7。祖父母みたいにゃ
「マルセルは少し黙ってて!! お茶でも入れてきてくれない?」
そう言ってマルセルさんを追い出したギルマスは、マサ達に向き直り。
「うるさくて済まなかったね。あいつは口煩くて困ってるんだよ――――」
愚痴だかぼやきだかを口にするギルマスだが、それでも親しみのこもった口調に、マサも自然と体の力が抜ける。
リコの怖いもの知らずな発言にヒヤリとしたが、ギルマスは気にした素振りも見せていない事に安堵したのだった。
ちょっと気にし過ぎだっただろうか?
だって、これ以上面倒事に巻き込まれてくないんだよ……。
変な女に絡まれた挙句、ギルマスに目を付けられたなんて事態にならなくて、本当に良かった。
気を取り直して自己紹介を始めたマサとリコ。
ルビィとレオの紹介を始めた頃にマルセルさんが戻って来て、目の前にお茶を置いてくれた。
「まず、セイタルでの出来事は聞いていたが、解決に一役かっていたんだね? 私からも礼を云うよ、有難う。それに、ランゾから『くれぐれも目を離さないように』とか『見ていて飽きないから楽しみにしていろ』って書かれているんだが、何をやらかしたんだい?」
ギルマスは楽しそうにマサ達を見つめてそう言った。
え? 手紙に何書いてくれてんの?
マサは両手で顔を覆い、大きくため息を吐いた。
「何にもしてませんよ? たまたま巻き込まれて、たまたまセイタルのギルマスに協力しただけですから。今回だって、巻き込まれて困ってるんですよ?」
マサは少し憤慨した様に言葉を吐いたが、ギルマスとマルセルさんは「今回も?」と首をひねった。
「今回もって何だい? ここに来るまでに何か問題でも起こしたのかい?」
その聞き方~!! 俺達がなんかやったみたいに聞こえるんですが!?
内心、マサはむっとしたが、努めて冷静に口を開いて野営地からバルバまでの状況を説明していった。
「ああ、ベスラン商会の番頭の子せがれか。色々難癖付けてきてブラックリストに乗せようかと思ってたんだよ」
ギルマスは苦虫を噛み潰したような顔で吐き捨てた。
詳しく聞くと、ベスラン商会自体は優良な商会なのだが、ここ数ヶ月、番頭の子せがれが絡む依頼は常に「問題が発生しているらしい。
難癖を付けて依頼料の値切りや未払いは当たり前で、冒険者に対しての態度も酷いそうだ。
「ですから、依頼書には依頼主の所にベスラン商会の名だけではなく、奴が絡む依頼にはブライの名も乗せる様にしているんです。この町を拠点にしている冒険者は分かっているので依頼を受けないんですが、あなた達の様に外から来た冒険者などが知らずに受けて、被害に遭ってしまうんですよ」
マルセルさんも疲れた様にそう付け足したのだが。
「確か今回はセイタルまで馬車往復の護衛依頼だったはずですよね。しかし、当のお嬢さんは王都に居るはずなんですが……」
首をひねりながら、考え込んでしまった。
「それでも、お嬢様は馬車に乗っていたし、マサを無理やり攫おうとして、私が邪魔だからと手を出されそうになったのも事実なんです。依頼を受けていた冒険者もさすがに『それは犯罪だ』とか『小間使いじゃない』だのと、すっごく怒ってましたよ」
リコは思い出して腹立たしくなったのか、プルプルと怒りに震えていた。
マサは「有難う」と言って、リコの手をそっと握って微笑みかけると、顔をギルマス達に向けた。
「信じて頂けないので有れば、俺達はすぐにでも次の町に移ります。あらぬ疑いをかけられて困った状況にはなりたくないので――」
マサが言い切ろうとした瞬間、マルセルさんが声を上げた。
「もしかしたら!!」
そう言って、マサに顔を近づけてフムフムと言い出した。
「黒髪……、整った顔立ち……。雰囲気が誰かに似ていると思ってましたが!! 納得しましたよ」
一人で納得しているマスセルさんに、ギルマスはイラついた声を掛ける。
「どういう事だい? 自分だけ納得してないで早く説明しな!!」
キッとギルマスに睨まれたマスセルさんは、すまし顔で。
「あれですよ、あれ。2年前の」
「はあ? 2年前? ……そう言えばお嬢様がやらかして……」
何やらギルマスも理解出来たのか、しばらくマサをジーっと凝視した後、ぽつりと呟く様に声を出したのだった。
「…………あり得るねぇ」
マサは二人の視線から避けるようにのけ反りながら、いら立ちを募らせてる。
何なんだ? 2年前? 意味が分かんねえ。なんか腹が立ってきたぞ!!
そう思って声を出そうとした瞬間、マサよりも早くテーブルをダン!!と叩いてリコがキレた。
「いい加減に教えて下さい!! 訳も分からず嫌な思いをしているのは私達なんですよ? その口ぶりは何かご存じなんですよね!!」
肩を怒らせ、目を三角にしているリコに加勢する様に、鞄から這い出た子猫達もテーブルの上で騒ぎ出す。
「(何を知ってるにゃ!? 早く教えるのにゃ!!)」
「(まさかあなた達もグルなんですか!!)」
言葉が分からないギルマス達は、背中の毛を逆立てて『フーフー』威嚇する子猫達を見て目を丸くしていたが。
「良い従魔達だねぇ。こんなに小さいのに、主人の為に一生懸命になって」
「ええ、本当ですね。愛情を持って育てている証拠ですねぇ」
何故かほっこりとした顔で見つめ合うギルマスとマルセルさん。
いやいや、そんな孫の成長に目を細める祖父母みたいな顔されても困るんですが……。
マサは二人の様子を見て、大きくため息を吐かずにはいられなかった。
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