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習作時代  作者: 中川 篤
てんかん①
14/45

13話


 小四のころに起こったてんかんの発作は、それから日ごとに悪化していった。

 昼に発作が起こったのは内二回。

 うち一回は、小五の休み時間中、友人たちと大富豪をしているときだった。突然、右腕の自由が効かなくなったと思ったら、腕のけいれんに襲われたのだ。

 けれど、右腕がけいれんしている間もぼくは体の自由だけがなぜか効き、またどういうわけか話すことも出来たので、そばにいた仲間に「早くトランプをしようぜ」とせかしたりした。クラスメイトからは気味悪がられたかもしれない。

 しかも、その発作が治まると、ぼくの腕はぶらーんと力が入らなくなってしまい、完全なモノと化してしまった。

 腕というものは割と重い。

 力を込めてないつもりのときでも、腕には無意識に力が入っていて、それで重さを支えているのだ。



――「おいそれ、大丈夫?」

 と言われて、ぼくは、

――「うん」

 と、返した。本当に大丈夫だったからだ。

 それでその日、ぼくは学校を早引けした。

 しかし二度目のときは最悪だった。

 ガソリンスタンド前の道路で発作を起こしたのだ。ぼくは地面に思いっきり倒れると、それからコンクリートの地面にしばらく頭を打ち付けていた。

 てんかんの発作にはこういうこともある。稀にだが。

 でもこういう事態に出くわしたのは今のところ、これ一度だけだ。あと二回、同じことがあったら、今よりバカになっていたと思う。

 朝方に発作の起こるときは、きまって悪夢だ。小学校ではイヤなこともけっこう多かったから、それが精神に影響していたのかもしれない。



 四分ほど悪い夢を見ると、目が覚め、ぼくは暗闇の中にいる。子どもがうなされていて、何かあったなと思ったら、まずは部屋の明かりをつけることだ。ぼくはパニックに(おちい)り、暗やみに目が慣れると、必死でぼくを押さえようとする誰かをそこに見て、部屋の(すみ)で泣き叫ぶ、妹の声を聴いた……。



       ☆



 病院の医師には、薬による長い治療か、手術かのどちらかを選ばされた。

 手術だが断った。手術は脳に穴をあけて悪い腫瘍(しゅよう)を取り出すという。

 てんかんというのは、要は、脳のなかに出来たおできだ。脳の中におできが出来てしまい、それで神経の伝達が上手くいかなくなって発作や様々な障害が起こる。

 もし、手術が失敗したらどうなるのだろう?

 小学生のぼくは失敗する確率(三割だ! ポケモンの技だってもっとあるぞ!)を聞き、恐怖に負け、それで抗てんかん薬をつかって病気を押さえることにした。

 抗てんかん薬は、効き目が人それぞれ違い、人ごとに薬を与える量を、微妙に調整をしなくてはいけない。

 その調整のため、ぼくは静岡の「子ども医療センター」に入院を決めた。


 いいとこだった。



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