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「やっぱりお姉ちゃんは凄いや…」

「…」


久しぶりに妹の口から『お姉ちゃん』という言葉を聞いた。

それは昔の呼び名だった。もう何年も聞いていない。私たちがまだ仲良が良かった頃の呼び方。


気づけば彼女は頬を濡らしていた。

寝起きだからか、仕事が終わったことに安堵したのか。それとも別の何かだろうか。


「うん、私はシスタのお姉ちゃんだよ」


私は妹の頭を撫でた。優しく、優しく。昔のように。

彼女は驚いたように目を見開いたが、次の瞬間には目を細め子猫のように受け入れてくれた。


「ゴメンね。お姉ちゃんが守ってあげられなくて」

「…」


私はずっと後悔していた。

あの両親から妹を守ってあげられなかったことを。


シスタのことを溺愛していた両親。

それが彼女の為にならないことは知っていた。


私が迫害を受けることがシスタの心に影響を与える可能性も。


だけど私は受け入れることしかできなかった。

私が抵抗して、逆らって、逃げて。

もし私の代わりに妹が両親から迫害を受けたら…。


だけど選択は間違いだった。

本当の意味で妹を、シスタを守ることが出来なかった。


私がシスタの優しい心を殺したのだから…。


学園に来てからもずっと罪悪感があった。

シスタを殺してしまった贖罪から、私は生徒会の仕事に励んだ。


自分の精神をすり減らすことで、彼女への罪悪感が和らいだ。

寝不足になることで、罪の意識から目を逸らした。


そして全てがどうでも良くなっていた。

けれど―――


「ありがとう、シスタ。

 生きていてくれて…」


けれど今回の一件でシスタの優しい心が残っていたことがわかった。

ボロボロになりながらも責任を全うしようとした姿は、紛れもなく昔のシスタの姿だった。


私の言葉に、シスタは声を上げて泣き出した。

子供のように。大きな声で、泣きじゃくった。


「ごめんなさい、ごめんなさい」


それがどちらの口から出た言葉なのか、判断が付かなかった。

だけど互いの本心から出た言葉なのだと判った。


この日、私たちは邂逅を果たした。

近い距離に居たのに、ずっと遠かった、互いの心に。



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