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にゃんとも不思議な異世界生活始めましたにゃ  作者: YUUURI
第2章  町の名はバルバです
92/119

8。ストーカーにゃ

 怒り、荒ぶるリコと子猫達に詰め寄られたギルマスとマルセルさん。


「多分ですけど、考えられるとしたら……」


 そう前置きして、二人が知っている情報を吐き出してくれた。


 ベスラン商会のお嬢様の名はタバサというらしい。

 事の起こりは2年前の事。


 彼女の態度からも分かる通り、蝶よ花よと育てられたタバサはまさしく超が付くほどの箱入り娘で、お金に物を言わせてどんな願いも叶えられてきたらしい。

 そんなタバサお嬢様が14歳になったある日。

 町でとある男性と出会ってしまった。

 良くある話で、落ちたハンカチをたまたま拾ってくれただけなのだが……。

 その男性に他意は無く、そのまま去って行ったが、お嬢様の方は違ったのだ。

 多分一目惚れか何かだったのだろうが、恋をした経験も無かったお嬢様は暴走してしまった。


「彼は私と結ばれる運命なのよ!!」


 そう言ってはばからず、その男性の住まいや家庭環境、はたまた職業なども調べ上げたそうだ。

 そして偶然を装っては男性の後を追いまわしはじめた。

 そう……いわゆる地球で言う所の、ストーカーってやつだろう。


 しかし、男性にしてみれば迷惑な話だった。

 大商会の娘だろうが何だろうが、良く知りもしない他人に付け回され始めたのだから。

 何度も「迷惑です」「あなたに興味はありません」と断ったそうだが、彼女は「彼は照れているだけ」だと諦めてはくれなかったという。

 男性は困り果ててしまったが、そうこうしているうちに、お嬢様の行動に拍車がかかっていったそうだ。

 男性が務めていた店を貸し切り、その男性に接待を強要したり、店にお金を積んで男性を勝手に引き抜こうとしたり……。

 しまいには、男性の周りに居る女性(家族を含む)に「あの人は私の婚約者だ!! 近づくな!!」と脅しをかけ始めたという。

 その全てがベスラン商会の金と権力を使った物だったそうで、男性は勤めていた店に迷惑が掛かるからと、泣く泣く辞める羽目になり、人知れず引っ越しを余儀なくされた。

 しかし、相手は大商会の娘。

 金を使って男性を探し出し、また付きまとうという事を繰り返した。

 さすがに心身ともに疲れ果てた男性は、冒険者ギルドの友人に助けを求めた事で、事のあらましが商会長であるタバサの父親の耳に入ったそうだ。

 ベスラン商会の商会長は、娘の育て方には問題が有ったが、至極まっとうな人格者だそうで、顛末にたいそう憤慨し、タバサにお目付け役を付けて王都の学校に入れたという。

 そうして男性は1年にも及ぶストーカー行為から解放され、今は静かに生活を送れるようになったらしい。


「あのお嬢様が王都に行ってからまだ1年しかたっていないのに、まさかもう帰って来たなんて……。マサ、何と言うか……君ってその男性に雰囲気が似ているんですよねぇ……」


 マルセルさんの視線はマサにしっかり注がれている。

 ギルマスも困り顔だ。


「念の為、ベスラン商会の商会長と()に注意喚起しておいた方が良さそうね」


「そうですね……。丁度今日の夕刻、商業ギルド主催の会議が有りますよね? 商会長にはその時にギルマスの方からお話しをお願いします。彼には私の方から話をしておきますので」


 聞くと、商業ギルドの会議には冒険者ギルドのギルマスも素材の卸値関係での出席が決まっているそうだった。

 しかし話がどんどん進んで行く中、マサは開いた口が塞がらない状態で呆然としていた。


 何それ?

 金持ったストーカーなんて質が悪すぎじゃね?

 もしかして俺って、次に狙われるかもしれないって事?

 話が通じない相手なんて怖いんですけど~、


 ぼんやりとそんな事を考えていると、リコとギルマス達の会話が耳に入って来た。


「確認しますが、ベスラン商会の商会長は娘の行いを良く思っていないんですよね? こちらが迷惑だと強く出ても咎められる事は無いと考えて大丈夫ですか?」


「ああ、商会長は前回の事で被害男性に慰謝料も払っているし、次は無いときつく叱っているのを私も目の前で見ているからね。お目付け役も付いているから大丈夫だとは思いたいんだが……」


 少しでも癒されようと、マサはゴロゴロと喉を鳴らしながら頭を擦りつけて来るルビィとレオを撫でながら黙って聞いていたのだが、はて? と疑問が浮かんだ。


「お目付け役ってどなたなんですか? あのブライって人じゃあないですよね? 馬車にはお嬢様とブライって人、御者にメイドしかいませんでしたよ? 後は四人の冒険者だけでした」


 リコにも確かめるように視線を向けると。


「うん、確かにそうだよね、マサの言う通り他には誰も乗ってなかった。お目付け役なんて、それらしい人いませんでしたよ?」


 マサ達の言葉に、ギルマスとマスセルさんは驚いたように目を剥いた。


「ギルマス!! 話が違いますよね? あの時、しっかり監視しておくと商会長は約束してくれましたよね?」


「ああ、私も覚えてるさ!! これは何かあったようだね。急いで確認しなくてはならないよ」


 二人は慌てた様に立ち上がると。


「悪いけど状況確認にもう少し時間をくれない? それまでは町に出ない様にしてほしい」


 そう言葉を残してギルマスは部屋を出て行ってしまった。

 残ったマルセルさんが困り顔でマサ達を部屋の外に促す。


「二人共、迷惑事に巻き込まれて不安でしょうが、ああ見えてうちのギルマスは仕事の出来る方なので安心して下さいね」


 最後にそう言ったマスセルさんの顔は、本当にギルマスを信頼しているのが分かる穏やかな笑顔だった。

 その笑顔は信用出来そうだなと、ほっと胸を撫でおろすマサであった。

お読み頂き有難うございます。ブックマーク・評価の方よろしくお願いします。



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