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レイス・クロニクル  作者: たゆんたゆん
第三幕 砂の王国
131/220

第129話 最深部

遅くなりました。すみません。

2016/8/8:本文脱字修正しました。

2018/10/2:ステータス表記修正しました。

 

 《タッタラッタァァァッ~♪》


 《レベルが上がりました!》


 《パッシブスキル:魔法障壁を習得しました》








 「はぁ!?」


 どういう事? 待てまて待て。この間の暗黒魔法の件は元々組み込まれてた案件だとして、これはどういう事だ? 魔法に関係のないパッシブスキルはスキルドレインでで習得できたけど、明らかに違うでしょこれ? 魔法に関わるスキルはもう覚えられないんじゃなかったんだっけ? 魔法障壁(・・・・・・・・)だよ? どんな仕組みだ?


 「あ〜もう! 考えても分からないんだったら一先ず確認だ。【ステータス】!」


 ◆ステータス◆

 【名前】ルイ・イチジク

 【種族】レイス / 不死族 / エレクトラの使徒

 【性別】♂

 【称号】レイス・モナーク

 【レベル】365 (+189)

 【状態】加護++

 【Hp】313,000 / 731,000 (+378,000)

 【Mp】11,203,018 / 23,102,747 (+12,135,789)

 【Str】33,552 (+17,301)

 【Vit】27,372 (+14,112)

 【Agi】23,193 (+12,563)

 【Dex】16,870 (+8,754)

 【Mnd】15,677 (+8,033)

 【Chr】13,169 (+6,833)

 【Luk】9,503 (+4,914)

 【ユニークスキル】エナジードレイン、エクスぺリエンスドレイン、スキルドレイン、※※※※※、※※※※※、実体化、眷属化LvMAX(範囲眷属化)、強奪阻止

 【アクティブスキル】鑑定Lv230、暗黒魔法Lv1、闇魔法LvMax、聖魔法Lv500、武術Lv151、剣術LvMax、杖術Lv257、鍛冶Lv207

 【パッシブスキル】魔法障壁Lv1《New》、隠蔽LvMax、暗黒耐性Lv1、闇吸収、聖耐性LvMax、光無効、エナジー(使用)ドレイン(不可)プール(制限)Lv20()エクスぺリエンス(使用)ドレイン(不可)プール(制限)LvMax()、スキルドレインプールLvMax➊、ドレインガードLvMax、融合Lv245、状態異常耐性LvMax、精神支配無効、乗馬Lv146、交渉Lv500、料理Lv80、採集Lv190、栽培Lv156、瞑想Lv800、読書Lv740、錬金術Lv687、航海術Lv474、操舵Lv80

【装備】シュピンネキルトのシャツ、綿の下着、綿のズボン、ブーツ、アイテムバッグ 

【所持金】0


 Lv189upか。やっぱりモナークのクラスに変わってから必要経験値が上がってる。ドレインした対象の持つ経験値の10分の1しか反映されてないなんて……。キメラのレベルは確か1,895だったはず。切り捨てか。それも凄いな。ん?


 ごしごし。眼にゴミが入ったかな? 数字がぶれて見える。


 1、10、100、1,000、10,000……。いやいやいや、在り得ないでしょ。何かの間違いだって。


 ごしごし。


 ーーーー。


 Mpの桁がよく分からないことになってるんですけどーーっ!? 2,000万超えてる!? 膨張し過ぎ(インフレーション)だよ! ロードの時にせっせとMpを使いきって上げたあの努力は何処に行った? いや、Lv1の状態でMpの底上げをしてたのが大きかったということか!? うへ〜流石アイーダ。それで口酸っぱくLv1の時にMpを使いきってなろって言ってたんだ。今になって元将軍という肩書の凄さが分かった気がする。


 それに各能力値も可怪しい。Lv2,600もあった白豹王のステの半分くらいになってるんだが? こっちはまだLv350にも届いてないっていうのに……。レベルアップで上昇する成長値がチート過ぎる。それに魔法障壁だ。考えられるのはモナークとしてのスペシャルスキルがLv300で発生したと言うことか? ロードの時はそんなものなかったぞ? いや、あるにはあったのか? ※※※※※の解放があったから一応はあったと考えたほうがいいな。それに未だに伏せられているのもどうかと思うけど。


 ん? ステータスの方に気が取られていたせいで眼の前で半透明なものがゆらゆらと揺れている事に今更ながら気付いた。え?


 眼の前で揺れていたのは4つ。ゴリラの子ども、体格の良い人間の子ども、仔ドラゴン(ドラゴンパピー)、火のようなものを纏った小さな蜥蜴だった。この4つの揺らぎには思い当たる節がある。キメラの元になった存在だ。ただ感じるのは、先程まであった憎しみや怨みとは違った優しいもの。


 「君たちはさっきのキメラで合ってるのかな?」


 僕の質問に頷く4つの存在。声がないということか? さてどうするか。さっき【浄化】の魔法を使っておいたにもかかわらず、眼の前に居るということは効いてないという事だ。別の解決策が居る。ふむ。


 「まだ自分たちをキメラにした者のことを覚えているのかい?」


 そう聞いた瞬間質問を間違えた! と感じた。一気に彼らの体が膨れ上がったからだ。まだ(くす)ぶる火種はある。


 「君たちの体を消してしまった僕を怨んでるかい?」


 その問いに彼らは首を左右に振ってくれた。復讐はしたい、でも僕には怨みはない、だけど手段がなくて僕の前に居る。その思考の欠片(ピース)()めて完成させるとこうなった。


 「僕に復讐を手伝って欲しいってこと?」


 上下に頭が動く。ふむ。


 「間違ってなければだけど、僕に復讐を手伝ってもらいたい?」


 再び(うなず)く。そうは言ってもなもな〜。


 「君たちの復讐を手助けするのは(やぶさ)かじゃないよ。恐らくだけど“ケルベロス”っていう組織が絡んでるだろうから遅から早かれまたぶつかることになると思う。でもね」


 そう言って揺らぐ4つの存在の反応に注目する。嬉しそうにしたいんだろうけど、否定の言葉で止まってるからどう反応すれば良いのかわからないって感じだな。


 「でもね、僕には君たちの人生を狂わせた人物を知らないんだ。手を貸してあげたくても何もわからない。どうすればいいと思う?」


 人生といって良いのか迷ったけど、意味は伝わるだろうと思ってそのまま気持ちをぶつけてみた。安請負はしたくない。でも助けてあげたいとは思う。どうしたいのか、本人? たちに聞いてみるのが一番だな。


 すると、かちゃかちゃと石畳みの上に無造作に転がった長剣(ロングソード)が動き僕の眼の前に持ち上げられるように浮いてきたんだ。え?


 「僕の持ってた剣だね。どうするの?」


 その剣に4つの揺らぎが近づいたかと思うと、その剣の中に吸い込まれて行った。はいっ!? 見る間に刀身がどす黒く変色して闇に(まぎ)れてしまう。そこに剣があるのは剣自体が薄っすらと発光してるからだ。むむむ。


 「これで復讐を手伝って欲しいということかな?」


 僕の問いに剣が一段と強く発光する。なる程ね。でも言っておかないといけないこともあるよな。


 「まず、剣を受け取る前に言っておかなきゃいけないことがある。それは張本人に出逢えるかどうか保証できない。出逢えたとしても君たちの望むようにことが進まない可能性もある。それでも良いというのなら一緒に行こう。どうかな?」


 その質問にも強く発光してくれた。納得できないだろうけど、可能性があるのならという処だろう。


 「分かった一緒に行こう。その前に少し()させてもらうよ。【鑑定(アプリーズ)】」


 ◆ステータス◆

 【アイテム名】カーズソード(別名:怨嗟(えんさ)の剣)

 【種類】片手用長剣

 【Str】+3,000

 【ユニークスキル】黒炎

 【パッシブスキル】索敵、気配察知

 【備考】ドワーフの鍛冶師ベルント・レスキネンによって鍛えられた一振り。キメラの姿にされた4つの魂によって変質した呪詛の力を宿した魔剣。自我意識を持ち、自分たちを貶めた本人を探すためにルイ・イチジクと行動を共にする。戦闘時には自らを操り宙を舞う。怨嗟が強まるとユニークスキル【黒炎】が発動する。


 これまた(かたよ)った性能だな。索敵、気配察知に至ってはレベル表示がない!? 自分で探すってことか? まぁ僕が使わなくても大丈夫ならそれでいいか。呪われることもないだろうけど得体が知れないのは確かだ。気がつくと刀身が見えない。あれ? ああ、いつの間にか鞘に入ってら。


 「ありがとう。宜しくな」


 簡単な挨拶を済ませると、鞘に張った怨嗟の剣がくるりと僕の周りを一周して頭の後ろで自立したのだった。また可怪しな旅の友が増えたな。そんな事を思ってると、ナハトアたちが進んだ側の奥から半透明でぼんやり光る小さな物体が2つこちらに向かってくるのが見えた。ホノカとナディアだろう。




 待つこと5分。間違えようのない存在の2人が僕の前で浮かんで呆れていた。


 …… (あき)れた本当に倒してる。 死んじゃってるけど何だか頭痛いわぁ〜 ……


 ホノカは口に手を当て、ナディアはこめかみを押さえていた。うん、気持ちは分かるけどね。


 「それはそれで酷くないか?」


 …… 何言ってるの。わたしも確認したけどLv1895よ!? わたしたちもだけどルイくんも勝てるはずがないレベル差なのよね〜 ……


 いやまぁそうなんだけどね。何と言っても触れたのが大きいんだけど、これを言うと更に白い目で見られそうだよな。実際はギリギリなんだけどね。


 「でもこのように辛うじて勝てましたよ」


 …… 辛うじて? そんな使い方したらその言葉が泣くわ。 でもかなりレベル上がったんでしょぉ〜? ……


 「いいえ、キメラをたおして今Lv365ですね」


 …… は!? えっ!? ……


 うむ、驚いた顔は初めて見たな。これはこれで可愛い。顔近いって。


 「いや、だからLv365だって」


 …… 何でそんなに上がってないの!? そうよぉ〜 ……


 「いや、何でって言われても、モナークのレベルアップに必要な経験値が想像以上に多いってことくらいしか言えないな」


 言いたいことは何となく分かるけど、ジト眼で見ないで。顔近い近い! 2人して顔を寄せてくるもんだから両手を胸の前に出しながら思わず体を反らせてしまう。あう、ま、マシュマロが……。


 …… あら? ここでも良いわよ? うふふふ、その気になってくれたのかしらぁ〜? ……


 「ち、ちょっと、男としては嬉しいシュチュエーションなんだけど、まずいっって! 時と場所を選ぼうか!? 手を挟まない!」


 両手がホノカとナディアのマシュマロ谷に挟まれていくのを鋼鉄の意志を発揮させながら振り(ほど)く。2人とも口を(とが)らすが今はそんなことをしてる場合じゃない。ん? うん、まぁなんだ、引き籠もり生活しながらも潤いは毎日あったのでその手のことは嫌いじゃないです。(むし)ろ好きになりました。けど、ここではね。


 …… うふふ。 楽しみにしてるわぁ〜 ……


 「取り敢えず、合流しよう。ヴィルのやつが変な仕掛けを触らないとも限らないから」


 そうなんだ。2人がこっち来てるからといって安心材料はない。トラブルメーカーが残ってるんだ。ナハトアも居るから大丈夫だろうけど。そう思いながら宙を滑るように移動してると何やら視線が背中に刺さる。


 …… ねえ、その剣。 何なのかしらぁ〜? ……


 すうっとホノカとナディアが並びながら説明を求めてくる。まぁそうなるよな。でもよくこのタイミングまで気付かなかったね!? と言いたい。僕の後ろに最初か浮かんでただろうに。


 「ああ、これね。さっきキメラの死体だった塵の山見たでしょ?」


 その問に2人が頷いて続きを促す。


 「その中身が僕が使ってた長剣(ロングソード)に入り込んでね。自我を持つ呪われた魔剣(カーズソード)に変わってしまいました。元々変わった旅の仲間が多いから問題ないでしょ」


 …… はぁ。ホントルイくんといると話題に事欠かないわね。 ルイくん()トラブルメーカーなのかしらぁ〜? ……


 ぐっ、そこは声を大にして違うと言いたい! でも実績も自覚もあるから困るんだよな。結局のところ2人にとっては冗談の範疇(はんちゅう)だったらしく、監視官(ナハトア)が居ないのを良いとこに僕の両腕をそれぞれが独占して闇の中を移動することになったのだった。やれやれ。ナハトアの冷たい笑顔が浮かんで離れなんだけど?




 そんな雑談や状況確認などをすませながら列柱回廊を進むこと10分。合流出来た。合流する前にホノカとナディアはさっさと腕を解放しナハトアの周りを甲斐甲斐しく飛んでいる。いや、ナハトアもそんなジト眼で見ないように。


 ヴィルは召喚具の腕輪に戻ったようで姿が見えない。毎回毎回トラブルを起こしてたら流石にこっちも頭痛くなるけど。そこまでじゃないのが救いだね。僕も含めての話だけど。


 周囲の状況を確認してみる。列柱回廊は壁で仕切られていた。その壁に開けられた扉のない大きな這入口(はいりぐち)を抜けて下に進む幅の広い階段が眼下に続いている。もしあのキメラが追い掛けて来ていたとしたらこの下り階段で追いつかれたに違いない。と言うのも天井が見えないんだ。岩盤の下に作り上げられた地下宮殿なのか迷宮なのかは分からないが、あのキメラが翼を広げて飛べるだけの空間が眼の前に広がっているんだから。そう考えただけでも背筋に寒気が走る。生霊(レイス)だけどね。


 「どの道、こっちに行かなきゃ出られないんだったら行くしかねえだろう」


 右頬にある向こう傷(スカーフェイス)を触りながらラドバウトがそう言いながら砂蜥蜴(すなとかげ)の腹を軽く蹴り、階段を()り始めるのだった。イエッタの口数は少なくなってる。元々沢山喋る娘ではなかったからそこまで違和感はないんだけど、気にならないというのは嘘になる。こっそり【鑑定】を使ってもまだ【状態】は誘導のままだった。


 皆はキメラを倒してその中身がこの剣に宿ったことを説明すると若干引いてたけど、自分たちに害がないのならと割り切ったようだ。切り替えが早くないと環境の厳しいところでは生死を分けることになると理解しているんだろう。それはそれでありがたいし、安心できる。問題はここだ。


 入って来た場所が正規の入り口でない以上、誘導に従って進むか闇雲に出口を探すしか選択肢はない。魔法で脱出できるほど力もなければ、その種の魔法が都合よくあるわけでもない。ひたすら歩きだ。正確には砂蜥蜴に乗ってだけど。可能性の高い方を選ぶと必然的にイエッタの誘導を頼ってしまうんだよな。


 「さてさて、人間万事塞翁(さいおう)が馬、だな」


 「ルイ様その言葉何ですか?」「初めて聞きます」


 ポツリと小さく言ったつもりだったんだけど、ドーラとフェナには聞こえたみたい。ちょうど彼女たちの頭の上の方をふわふわ浮いていたのも原因なんだけどね。


 「ああ、これね。人生において幸福や不幸は予測が付かないって意味さ」


 「どうしてそういう意味なのに全く違うを言葉を並べるんですか〜?」


 そこにカリナが参戦。クリス姫は聞き耳をたてているのが丸分かりだ。さて、どう説明したもんかな。中国なんて国はこの世界にはないしな。馬は居るから大丈夫。ま、簡単に説明すればいいか。


 「そうだな。これは古い(ことわざ)なんだ。昔、ある国の砦の傍に済む占いの巧みな塞翁というおじいさんの馬が逃げたことがあったんだ。村の人が気の毒がると、おじいさんは「そのうちに良いことがある」と言って笑ってたみたい。しばらくした時に逃げ出した馬が隣りの国でよく見かける種類の馬を(つがい)として連れ帰って来たの。村人がよかったな〜とお祝いすると、今度は「これは不幸の元になるだろう」と言ったんだ。村人は意味が理解らなかったけど、ある時連れて帰ってきた馬におじいさんの息子が乗っていると、落馬して足の骨を折ってしまった。皆がそれを見舞うと、おじいさんは「これが幸福の(もと)になるだろう」と言って村人たちを驚かせたんだ。そしたら1年後、隣りの国が攻め込んできて戦争となり若者たちはほとんどが戦死したんだけど、足を折ったおじいさんの息子は、兵役を免れたため、戦死しなくて済んだという昔話から取られた言葉なのさ」


 パチパチパチパチ!!


 「ええっ!? 何!?」


 僕が小咄(こばなし)見たいな説明を終えると拍手が上がった。どうやら説明が分かりやすかったみたい。


 「サイオウおじいちゃん偉いね!」「ね!」


 ドーラとフェナはそう顔を見合わせて笑ってる。塞翁がなんか別の発音に聞こえたのは気のせいか? 格好良く聞こえたぞ? あれ? おじいさんって僕言ったよね?


 「ルイさんの説明分り易いわ〜。ねえ、姫様」「うん、面白かった!」


 カリナとクリス姫も似たようなもんだ。


 「わたしにもよく分かりました」「ルイ様は何処でそれほどまでの知識を……」


 ジルケは良いとして、ナハトア、戻ってこい。


 「頭の(わり)いオレにも分かったぜ」「人生は分からないものですな」


 おっさんとゲルルフも顔を見合わせて笑ってる。ま、場が和んだんなら良いか。知識をひけらかそうと思って言った訳じゃないし。


 「おわっ!? ホノカ、ナディア、ダメだって!」


 …… 久し振りに故事成語聞いたわ。 でもルイくん頭いいのねぇ〜。こっちの人が分かるようにアレンジしてたでしょぉ〜? ……


 腕に(まと)わりつくホノカとナディア。彼女たちが異世界(こっちに)飛ばされて20年以上経つだろうから、日本の言葉を聞くのも久し振りということか。それは良いとして、放れないとナハトアからまた怒られるぞお前ら! あれ? ナハトア、まだ考え事か? そろそろ戻ってこ〜い!




 そんな話も交えながら階段を下りること半刻(60分)(ようや)く下まで、階段が無くなるまで下りてくることが出来た。砂蜥蜴にもかなり負担をかけてるので、乗っていた面々は一度砂蜥蜴から降りて手綱を引いている。足にか掛かる負担も大人2人だと相当なもんだろうな。


 「【疲労回復(リカバリー)】。【疲労回復(リカバリー)】。【疲労回復(リカバリー)】。【疲労回復(リカバリー)】」


 「え!?」「砂蜥蜴にですか!?」「何やってんだ?」


 「うん、いざという時に動けないと意味ないでしょ?  それにMpはレベルアップして余裕がなりできたからね大丈夫なんだ。ま、いいじゃない。奥に行ってみよう」


 何人かが怪訝(けげん)な顔をしたけど、説明しておく。こんだけMpがあると使いきれなんだよ。


 「ま、そうだな。ん?この匂い」

 

 ラドバウト(おっさん)もその事は納得してくれたみたいだけど、急に周辺の匂いを嗅ぎ始める。


 「あれ? ここ何処ですですか?」


 その言葉に耳を疑う。イエッタがおっさんの隣りできょろきょろと状況を確認してるが軽いパニック状態なのは見て取れる。


 「イエッタ、お前意識なかったのかよ?」


 「え? いえ、あったんですが、何だか夢を見てるみたいでぼ〜っとしてたんです。で頭の中の霧が張れて意識がはっきりしたらこんな所にいたので何が何だか……」


 誘導ってそういう状態なのか。よく分からないけど催眠も似たようなものだから、上位交換の症状ってことか? そう思ってると、周辺でもくんくんと鼻腔から空気を吸い込む音が聞こえ始めた。何に?


 「おい、ルイよどういうこった?」


 「僕にもよく分かりません。()いて言えば、ここに連れて来たかったとしか……」


 「誰が?」


 「それが分かれば苦労しませんって」


 「ちっ」


 舌打ちされちゃったよ。こっちだって舌打ちしたい気持ちでいっぱいだっての! それにしても匂うって何の匂いだ?


 「この匂い知ってます。おばちゃんのスープの匂いです!」


 「あ、こら、イエッタ! 何ガキみたいに走りだしてんだ! 危険察知はどうした!?」


 「そんなものありません! ここは大丈夫ですって! おばちゃんの雰囲気がするんです!」


 急に走りだしたイエッタを追っておっさんも砂蜥蜴の手綱を引いて走りだす。注意を促すも何処吹く風だ。本当に暗殺者として訓練受けてたのか? と疑いたくもなる。でも単独で行かせる訳にもかいかず、結局は皆でその後を負うことになった。だが、そうなると眼の前に見えている光景がこことあまりにかけ離れていることに思考が追いつかなくなる。


 流砂に呑まれ、地下迷宮に落とされ、地底深くに下りてきた僕たちの眼の前には、辺境の街の片隅にあった砂蛙の憩い亭が窓から明りを漏らしつつそこに佇んでいたのだーー。


 「どういう事?」







最後まで読んで下さりありがとうございました!


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