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生徒会業務に関わらなくなって4日目。

私はこの学園に来て、初めての友人が出来た。というより作った。


友達を作りたいと思ったのには明確に理由があった。

今まで寝不足で周囲に気を配る余裕が無かったが、いざ余裕が出来ると合間の待ち時間に独りぼっちで居ることに抵抗感が出てきたからだ。


周囲の人々はお友達と楽し気に会話している中、私は一人机に座りぼぉーとする。

ユーリアスが居る時は会話することもあるが、彼もあれで意外に忙しい。

何より王子という立場は何かと目立つ。

常に周囲の視線を感じながらする会話というのは、中々に苦痛だった。


というわけでどうにかお友達を作りたいと思ったものの、既に周囲の人たちは何らかのコミュニティに所属している。

その中に異物として入り込む程の勇気は私にはなかった。


何よりほとんどの人間は、無能な私が第三王子と婚約したことを良く思っていないだろう。

そんな相手と仲良くお喋りをするのは、いくら孤独感があっても嫌だ。


そういう訳で私と同じように独りぼっちで孤独感に苦しんでそうな人間が居ないか探していたら、意外にもあっさり見つかった。


「アインさん!!」

「!!?」


アインと呼ばれた女性はまさか話し掛けられると思っていなかったのか、飛び跳ねた上で後ろに人が居ないか確認し始めた。

いや後ろに人が居ても、アインは貴女だけだと思うよ?


この学園に通う、珍しく貴族出身ではない女性。

何でも学園長の推薦で田舎から入学してきた、何かの才能をもつ人らしい。


「あの…えっと…アネモネさん…。どうされました?」


彼女はおどおどとした様子で私の呼びかけに答えた。

萎縮している気持ちは良くわかる。二つの意味で。


一つは単純に私に対して畏怖を抱いていること。

生徒会長の姉で第三王子の婚約者。

私の実力はともかく、看板だけ見たら結構なことが書かれている。


そしてもう一つは、この学園生活で精神をすり減らし、全てのことに怯えていること。

こっちの方に関しては、私はよくわかる。本当によく。


貴族たちは庶民を見下している。特にこの学園に通う生徒にはその傾向が強い。

その見下している相手と一緒に勉学を育む。しかも相手が自分よりも頭がいい。

そんな状況下で何もされていないと思うほうが難しいだろう。


だからアインさんは一人ぼっちだし、貴族の反感を出来るだけ買わないように隅でひっそりと生きてきている。レンガとレンガの隙間から生えている花のように。


私は覚悟を決める。自分と似た者同士ならば、きっと仲良くなれるはずだから。

そしてどうすれば友達になれるかも。


「友達になろう!!」

「へっ!!」


アインさんの手を握り、私は真っすぐ顔を見て言った。

彼女は転げるのでないかと思う程には驚いている。


そしてしばらく固まって思考を巡らせている。きっと罠ではないかとか、相手の目的は何かとか考えているのだろう。うん、その気持ちよくわかるよ。


そして彼女が断れないことも。


「よろしくね。私たちのぼっち同盟に」

「ぼっち…?」


こうしてアインさんとのぼっち同盟を組むことになった。

そして私の予想通り、アインさんとは話が合った。



昔から内向的で読書が好きだった私。アインさんも本が好きで、特に一番好きな本が私と同じ物だったことに運命を感じた。


「それでこの作者は、実際に自分が経験したことを元に書いていた―――」

「そうそう!!あの婚約者を言い負かした時も―――」


それはもう話が弾む弾む。

お昼休みから意気投合して、午後の授業中は次に何の話をしようかと考えていた。

それはもう、一生分の言葉を使い切ったのではないかと思う程に。


「趣味の合う友達が見つかったのはいいけど―――まぁいいか」


ユーリアスは若干引いていたけど、どうやら納得はしてくれた。


「予定が空いていればこの後、買い物に誘おうと思っていたんだけど…」

「すみません、今日はアインさんとこの後お出掛けする予定で」


この後はずっと気になっていたカフェに行く予定だった。

互いに1人だと入りづらかったので、この機会にと。


「そっそんな。私なんかの為に、王子様とのデートを断るなんて―――

 恐れ多いです。私の予定は全然―――」

「いや、いいよ。僕のも急に決めたことだったしさ。

 何より僕は嬉しいんだ。これからも仲良くしてあげて欲しいな」

「はい!!」

「その代わり、明日は僕に付き合ってよね」

「…わかりました」


ユーリアスの言葉に少し違和感を覚えた。

だがそれ以上に、アインとカフェに行くことが楽しみですぐに頭が切り替わる。


友人と放課後に遊びに出かける。

私の人生は充実していた。


そして次の日―――


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