【第二章総集編】鴉の手記②
ヴァルクレウス王国の第一王子アレクシスは、畏敬と畏怖を込めて民衆から「灰色の王子レックス」と呼ばれている。この手記では、以降アレクシス王子の表記をレックスで統一する。
西セルディアの王甥ヘリオスは、王国滅亡後に捕虜として東の王都へと護送された。
だが、ヘリオスは一族全員を無惨にも処刑された恐怖で、特に兵士の姿を見ると泣きわめき続け、護送兵たちはすっかり疲弊していた。
この捕虜対応問題を任されたのが、レックスの補佐官であるトゥレンだった。
彼こそが西セルディア侵攻を献策した軍師であり、レックスに十年仕える右腕でもあった。だが、彼の最も苦手とするものが「女子供」であることが災いした。
結果的に、すべてヘリオスの策略に乗ってしまった形のトゥレンは十二歳の子供の手の上で弄ばれ、侍女たちを篭絡したヘリオスに堂々と監禁部屋からの脱出を許してしまったのである。
そして、それに協力していたのが、ヴァルクレウス王国皇后ベルダであった。
皇后ベルダはレックスの継母であり、同時に互いを潰し合おうとしている政敵でもある。
もともとこの国に「皇后」という称号は存在しなかったが、前王妃の死後に正妃となると、教皇からその位を禅譲され、教皇兼王妃として新たに「皇后」位を創設したのである。
この皇后により、レックスは正式な王太子となることを十年間妨害され続けているのだった。
西セルディア侵攻から凱旋してきたレックスは、この戦勝報告の場で捕虜のヘリオスをベルダに奪われ、補佐官のトゥレンが精神的に死んでいるのを目撃し、歴史的な大勝利が空虚な色に染まったことを思い知らされたのだった。




