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生徒会の業務を放棄して2日目の放課後。


私は何故だか教師に呼び出されていた。

それも生徒会の担当者ではなく、私の教室に授業を良く教えに来る教師だ。


彼女は私の顔色を窺うように、そして申し訳なさそうに切り出した。


「今まで生徒会の業務を手伝っていたというのは、本当かしら?」

「手伝っていた…」


手伝う、というのには仕事量が多かった気がするが、わざわざ揚げ足を取ることでもないだろう。

私はコクリを頷いた。


「どうも昨日提出するはずだった書類がまだ来てないみたいなの。

 今までこんなことは1度もなかったのに」

「あぁ…」


1日を待たずして滞るとは思ってもみなかった。

確か提出期限が昨日までの書類は3つだけだったはずだ。

わざわざ私に声が掛かるということは、その3つともなのだろうか?


流石に全く進んでいないということはないだろうから、単純に優先順位を間違えてしまったのだろう。

これに関してはいくら読めばわかるとはいえ、しっかり引継ぎの出来なかった私の責任もあるだろう。


「今回は期限があるとは言え重要でない書類だったからよかったけど、今後も続くようなら困るから…ねっ?

 あんまり続くとシスタさんの名誉に傷がつくわけだし―――」


教師は遠まわしに生徒会業務に復帰して欲しいと言いたいのだろう。

私としても学園側に迷惑が掛かるのは申し訳ないし、それに今回のことでシスタが少しでも私のことを見直してくれたのなら―――


「あぁー、駄目だよ駄目。

 そんな言葉にまんまとそそのかされちゃってさ」

『!?』


私たちの間に割って入ったのはユーリアスだった。

どうしてここに、という言葉は野暮だったらしい。


「君を迎えに行ったら、教師に呼ばれたっていうからさ。

 ここまで迎えに来たわけね」


第三王子に迎えに来させるとは私も偉くなったものだ、と思いつつ本題はそこでは無いらしい。


「それでダメでしょ、先生も。

 こんなことしたら」

「いや、ユーリアス様。私は前向きな提案を―――」

「あの生徒会に押し付けられた仕事。

本来の生徒会が請け負うもの以外も入ってたでしょ」

「…」


教師は青ざめ、黙りこくる。

肯定も反論もしない。それが答えなのだろう。


「てっきり気づかないふりでもしているのかと思ったら―――君はさ。

 君は妹さんだけじゃなくて、先生たちにも利用されていたわけ」

「えぇ!?」


私は思わず声を出して驚いた。

そんなまさかと思い、先生の方を見るが依然黙っている。


確かに私1人がやっていたとは言え、生徒主体の自治組織である割に仕事量が多いとは思っていたけど…。

てっきりシスタが嫌がらせでもしているのかと思っていた。


「これ結構バレたらヤバイと思うんだけど」

「いや、そんなことは―――」

「国王陛下に告げ口されたくなかったら、今後アネモネを戻そうなんて考えないこと。

 そして今まで通り、生徒会には先生方の仕事も一部任せること。いいね?」

「…わかりました」


よくわからないが二人の話し合いは決着がついたようだ。


「それと君もどうしてすぐに引き受けようとするかな?」

「…だってみんな困ってるって言うし」

「本当に困っている人はあんな風に上から頼まない。

 生徒会に戻るとしても、最低でも賭け通り、妹さんが直接謝りに来るまではね。

 これは命令だから」

「…わかりました」


いつになく怒っている様子のユーリアス。

だけど次の瞬間、ニカっと笑顔を見せ、一枚の紙を渡した。


「僕も明日から、この学園の生徒になったから」

「はぁ!?」


そういうと先程対応していた教師へ、入学手続きと書かれた紙を手渡した。


「やっぱりこの学園の人ではなかったのですね」


道理で見覚えがないわけだ。

全校生徒とは言わないまでもある程度通っている人の顔ぐらいは覚えているつもりだ。


まして相手が第三王子となれば嫌でも耳に入るはずなのに。


「今まではなんで。

 そしてどういう風の吹き回しで?」

「君も疑問を素直に口に出すようになったね」

「…」


私の質問にユーリアスは喜んでいたが、彼のように好奇心に駆られていると言われるのは少し心外ではあった。


「学園に通う理由がなかったからね。

 勉強なら家庭教師を付ければ十分だし、それ以前に本を読めば大体わかる。

 何よりつまらないしね、毎日同じ人と顔を合わせるのなんて」

「つまらないですか…」


それは一緒に行動するようになって嫌でもわかった、彼の行動原理。

面白いか、つまらないか。彼はその二択で行動を決める。


「それで、そんな貴方が学園に通うのは?」

「そんなの決まっているよ」


ユーリアスはニカっと笑った。


「君との学園生活が面白そうなこと。

 何より君の周囲がどんな風に変わるのか興味があるからね」

「…そうですか」


いつもの好奇心に駆られた表情。

今の私は彼のその表情が少しだけ好きになった。

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