43話
登録していた仕事の電話は鳴り続けた。それは毎日のようにかかって来て、俺を悩ませた。
なぜなら、それを取る勇気が出なくなっていたからだ。
発信音を聴くのも嫌だった。
* * *
で、それからしばらく携帯の電源を落として置くようになった。
仕事を失い(まあ初めから無職だったのだが)、俺は家でテレビを見ていたり、小説を書くことで、何とか自分を納得させていた。
CSで韓国のバラエティー「青春不敗」やゲームセンターCXやワンピースの再放送をその頃死ぬほど観た。
放送大学にも通一応はっていたが、その頃の授業が自分には難しかった。単位を何回も落として酷い成績だった。まさにその頃、俺は青春を腐敗させていた。
☆
それでも、定期的に、俺は思い出したようにハロワに足を運ぶ。
解体されろ!
ハロワに行く。横須賀のハロワ、横浜市のハロワ、向かうとそこには何時でも金のなさそうなおっさんが列をなしていて、俺は障害者専用のボックスに案内される。
障碍者?
そのように扱われたことが人生であまりなかったので、衝撃だった。あのグループに俺も入るのか? あの?
実際それは決定済みの真理で、事実俺は動かし難く障碍者だった。障碍者と書くのも憚られるような、障害者だった。
外では雨が降っていて、横須賀市の県立大学駅にあるハロワに濡れながら向かった。鞄には本。図書館で借りた難しそうな分厚い古典。こんな物を借りるのはよほどの暇人か作家だけだ。
ハロワの高い天井の窓からは光が差していて、あの窓から外に出ることができたら俺は救われる、でも出口があんなに高いところにあるんじゃ絶対にここから出ることはできないんだろう、そういう気がした。
雨ばざあざあと降っていた。淋しい雨だった。冷たい雨だった。