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「アネモネ、僕と婚姻関係を結んで欲しい」

「えっ、いや、えっ?

 何の冗談ですか?」


ユーリアスの提案に私は困惑しっぱなしだった。

いくら相手が変人だからと言ってもこの展開は予想外だった。


「もちろん冗談じゃないさ。

 先ほど提示したように、僕の傍で秘書的に働いて貰って欲しいし、報酬は家が傾かないなら適当に使えばいいさ」

「確かに結婚したらそうなると思いますが―――」


あえて嘘は言っていないことに質の悪さを感じたが―――それはまぁこの際いいだろう。


「どうして私なんですか?

 昨日初めて会った人間で―――何より無能な私なんかと」

「…」


絶対に裏の意図があるはずだ。

うちの家系に取り入りたい―――てことは多分ないと思う。

シスタが上手くやらなければ、今後は潰れるかもしれないのだから。


ならばなぜ?ユーリアスに何の得がある?

いや逆にうちの家系に何か復讐したいとか。

それか後ろめたい仕事でも手伝わせるつもりなのか…。


相手の素性がわからない。だから目的も何もあったものじゃない。

いや、もう、別にいいか――――。


「わかりまし―――」

「君の業務能力が欲しい」

「?」


私の了承に偶然被る形でユーリアスの言葉が遮った。

ユーリアスは一瞬こそこちらを見たが、すぐに言葉を続けた。


「君の生徒会における事務能力は間違いなく一級品だ。

 我が家としても、確実に確保しておきたい。

 雇用関係だと、もしかしたら他の貴族に横取りされる可能性があるから、今の内に絶対に逃げれないように婚姻関係を結んでおきたいんだ。

 これで納得してくれたかな?」


捲し立てられるように述べられる言葉の数々に圧倒される反面、ほっとした。


ちゃんと私と婚姻を結びたいだけの理由があった。

私のことを利用するつもりだった。

その理由が、私の数少ない取柄の部分だった。


恋や愛なんかと言葉よりも、ずっと信用出来る。


何より今まで怒られることはあっても、褒められる経験などほとんどなかった私にとって、これほど嬉しいことは他にない。


「わかりました。

 これからよろしくお願いします」

「…そうか。いや、僕としても嬉しいよ。

 これからもよろしく頼むよ」


ユーリアスは一瞬複雑そうな表情を浮かべたものの、すぐに切り替えた。

理由は気になったものの、ここで変に追及すると、彼と同じ好奇心に負けた人間に思えて嫌だったので、ぐっとこらえることにする。


「それで早速で申し訳ないけど、明日にでも君のご両親に挨拶と婚姻のお願いをしに行こうと思うんだ」

「やけに急ぎますね」

「君の気が変わらない内にね。今の君は脳みそが働いていない。

 ゆっくり休んでやっぱり辞めたなんて言われたら困る」

「それを堂々と言いますか…」


頭が働いていない自覚はあったものの…まぁいいか。

明日は丁度休日であり、事務仕事は前倒しにすれば今日のうちに終わらせることが出来る。


ただ久しぶりに両親に会う。しかもこの変人を連れて。

心配がないわけではなかったが―――私は脳みそを働かせないことにした。



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