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「アネモネ。貴方は妹のシスタの為に生きるのよ」

「…わかりました」


昔から実の母親に言われ続けた言葉は、呪いのように私の心を蝕んだ。

自分の存在理由が妹の為だけにあるのだと。


私アネモネと、実妹のシスタの性格は正反対だった。

明るく社交的な性格のシスタ。

暗く内向的な性格の私。


シスタは世渡り上手で甘え上手。

愛嬌があり、誰もが彼女のことを愛してしまう。


私が長女であることを差し引いても、両親が妹を可愛がるのは仕方ないことだった。




「アネモネ、まだ終わってないの」

「ごめんなさい…」


シスタが非難の目をこちらに向けた。

机の上に広がるは書類の山。それもつい昨日までにはなかったものだ。


「貴方は私の評価を上げる為にいるの。

 ちゃんとやらないなら、お母様に言いつけるよ」

「…ごめんなさい」


そういうとシスタは生徒会室とは名ばかりの監禁部屋から出て行った。


私は深く息を吐いた。

毎度のことだからか、既に精神が限界まですり減っているのか。

シスタに述べる謝罪の言葉が日に日に薄っぺらくなっていることを感じた。


子供の頃は良好な仲だったのに、いつから妹は捻くれてしまったのか。

きっと両親の教育の賜物なのだろう。

毎日自分は甘やかされ、私が罵倒される所を見れば、実の姉を見下すのも仕方がないことなのかもしれない。


私は自分を無理やり納得させながら、目の前に広がる書類に目を通した。


貴族たちが通うこの学園の、それも生徒会へ向けた書類たち。

シスタはこの学園の生徒会長を務めていた。


生徒会長という肩書はこの貴族社会で箔をつけるのに有効だった。


近年では貴族の女性と言えど知性と教養が求められる時代となっている。

より正確に言えば、貴族の中でも階級の低い家系がだ。


上の階級の貴族へ嫁ぐために、知性でアピールする。

その知性を証明する手段として生徒会長という肩書は最たるものだった。


実際に学園主催のパーティでは引っ張りだこになるほどには。


「シスタは生徒会長になりなさい。雑務は全てアネモネにやらせればいいわ」


母親は至極当たり前のように言ってのけた。

そしてシスタも当たり前のようにそれに乗っかった。


肩書だけの生徒会長にどれほどの知性があるのかは疑問だったものの、親の言う事には逆らえず、私は奴隷のように生徒会の業務をこなす日々が始まった。


このことは一部の人間を除いて知られてはいない。

私は誰の目にも触れられることなく、生徒会室という監獄に籠り、ひたすらに業務を終わらせる。


表向きは優秀な生徒会長様が、貴族の子息たちと交流をしつつ全ての仕事をこなす完璧超人のように見えているのだろう。

だが実際は、私が連日徹夜までしてどうにか終わらせているのだ。


全ては家の為に。そしてシスタの為に。

私はシスタの為に生きるのだ。母親に掛けられた呪いのように。

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