15.チーム高橋の祝福
当然のことながら、チーム高橋の飲み会もといお祝い会がありました。本社勤務は全員参加、地方勤務も出張をあわせたり、有給とって来たツワモノもいて、メンバー20人中15人参加です。
心置きなく飲めるようにと金曜日に設定され、前倒しに仕事を進める面々に、この日は上司も残業を入れないように気を使う始末でした。
幹事の青木君の乾杯の声で、お祝い会は始まりました。
馴れ初めなどはとっくの昔に知っているので、皆の質問は新居や結婚式についてです。
「新居は、蘇芳さんのマンションよ。実家からも近いし」
「何かあれば、お父さんお母さんに頼れるからね。僕は、両親いないし」
並んで座る紫さんと蘇芳さんは、にこにこと質問に答えます。
「あ、結婚式は11月4週の日曜日なの。あけといてね〜」
「おお〜、じゃ、二次会企画しないとな!」
お酒の入った皆が盛り上がります。幹事を誰にするかで大騒ぎです。
静かに飲んでいた峰さんは、ふとテーブルの先の林さんに目を留めました。真っ赤な顔の近藤君と飲みながら泣いて喜んでいます。あの二人はある意味蘇芳さんと紫さんの被害者仲間なので、喜びもひとしおでしょう。
峰さんは席を立ち、小野君に話しかけます。幹事の務めです。
「小野君、小野君。今日もあの二人よろしくね」
小野君は、峰さんが指差した先の林さんと近藤君を見て、げんなりした顔になりました。
「うわ〜、またか〜。今日はもう飲めないな」
「仕方ないでしょ、今日の主役二人に任せるわけにもいかないし」
「うう〜、同じ沿線なのが、うらめしい」
ぶつくさ言いながらも、小野君はウーロン茶を頼んでいます。面倒見のいい人です。
「よろしくね」
小野君の方をポンとたたいて、峰さんはまた自分の席に戻りました。いつのまにか隣の席に紫さんが移動していました。
「蘇芳さんの隣にいなくていいの?」
「うふふ、お酒のみの時間なんですって。鈴木君に追い出されちゃった」
紫さんがにこにこ笑って言います。いつものように、あまりお酒を飲まない女子が集まってきました。デザートを追加注文し、おしゃべりを始めます。
婚約指輪の話、ドレスの話、髪型など、話題はつきません。
「そうそう、紫ちゃん、お祝い何がいいか考えておいてね」
峰さんの言葉に紫さんがこくんとうなずきました。
「うん。いまねぇ、必要なもののリスト作ってるから、出来たら、何かお願いする〜」
紫さんはちょっと酔ってきたようです。頬を桜色に染めて、とろんとしてきています。峰さんは、紫さんのグラスをソフトドリンクに取替えました。これ以上飲ませると危険です。
「わかったわ。さあ、紫ちゃんこれ飲んで酔い覚ましましょうね」
「うふふ〜、ふじこちゃん、お母さんみたいね〜」
「ね〜」
紫さんと隣の酔っ払い2号佐野さんが、けらけら笑っています。時間もいい頃だし、そろそろお開きにしたほうが良さそうです。峰さんは、幹事の青木君に合図しました。
会計も済んで、お店の外に出ました。林さんと近藤君を小野君に任せてタクシーに乗せ、蘇芳さんと腕を組んだ紫さんを見送って、解散です。
「ふじこちゃん、会計のことでちょっといい?」
もう一人の幹事の青木君に呼ばれて、皆に別れを告げました。
「なんか、あった?」
「うん。ちょっと多めに余ったんだ。後日返却する?」
「どのくらい?ふ〜ん、このくらいなら結婚祝いに乗せちゃわない」
「そうか、そうしよう」
「ふふ、ご苦労様」
「ふじこちゃんこそ。今日あんまり飲んでないでしょ。飲みなおさない?」
いつもとちがう青木君の申し出に、峰さんはちょっとびっくりしましたが、好奇心に負けました。だって、大好きなロマンス小説みたいじゃないですか。
「いいわ」
それから峰さんがどうなったのかは、別のお話。
あら、ふじこちゃんの話になっちゃった。




