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13.決戦は金曜日

 紫さんは、いつものように会社の自分の席につきました。今日は金曜日、蘇芳さんが夕食に来る日です。今日のデザートは何にしようかな~と考えながら仕事の準備を始めます。

 ふ、と誰かに見られていることに気がつきました。顔を上げると、視線が消えます。この2、3日こういうことが何回かありました。紫さんはちょっと首をかしげましたが、気のせいだと思うことにして、仕事を始めるのでした。


 視線の主は、男性社員たちでした。社長から庇護者の変更が通達されたのです。大方の感想はいよいよか、で、同期や近しい人たちはやっとか!でした。

 入社当初は、掟を破ってでも紫さんに近づこうとする男性社員もいましたが(何しろ社長夫妻のお気に入りです)、紫さんのニブさと蘇芳さんのブロックにより、半年後には挑もうとする人はいなくなりました。と同時に、専務の親友エリート一直線の蘇芳さんにまとわりつく女性社員も消えました。この頃には、二人の無自覚ラブラブ状態が、同期により全社に知れ渡っていたのです。

 

 さて、当の蘇芳さんはというと、傍目にはいつもと同じに業務をこなしていましたが、内心ドキドキでした。なにしろ、相手はあのおニブな紫さんです。直球で行くしかないのですが、結果がどうなるのか、心配で仕方ありません。

 昼食を共にした専務にそうこぼしたら、イヤミかと頭をげんこつでグリグリされました。


「新婚通り越して熟年夫婦みたいなお前達なんだ。断るわけ無いだろ」


 専務にそう送り出されたものの、蘇芳さんは心配なのです。好意を持ってくれているのは、わかります。でも、その好意が兄に対してのものか、男性に対してのものかがわからないのです。

 頭の中でそんなことがぐるぐるしながら、一日が終わりました。


 いよいよ紫さんのおうちへ行く時が来ました。勝負の時なのです。


 デザートには、昼に紫さんの好きなケーキをホールで買ってあります。紫さんは大喜びです。

 紫さんのうちでは、ご両親が待っていました。お父さんは、今日少し早めに帰ってきたようです。いつものように、和やかに食事が進みます。デザートも食べ終わったところで、打ち合わせどおりお父さんとお母さんは探しものがあると部屋を出ました。

 ついに、その時がきました。


「紫さん、明日か明後日あいてる?一緒に行ってほしいところがあるんだけど…」


「はい、いいですよ。どこですか?」


 蘇芳さんは黙ってホテルのブライダルフェアのチラシを手渡しました。紫さんは、目を見張って固まっています。蘇芳さんは紫さんの前にひざまずくと、紫さんの手をとりました。


「紫さん、僕と結婚してくれますか?」


 紫さんの顔が見る間に赤くなっていきます。


「どう…かな?」


 不安そうな蘇芳さんに、紫さんは小さくうなずきました。


「…はい…」


「! ありがとう」


 蘇芳さんはほっとしたように笑いました。紫さんもそれにつられて微笑みます。


 その後は、様子をうかがっていたお父さんもお母さんも戻ってきて、お祝いをしたのでした。

 翌日、ブライダルフェアに仲良く4人で出かけたのは、言うまでもありません。


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