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習作時代  作者: 中川 篤
帰ってきて、入部して
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21話


 S高の体育科の職員室は、体育館に隣りあった小さな部屋にあり、その狭いスペースで体育科の教職員はたばこをふかせながら、自分の授業を待っている。


 ヤクザのたまり場と校内では噂されている。


 そのせいか、体育科の職員室はいつも煙ったく、入口にものが置いてあるせいで、奥まで入ってみないとなかの様子が分からない作りになっている。

 正直、この部屋に入るのにはいつも気が引けた。

 ぼくはクラスで体育係に選ばれた。押し付けられた、と言っても過言ではない。この小部屋に訪れるときは暴力団の幹部に接待をするような気持にさえなる。



 体育科の教職員はS校内のさまざまな人たちから恐れられていた。

 体育館にゴキブリが出たとき、ガスガン(!)をぶっ放したりなんかするからだ。

 ぼくたちを受け持ったのはその中の綿木という先生だった。片側の小指が半分しかなく、決して怖い教師ではなかったが(むしろハンド部の名監督だった)、この小指についてはいろいろな噂があった。

 曰く、生徒が裏の世界に入りそうになった時、その小指と引きかえに娑婆(しゃば)に連れ戻した。

 ぼくが聞いたのはそういう噂だ。詳しいことはよく分からない。

 綿木先生は本を出しているので詳しいことはそこに書かれてあるはずだが、図書館に置いてあったそれを読んでおけばよかったと今では思う。


 こんなふうに書いたけど、本当はいい先生なんだ。生徒のことを分かってくれるし、運動部に入っていれば無条件で9か10をくれる。

 口先だけで根性のないやつが嫌いだけど、だからってとやかくは言わなかった。


 しかし、一学期も終わらない内に、うちのクラスから五人も生徒が辞めてしまった。あの連中は今、何をしているのだろう? 

 ぼくも人のことは言えない。

 どいつもこいつも場にいるだけで騒ぎを呼びよせるようなタイプの人間だったが、仲間が何かいいことをしたりすると、ワッと拍手をしてくれたりするなど、いい所はとてもあったなあと思う。



 あれほど頑張っていた野球部も、強豪のハンドボール部も、のちに入れこむことになるカヌー部も、外側から無関心な目で眺めると、どれも白けて見えた。そしてこの時期、最初からやりたいことが決まっている人間でもなければ、たいてい無関心な目をもっている。

 質の劣る授業、舐められている教師、そしてぼくたちは何も生みだせず、愚痴ばかりをこぼしている。はああぁ〜ダルッ! とそんな思想にぼくは首まで使っており、早くここから抜け出す必要があった。



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