に解放したら逃げてしまうと思いませんの?』
『なんで? だって完全ではないにしても【捕獲】されてるんでしょ?』
『う、それはそうなのですが、何だか調子狂ってしまいますわ』
大方片付いたようなので、近くにあった通路を照らしている松明を手に取る。燃やすものないかな? 煙が出そうなもの、シーツの様な物があったらいいんだけど。ないね。仕方ない。このまま地下に降りてそれからだ。
森の奥に在った屋敷の地下室みたいに、奥へ階段が長く続いてる。
粗方兵士たち意識を奪っておいたから、さっきまでの騒がしさはない。
ただ、地下室独特の湿った臭いと、アンモニア臭が立ち昇っていた。辺境の街のあの地下室みたいにーー。
◇
『宜しい、じゃあお詫びに私を助けなさい』
私は中肉中背の男の肩でそう命令しました。黒髪に黒眼は珍しい相ですが、人の良さそうな感じがします。問題ないでしょう。これでーー。
『は?』
無礼なことに、この男は聞き返してきました。全く、これだから人族は下等なのです。
『私の本体はこの先に囚われているのです。忌々しい事にあの小太りのキモ男に【捕獲】されるなどど、魔王様に報告できませんわ!』
『!?』
一刻も早く、戻らねばなりません。私個人が魔王様に心酔して独断で勧誘に来たのですから、謗りを免れないでしょう。ですが、これはあり得ません。あってはいけません。何とかしなければなりません!
『ごめんなさい。貴女よりも先に探さならければならない者たちがいるので……それは無理です』
『えっ!? ちょっと、なんでですの! 私が魔王様の部下だと知っての上での返答なのですか!?』
耳を疑いましたわ。魔王様に対して何たる不敬な態度を!? きーっ! この口ですわね! 塞いでくれましょう!
『できればそのまま捕まっててください。魔王様と接点を持ちたくないので。うわぁぁ!?』
わしゃわしゃわしゃ
ふふふふ。焦りなさい。そして私の願いを聞き届けるのです! その為には譲歩も致しましょう。
『お願いしますわ! 貴方の事黙ってますし、探してる人を一緒に探してさしあげるから、私も一緒に助けてくださいませ!』
『え~そうは言いますけど、【捕獲】されてるんだったら、その本人に解除させるか殺すしかないじゃないですか。僕には無理ですよ。わわわわっ!』
きーっ! 私の気にしてることをズケズケとと! この口ですわね! 要らぬことを口走るのは!
わしゃわしゃわしゃ
そ、そうでした。あの闇魔法の事を訊かなくては!? ふふふ。魔王様にみやげ話が1つ出来ますわ。
『一体どの口がそんなことを言ってるのかしら? 私、見てましたのよ? あの【黒珠】は何ですの!?』
『や』
『や?』
『闇魔法です』
『きぃっー! そんな事分かってますわ! 莫迦にして! こうして差し上げます!』
『痛たっ!? いててててっ!? か、噛まないでくらひゃい!?』
下唇に噛み付いて差し上げました。ふふふ。毒は勘弁して差し上げましょう。さあ、言うのです! と思ったら小さな粒のような【ダークボール】が一杯私の周りに現れたではありませんか!?
『!? そ、それですわ! 何故そんなに小さいのです!?』
『教えたくないです』
『きぃっー! またそうやって莫迦にして! いいですわ! 私が直接調べて差し上げます!』
『ダメだ!!』
『ひぃっ!』
そう言って近くに浮いていた【ダークボール】に触ろうとしら男が凄い剣幕で制止したのです。もう、ビックリしてしまいましたわ!
『うう、そんなに怒らなくても』
【ダークボール】へ伸ばした前脚を戻しながら、私は悔しくてその場で地団駄を踏んでしまいましたわ。そうしたらニヤニヤと私を見るではありませんか。
『あ、ごめん。でも君が思ってる以上にこれ凝縮させてるから、一つでも意識飛んじゃうよ? だから危ないと思ってね』
私はその一言にハッとさせられました。その魔物の私を……。
『……本体じゃないと言ってるのに、心配してくださったのですか?』
『え? あぁ~そうだったね、それじゃあ、気にしなくて良かったんだ。ごめんごめん』
調子が狂ってしまいますわ。この人族の男は何かが違う気がしてきました。あ、でも、気遣って下さってくださったのですから……。
『……いえ、分身でも痛みは感じますから。その、お気遣いに感謝致しますわ』
ぼりぼりと頭を掻くいて誤魔化す男の耳元でお礼を言っておきましたわ。恥ずかしさで声が小さくなってしまいましたが、ちゃんとお礼を言いましたわ!
「「「いたぞ!」」」
「ふぅ、もういい加減力の差を感じてくれればいいのに。面倒だなぁ~。えぃ!」
奥の通路の曲がり角から20名程度の武装した者たちが現れました。まったく人族は格の違いを感じ取れないのかしら。何と愚かしい。そう思ったら男が【ダークボール】容赦なくを放り込むのが見えました。
『ほんと容赦ないですわね』
『うん、容赦してあげれる理由がない』
呆れるほど強力な魔法に、呆れるほど愚かしい人族の兵士。あら、あれはーー。
『あれは【捕獲】された低知能の熊どもですわ』
『ーー君がそれを言うの?』
『なっ! 私は【捕獲】されたと言っても、抵抗したので完全に支配下に置かれてるわけではないのです! あの小娘や蛇もそうですが』
きーっ! また言うことに事欠いて傷を抉ることを!
『まった!』
『はぃ?』
『その娘と蛇って、どこに居るの?』
ああ、あの獣人族の小娘とフライングジャイアントバイパー。あの蛇は確か私が勧誘して承諾した者だった気がいたしますわよ? むぅ。本体じゃないので記憶があやふやですわ。
『上の階ですわ。案内してあげても宜しくてよ? その代わり』
『分かった。助けてあげる。その代わり、案内してくれる?』
『えぇ、勿論ですわ!』
ふふふ。交渉成立ですわ!
『ありがとう。えぇと、僕はルイ。君は?』
『ディードよ。特別にディーと呼ぶことを許してあげますわ♪』
『そ、それはどうも』
あら、もっと喜んでも宜しくてよ? と思ったらルイと名乗った男が倒れてる人族たちを壁際に急いで寄せていく。放っておけばいいのに。
「【闇の外套】」
『え? 私に?』
でも、【ダークボール】といい、驚かされる事ばかりですわ。だってこの【ダークプロテクション】、本当に薄いんですもの。こんな薄いの見たことない。どれだけの力がればこんなに薄く出来るというの!?
『ここまでは来ないと思うけど、念の為にね。何かあったら眼醒めが悪くなるでしょ?』
『ーーだから、これは分身で』
もう、何ですの!? 何でモヤモヤするのかしら。
『あぁ、そうだった! まぁ気にしない、御節介を地でやってるって良く怒られてるから!』
『ぷっ! 何ですの、それ!』
眼の前で【闇の壁】が現れましたね。でも、わたくしに【ダークプロテクション】掛けた上で、ですわよ!?
『よし、迎撃開始だよ!』
『え? 同時に3つの魔法を掛けて何ともないのですか?』
『へ? 普通にできるんだけど、皆できるんじゃないの? おっと予想通りブレス来たね!』
『!!?』
私は耳を疑いました。あまりに驚いて飛び上がったほどです。恥ずかしいですわ……。でも、これほどの力を持つ人族などいても良いのでしょうか? 魔族である独特の魔力の波長はありませんし……。
もう、また私の仕草を見て笑う。
あとは蹂躙でしたわ。横暴ですわ! 鬼畜ですわ! あのツヴァイホーンが魔法で跳ね飛んで落ちた所に追い打ちだなんてーー。
【ダークボール】じゃなきゃ死んでますわ。でも、どうして誰も殺さないのかしら? と思ったら、ルイが熊の喉に指を当ててるじゃありませんの。何をしてるのかしら?
『何をしておられますの?』
『息があるかどうか脈の確認だよ。死んじゃうより、命があったほうが良いでしょ?』
『はぁ~ルイは大甘ですわ! 甘いにも程があります! これでまた襲いかかってこられたらどうするのですか? 止めは刺すべきですわ!』
『うん、その時はまた返り打ちにするさ♪』
『はぁ~……信じられませんわ……』
私は怒りのあまり、ルイの肩の上で行ったり来たりしてしまい、また笑われた。もう、何ですの!
『そういえばさ、ディーはツインテールフォックスをこの砦で見なかった?』
ああ、二尾の狐ね。
『見ましたわよ。確かここの地下のはずですわ。私もそこにおりますし。なんでしたら其方からでも』
『そうだね』
『え?』
『え? 何か悪かった?』
私はルイの言葉の真意を図りかねておりました。だって、誰でも自分が大事でしょ? 私が自分可愛さに騙しているとは思いませんの?
『いえ、私の方を先に解放したら逃げてしまうと思いませんの?』
『なんで? だって完全ではないにしても【捕獲】されてるんでしょ?』
そう言って微笑むルイの顔を不覚にもぼーっと見続けてしまいました。
『う、それはそうなのですが、何だか調子狂ってしまいますわ』
ルイの対応は魔族に対する人族のそれとはあまりにかけ離れておりますの。私をティムしたあのキモ男の方が普通の扱いでしょう。松明を手にして地下への階段を折り始めるルイの横顔を見詰めながら、私はいつしかこの人族に惹かれているということに気が付いたのですわ。
はぁ……。
でも、それを口に出すのも憚られます。だって私は蜘蛛の魔物。ルイは人族。交わりようがないではありませんか。
きっと本体を見たルイは私を化物扱いするでしょう。所詮、相容れぬの存在なのですわ。
早くこの浮ついた気持ちを整理しなければなりませんね。そう自分に言い聞かせながら、私も松明の照先に視線を向けるのでしたーー。
◇
5分後。
ディーの案内で難なく地下に辿り着いた。残ってる番兵たちも数人で、【黒珠】で一掃して終わり。意外に広い空間だ。松明で周囲を照らしてみる。ディーが居るところで聖魔法は使わない方がいいかもしれないと何となく思ったからだ。
『向こう側にツインテールフォックスが沢山居りましたわ。本体もあれは食べるなと命じられていたので食べてはないはずです』
おいおい、怖いよ。
言われるままに進んでみると、確かに居た。1、2、3、4、5…………18匹。生きててくれて良かった。
『レアさんに頼まれて助けに来たよ。言葉分かるかな?』
『レア! サーシャは無事なのですか?』
一匹のツインテールフォックスが駆け寄って来る。
『うん、無事は無事だよ。ただ、サーシャも捕まっててね。このあと助ける予定』【鑑定】
この鎖もただの鉄製のようだね。ん? ディーが静かだな。肩にも居ないみたいだし。よし、あれやっちゃうか。
『よし、皆鎖が伸びるように集まってもらえるかな?』
チャラチャラチャラ
鎖が擦れる音がする。なんだか静かだね。
チャラララ
抱えれるだけ鎖を抱えてみる。そして念じる【融合】と。
カランカランカラン
鉄の延べ棒が地下室の石床に落ちて音を響かせる。その音に二尾の狐たちはびっくっとしていたが、状況が飲み込めてきたのか嬉しそうに尾が揺れている。もう一度鎖を抱えて同じ作業を繰り返し、足元に転がった鉄の延べ棒をアイテムボックスに回収しておいた。
『この砦の中の兵士たちは粗方倒したから、すぐに外へ出れるはず。外にレアさんが人間と一緒に待ってるはずだからだれか連絡を取ってもらえないかな?』
狐たちと同じ目線になるように膝を就いて狐たちに話しかける。
『分かりました! それは私が必ず! サーシャのことを宜しくお願いします! みんな、行くわよ!』
鎖や首枷が突然消えて呆然としてる処に、伝言を頼んでみた。煙を出したくても燃やすものがないし、火事になるような火の点け方はしたくないからね。そうすると、多分さっきサーシャの安否を聞きに来てくれた狐だと思う子が快く引き受けてくれた。
リーダー的な存在なのかな?仲間を纏めて颯爽と地下室を開け上がっていく姿は清々しくもあった。
ぽちゃり
ん? 何か降ってきた?
ぽちゃ
肩に何か落ちてる。触ってみるとべとっとしてる。まさか、ね。
嫌な気配がしたから振り返ってみると、そこに居たのは全長8mはあろうかという緋色の巨大蜘蛛だった。八つの深紅の複眼が妖しく僕を見下ろしていたーーーー。
『ひぃぃぃぃっ!!!』
最後まで読んで下さりありがとうございました。
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