22話
帰りはいつも裏門を使っていた。
どういう訳か、機械科の面々は裏門で帰るのを好んでいて、ぼくも帰りはその道を通っていくことにしていた。大体一人だったが、稀に、連れのある時もあった。だが、その日は一人だった。
ふと見ると、裏門の前の道がきれいに掃かれていた。その細い道ではカヌー部が支度をしており、小さい脚立に幾台ものカヌーが乗せられ、部員に運ばれるのを待っていたのだ。
そこで並んでいるピカピカの色とりどりのカヌーがぼくの目を引いた。裏門の大きな門はまだ開いてなく、帰宅する生徒たちは扉脇の小さなドアをくぐって、校内から出ていた。大きな扉が開くまで、このカヌーたちが出せないのだろう。
部員たちは支度を終え、艇庫に入っていった。気づくと、ぼくも艇庫の中に足を入れていた。
入部を考えた訳ではないが、ただ、この艇庫のなかに何があるんだろう? という気になった。
――バスケは? どうするの?
なかに入ると、横から突き出た梁に、カヌーがワインを置くように置かれている。仕舞われているカヌーは全部で二十台はあった。
床はコンクリートの打ちっぱなしで、さらに奥に進むと、カーペットが引いてあった。そこに部員たちが応援で使うような椅子に座って、談笑していた。
すると、そこでぼくに気づき、言葉を弾けたように話しだした。
それからのことは、本当にとんとん拍子に進んだ。
――ねぇ、バスケ部はどうするの? 入部してるんでしょ?
ぼくはそこの椅子を勧められると、入部希望者? とせっかちに尋ねられた。
だが当時はバスケ部員だった。そのことを切り出せないまま、先輩たちや、そしてこの度入った一年生五人をそこからさらに紹介された。
脇にあった船を見た。
とても細身で、こんなものにどうやって乗るんだろう? と思った。それはまるで軽業の道具のようだった。
サトウ先輩は台を使い、パドルを天井から引っこ抜くと、それを隣の干してある――水滴がまだ滴っている――救命具と一緒に船の中につっ込み、それからまた船を梁の上に戻した。
――「見学する?」
と、サトウ先輩。脚立の準備をしてからまた船を取ると、カヌーをその台の上に優しく置いた。
艇庫の前にあったカヌーをそれぞれ担ぎ、それから、一年と二年は行ってしまった。最後に残ったのは、ぼくとサトウ先輩だった。
――辞めちゃおうよ。
ここに鍵をかけていくのが、部長の役目だったからだ。