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帰りの馬車の中。

今までの人生の中でも一番スッキリとした心持ちではあったものの、同時に数多の疑問が残っていた。


「それで王子様だったのですか?」

「そうだよ?言ってなかったっけ?」

「言われてませんよ!!

 今まではとんだ失礼を―――」

「あー、いいからそういうの。

 今まで通り対等な立場でいようよ。

 僕は僕のことを変人って言ってくれる君が好きだよ」

「…そうですか」


この好きには恋愛感情は含まれていないのだろう。

今までならばそんなことは当たり前だと割り切って、考える余地すらなかったのに…。

今は少しだけ悔しい気持ちがあった。


ただその感情を自覚するのは恥ずか―――負けた気がするので、自分の感情から目を逸らす為にも他のことを尋ねた。


「聞きたいことは山ほどありますが、私の両親とは会ったことがあったのですね」


挨拶の時2回目と言っていたことが気になった。

うちは貴族を名乗っているが地方の子爵の立場だ。


国王と謁見する機会はもしかしたらあるかもしれないが、第三王子、それもまだ学生という立場のユーリアスと面識があるのは意外だった。


「前に学校主催のパーティに参加したんだよ。

生徒会長のシスタ嬢。その両親に当たるお二人とね。

僕は景品みたいなものだからね。生徒会長になりたくなる為のね」

「…」


 シスタは生徒会長という立場でユーリアスと出会い、私は生徒会の影の存在として彼と出会う。何か因果の様な物を感じさせた。


「その時にシスタ嬢との婚姻を持ちかけられたんだけどね。

 元々断るつもりだったけど、何の因果か姉の君と婚姻することになるとはね」


ユーリアスは笑って見せた。

その様子に私は呆気に取られてしまっていた。本人的にそれでいいのだろうか?


「しかし、君はホントに凄い。

 あんな環境に居たのに、腐らずこうして居られたんだからね」

「…腐らずですか。私にはそうは思えません」


両親が嫌だったのは事実だが、それとは別に私は始めから優秀な人間ではない。

もし私が王族だったとしても、きっと無能のレッテルを貼られていただろう。


「やっぱり訂正だ。君の自己肯定感の低さは、いささか問題があるかな。

 どうにかして自分の才能を自覚して貰わないと、嫌味と思う人が出てくるかもしれない」

「…」


彼は自然な様子で言うのだから、お世辞ではないのだろう。

というかこの王子は、お世辞を言わない。あまりに自分に正直だ。


「そういうわけで、賭けをしようか」

「賭けですか?」


突然の提案。何の脈絡のない話に困惑してしまう。

ていうか王族も賭けとかするのか。


「そう賭け。

勝った方が負けた方のお願いを何でも1つ聞くとかでどうかな?」

「ベタな奴ですね。王族なら何でも叶えることが出来るでしょうに。

 そしてこの賭けに降りることは?」

「当然出来ない」

「ですよね…」


ホント強引な人だ。王族らしくもない。

私ははぁ、とため息を吐きながら大人しく賭けに乗ることにした。


「それで、勝負の内容は何ですか?」

「おぉ、意外と乗る気だね」


自分の口元に手を当てると、頬が緩んでいることに気づく。

意外と私は勝負事が好きなようだ。


私のその様子にユーリアスは嬉しそうに、そして次の瞬間には不敵な笑みを浮かべた。


「君が居なくなった生徒会が、何日で崩壊するか。賭けようか」


どうやらこの王子様は、やはり変人なようだ。


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