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「ユーリアス様。

 申し訳ございませんが、婚約の件、白紙にさせていただけないでしょうか?」

「…」


覚悟を決めた私は、我が国の第三王子にお願いした。

本来ならば私なんかが結婚出来るような立場ではない。

白紙にされることはあっても、する側になることはあり得ないはずだった。


「理由を聞かせて貰えるかな?」


ユーリアス様は一瞬だけ驚いた表情を浮かべ、今は厳しい顔つきへと変わっていた。

怒っているのだろうか。私はチクっと罪悪感に苛まれた。

それでも引くわけにはいかなかった。


「私がシスタの代わりに生徒会長になります。

 学校のことも、家ことも。もう妹にだけ責任を押し付けません」


それは私の意思だった。

両親に言われたわけでも、シスタに押し付けられたわけでも。

何より自分が逃げる為に選んだ道でもない。


自分の意思で、この責務を全うしたいと思ったのだ。


もし私が生徒会長になれば、以前の徹夜続きの生活に戻るだろう。

いや、今までの影の仕事だけでなく、表側の仕事もやることになる。

仕事量は今までの倍は覚悟しないといけないだろう。


もしそうなれば、ユーリアスとの婚約の理由。

彼の手伝いをする約束は果たせなくなる。


だから今この場面で、婚姻を白紙にしなくてはならないのだ。


「なるほどね…。

 君の考えはよくわかったよ」


その表情は依然として不機嫌そうだった。

短い期間だったけど、彼と過ごしてこんな表情をするのは初めてだった。


いくら妹の為とは言え、完全にこちらの事情だ。

相手からしたらたまったものじゃないだろう。


特に相手は王族。それなりに手続きもあったのだろう。

もしかしたら反逆罪や不敬罪なんかに問われる可能性だってある。


それでもだ。それでも―――。

私が次に口を出そうとした瞬間、彼は落ち着いた声色で言った。


「そう言えば賭けの報酬をまだ使っていなかったよね」

「…そうでしたね」


私が生徒会の業務に関わらなくなって、何日で生徒会の業務が回らなくなるか。

一か月以内ならユーリアスの勝ち。それ以上なら私の勝ち。そういう賭けだった。

シスタが倒れたことで、完全に私の頭から忘れ去られていた。


結果は今日であり、5日目だ。

つまりユーリアスが賭けに勝った。


今思えば生徒会役員がシスタだけしかいないことをユーリアスは知っていたのだろう。

不平等な賭けだったのかもしれない。だがそれは今問題ではない。


勝負の報酬は、負けた方に1つだけ言う事を聞いてもらう事。


「…」


婚約破棄をさせない。そう言われたら私は従うしかない。

法律だとか、モラルだとか、そういう理由ではない。


私を救ってくれた彼を、これ以上裏切れない。


結局私は、弱いままなのだろう。

救ってくれた恩人と、救わないといけない妹。

二人を天秤にかけた時、どちらを選ぶべきかわからない。


だからまた、私は運に任せた。


「それじゃあ、賭けの報酬を今使わせてもらうよ」

「…」


私はユーリアスの言葉に任せた。



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