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レイス・クロニクル  作者: たゆんたゆん
第三幕 砂の王国
136/220

SS 【死神と愛娘】 孤児院

サイドストリーも良いのでは?というご意見をいただきましたのでこれから少しずつ挟んでいければと考えています。

遅くなりましたが、ゆるりとお楽しみいただければ幸いです。


※2017/12/10:本文加筆修正しました。

 

 ルイたちがエレボス山脈を越えシドン砂漠を渡りミカ王国の王都アレーナに辿(たど)り着いた頃、エトがサフィーロ王国の王都カエルレウスに来て15日が過ぎようとしていた。


 カエルレウスは王都の名を冠するだけあって広い。2,500ヘクタールはある。メートル法に直すと5km×5kmだ。東京の面積が218,800ヘクタールだからそこまで大きいとは言えまい。詳しく言えば東京23区の品川区ぐらいの大きさだ。ルイに向かってそう説明すれば、「ああ、なるほど」と手を打ったことだろう。だが、今ここにルイは居ない。


 ざっとの大きさを説明したが、王都は円形でも四角い都市でもないという点を注記しておく。(おおよ)その広さがそれくらいという事で、実際はピーナッツのような形をしていた。都市の西側には大きな湖を含む湿地帯が広がっている。その湖を背にピーナッツの真ん中辺りで王城が鎮座しているのだが、それだけの広さだと冒険者も移動が大変だ。おまけに都市の形状が円ではないために、西門がない。


 王都の名だが、この意味を聞いて納得する者は多い。カエルレウス。この言葉には青いという意味がある。その名の通り王都の屋根は青色で統一されていたのだ。王城だけでなく、市街地も貴族屋敷も例外なく。ここに都市を建設し始めた時の王令でそのように化粧されたというが、他国ではあまりみない景色ではある。それでも、貴婦人の(ごと)(たたず)まいを見せる優雅な都は、行き交う旅人たちによって“青き貴婦人”と口々に称されるまで知れ渡っていたのであった。


 外見は美しく優雅であったとしてもやはり汚い部分はある。全ての民が平等に生活しているわけではないのだ。親と死に別れた者、捨てられた者、没落貴族、生まれながらにして不遇の位置で足掻く者たちを多くの眼はそこにないものとして生活していた。自分たちの生活を守ろうとするのだ。それでも国としての体裁が存在する以上致し方ないと言えるだろう。罪のない幼い者たちが一番の犠牲者になるというのに。そんな子どもたちを集め少しであっても養い、支えている孤児院が森の傍王都の南区にぽつりと立っていた。


 「ふぅ、シルヴィア。まだ真夜中です。貴女は寝てなさい」


 孤児院の裏手で夜の闇に紛れて立つ老紳士(エト)は自分のズボンの(すそ)をはしっと持つ寝ぼけ顔の幼女にそう声を掛けるのだった。


 「ゔゔーー」


 2歳か3歳くらいの乳離れできた幼女だが、言葉でなく小さな(うめ)き声のようなものを上げてゆっくり首を振った。やはり眠いのだろう、ズボンを掴んでない方の手でしきりに眼を(こす)っている。


 「ふふ。これで本当に耳が聞こえてないというのだから驚きです。仕方ありませんね」


 幼女(シルヴィア)の仕草で自然と目尻に(しわ)を寄せながら、エトは愛おしい幼女(むすめ)を左腕に抱え上げるのだった。


 「あゔ〜」


 抱き上げられたシルヴィアがエトの首に抱き着く。


 「これから森に入って石材を切り出します(・・・・・・)。塀の材料代が思った以上に掛かりそうなのですよ。煉瓦(レンガ)や石がこれほど掛かるとは。ふふ。まだまだ勉強不足ですね」


 「あうあ〜」


 「ええ、崩れているところだけではなくて、修理に色々要りそうですからね」


 そう耳の聞こえない我が子に語り掛けながらエトは、眼の前にある森の中へ躊躇(ためら)うことなく踏み込んで行くのだった。まるで見えてるような足取りだ。


 中世ヨーロッパ調の石組みの家々は木造と違い建設だけでなく修繕にも時間がかかる。壁においても生け垣か石塀を使うのが常であり、多くは石垣を好んで建てられていた。このカエルレウスにおいても石組みの建築物がほとんどであり、木造や木骨建築は少ない。それ故に建築材料を集めるには時間も労力も掛かる。そうなれば当然買い入れのための予算が膨らむことになるのは当然の流れだ。


 エトは孤児院の修繕と塀の建築を男たちに頼んだものの、日が経っても一向に進まない。いい加減待ちくたびれたので理由を問い(ただ)した処、上のような理由を並べ立てられたので行動を起こすことにしたのである。


 エトは自分がヴァンパイアである事を冒険者ギルドにも孤児院の面々にも公表していない。そうなれば混乱を招き討伐対象になることは目に見えている。そんな危険を冒す必要を感じないので敢えて秘密にしているのだ。勿論、ヴァンパイアであってもより“真祖(しんそ)”に近い存在の高位(ハイ)なる()日の下を歩くもの(デイライトウォーカー) であるので、日中の活動も苦でなはいのである。




 夜の暗闇が視界をう森の中を10分は歩いただろうか。枝に(かす)りもせず、足元に隆起する木の根に足を取られることもなく、だ。


 それもそのはず。ヴァンパイアには特別な眼があり暗闇を苦にすることがない。闇の眷属とも揶揄(やゆ)される不死族だ。元々暗闇に乗じるのはお手の物である。その眼を使ってエトは左右をゆっくりと物色していた。探しものは巨大な石だ。


 「なかなか見当たりませんね。大きな石があると助かるのですが……」


 「あうああ〜」


 「ん? あちらですか? 行ってみましょう」


 シルヴィアに(えり)を引っ張られ指さされた方に足を向ける。2、3分進んだ所にエトの倍はあろうかという大きな岩が地表から顔を覗かせていた。


 「これは、お手柄ですね、シルヴィア」


 にこりと微笑むとエトはシルヴィアの頭を優しく撫でる。撫でられるシルヴィアもその手を払うこともなく眼を細めてされるままになってるところを見ると、気持ちいいのだろう。(しばら)く撫でた後、エトは腰に吊るしている長剣(ロングソード)をすらっと抜き放つ。


 「【黒剣(こっけん)】」


 短く小さな(つぶや)きかと思えるような声がエトの口から漏れると、エトの右手に握られている長剣(ロングソード)の刀身が淡く光り始める。そして剣先から徐々に消え始めたのだ。いや、消えた訳ではない。目を凝らすと、剣先から黒く変色し始めているのが分かる。暗闇で黒い刀身など見えるはずもない。刀身の部分が淡く光ってるからこそそこに剣があると認識できるのだ。


 「さて。シルヴィア、石の欠片が飛んで眼に入るかも知れません。少しの間眼を瞑っておいてもらえますか?」


 「ううあ〜」


 エトの言葉にシルヴィアは頷いてエトの胸に顔を押し付けるのだった。この幼女は耳が聞こえない。それはこの15日間色々な人が語りかけたり、耳元で音を鳴らしたり、大きな声を出してみたりした上での結論だ。他の人との意志の疎通は出来ないのに自分とは出来る不思議さと嬉しさにエトは頬を緩め、いわに向き直る。次の瞬間エトの右手が(かす)む。


 金属が何かにぶつかる音も火花が散ることもなかった。そこに2人以外の誰かが居合わせとすればあまりの光景に目を疑ったことだろう。


 「【念動力(テレキネシス)】」


 巨石がバターのように音もなく上下に分断されたのだ。そのまま見えない力に持ち上げられると、エトの右腕が残像を残すように忙しく動きまわる。微妙に立ち位置を変えながら音もなく宙に浮いた石を切る姿はさながら夢を見ているように何処か幻想的だった。それも数分の話で、同じ大きさ、厚み、長さ、幅に切れだされた石材が流れるようにエトのマジックバッグの中に飲み込まれて行く。10分も経たないうちに高さ約4m、直径約7mの(いびつ)円錐(えんすい)のような岩は綺麗に無くなっていた。


 「まだまだ足らないですね」


 エトはそう呟くと、巨石の外周を歩き始める。岩の断面が満月の光りに照らされて柔らかい光を反射させている。エトはと見ると、ただ歩いているだけではないようだ。歩きながら剣を足元に向けて振り下ろしている。いえ、見えはしないのだがエトの右腕が霞むたびに足元に斬撃の切れ目が生まれているのだ。恐ろしい程の切れ味である。


 ズズズズズズ……


 ゆっくりと地響きを起こしながら四角柱状の岩が迫り上がってくる。6m×6m×8m。(およ)

それくらいのサイズの岩が見事に地中から引き出された。切り出すという言葉が見事に当て嵌まる状況だ。切りだされた四角い穴の底は月光では届かない。奈落の底のような無慈悲な口が静かに餌を待つように開いている。エトは先程と同じように力を加えてるようには見えない剣捌きで、切り刻んでいく。手が届く範囲を切り出してマジックバッグに収め、また切り出し収めを繰り返すこと15分。(ようや)く宙に浮いていた巨大な岩は姿を消したのだった。


 「シルヴィアもう大丈夫ですよ。おや寝てしまいましたか。ふふ。可愛いものですね。貴女をみてると年甲斐もなくリーゼ様の幼い頃を思い出してしまいますよ」


 胸に顔を押し付けていたシルヴィアはいつしか規則正しい呼吸をしており、エトの呼びかけに応えることもなかった。その寝顔を見て懐かしい日々をふと思い返したのだった。リーゼとシルヴィアの顔を重ねるも勿論同じ顔ではなない。それでもどことなくその当時感じていたものと似たような感覚がエトの中に生まれているのも事実であった。


 「シルヴィアはリーゼ様の代わりではありません。この子はこの子。リーゼ様のはリーゼ様です。さて、このまま何もせずに孤児院の誰かが落ちてしまうと大変なことになるでしょうから、伐採したついでに枝で囲っておきますか」


 それでも自分を戒めるように首を振り、己に言い聞かせるのだった。そして再び剣を振るう。今度は穴の周囲にあるよく育った木に対してだ。孤児院の生活を賄うためには自給自足がどうしても必要だ。孤児がこれから増えないという保証はないのだから。それならば増えた際にも対応できる状況を今から作っておけばいい。エトはそう思ったのだ。勿論これはエト自身の考えではなく、ルイの受け売りなのだが。


 エレクタニアで自給自足が出来る体制をルイ自身が模索している姿を見て来たのだ。その姿勢から学ぶことも多かった。自分はそれを小さな範囲で試みているに過ぎない。それでも以前の自分からすれば考えられない行為であることに違いはなかった。元元ヴァンパイアは外の社会から隔絶したエリアで住むことが多く他者に干渉しない種なのだ。干渉しないというよりか興味がないと言った方が良いだろう。下等な短命種である人間たちがどうなろうとも痛くも痒くもなかったのだ。それがーー。


 「ふふふ。可怪しなものですね。他者に関わらないようにしておりましたのに、あの方の影響でお節介になってしまったようですな」


 エトは己が眷属主の顔を思い浮かべながら笑みを零すのだった。そんな穏やかなエトの姿に反して、彼の周辺では木々が切り倒され、枝が払われ4本の丸太が宙に浮いている状態だ。恐るべき技量の持ち主としか言いようがない。当初はロープを張って安全を確保しようとしたのだが、切り出した木を丸太にするために枝払いをしてその切った枝を穴に投げ込むと調度良く穴が埋まったではないか。それを見てエトはそれ以上のことはしないでも良いだろうと判断しその場を後にするのであった。




 翌朝。


 小鳥たちが孤児院のとんがり屋根の上で(さえず)る歌に紛れて何やら騒がしい声が下から聞こえてくる。


 「ーーだ!?」「ーーな訳ーーだろ!?」「ーーが!?」


 「何やら騒がしいですね」


 「ん〜」


 「はい、シルヴィア。休むように言ったのにそうしなかったのは貴女です。眠たくても起きましょう」


 自分の養女にしたものの口調をどうすればよいのか迷ったエトだったが、結局今の口調が気に入ってることもあり(シルヴィア)に対してもありのままで語り掛けることにして彼女の体を揺するのであった。眠そうに未だ柔らかい布団を味わっていたいというアピールをしてみたシルヴィアだったが、父に抱え上げられ強制的に起こされたのだった。


 「む〜〜」


 「おはようございます。どうやら朝早くからお客様がいらしてるようです。顔だけでも洗って行ってみましょう」


 頬を膨らませるシルヴィアだったが、すぐさま養父(エト)の首に腕を回して布団から脱出する。やれやれと頬を緩めながら娘を抱きかかえたエトはしっかりとした足取りで部屋を出、孤児院の裏手にある井戸に向かうのだった。そこで毎日水を汲み上げて顔を洗っているのだ。


 「んん〜♪」


 井戸の横に置いてある平桶(ひらおけ)に水を張ると、シルヴィアは嬉しそうにばしゃばしゃと顔に水を掛けて洗い始める。その様子を嬉しそうに眺めながらも、洗い終わったのを見計らって娘の顔や手についた水気を布で拭き取るのだった。それから自分も顔を洗う。シルヴィアはというと、父のために布を両手で持って何時でも渡せるようにタイミングを見計らっているようだ。必然的に上目遣いになるので、エトはこの瞬間がとても愛おしく大好きだった。


 「ふう。ありがとうございます。さあ、何故騒いでるのかは予想が付きますが、誰が騒いでいるのか見に行ってみますか」


 「あうあ〜」


 そう言って娘を左腕に抱き上げて孤児院正面玄関の方に建物をぐるりと回る。


 「あ! エトの旦那!」「何ですか、この石の量は!?」「木材までどっから持ってきたんですか?」


 いつもの3人がそこに居た。彼らには職人たちの手配と物資の購入などを頼んでいたのだが、物が少ないということもあり計画が遅々として進んでいなかったのである。


 「いえ、木材も石材も今少なくて必要数が手に入らないということでしたので、自前で集めてきました。後はお願いできますか?」


 「自前!?」「これだけの量をですかいっ!?」「マジで!?」


 3人は目を()いた。確かに石工や大工と顔を繋いで話をしてたが、どちらの組合(ギルド)からも材料不足を理由に断られ続けていたのだ。


 組合(ギルド)というものはその職種に合わせて多数存在する。石工、大工、宝飾、鍛冶、漁業、狩猟、商業、盗賊と様々だ。その中の1つに冒険者ギルドが存在している。それぞれが互いのない部分を補い合っているが、冒険者ギルドだけ特殊で国を越えた組織として連携を密にしているお蔭で国からの影響力を抑えることに成功していた。他のギルドはその国の中だけのネットワークしか確立できていないので、それぞれの国に依存する形になっているという。


 石工や大工という職は一度大きな仕事をしてしまえば継続的に仕事を確保するのが難しい職と言われている。新築した家が直ぐ破損して修理が必要な状況になれば注文数は激減するだろうし、壊れないように作ってしまえば暫く仕事が無くなるのだ。そういう状況なので完成している都や街での石工や大工が次の仕事のために資材をストックしておくことは現実問題難しいと言わざるを得ない。注文を受けて資材を準備するというのが定常化していたのである。エトからの依頼を受けた各ギルドの実状もそのような状況だったのだ。


 それに加え、エトが切り出したような資材を準備するには相当な時間と労力が求められる。人件費も莫迦(ばか)にならない。そこで儲けを出そうと考えるのがギルドだ。利がなければ動かないのが商いの常だろう。


 「ええ。石工と大工の手配は問題ありませんか?」


 「勿論だ! 嫌とは言わせねぇ」「さんざん渋りやがって」「しょっ引いてきます!」


 「穏便にお願いします」


 「シルヴィア(じょう)ちゃん、待ってな職人を連れて来るからよ!」「あとでな〜!」「今日も可愛いなぁ〜」


 「うあうぅ〜」


 3人の男たちはエトに抱かれているシルヴィアに手を振りながら去っていく。そんな男たちにシルヴィアは機嫌良く手を振るのだった。いつしか彼女は彼らの心にも住み着いてどうにかして上げたいと思わせる存在へと変わったようだ。都に来て彼らに逢ってから日が浅いというのに。


 「これはエトさんが用意されたのもだったのですね」


 「はい。修繕は早いほうが良いですからね」


 男たちの姿が見えなくなってから、エトたちの遣り取りを少し離れた所で見守っていた初老の女性が話しかけてくる。この孤児院の院長だ。彼女の眼は孤児院の裏庭に(うずたか)く積み上げられた石材と、整然と並べてある木材に向けられていた。これを仕入れるだけでどれだけの費用が掛かったのだろう。ついそんなことを考えながら見入ってしまっていた。


 「ヘルトルーデさん」


 「は、はい。申し訳ありません」


 声を掛けられて慌ててエトに向き直る。


 「費用のことを心配しておられるのでしょうけど、この材料は裏の森から調達してきたので全く掛かっておりませんよ。ご心配なく」


 きっと懐のことを心配しているだろうと察して、エトが自分が持ってきたものに視線を向けながら説明するのだった。ただ、今日から気を付けないといけないこともありますが、と言葉には出さずに呟く。要らぬ心配事をヘルトルーデや孤児院の皆に掛けたくないのだ。それはエトがお節介をすることを決めてから変わらぬ思いであった。


 「ええっ!? 裏の森からですか!?」


 「はい。その方法は秘密です。本当に知らないと、誰かから尋ねられても知らないと言い切れるでしょう?」


 「え、あ、そ、そうですわね」


 驚くヘルトルーデにエトはそう優しく笑いかけるのだった。自分が黙っていれば、自分にだけ問い合わせが来る。下手な詮索を続けられて皆が精神的に疲れることは望んでないのだ。何か知っていれば胡麻化(ごまか)そうと表情が動く。エトの思いを少しは汲めたのかヘルトルーデは少し焦りながら頷いたのだった。エトの笑顔に一瞬心を奪われそうになったのを隠すように。


 「さて。わたしたちはこの足で冒険者ギルドに行ってきます。何やら試験があるとのことでしたので」


 「そうですか。お気をつけて。それと大変申し訳無いのですが、帰りにパンを買ってきて頂けると助かります」


 「パンですね? 畏まりました。育ち盛りの子どもが沢山居るのです。すぐに無くなるもの当然です。ふふ。では可愛らしい雛鳥(ひなどり)たちのためになくだけ早く帰ってくることにしましょう」


 「ふふ。よろしくお願いします」


 エトの微笑に釣られてヘルトルーデの口元も緩む。その様子をじっと見てるシルヴィアの頭に手を置いて優しく撫でると、お辞儀をして身を(ひるがえ)すのだった。都に来た時に乗っていた召喚された吸血馬(ダンピールホース)は預けているということにして孤児院には居ないことにしている。それでエトは徒歩で冒険者ギルドに足を向けるのだった。シルヴィアを左腕に抱いたまま。それは孤児院(ここ)に来てから毎日見られるようになった光景であった。


 少しずつ離れていくエトたちの背中を見送ってヘルトルーデで建物の中に戻って行く。陽は都の青い屋根に舞い降りた露たちに朝の訪れを告げ、小鳥たちは孤児院のとんがり屋根の上に仲間を呼び、再び気持ちよさそうに歌を(さえず)っていたーー。


 





最後まで読んで下さりありがとうございました!


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これからもよろしくお願いします♪


次話もSSです。

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