表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
習作時代  作者: 中川 篤
帰ってきて、入部して
23/45

22話


 帰りはいつも裏門を使っていた。

 どういう訳か、機械科の面々は裏門で帰るのを好んでいて、ぼくも帰りはその道を通っていくことにしていた。大体一人だったが、(まれ)に、連れのある時もあった。だが、その日は一人だった。

 ふと見ると、裏門の前の道がきれいに掃かれていた。その細い道ではカヌー部が支度をしており、小さい脚立(きゃたつ)に幾台ものカヌーが乗せられ、部員に運ばれるのを待っていたのだ。

 そこで並んでいるピカピカの色とりどりのカヌーがぼくの目を引いた。裏門の大きな門はまだ開いてなく、帰宅する生徒たちは扉脇の小さなドアをくぐって、校内から出ていた。大きな扉が開くまで、このカヌーたちが出せないのだろう。



 部員たちは支度を終え、艇庫に入っていった。気づくと、ぼくも艇庫の中に足を入れていた。

 入部を考えた訳ではないが、ただ、この艇庫のなかに何があるんだろう? という気になった。



――バスケは? どうするの?



 なかに入ると、横から突き出た(はり)に、カヌーがワインを置くように置かれている。仕舞われているカヌーは全部で二十台はあった。

 床はコンクリートの打ちっぱなしで、さらに奥に進むと、カーペットが引いてあった。そこに部員たちが応援で使うような椅子に座って、談笑していた。

 すると、そこでぼくに気づき、言葉を弾けたように話しだした。

 それからのことは、本当にとんとん拍子に進んだ。



――ねぇ、バスケ部はどうするの? 入部してるんでしょ?



 ぼくはそこの椅子を勧められると、入部希望者? とせっかちに尋ねられた。

 だが当時はバスケ部員だった。そのことを切り出せないまま、先輩たちや、そしてこの度入った一年生五人をそこからさらに紹介された。



 脇にあった船を見た。

 とても細身で、こんなものにどうやって乗るんだろう? と思った。それはまるで軽業の道具のようだった。

 サトウ先輩は台を使い、パドルを天井から引っこ抜くと、それを隣の干してある――水滴がまだ滴っている――救命具と一緒に船の中につっ込み、それからまた船を梁の上に戻した。

――「見学する?」

 と、サトウ先輩。脚立の準備をしてからまた船を取ると、カヌーをその台の上に優しく置いた。

 艇庫の前にあったカヌーをそれぞれ担ぎ、それから、一年と二年は行ってしまった。最後に残ったのは、ぼくとサトウ先輩だった。



――辞めちゃおうよ。



 ここに鍵をかけていくのが、部長の役目だったからだ。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ