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習作時代  作者: 中川 篤
煉獄篇
44/45

44話


 その日は、放送大学の講義の日だった。

 俺は家を出て駅に向かった。放送大学の籍にその半年前から身を置いていた、二〇一二年の秋の頃だ。放送大学は自宅からでも講義が受けられる。

 

 が、その何割かの単位は、直接、弘明寺にある放送センターに身を運ぶ必要があった。そこでは専門の講師による講義が受けることが出来たんだ。

 当時、俺の取っていた講義は「オペラ鑑賞について」だったが、俺は今でもオペラというものを見たことが一度もない。



       ☆



 二月だった。節分が終わったばかりで、町のいたるところにしめ縄が巻かれていた(それを見て、俺は少し奇異に思った。しめ縄は、厄が入るのを防ぐ意味だったのだろうが、それが何かは分からなかった。)


 すると、体が少し浮いたように感じられた。実際に浮いたわけではないが、感覚的にはそれが一番近い表現だと思う。

 俺には、こんなように、身体に違和感を覚えることがあった。病院を出てからは時どき。


 こんなことなら今すぐに帰りたかった。こういう時、人は良く死ぬそうだから。弘明寺までは、まだまだある。ただ今日の講義を外したら、単位が落ちてしまう。まただ。


 途中のハックドラッグで売り子の女の子がリポDをくれた。ありがたく思ったが、音は鳴りやまない。

 太鼓の、銅鑼の。


 それから駅へ向かい、ホームに立った。俺は、電車が来るのが怖かった。飛び込んでしまいそうな気になるのを俺は抑えた。

 弘明寺に着くと、駅を出た。そこを下ったところにある「かんのん通り」で、鼓膜に圧がかかり、世界が揺らいだ。


――わああぁーん。

――くわああああああーん!

――くわあああああああーあん!


 謎の現象が起きる。遠くの方で、宗教の行列が太鼓を叩きながら、通り過ぎて行く音が聴こえた。



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