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レイス・クロニクル  作者: たゆんたゆん
第二部 アーブルフェリックの泪 第一幕 港街
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第106話 タンク

2018/1/2:登場人物名「ダーシャ」の重複使用がありましたので、「カビー」に変更します。

 

 慌ただしいノックが行われ「入れ」と許可が出る前に扉が開かれていた。そこに立っていたのは使用人らしき青年とデニスだった。


 「「「デニス!?」」」


 ギルマスのランベルトとナハトア、それに僕の声が見事ハモる。まさかここまで押しかけてくるとも思ってなかったからだ。ただ、彼の表情が強張(こわば)った怖い顔になってる事からすると、まずい状況が起きたようだ。元々強面(こわもて)の男だから余計に迫力が増す。現に姫様なんかはジルケの後ろに隠れてるくらいだもんな。可哀想に。


 「ギルマス! まずいことになった」


 「どうした? 何があった!?」


 冷静に周りを見ると、この地域の人種的な特徴は赤茶色系の髪に緑と青が混ざったような瞳の持ち主が多い気がする。デニスにしても、使用人にしてもだ。ギルマスのランベルトと枢軸領主のクンラートについて言えば、彼らの瞳は茶色であったり、芥子色(からしいろ)であったりなので外からの血が混ざっていると伺える。そんな事を考えながらデニスの報告に耳を澄ませていた。


 「うちの連中と亜人の姉ちゃんたちがひと悶着起こしちまって、収集がつかなくなってまずい状況なんです」


 亜人? ドーラやフェナたちだけじゃなく?


 「つまり、エルフや蛇女族(ラミア)ともってことか?」


 ランベルトの確認にデニスが黙って(うなず)く。今は状況説明というより、一刻も早く騒ぎを(しず)めないと大変なことになる。


 「今はカビーさんが抑えてくれてて、今の内に行って来いって飛び出してきたんです」


 食堂の女将さんの名前だったな。酒が入って気分が大きくなって……という最悪なパターンか?


 「ちっ、すまん、クンラート1度帰って出直す」


 「仕方あるまい。事が大きくならんように頼む」


 「分かった」


 「僕たちも一緒に帰ります。恐らくですが、彼女たちを抑えるにはナハトアの力も必要だと思うので。ナハトア」


 ランベルトのおっさんにそう声を掛けてナハトアを促す。ナハトアが答えている間にヴィルのやつを起こすためにその隣に移動した。姫様たちは何か起きたのだろうということを察して、特に声をかけてくることもない。


 「はい。蛇女族(ラミア)の方はどうにかなると思います」


 「ーー分かった。頼らせてもらう」


 あ、そうだ。返事をまだ言ってなかったな。ヴィルを背中にしてクンラートさんに声を掛ける。姫様たちはいわば客賓だから、実務は領主のおっさんだろう。


 「それと、護衛の件お受けします。目的地の途上にミカ王国を通り抜けるのでご一緒しましょう。その前に5日程時間を頂けますか? この状況を治めて来るので」


 その言葉に、クリス姫がジルケの背中から顔を出して嬉しそうに僕を見詰めてくれた。うん、そっちの趣味はないけど幼い子の笑顔には癒やされるよね。


 「承知致しました。その間に準備をさせておきましょう」


 「クリス姫、またね! ほら、ヴィル起きろ!」


 僕はジルケの背中に隠れた姫に手を振り、振り向きざまに隣りに立っていたヴィルの尻を蹴り上げてやった。勿論(もちろん)甲冑の下からお尻のある部分につま先が刺さるように、だ。ブーツの先端を通して骨に当たった感触が返ってくる。


 「むぐぅっ!?」


 当の本人は何をどう言えば良いのか分からないようなくぐもった呻き声を発しながら飛び上がり、眼を覚ます。血走った眼がギロリと僕の顔を射抜いた……。あのな、寝てるお前が悪い。


 「あっ!?」「「え!?」」「ぷっ!」


 あまりの出来事に姫はあんぐりと口を開けたまま驚き、ロミルダとジルケは口元に手を当てて驚き、ナハトアは僕の後ろで吹き出していた。幸い、なのかクンラートとランベルトには死角になって見えなかったようだ。


 「こんな所で寝るってどんだけ図太いんだよ。よく倒れなかったよな」


 「ふん、鍛え方が違うのだ。それにしても、もっとましな起こし方はなかったのか?」


 鍛えてどうにかなるものなのかよ!? 相変わらずだよな。


 片道30分はかかる距離をこの時間で到着したということは、僕たちが出発してそれほど時間の差もなくひと悶着が起きたことになる。直ちに帰ったとしても40分はかかる計算だ。


 デニスは早駆け用の馬を使って来たとの事で、ランベルトのおっさんがそれを使って先に戻ることになった。僕らは来た時と同じ馬車で送ってもらう手はずにして慌ただしく部屋を後にする。10分差くらいで着ければ御の字だ。


 けたたましく嘶く馬と蹄の地を弾く音、馬車の車輪が石畳を噛む音が領主邸の中庭に響き渡り、雑踏のなかに呑み込まれていくのだった。




             ◇




 20分後、目の前にギルド会館が見えてきた。デニスが乗ってきた馬も表に繋がれている。


 来た道である街壁沿いの迂回ルートではなく、最短距離を突き抜けるルートを選んだお陰だ。要らぬ問題を避けるために選んだルートが30分掛かるということだったんだな。道理でデニスが早く来れた訳だ。


 「さて、ギルマスのおっさんがどう治めてるか……えっ!?」


 そのギルマスのおっさんことランベルトが隣の建物の壁をぶち抜いて飛び出てきたーー。いや、そこ入り口じゃないだろう!? いよいよまずいよな。ランベルトは表の石畳の上を何度か跳ねるように着地しながら向かいの建物の基礎に頭をかなり強めに打ちつけた状態で止まる。あ〜意識ないな、あれは。


 「ギルマス!? 嘘だろ!? ギルマスがぶっ飛ばされるってどういうことだよ」


 それは僕も聞きたいよ、デニスくん。ランベルトのレベルがどれくらいで冒険者という職業はどれだけ強いのか。正直そこの予備知識がないんだ。そこはアイーダに教えてもらうようにと言われてたんだけど、あの座敷犬(アイーダ)は人の話に蓋をするというスキルを会得したようで更に(たち)が悪くなったというね。使えない……。馬車がギルド会館前で止まったので、僕、ヴィル、ナハトア、デニスが足早に外に出る。


 「仕方ない。ヴィル……」


 「威圧で沈めれば(・・・・・)よいのだな?」


 「いや、待て。言ってることはあってるんだけど何か意味が違う気がする。(しず)めるんだよ?もしかしてだけど、全員の意識を飛ばす勢いで威圧するつもりじゃないだろうな?」


 「……」


 「図星か! 少しは自重を覚えろ!」


 「ぐぬぬぬ」「ぷっ」


 お前もベルントみたいに唸るのか。しかし、竜族というのは皆こういう気質なんだろうか? シンシアといい、ヴィルといい、こと戦闘に絡むと加減を知らないというか力で問題を解決しようとするんだよな。全てのケースがそれで済むわけじゃないんだぞ? ナハトアがいい気味だと言わんばかりに笑っている。可愛いから見逃すよ。じゃなくてだ。


 「ヴィルはそこで()びたおっさんを抱えて後から来てくれ。デニス、悪いが盾になってもらうよ」


 この件をヴィルに任せるととんでもなく(こじ)れそうな気がした僕は、ぽんとデニスの左肩に手を置いて爽やかに頼むことにした。


 「はぁ!? 何で俺が?」


 まぁ、当然そうなるよな。でも、いきなり僕が入っても冒険者仲間じゃないから相手にはされないだろう。なら、顔の(つなぎ)をしてもらう必要があると思ったわけさ。数十分前まで一緒に治療してたんだから勿論知らない仲じゃない。そうはいっても尊敬というより化物扱いされてると感じるような視線が沢山あったもの事実だ。だったら気心が知れたヤツのほうが、と考えたんだけど……。


 「だってお前、パーティじゃ殴られ役(タンク)だろ? まぁ実際に殴られることはないだろうから、皆を安心させるという意味で先に入ってくれないかな? 僕とナハトアはその後入るから」


 「まぁ、それなら良いぜ。マジで盾にするつもりかと思っちまったじゃねぇかよ。おい、お前らいい加減にぶへぇぇぇぇぇぇっ!!!」


 「なっ!」「きゃあっ!!」


 そう悪態をつきながら食堂に入っていったデニスが扉を背中に貼り付けたまま目の前を飛んでいったーー。はぁっ!? 今一瞬蛇の尾が見えたけど、もしかして蛇女族(ラミア)の尾撃か? 痛そうだな。というか今の一撃で意識刈り取られてるね。


 「ヴィル、そこのデニスも一緒に宜しく!」


 「ちっ」


 「今舌打ちした? したよね?」


 「いや空耳だろ。我には聞こえなかったぞ?」


 「そんな事より、ルイ様何とかしないと」


 ナハトアに(たしな)められる。舌打ちがそんな事扱いされたぞ。う〜なんだか釈然としない。仕方ないか。あんまり長く威圧を掛けるとフェレーゴ伯爵邸でやった事の二の舞になっちゃうからな。そう思いを切り替え、ふぅっと短く息を吐き短く威圧を解放する。


 「っ!!(すごい! 何て威圧なの!? 鳥肌が治まらない!)」


 ナハトアの顔に怯えのような影が走る。それも一瞬だったために僕が気が付くことはなかった。ブルブルっと身動(みじろ)ぎしたナハトアの背中を落ち着かせるように軽く2回ほど叩いて、食堂の中に足を踏み入れる。デニスの時みたいに蛇の尾が襲いかかってくるかと思ったけど、何事もなくすんなり店内にはいれた。


 ふぅ、まずは誰も気絶してないな。見渡すと食堂に居合わせた者たち全員の視線が僕たちに……いや、僕に向けられていた。敵意はないが反射的にその多くが武器に手をかけているのが分かる。おいおい、面倒はごめんだよ? 店内にはざっと50人ぐらいだろうか、かなりの人数が居る。半数ぐらいが亜人だ。


 「ふえぇぇぇ、ご主人様〜〜!!」「ご主人様ぁ〜〜!」


 その緊迫した空気が立ち込める人混みを()き分けてドーラとフェナが僕に飛び付いて来た。いやいや、ご主人様とは違うんだ……よ? 思わず突っ込みたくなったけど、今の状況を踏まえてぐっと(こら)えることにした。彼女たちの眼が赤くなってたというのもある。怖かったのだろう。何も言わずに、二人の背中をぽふぽと叩きながらゆっくりと見回す。


 エルフの女性たち12人、うち1人はナハトアの知り合いのダークエルフ。10人の蛇女族(ラミア)。それに、ドーラとフェナの2人が僕の前に静かに集まってきていた。ドーラとフェナは静かにというか先に飛び込んできてたんだけどね。


 「皆、怪我はない?」


 彼女たちの状況確認が先だ。僕の問い掛けに特に何も言わずに皆が(うなず)いた。先程の威圧も効いてるのだろう。


 「何だよ、ルイさんよ。あんたも亜人の味方を済んのかよ!」


 そう何処からともなく冒険者の誰かがそう声を上げた。


 「味方? いや、違うね。当たり前のことをしてるだけだ。確かに彼女たちは人間が作り上げた社会の中にあっては異物のように感じるかも知れないけど、彼女たちの社会に僕たちが入り込んだら今度は僕たちの方が異物になるって思わないのかい?」


 「「「「「…………」」」」」


 その質問に誰も答えようとしなかった。考えたこともなかったのか? と思いたくなる光景だったよ。一部の人間を恐れて声を出さない者も居るんだろうけどな。


 「どの道酒が入って気が大きくなった誰かが(しゃく)でもさせようとして、挙句(あげく)断られた腹いせに侮辱的な言葉で罵ったっんだろう?」


 「「「「「えっ!?」」」」」


 エルフと蛇女族(ラミア)が驚いて眼を見張り、ドーラとフェナが僕を見上げてきた。その表情も驚きの色に彩られている。冒険者の方も何やら気まずそうな雰囲気だ。視線を逸らし始めた者も何人か見受けられる。ん? 何?


 「ご主人様は見てたのですか?」「見られてたのですか!?」


 ドーラのフェナの問掛けが僕の推測を裏付けていた。やっぱりな……。思わず溜息が出てしまう。


 「はぁ〜。あのな、あんたら冒険者である前にいい大人だろうが。皆で楽しむことに関してどうこう言うつもりはないが、これは違うだろ? お互い気が立って手を出した者も居るようだけど」


 その一言に2人のエルフと1人の蛇女族(ラミア)がしゅんと頭を下げる様子が視界に入った。反省はしてるみたいだな。ま、それなら言いようもあるか。そう心で独り(つぶ)いて話を続けることにする。料理の香りとアルコールの香りが鼻腔を(くすぐ)るが、空腹を満たすのは後だな。


 「それはお互いが悪かったと言うことで手打ちにしないか? 場が白けるし、折角カビーさんが腕によりをかけてくれた料理が暖かい料理が台無しだ。カビーさんにも悪いと思わないのか?」


 その言葉に一同の視線が食堂の奥の方に向けられる。そこには小太りの中年おばちゃんが大きな鍋の蓋とお玉を左右の手に持ち、肩を怒らせながら立っている姿があった。頑張ったな、おばちゃん。鼻息が荒い。


 「ほら、言いたいこともあるだろうけど、僕らは余所者だ。皆で先に謝ろう。僕も一緒に頭を下げるから」


 「「「え?」」」「「「そんな事は!?」」」「「ご主人様?」」


 「何て顔するの。ほら、助けた後でここに行きなさいって僕が言ったの覚えてる? その一言がなければこうなることも避けれたかも知れないじゃないか。大きな意味で僕も一緒さ。それに僕も頭下げれば皆も頭下げやすいだろ?」


 「「「「「ーーーーっ!」」」」」


 そう小さな声で僕の方に集まった一団に提案してみた。種族の誇り(プライド)というのもあるだろう。人間に頭を下げるなんて! と思うかも知れない。でも、当事者じゃない僕がそこに入れば少しは心に理由付けが出来てこの場は納得してくれるかもと考えたんだ。でも、案外それが良かったみたい。ドーラとフェナが上気して潤んだ眼で見詰めてくるが放おって置く。エルフや蛇女族(ラミア)たちも「仕方ないわね」と言った感じではあるけど、優しげな微笑みがそれぞれの顔に浮かんでいた。


 「「「「「お騒がせしてすみませんでした!」」」」」


 この一言に絞って皆で同時に頭を下げることにしたんだ。ナハトアまで一緒に頭を下げてくれたのには驚いたけどね。


 カンカンカン!


 「ほら! あんたたちが先に手え出したのに、あの()たちが先に頭下げてんだよ? あんたたち、ここで頭下げれないんだったら出入り禁止にするからね!! さっさと謝んな!!」


 カビーのおばちゃんが景気よく手に持った鍋の蓋を打ち鳴らして冒険者たちを急き立ててくれる。そのあとで頬を横に引き延ばすかのように広い歯を見せて笑ってくれるのだった。本当、良いおばちゃんだ。


 結局カビーのおばちゃんの剣幕に呑まれた冒険者たちというか、該当する当事者たちが頭を下げてくれたのでこの一件は治まることになる。それを見届けたおばちゃんが僕たちの所へ料理を持ってきてくれたので、皆で舌鼓(したづつみ)を打つことになった。そこへーー。


 どさっ


 両脇にランベルトのおっさんとデニスを抱えたヴィルが入って来て、無造作に床へ放り投げたのだった。本人はその抱えてたのを放しただけだというだろうが、(はた)から見てるとそう映るような投げ方だ。まったくこいつは……。ヴィルを怒りたくなったが、投げ捨てられた男たちの顔を見てその気も失せる。


 「ぷっ!」 ぱしっ


 思わず右手で口元を抑えて食事中のものが飛び出さないように配慮するのに精一杯だった。その仕草に何事かと(のぞ)き込む面々(めんめん)が次々に笑い出し、やがて食堂全体に広がっていく。笑われて酒の(さかな)になっている男たちは、白目を()きだらしなく(よだれ)を垂らして(ほこり)まみれの床に頬を擦り付け、お尻だけ高々と掲げていたーー。




             ◇




 半刻(1時間)後、僕たちはギルドで馬と荷馬車を借りて街外の街道を西に進んでいた。


 時刻は18時を回ったところだ。この世界に来て季節をあまり感じてこなかったが、温暖な感じを常時受けている。実際寒いのは山脈の頂き付近だけだ。鷲の宮殿があった場所もそれに当て()まるので間違いないだろう。日本人としては四季がないのは物足りない気もするけど、気候が穏やかということは旅をしやすいということだから歓迎すべき要素なんだろうと思う。


 (ほろ)の無い荷馬車の荷台に僕、ナハトア、ドーラとフェナ、それにダークエルフのカリナが居る。ヴィルは御者台で手綱を持ってるが、仕切りも何もないために意志の疎通は簡単だ。


 食事が盛り上がった処で席を立ち、ダーシャさんに薪と油を少し分けてもらって外出したんだ。その頃にはランベルトのおっさんもデニスも意識が戻っていたので、夜には帰ると言い残して出て来たって訳。カリナもダークエルフが1人残ると居心地悪いから一緒に動くと言って付いて来る事になったの。元はと言えば、ドラとフェナが一緒に行くと駄々をこねたからなんだけどね。カリナはそこに便乗した感じだな。


 街をぐるりと囲む壁が遠くに見える。


 「それでルイさんはなんでこんなとこまで出て来たんですか?」


 カリナは海賊に商品としての教育を施されていたわけでもないので至って普通な女性だ。ダークエルフであることを除いてだが。見た目は20代と言われても信じるだろう外見なんだけど、エルフだから間違いなく200歳オーバーだろう。ナハトアが僕に敬意を払っているから失礼にならない程度にリスペクトしてくれていると言ったところだね。


 「うん、ちょっと火葬をね」


 「火葬ですか?」


 カリナがその言葉に戸惑いのような感じを受けた僕は確認してみることにした。


 「火葬は珍しいのかな?」


 「普通は土葬です。“穢憑(けがれつ)き”にならないために首と手足を切り離して埋葬します」


 カリナの代わりにナハトアが答えてくれた。おっと、以外にエグいな……。不死族(アンデッド)が存在する世界ならではの処置ということか。じゃあ火葬はどういう事だ?


 「火葬も“穢憑き”を出さない上では有効だと思うんだけど、少し声に陰があったんだよね。火葬ってイメージ悪いのかな?」


 その質問にナハトアとカリナが目配せする。どうやら悪い意味で使われる言葉らしい。ドーラもフェナもこの会話に乗ってこない処を見るとそうなのだろう。


 「ルイ殿、その問いには我が答えよう」


 そんな事を思い巡らせていると前方からヴィルが呼び掛けてきた。視線は前方に向けられたままだ。日が陰って気温が下がり、涼しい風が僕たちの肌を舐め、髪をほぐしていく。ゆっくりと地を踏みしめて歩く(ひずめ)の音と石を噛む車輪の音が一定のリズムを刻んでいる中、夕陽を眺めながら僕はヴィルの言葉が(つむ)がれるのを黙ったまま待っ事にした。


 僕の予想を裏付ける答えになるだろうと予期しながらーー。


 「火葬は、罪人たちの尊厳を死してもなお踏みにじる事を目的とした罰だーー」







最後まで読んで下さりありがとうございました!

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