ある晴れた日俺の顔面は魚臭くなる
性懲りも無く新シリーズを書き出しました。
いつ勇者召喚ファンタジーの更新進めんだよ!とは思いますが、気が向いた時、筆がのった時にでも進めていけたらなと思います。
ひとまず今作をお暇な方は楽しんでいただけたらと思います。
ある爽やかな昼下がり、空からサバが降ってきた。
べちょっと大きな音を立て、中々の衝撃で俺の顔面に墜落してきたサバ。
はて、どこからこんなものが。
にしても生臭い。
なぜ降ってきた魚がすぐサバと分かったのか、それは別に俺がサバマニアとかそんな特殊な趣味であるわけではない。
直撃する前にサバという文字が見えたのだ。
がしかし、ここでまた訂正しておきたいのは、俺の目は別に物体が活字になって見えるなどという奇特なものではないこと。
単純に降ってきた魚に「ミケのサバ」と書いてあったのだ。
猫一匹にサバを丸々とは、なんとも豪勢な。
いや、そもそもミケが猫である確証はないのだが。
しかし如何にもな名前からしてほぼ確定だろう。
はて、にしてもこのサバをどうすべきか。
持ち主を探そうにも何処から降ってきたのか判別もつかない。
サバ片手に顔が生臭いまま持ち主を探すのも気がひける。
それに加えなんと運命的なことか、目の前には七輪がある。
シシャモを焼こうとしていたのだ。
男子高校生がなにおっさん臭いことも、と思わなくもないが。
いいじゃないか、七輪でシシャモ。
美味しいだろう。
そしてこのサバ、なんとも脂がのって美味そうだ。
何気なく、そっと七輪にサバをのせてみる。
たちまち辺りには香ばしげな匂いが漂い、七輪がぱちぱち…サバがじゅわぁっ…と食欲を誘う音を奏でる。
気づくと俺の目の前にはいい塩梅で焼かれた美味そうなサバが。
なんと。いつの間に。
驚愕の表情を浮かべつつも右手は勝手に箸を握りしめ、サバのパリッとした皮を突き破った。
ほかほかと湯気が出てくると共に、今までより更に食欲を誘う匂いがする。
きっとこのサバ、神から俺へのプレゼントなのだ。
「ミケ」ではなく、「三ヶ谷」の「三ヶ」だけピックアップして書いたのだろう。
ありがとう神よ、美味しくいただきます。
まずは一口。
おお、サバの旨味が口に広がる。
これがジャパニーズUMAMIというやつか。日本人でよかった。
この時、俺、三ヶ谷悠人は屋根の上から注がれる恨めしげな視線に気づかなかった。
ただただサバを食していた。
ちなみにサバはジューシーでありながら最後の一口まで飽きのこないナイスUMAMIでした。
「……………」
あくる日、意気揚々と登校しながらも昨日のサバに思い馳せていた。
いや、あのサバは美味かった。
一つ悔やまれるのは他の調理法を試さなかったことか。
塩振って七輪で焼いただけであれだけ上手いのだ。
手の込んだ調理をしていたらどうなっていたものか。
「…………いや、素材の旨味がジャパニーズUMAMIに繋がるのか」
「よう…、何言ってんだお前」
気づくと隣には友人がいた。
この人のような顔をしたゴリラは……いや違う、ゴリラのような顔をしたゴリラは…んん?
「なんだ、ただのゴリラか」
「だれがゴリラじゃ」
失礼、このゴリラのような人間は幼い頃からの友人である八重崎郁哉だ。
ゴリラ顏のくせに雅な名前をしていやがる。
「……なあ、なんかお前失礼なこと考えてないか?」
「気のせいじゃないか」
「そ、そうか?」
疑わしげに頻りに首をかしげ(ていると思われ)る郁哉だが、その度に筋肉がこれでもかとついたせいで「ん?え?首どこだお前?」と言いたくなる、がしかし骨格的に恐らく首があるだろうそこがゴリゴリと鳴る。
なぜそんなに鳴る。
気色が悪いぞ。
「……なあ」
「考えてないぞ」
「…………そうか」
本日も晴天なり。
……またサバでも降ってこないだろうか。
キリの悪さは思うところがありますので後々編集する可能性が高いです。