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にゃんとも不思議な異世界生活始めましたにゃ  作者: YUUURI
第2章  町の名はバルバです
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15。ビクビクにゃ

「今位の時間なら来ても大丈夫だと思うけど、早い時間だと商人がうろうろしてる事が有るから気を付けなよ?」


 10時の鐘が鳴りだすと、アーロンが思い出した様に言った。

 市場は朝6時からだそうで、自分達の店が開店する8時くらいまでの間、掘り出し物目当てで商人がウロウロとしているそうだ。

 聞くと、市場は誰でも商人ギルドでお金を払えば出店できるそうで、場合によっては商会からの引き抜きなんかもあるらしい。


 そんな時、パンの良い匂いで思いだしたリコから念話が入る。


 ⦅もしもし? 外で食べる用にこの世界のパンも購入したいんだけど⦆


 それを聞いたマサも昨日の家族会議で出た内容を思い出す。

 自分達しかしない時は良いが、アイテムボックスに入っている地球産の物はこっちでは出さない様にしようと決まったのだった。

 中にはオーバーテクノロジー過ぎる物があるからだ。


「この近くでおすすめのパン屋が有るなら教えてほしいんだが?」


 マサが子供たちに声を掛けると、三人は驚いて顔を見合わせ、おずおずと問いかけて来た。


「おすすめは有るけど、兄ちゃん達の口に合うかは分かんないぜ?」


「でも僕は美味しいから大好きだよ」


「うん、私も一番大好き」


 アーロンが遠慮がちに言った言葉にヒューとセシルは胸を張っている。


 何だ? と不思議に思ったマサだが、試しに連れて行ってもらう事にした。

 口に合わなければ別の店を教えて貰えば良いだけだ。



 市場を抜け、小さな商店が並ぶ一角まで来ると、とある角の店を指さす三人。


「ここがブラウンさんのやってるパン屋さんだよ」


 中に入ると、6畳ほどのこじんまりとした店だったが、清潔にされていて、壁際にパンが並んでいる。

「いらっしゃい」と振り返った20代半ば位の女性が、驚いた顔でこちらを見て声を上げた。


「アーロン!? それにセシルとヒューまで!? どうしたの、何かあった?」


「母さん、お客さんを案内して来たんだ」


「アデール母さん、お客さんだよ」


「アデール母さん、昨日話したお兄ちゃん達だよ」


 三人は嬉しそうに女性に駆け寄り、説明を始めた。


 アーロンの母親か? セシルとヒューの事も引き取って面倒を見てるって言ってたな。


「まあ、そうなのね。子供達を助けて下さったそうで。有難う御座いました」


 マサ達を見てお礼を言って来たアデールさんは、茶色髪にグリーンの瞳の笑顔の可愛らしい人だったが、少しやつれて見えた。

 女性が一人で三人も子供を育てているんだ、大変な苦労をしてるんだろう。


「いえ、こちらこそアーロン達に町を案内してもらって助かってるんです。私達だけじゃ迷子になってしまいますから」


 リコがアデールさんと会話を始めると、ルビィやレオから激しい程の念話コールが始まった。


 ⦅もしもし父にゃん!! 良い匂いがするにゃ!! ここのパンは間違いにゃく美味しいにゃよ!! たくさん買うにゃ!!⦆


 ⦅もしもし? 父様!! この店のパンは凄く美味しいはずです!! 香りが違います!! 早く買い占めて下さい!!⦆


 興奮すると念話でも大声になるんだな……。

 っていうか、リコに怒られるのが怖いから俺に頼んできてるんだろうな……。


 マサは毛玉達の勢いにめまいがしたが、この子達がここまで興奮するのなら美味しいに違いないと、リコに声を掛けた。


「リコ、ここのパンは凄く良い香りがするな。沢山買っても良いと思うぞ? ルビィやレオも間違い無く気に入るよ」


 振り返ったリコは苦笑いを浮かべて自分の胸元に目を落とした。

 マサのボディバッグもそうだが、リコのボディバッグも毛玉達の興奮が分かる位ウネウネ蠢いている。


 アデールさんはそれを見て驚いていたが、子供達が「あの中に可愛い従魔が入ってるんだよ」と説明してくれた事でマサ達はほっと胸を撫でおろした。


「お店の中では出せないのでお見せ出来ませんが、驚かせてすみません」


 そう言ってから、リコなんのためらいも無く言葉を続けたのだった。


「このお店の中のパンを全て購入する事は出来ますか」と。


 アデールさんを含め、子供達さえも驚いて声を上げたのは言うまでもない事だった。


「ぜ、全部って、全種類を数個ずつって事ですよね?」


「お姉ちゃん、驚かせないでくれよ」


「びっくりした~。聞き間違いかと思ったよ」


「言葉が足りなかっただけなんだね」


 そんな言葉が返ってきて、リコは困った顔をマサに向けた。


「そうじゃないです。買い占めても問題は無いですか? という意味なんですが」


 リコの代わりに問いかけると、彼女と子供達は益々驚いた顔を見せたが、アデールさんは「す、少しお待ちくださいね」と言って、慌てた様に店の奥に消えて行った。


「お兄ちゃん、大丈夫なの? 結構な金額になっちゃうよ?」


 セシルがマサにそう言って心配そうにしていたが、すぐに奥から厳めしい顔のおじいさんが出て来た。


「坊主か? 店の物を全て買いたいって言ってるのは」


 そう言って訝し気にマサ達をギロリと見るおじいさんの様子に、マサは「何か可笑しな事を言っただろうか」と内心ビクビクしてしまうのだった。

お読み頂き有難うございます。ブックマーク・評価の方よろしくお願いします。



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