第109話 冒険者
隣りの建物からはまだ賑やかな笑い声やばか騒ぎが聞こえている。海賊の襲撃を乗りきって仲間や街の人たちを助けることができたという安堵と達成感が、彼らの疲労を覆い隠しいるのだろう。旨い酒、上手い料理、愛すべき仲間たちが懐の心配をせずに宴を始めれば、行き着く先はいつも決まっていた。
ソファーに凭れかかった反動でぎしっと床が軋む。
「もう殴られた傷は大丈夫なんですか?」
そう僕は執務室の奥に置かれた両袖型の机の向こうに座るギルドマスターに声を掛けるのだった。
僕たちが街に辿り着いたのは、帰途についてから四半刻後だ。夜間の入街に手間取ったんだけどね。その足でギルド会館まで帰ってきたら丁度酔い冷ましに表に出ていたランベルトを見付けたので、そのまま彼の部屋に来て今に至る。
「あんなもんは殴られたうちに入らん」
殴られたことを覚えてないのかもしれないけどな。こっそり【手当】の魔法掛けておいたし。ま、それは掘り返さなくてもいいか。
「時間をとらせてすみません。今回の一件で僕から報酬を要求できるかどうか確認したかったんですけど……どうですか?」
「無理難題でなければ、冒険者ギルドとしても誠意をもって応じたい」
緊張した面持ちで答えてくれるが、枢軸領主のところでお願いしたように普段通り接してもらえるのは嬉しいね。何を言い出すんだ? と言った不安な気持ちを押さえ込もうとしてるのか、眉間に皺が寄っている。
「そんな難しい事は言いませんよ。1つ。僕を冒険者に登録してください。1つ。僕の配下の者も遅かれ早かれ冒険者ギルドを訪れるでしょうから、騒ぎにならないように便宜を図っていただきたい。1つ。ナハトアが契約している従者を登録して欲しい。この3つです」
「金は?」
「要りません。と言うか、ギルドメンバーに今回の報酬を払わないといけないでしょ? ダーシャさんの所だってただじゃないんだし」
「ギルド所蔵の魔法の武器は?」
「間に合ってます」
「本当にそれでいいのか?」
「僕の要求はね。ナハトアやカリア、ドーラとフェナの分は僕のお願いに含まれてないのでお間違えなく」
「そんなことは当たり前だ。最初の1つと、最後の1つは簡単だ。すぐ此処でもできる。だが2つ目は難しいぞ?」
「どうしてですか? 冒険者ギルドはギルド間の独自の連絡網を持ってると聞きましたが?」
その一言にランベルトの双貌がすぅっと細くなる。あれ? 機密事項だった? ラノベでは定番の情報網だったはずだけど。
「ーー仮にそれがあったとして、どう見分ける? お前さんの名前を出せば頭から信じるという訳にもいかんぞ?」
確かにね。いくつか照合用の素材を提供としないといけないだろうな。僕以外の5人も興味津々で口を挟むことなく聞き耳を立てている。余りというか、滅多に表に出る話じゃないとなれば尚更だろう。
「言いたいことは分かります。僕の身分証を見ていただいたように、“エレクタニア”所属の身分証を持つものは限られています。まずは所属を照合していただくのが1つ。そしてこれが冒険者ギルドに名前を列ねる可能性のある名前の一覧です」
一覧表とは言ったけど、実はこれけ眷属の名前も書けないと恥ずかしいとリューディアに言われて、皆に書いて貰ったお手本帳なんだ。捨てずに取っておいて良かった。
「何!?」
「本人たちの筆跡ですから照合素材としては申し分ないでしょう。但し、これが」
「それ以上は言わんでもわかる。照合の問い合わせがあった場合には責任をもって行い、厳重に俺が管理する」
「ありがとうございます。この子たちは殆どが上位職なんでね、普通に窓口で処理してると目立って仕方ないんですよ」
「上位職だと?」
「アサシン、チェイサー、黒騎士、ルーン・ロードナイト、ワルキューレなどなどだね」
ざわっと部屋の雰囲気が変わる。
「何処と事を構えるつもりだ!? それほどの配下を抱えるとは魔王なのか?」
「まさか。規格外だという意識はあるけど、僕は魔王じゃない。魔王なんて逢ったこともないし、遭いたいとも思わないよ」
「そ、そうか」
そうなんです!
「でもこれで分かってもらえたと思うけど、余計な波風はたてたくないんですよね。最後に、この旗を持ってきた者も該当するって思ってもらったらいい」
そう言いながらアイテムボックスから小さな領旗を取り出す。
「「「「綺麗……」」」」「神力が宿っているな。我には近づけるな」
ヴィルには分かるらしい。不死族と神力って相反するものなのかな? だとしたら僕はどうなの? 困ることじゃないから後回しでいいか。それよりも説明だ。
「これは“エレクタニア“の領旗なんです。で、領主である僕と配下の者たちにしか触れない。試しに触ってみますか? あぁ、ナハトアとヴィル以外でだよ」
「どれ」
僕の言葉を挑戦と受け取ったのかランベルトが徐に席を立ち、領旗に手を伸ばすとーー。
バチィッ! 「ッウッ!!」
大きな音ともに弾かれてた。ほら、言わんこっちゃない。神様の加護持ちは問題がないことは実証済みだ。だからそうじゃない人が触ると、この指輪を嵌めようとした時のアイーダのようになると思ったんだけど……正解らしい。左手の薬指に嵌まる印章指輪に一瞬視線を落とし、ランベルトにすぐ視点を合わせた。痛そうだね。
「大丈夫だ。びっくりはしたがな」
涙目で強がっても説得力ないけど、これ以上威厳をがた落ちさせないためにあえて触れないことにした。大変なお仕事ですね、ギルドマスターって。
「と言うことで、これだけ照合材料だせば問題ないですよね?」
「ああ、問題ない。我らが冒険者ギルドは“エレクタニア”国主ルイ殿に受けた恩義に対して、貴国の損害となる情報を漏らさず無用な波風をたてぬことでそれに報いよう」
「感謝致します。この領旗は見本に置いておきます。何かしら映像が送れる魔法の道具みたいなものがあればそれも可能でしょうからね」
「ルイさんが国主ーー」「「ご主人様が国主……」」
「3人とも落ち着こうか。眼が血走ってるよ?」
「何号でも構いませんから!」「ご主人様、一生ついて参ります!」「わたしも精一杯ご奉仕致しますので!」
一斉に飛びかかってきた3人の前にナハトアが仁王立ちになったかと思ったらーー。
「あんたたちはっ!!」
「いったぁ!」「きゃぁっ!」「きゃん!」
ゴンッと一度だけ音がしたのでは!? と思えるほどの早業で3人の頭に拳骨を落としていた。す、凄いな。ヴィルも組んでいた腕を崩すくらい驚いている。これで一番の懸案が済んだね。僕は最後でいいとして、ナハトアだ。
「じゃあ次にナハトアの従者の登録だけど、ここでいいの?」
「構わん。俺がしてやろう。まずはナハトアの身分証を出してもらおう」
「ナハトア?」
「あ、はい」
鼻息が荒いまま肩を怒らせていたナハトアが我にかえり、慌てて身分証を取り出す。身分証に情報を書き込む作業は実は見たことないんだ。気が付いたら出来上がってたと言った方がいい。僕の回りには仕事が早くてそつなくこなす人が多過ぎるんだよな。贅沢は話だし恵まれてるとも思うよ。
ランベルトがナハトアの身分証を手にとって、卓上にあったボーリングの球くらいある水晶球に身分証を翳す。ぽうっと淡黒く光ったと思ったら元の水晶球の戻るのだった。
「次に従者になる者がこの水晶球に触れてくれ」
「ヴィル」
「承知」
僕に促されて、ヴィルが机に近寄り水晶球に左手で触れる。すると、先程と同じようにぽうっと淡黒い光を発しまた収まるのだった。
「従者はこれだけか?」
「いいえ、ただびっくりすると思うので、攻撃だけはしないで下さい。ホノカ、ナディア」
ナハトアの呼び掛けに、左右のクノペシュに着いている鈴が一際澄んだ音色を響かせ、実体のない存在が現れたのだった。あれ?
……この水晶を触れば良いのねぇ~♪ これが冒険者ギルドなのね……
「なっ!? こいつらは!?」
「この娘たちは、わたしと契約を結んでくれた亡霊なんです」
「亡霊……を従者にできるものなのか?」
「通常だと意思の疎通が図れませんから無理だと思います。この娘たちは特別なんです」
「ナハトア、気付いてる?」
「何をですか?」
「“穢”が出てないよ?」
「あ、そういえば!?」
「ヴィルの時もそうだったよね?」
……これで良いのねぇ~♪ こうやって登録するのね。あら、本当だ臭くない……
ホノカとナディアが水晶に触れると同じように淡黒く光って元の状態に戻っていた。それにしても、臭いのか!? 初めて知ったよ。
……“穢”がなければルイくんに触っても大丈夫かしらぁ~♪ あ、ナディアずるい!……
「えっ!?」「は!?」
……あぁ~♪……
止める間もなく、半透明の2人に抱き締められていたーー。えっとこれどう説明すれば? 半透明ということは霊体なんだけど、今この瞬間に限って言えば質感を感じてるんだ。なんというか2人のG級のマシュマロに顔を包まれているのです。ええ、確かに幸せですが、殺気が刺さってくるんです。
「亡霊相手に何を惚気とるんだお前は。女となれば幼女から不死族まで節操がないな」
ランベルトが呆れ顔に薄ら笑いを貼り付かせていた。おっさん、楽しんでるだろ!? どうやら従者の登録も済んでいるみたいだけど、今はこの危機をどう脱出するか、だぞ!?
「いやいやいや、誤解ですって! そもそもこの状態はお願いしてなった訳じゃないですし!?」
「「「大きいのが良いんだ……」」」
自分の胸に手をやってホノカたちと自分のものを見比べるカリナとドーラとフェナ。
「そこの3人も話をややこしくしない! 女の子の胸は大きくても小さくても個性なんってなに言わせてるの!? ナハトア!? これは事故だから!」
ナハトアさんや、眼、眼が怖いんですけど? おばか3人組は野生の勘で危険を感じ取ったらしく、ヴィルの後ろに避難してる。おいおい、そこまで逃げるか?
「分かってます、ルイ様。精霊に触れる時点で、この危険に気が付かなかったのは私の落ち度ですから。ホノカ、ナディア帰りなさい」
低い感情を圧し殺した声が僕の精神に吹きすさむ。かなり怒ってるね、これは。
……ナハトアお願いです。 もう少しこのままが良いわぁ~♪……
「(ホノカも、ナディアも、ナハトアの事をもっと良く観察しなきゃだめだ。ここで折れとかないとあとが大変だぞ)」
2人にだけ聞こえるように早口で注意する。ふっと抱き締める力が弛む。
……仕方ないわねぇ~。 ナハトアの気分を害して出してもらえなくなったら困るし……
半透明の2つの体が僕から離れてナハトアの左右に移動して、同時に彼女の耳へ息を吹き掛けるとすぅっと消えていくのだった。現れたときと同じように澄んだ鈴の音を響かせて。
「ひゃん!」
ナハトアが可愛らしい声を上げた。あれ? ひょっとして耳が弱いのか!? レアも耳が弱かったし……もしもの時は使わせてもらおう。
「それよりお前、亡霊に触れられて何ともないのかよ?」
「は?」
「あの手の不死族は大概“冥府”の手を持ってるだろうがよ」
……失礼ね。吸ってないわよ。 わたしは吸ってみたわぁ~♪ でも吸えなかったけどねぇ~……
おいおい、ドレインしたってことかよ。油断も隙もないな! それにしても“冥府の手”というのは言い得て妙だね。吸われ過ぎると死んじゃったり、お仲間になったりするから、どちらにしても生あるものからすれば死への招き手だ。ナハトアもそんなにびっくりしなくて大丈夫だよ。
「大丈夫、吸われれば分かるので、今回は吸われてませんよ。ナハトアも心配掛けてごめん。大丈夫だからね?」
「え、あ、ちょっと、ルイ様!? ~~!!」
この場を落ち着かせるには抱き締めるのが一番! という自己本意な意思を貫いて目の前に立っていたナハトアに近寄り、覆い被さるように抱き締めてあげた。少し嫌がるような抵抗を見せたけど、体を預けてくれたのが分かる。ぽふぽふと背中を落ち着かせるように叩いてから腕から解放すると、上目遣いに膨れっ面だった。可愛い。うん、ナハトアは美人で間違いないんだけど仕草が可愛いんだよな。
「流石ルイさん。ナハトアの扱い方良く分かってるは」
「わたしもぎゅっとして貰いたいです」「です」
「いつまで惚気を見せつける気だ? こっちはもう消化不良起こしてるって言うのに。ほら、ナハトアの身分証だ今触った3人の証明はこれで問題ない。増えたらその時にギルドで同じようにしてもらえ」
「あ、ありがとうございます」
ランベルトの手から放られた身分証が弧を描いてゆらゆらと不規則に宙を舞い、ナハトアの両手に挟まれる。最後は僕だな。
とはいっても一番簡単な作業だったために、僕としては拍子抜けだ。身分証がない場合、ギルドで必要な情報を記載し登録するのだという。ラノベで定番の冒険者ランクの説明も受けた。Fから始まりA迄ある。Sランクは称号のようなものでAランクで国家レベル級の功績を挙げたものに授与されるのだとか。試しに聞いてみたら、数人いるらしい。犯罪を犯せば冒険者としての資格を剥奪されるとも念を押された。罰則があるのは組織として喜ばしい事だよな。
僕はというと、飛び級でDランクでスタート。「お前みたいなやつを低ランクにしてると下の連中の心をへし折ってしまう」と言われてしまったからだ。いや、そんな気は更々無いんだけどーーと反論したら、見たこともない魔法を使ってもランクが上がらないんだったら冒険者を続けようと思わなくなる奴が必ず出ると言い切られたよ。
因みにナハトアとカリナはBランク。ドーラとフェナはCランクらしい。「見かけによらないな」って漏らしたら僕が出鱈目なんだと怒られてしまった。僕基準で世界を見るなとも言われたな。酷い言われようだ。
そもそも冒険者になろうと思ったのは、なんだ、ラノベのテンプレに乗ってみたいという好奇心の他に大した動機はない。ただ、この世界で受け入れられているシステムなら役立つこともあるのでは? とも思ったのも少しある。ほんの少し。だから、これが冒険者か〜という小さな感動と、好奇心を満たせたという自己満足で幸福度が上がったのは事実だね。小さな幸せも大事だよ。
その夜は宿に戻ることも出来なかったので、ギルド会館で雑魚寝することにした。朝一で蛇女族たちを迷宮に案内する前に集合のロス時間無くすためだ。陽が昇りきってからだと人目にもつきやすいし、余分な軋轢を生んだり、恐怖を掻き立てる恐れもあるからね。彼女たちもこのギルド会館の別室で休んでいるはず。話を聞いてみるとエルフたちは独自のルートが有るようなので、深入りせずに任せることにした。流石にすべては面倒見切れない。
「【解除】。ふぅ。風に当たってくるかな」
皆が規則正しい寝息になったのを確認して、僕は【実体化】を解く。どのみち明日からはこの姿で迷宮に向かうんだから見られたとしてもどうってことない。
すぅっと音もなく天井を、屋根を抜けて星の煌めきが降り注ぐ屋上に辿り着く。何処かで鈴が鳴った気がした。気のせいか。
「慌ただしい1日だったな。まさか“転生者”に2人も逢うなんて思ってもなかった」
……そうよねぇ~♪ それよりもその姿の方が驚きなんだけど……
「わ、ナディアにホノカ!? いつの間に!?」
……寝てるときは拘束する力が弱まるみたいよぉ~♪ 何でルイくんがその姿なの?……
「ネタばらしすると、転生の時に担当の女神様がへまをしでかして、生霊の姿でこの世界に誕生したんですよ。それが3年前の話です」
……レイスなら遠慮なく触れるわね~♪ わたしたちのを吸いとったのもルイくんなんでしょ?……
「吸えないものも有りましたけどね。概ねそうです。ひょっとして僕のあとを付いて来たんですか?」
……ええ、“ケルベロス”について話しておこうと思ったんだけどぉ~。 入団時に交わした契約のせいで話せないみたい……
魔法契約の類いか。今は下手にさわらない方が良いかも知れないな。情報が少な過ぎる。
「相当大きな組織のようですね。逃げた者も居るでしょうから、遅かれ早かれ僕に辿り着くでしょうね」
……1つだけ言えるとしたら、黒幕を侮ってはダメよぉ~♪ 彼女は魔王の座を狙ってる。これ以上は無理だわ……
それでも十分な情報だ。手探りで情報を集める事を考えたらね。
「魔王の座……か。僕の関係のないとこでやってくれればいいものをーー。あ、こっちの話です。このままここで寝てると風に飛ばされちゃうんで、中に戻りましょうか」
……そうしましょぉ~♪ 添い寝してあげるね……
何も聞かなかったことにしよう。
翌朝早くにナハトアの怒声がギルド会館に響き渡ったのは言うまでもなかった。仰向けに浮かんだ僕の体にホノカが前から、ナディアが後ろから抱き着いて寝てたのだから……。御愁傷様な僕。その後しばらく空中で正座してお叱りを受けました。ええ、それはもうみっちりとーー。抱き着いてた当の本人たちはそそくさと召喚具の中へ戻ってしまい、怒りの矛先が僕にしか向かなかったんだ。あいつら……。
お蔭で僕の体の事でとやかく言われることもなかったのはありがたかったんだけどね。ああ、こういう体なんだ、僕だもんねという不安な公式が組上がっていたのには驚いたな。
一騒動あったものの、蛇女族たちと共に街をでて一路迷宮を目指すことになる。片道4日の行程だ。なぜ枢軸領主のクンラートに5日の準備期間を貰ったのかと言えば、帰りはヴィルの背に乗って帰れる算段があるからなんだよな。じゃなきゃ、倍の日数をもらわないといけなくなる。そうなれば良い顔はしないだろう。
実際問題、僕たちは迷宮までは行かない。ギリギリ迄は一緒だけど、後少しは彼女たちに任せることにした。種族の内政問題、特に王権絡みに首を突っ込むなんて気は更々ない。お節介体質であるのは自覚してるけど、少しは思慮分別もある。
ん? メンバー? どうせ帰ってくるから待ってれば? って言ったんだけど一緒に行くと言って聞かなかったカリナとドーラとフェナの3人に、僕とナハトアを足した5人。蛇女族たち10人を合わせた15人パーティーだ。ヴィルは召喚具の腕輪に入ったままだね。
ナハトアに着いた“女王の残り香”のお蔭で道中魔物に遭遇することもなく、4日目の朝には迷宮がある森の入り口迄来ていた。帰りにヴィルの背に乗るので早めに【実体化】しておいた。簡単な道案内をしてあげれば今回の作戦は終わりだ。
「この森は皆さんが束になっても敵わない程の魔物は居ないそうです。ここからはご自分たちで女王様を見つけてください」
「何から何まで助けていただき、感謝の言葉もございません。このご恩は我が一族に末代まで伝えます。蛇女族の郷にお立ち寄りの際には心よりもてなさせていただきます」
そんな大袈裟な。そもそもそんな伝達方法あるの?
「こういっちゃなんだけど、ついでの事だったんだからそこまで恩義を感じる必要はないですよ。それに僕も助けてもらったし」
「それはそれ、これはこれでございます。ナハトアさんちょっと失礼しますね?」
「え? あ、ちょっ耳はぁぁぁっ!!」
朝から御馳走様でした。ナイスアシストです。悶えるナハトアを慈しみの籠った眼差しで愛でることができました。あたっ。なんて浸ってたら3人に脛を蹴られてしまった。なぜカリナまで蹴る!? いや、何故蹴る!?
耳を噛まれたナハトアが解放され、蛇女族たちと別れた僕たちはヴィルの背に乗って港街まで半日の辺りを目指すことにした。あまり頻繁に竜で乗り入れるのもどうかと思うし、騎竜乗りなんて二つ名でも呼ばれたくもない。
初めて竜の背中に乗る3人のテンションが異常に高かったけど、ナハトア、僕、ドーラ、フェナ、カリナの順に跨がり、帰路に着くのだった。
蒼天に輝く太陽の陽を浴びて光を弾く漆黒の竜鱗。眼科に広がる草原の上を動く生き物が豆粒のように見える層を、僕たちは黒竜の背に乗って優雅に飛翔している。天空を覆う凍えた空気が浮ついた気持ちを窘めるように鋭く肌を打っていたーー。
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